「磯野常務!!」
ここは、海馬コーポレーションの上層階にある一室。
磯野と呼ばれた男は、口ひげを生やしサングラスをかけて椅子に座っていた。
長年海馬瀬人のもとで仕え、今では世界で有名な会社の常務にまでなっていた。
そんな磯野のもとに、一人の社員が血相を変えて駆け込んできたのだ。
「なんだ、騒々しいぞ。瀬人様の前でもそんな風に現れるのか?」
「ハッ、申し訳ありません! ですが、今は一刻の猶予もありません。磯野常務、これをご覧ください」
そう言った社員の手には、タブレットがあった。
磯野が画面を見てみると、そこにはLIVEと表示された一つの映像が映し出されていた。
よく見ると、その映像内では一人の学生と、一人の男によるデュエルが繰り広げられていた。
「デュエルの映像か。これがどうかしたのか?」
ここ童実野町は、海馬コーポレーションのお膝元だ。
デュエルディスクが家庭用ゲーム機と同等の値段まで下がっている今、家でゲームをやる代わりに、デュエルディスクを使って外でデュエルをする人間がいることは、ごく当たり前の光景になっている。
磯野の目には、何の違和感も無かった。
そう、タブレットを持った男性社員の次の行動を見るまでは。
「このデュエルで使われているカードの一覧がこちらにございます。ここを……ご覧ください」
画面の右端には、そのデュエルで使われているカードが表示されていた。
磯野はその中の、男性社員が指さしている「フィールド魔法」のところに目を凝らした。
「……!! こ、これは……!?」
磯野の顔つきが、一気に緊張感にあふれたものになった。
そこに表示されているフィールド魔法の名前に、見覚えがあった。
いや、見覚えなんてものではない。
磯野の脳裏に、5年前の出来事が鮮明によみがえってきた。
記念すべき第一回バトルシティの直後に起きた、海馬コーポレーションそのものを揺り動かしたあの出来事。
社長である海馬瀬人が自ら先頭に立って動き、伝説のデュエリスト武藤遊戯とともに強大な敵に立ち向かったあの出来事が。
その出来事の中心には、必ずこのフィールド魔法があった。
「常務、いかがいたしますか?」
「……よく見つけてくれたな。お前はこのまま監視を続けろ。私が瀬人様とモクバ様に報告する。そのデュエルが行われている場所は?」
「湾岸エリアの大通り沿いです。エリアコードはB25の1」
「B25の1だな、分かった」
磯野が立ち上がると、男性社員は「失礼いたしました!」と言って部屋を後にした。
「……これからしばらくは、忙しくなるかもしれないな」
―――
「っ……」
俺の2回目のターン。
奴のフィールドには、切り込み隊長とダーク・ヒーロー ゾンバイア、そして今までに見たこともないフィールド魔法、オレイカルコスの結界なるカードがある。
このカード、デュエルディスクにはキチンと認識されているみたいだが、カードのテキストを見ても、見たことのない文字が何行も書かれているだけで、サッパリ判読できない。
とりあえず、攻撃力を500上昇させる効果があるのは確認できたが、それだけじゃないはずだ。
「なぁ、このオレイカルコスの結界のカードなんだけどよ、効果を教えてくれないか? テキストが読めなくて全然効果がわかんねーんだわ」
「よかろう。まずはじめに、自分フィールドのモンスターの攻撃力を500アップさせる効果だ」
「ああ、それは分かった。というより、それしか分からねぇ」
「フィールド上に表側表示で存在するこのカードはこのカード以外の魔法・罠・効果モンスターの効果を受けない」
は?
早速インチキみたいな効果が出てきたぞおい。
それって、排除するのが限りなく難しいってことだろ?
以前のルールなら、こっちもフィールド魔法を発動すれば相手のフィールド魔法を破壊できたけど、今はルールが変わってそれができなくなってるし。
「このカードがフィールド上に表側表示で存在する時、お互いのプレイヤーは「オレイカルコス」と名の付くフィールド魔法以外のフィールド魔法を発動することができない」
ああ、仮に昔のルールのままでも、オレイカルコスの結界は壊せないのね。
というか、『「オレイカルコス」と名の付くフィールド魔法』って表現どういうことだよ。
このカード以外にもオレイカルコスの名を冠するカードがあるのか?
