遊戯王 復活のオレイカルコス   作:みんふみ

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5年前

 俺は香里奈、それにレベッカさんと一緒に、街灯に照らされている童実野町を歩いている。

 まさか、アメリカでも屈指の強さを誇るレベッカさんと一緒にいられるなんて、予想だにしていなかった。

 状況が状況なら、俺はすぐにでも手合わせを願っていたところだな。

 

「えーっと、ユウキの方は紹介してもらったけど……あなたは?」

「は、はい。私は九段下香里奈です。優輝君と同じ高校2年生です」

「あ、じゃあ二人とも歳は16か17? それじゃあ、私と同じね。カリナも、デュエルするの?」

「はい、少しだけ……優輝君みたいにプロのデュエリストを目指してる訳じゃないので、そこまで真剣にやってるわけじゃないですけどね」

「へぇ、ユウキはプロのデュエリストを目指してるのね。それじゃあ、いつか私ともデュエルすること、あるかもね」

「その時は、全力で頑張ります!」

 

 まさか、レベッカさんからこんなことを言ってもらえる日がくるなんて、想像もできなかったぜ。

 こうなったら、意地でもプロのデュエリストにならないといけないな。

 でもまずは、オレイカルコスの結界とやらについてだ。

 一応救急車を呼んでみたら、どうやら海馬コーポレーションの方から一足先に連絡があったらしく、あの男については海馬コーポレーションの監視のもと、病院に入院という手