「まだあるぞ。自分はモンスターカードを魔法・罠カードゾーンに置くことができる。 自分のモンスターカードゾーンにモンスターカードが存在する時、相手はこのカードのコントローラーの魔法・罠カードゾーンに存在するモンスターを攻撃対象とすることはできない」
「ちょちょ、ちょっと待て。とんでもないルール介入効果だなおい!」
魔法・罠ゾーンにもモンスターを置けるとかなんだよ。
しかも、モンスターカードゾーンのモンスターを全滅させないと、魔法・罠ゾーンのモンスターを攻撃対象に出来ないときた。
まぁ逆に言えば、魔法や罠の効果でなら破壊できるってことだが。
「それだけではない。自分フィールド上に存在するモンスターはそれぞれ1ターンに1度だけ、モンスターカードゾーンに置かれている場合は魔法・罠カードゾーンに、魔法・罠カードゾーンに置かれている場合はモンスターカードゾーンに移動することができるのだ。この効果は相手ターンにも使用することができる」
……つまり、手前のモンスターは後ろに、後ろのモンスターは前に移動させることができるってことか。
なるほど、この効果とさっきの『自分のモンスターカードゾーンにモンスターカードが存在する時、相手はこのカードのコントローラーの魔法・罠カードゾーンに存在するモンスターを攻撃対象とすることはできない』効果を組み合わせて、こっちの攻撃を回避するコンボか。
「厄介だな……」
攻撃対象を制限する効果と、モンスターを入れ替える効果のせいで、俺が攻撃対象を決めることはまず出来ないってことになる。
なぜなら、いくらこっちが対象を指定しても、入れ替える対象は相手が選ぶからだ。
そこに、攻撃力500の効果が加わるのか。
うかつに攻撃すれば前と後ろを入れ替えられ、500高くなった攻撃力で返り討ちに遭う……そういうことだろう。
さらに、オレイカルコスの結界はほぼ間違いなく排除できない。
「さぁ、お前のターンの途中だ。早くフェイズを進めてくれないか」
「分かってるよ!」
魔法や罠以外でモンスターを破壊するとなると、高攻撃力のモンスターを繰り出すしかない。
そうすれば、前と後ろのモンスターを入れ替えられても大した影響はない。
とはいえ、今の俺の手札で攻撃力の高いモンスターを出す方法はない。
ここは耐えるしかない……
「俺はモンスターをセットして、ターンエンド」
「では私のターンだ。ドロー。私は『コマンド・ナイト』を攻撃表示で召喚する」
「くっ……」
ここでコマンド・ナイトは地味にキツイ。
コマンド・ナイトには、表側表示で存在する限り、自分フィールド上に表側表示で存在する戦士族モンスターの攻撃力を400ポイントアップさせる効果がある。
つまり、奴のフィールド上の戦士族モンスターの攻撃力は、元々の攻撃力から900も上昇することになる。
切り込み隊長は2100、コマンド・ナイトも元々が1200だから同じく2100、そしてダーク・ヒーロー ゾンバイアに至ってはなんと2800になる。
「バトルフェイズだ。まずはダーク・ヒーロー ゾンバイアで霊廟の守護者に攻撃」
霊廟の守護者の守備力は2100。
切り込み隊長やコマンド・ナイトでも破壊できないが、奴のフィールドには攻撃力2800のダーク・ヒーロー ゾンバイアがいる。
攻撃してモンスターを破壊するたびに攻撃力を200下げるデメリットがあるが、ダーク・ヒーロー ゾンバイアの攻撃力が十分下がるまでにはまだ数ターンはかかる。
早めに打開策を講じないと、ライフを削り取られてしまう。
「俺は手札の『異界の棘紫竜』の効果を発動するぜ! 自分フィールド上のモンスターが戦闘またはカードの効果によって破壊され墓地へ送られた場合、このカードを手札から特殊召喚できる。俺は異界の棘紫竜を攻撃表示で特殊召喚!」
異界の棘紫竜の攻撃力は2200。
ダーク・ヒーロー ゾンバイアには勝てないが、切り込み隊長とコマンド・ナイトには100勝っている。
これでこのターンは、奴のモンスターの追撃を止めることができた。
「簡単には負けない、か。ならば、切り込み隊長で裏守備モンスターへ攻撃!」
「よし! お前が攻撃したモンスターは『エクリプス・ワイバーン』だ! このカードが墓地へ送られた場合、デッキから光属性または闇属性のドラゴン族・レベル7以上のモンスター1体をゲームから除外する。俺はデッキから『混沌帝龍 -終焉の使者-』を除外する。その後、墓地のエクリプス・ワイバーンがゲームから除外された場合、このカードの効果で除外したモンスターを手札に加える事ができる」
「厄介なカードを除外したな。私はこれでターンを終了する」
「なら、俺のターン。ドロー!」
引いたカードはレベル4で光属性・ドラゴン族の通常モンスター、『神竜 ラグナロク』。
このカード単体じゃこの状況はどうしようもないが、大切なのは組み合わせだ。
「俺は手札の『沼地の魔神王』の効果を発動する。自分メインフェイズにこのカードを手札から墓地へ捨てて発動でき、デッキから『融合』1枚を手札に加える。そして、手札に加えた『融合』を発動! 手札の通常モンスターである『アレキサンドライドラゴン』と『神竜 ラグナロク』を融合させ、『始祖竜ワイアーム』をエクストラデッキから融合召喚!!」
俺のフィールドに、青のドラゴンが召喚される。
始祖竜ワイアームの攻撃力は2700。
奴のフィールドのモンスターより、高い攻撃力を有している。
「ここでダーク・ヒーロー ゾンバイアを攻撃したいところだが、切り込み隊長が存在する限り、俺は切り込み隊長以外の戦士族モンスターを攻撃できない。俺は始祖竜ワイアームで、切り込み隊長を攻撃!!」
「させん! 私は手札の戦士族モンスター、『オレイカルコス・ポレミステス』の効果を発動!!」
しまった、手札から発動するタイプのモンスターがいたか!
「自分がオレイカルコスの結界を発動している時、このカードを手札から捨てることで、モンスターゾーンのモンスターなら魔法・罠ゾーンへ、魔法・罠ゾーンのモンスターならモンスターゾーンへ移動させることができる。私は攻撃対象になった切り込み隊長を、魔法・罠ゾーンへ後退させる!」
「なにっ!?」
「そして、オレイカルコスの結界の効果! モンスターゾーンにモンスターが存在する限り、相手は魔法・罠ゾーンのモンスターを攻撃対象にすることはできない。お前が攻撃対象にした切り込み隊長への攻撃は無効となる!」
「だが、攻撃対象がいなくなったことで、バトルステップの巻き戻しが発生する。俺は切り込み隊長以外のモンスターへ……」
……ん? 待てよ?
ひょっとしてこれ、ロックがかかってないか?
「それはできない。お前は切り込み隊長の効果で、切り込み隊長以外の戦士族モンスターへは攻撃できない。しかし、オレイカルコスの結界の効果で、その切り込み隊長へも攻撃できない。よって、お前には攻撃対象に選べるモンスターがいない、ということだ」
やはりそうか。
くそっ、なんとかして切り込み隊長を排除しないと、攻撃ができないってことか。
「優輝君……」
「……メインフェイズ2、俺は異界の棘紫竜を守備表示にする。俺はこれでターンエンドだ」
これは厄介だ。
何とかカードが揃うまでは、始祖竜ワイアームの効果でしのぐしかない。
さいわい、始祖竜ワイアームには、通常モンスター以外のモンスターとの戦闘では破壊されず、このカード以外のモンスターの効果を受けないという、なかなかに強力な耐性がある。
攻撃力も2700あるので、ダーク・ヒーロー ゾンバイアに殴られてダメージを受けるということもない。
「私のターン、ドロー。私は手札から永続魔法『一族の結束』を発動。自分の墓地の全てのモンスターの元々の種族が同じ場合、自分フィールドのその種族のモンスターの攻撃力は800アップする。私の墓地には戦士族モンスターであるオレイカルコス・ポレミステスがいる。よって、私のフィールドのモンスターはすべて、攻撃力800アップ!」
よりによって、俺が攻撃をしのげるなんて思ったタイミングでこのカードを出してくるのか!
まぁ確かに、戦士族モンスターで統一しているデッキなら、入っていてもなんら不思議ではないが。
これで、ダーク・ヒーロー ゾンバイアの攻撃力は3400。
コマンド・ナイトと切り込み隊長はそれぞれ、2900の攻撃力になる。
「バトルフェイズだ。私はダーク・ヒーロー ゾンバイアで始祖竜ワイアームへ攻撃!!」
3400から2700を引いた700のダメージ。
これで俺のライフは残り2700になった。
「お前のモンスター、始祖竜ワイアームは通常モンスター以外のモンスターでは戦闘破壊できない。だが逆に言えば、サンドバッグにできるということでもある。私は切り込み隊長とコマンド・ナイトで始祖竜ワイアームへ攻撃!」
「くそっ……」
攻撃してきた2体のモンスターの攻撃力は、どちらも2900。
200×2で、400のダメージだ。
俺のライフは残り2300。
切り込み隊長が攻撃してきたことを考えると、魔法・罠ゾーンにいるモンスターも攻撃できるのか。
「私はこれでターンを終了する」
「俺のターン……」
「頑張って優輝君! まだいけるよ!!」
香里奈の応援する声が聞こえる。
振り返ってみると、香里奈は緑の光を放っている結界の壁に手を付けて、俺に声援を送っていた。
この結界、やはりソリッドビジョンじゃなく実体があるのか?
すると、奴が言っていた「負けたら魂を奪われる」という言葉も、ひょっとしたら本当なのか?
実際に負ければその真偽は確かめられるが、本当だった時のデメリットがデカすぎる。
ここは、俺が勝つしかない。
俺が勝てば奴の魂が奪われるということになるのだろうが、この場合は正当防衛……のはずだ。
「俺の手札は1枚だけ、か……」
その1枚は、死者蘇生だ。
自分か相手の墓地のモンスターを1体特殊召喚する強力なカードだが、俺の墓地には蘇生させて状況をひっくり返せるようなモンスターはない。
まずは、このドローで何を引けるか、だ。
「ドロー……!」
引いたカードは……『暗黒竜 コラプサーペント』か。
ならば……。
「俺は墓地のエクリプス・ワイバーンをゲームから除外し、手札の暗黒竜 コラプサーペントを守備表示で特殊召喚する! このカードは墓地の光属性モンスター1体を除外した場合のみ特殊召喚できる。そして、除外されたエクリプス・ワイバーンの効果発動!! 除外していた『混沌帝龍 -終焉の使者-』を手札に加える!」
「ほう……やるな」
「だが、『混沌帝龍 -終焉の使者-』の効果を使うと、俺はそのターン他の効果を一切発動できなくなる。逆に、効果をすでに発動したターンは『混沌帝龍 -終焉の使者-』の効果は使えない。だがそれでも、フィールドに攻撃力3000のモンスターを容易に出せるのは心強い」
「お前の墓地には今、光属性のモンスターしか存在しない。自爆特攻をしようにも、オレイカルコスの結界と切り込み隊長によるロックがかかっている。どうしようもないな」
「『混沌帝龍 -終焉の使者-』の効果の凶悪さはお前も分かっているはずだ。このカードが手札にあるということを認識させるだけでも、十分な意味がある。俺は始祖竜ワイアームを守備表示にしてターンエンド」
俺の不利には変わりないが、これで奴にくさびを打ち込むことはできたはずだ。
もし俺の墓地に闇属性モンスターが置かれれば、『混沌帝龍 -終焉の使者-』を特殊召喚。
効果を発動し、お互いの手札・フィールドのカードを全て墓地へ送り、その後、この効果で相手の墓地へ送ったカードの数×300のダメージを相手に与える。
そして、俺の場にはモンスター効果を受けない始祖竜ワイアームがいる。
つまり、奴はオレイカルコスの結界以外のカードをすべて失い、俺は攻撃力2700の始祖竜ワイアームを残せる、ということになる。
だが、そんなことは奴も分かっているはず。
俺の墓地に、闇属性モンスターを置かせる行為はしないはずだ。
「私のターン。私は手札から速攻魔法『オレイカルコスの魔封槍』を発動。手札を1枚捨て、相手フィールドのモンスターを1体破壊する。さらに、自分フィールドに『オレイカルコス』と名の付くフィールド魔法が存在する時、さらに1枚カードを選択して破壊することができる。この2枚目の破壊に関しては、魔法・罠カードも対象にできる。私は手札の『不意打ち又佐』を捨て、始祖竜ワイアームと異界の棘紫竜を破壊する」
「なるほどな……『混沌帝龍 -終焉の使者-』の特殊召喚は許しても、始祖竜ワイアームの破壊を優先したって訳か」
「オレイカルコスの魔封槍のデメリットとして、私はこのターン攻撃できない。これでターンエンド」
「俺のターン、ドロー!!」
相手のフィールドの布陣は万全に近い。
ここはリセットに賭ける。
「俺は墓地の光属性モンスター『神竜 ラグナロク』と闇属性モンスター『異界の棘紫竜』をゲームから除外し、『混沌帝龍 -終焉の使者-』を攻撃表示で特殊召喚!! そして効果を発動!! 1000のライフを払い、お互いの手札・フィールドのカードを全て墓地へ送る。その後、この効果で相手の墓地へ送ったカードの数×300ダメージを相手に与える!! お前のフィールドのカードは結界を除いた4枚が墓地へと送られ、1200のダメージだ」
このデュエル、初めて奴のライフポイントを削れたな。
さて、『混沌帝龍 -終焉の使者-』のリセット効果で、互いに手札0枚、フィールド0枚になった。
正確に言えば、奴は結界を維持しているが。
「俺はこれでターン終了だ」
「ここからはスピード勝負、という訳だな。よかろう、私のターン。ドロー」
賭けだ。
例えば、ダーク・ヒーロー ゾンバイアを引かれたら終わるし、それを墓地から持ってこれる『戦士の生還』や『死者蘇生』を引かれても同じことだ。
「……ふむ、お前は運が良い。このターンでは決着はつかないようだ。私は手札から『異次元の女戦士』を攻撃表示で召喚」
「ふぅ……」
確かに助かった。
異次元の女戦士の攻撃力は1500。
結界の効果で500アップしても2000だから、俺のライフは300残ることになる。
だが、異次元の女戦士には、相手モンスターと戦闘を行った時、そのモンスターとこのカードをゲームから除外できるという強力な効果がある。
楽観はまだできない。
「私は異次元の女戦士で攻撃し、ターンエンド」
「……俺のターン」
ドローするために、デッキの一番上のカードに手を触れさせる。
その瞬間。
全身を、ゾクリとする感覚が走った。
間違いない、あのカードだ。
俺のデッキに眠る、エースカード。
「……お前のライフは残り2800だな?」
「それがどうした?」
「いや、簡単なことだ。俺の勝ちが今決まったのさ」
「何を言って……」
「見せてやるよ。ドロー!! 俺はの墓地の光属性・ドラゴン族モンスターと闇属性・ドラゴン族モンスターを2体ずつ除外し、『紫眼の単彩龍(パープルアイズ・モノトーン・ドラゴン)』を攻撃表示で特殊召喚!!」
墓地から光属性・ドラゴン族モンスターとして霊廟の守護者、アレキンサンドライドラゴン、闇属性・ドラゴン族モンスターとして暗黒竜 コラプサーペント、混沌帝龍 -終焉の使者-を除外し、ディスクに紫眼の単彩龍を置く。
ソリッドビジョンシステムが動きだし、俺のフィールドに白と黒の色彩のドラゴンが姿を現す。
これこそ、俺の絶対的エースカード。
「な、なんだそのカードは……!?」
「このカードは通常召喚できず、自分の墓地の光属性・ドラゴン族モンスターと闇属性・ドラゴン族モンスターを2体ずつ除外した場合に特殊召喚できる。光属性だが、効果としてこのカードの属性は「闇」としても扱う。そして、このカードには3つの効果がある。今からその一つで、お前を葬ってやるよ」
「なに……」
「バトルフェイズ!! 俺は紫眼の単彩龍で異次元の女戦士を攻撃!!」
「この瞬間、異次元の女戦士の効果が発動!! 相手モンスターと戦闘を行った時、そのモンスターとこのカードをゲームから除外できる!!」
「その効果にチェーンして、紫眼の単彩龍の効果を発動!! 相手が魔法・罠・効果モンスターの効果を発動した時に発動できる。このカードの特殊召喚に使用した、ゲームから除外されているモンスター1体をデッキの一番下に戻すことでその効果を無効にし、相手フィールドのカードを2枚まで選択して破壊する!!」
「な、なんだと……!?」
「俺は混沌帝龍 -終焉の使者-をデッキの一番下に戻し、異次元の女戦士の効果を無効にする!! そして、効果で異次元の女戦士を選択、破壊する!!」
奴のフィールドの異次元の女戦士がゆっくりと消滅する。
「お前のフィールドのモンスターの数が増減したことにより、攻撃の巻き戻しが発生する。もっとも、お前の場はがら空きな訳だが。紫眼の単彩龍の攻撃、『黒白(こくびゃく)のルイン・ストリーム』!!」
「ぐ、ぐああああああああああああああ!!」
続く。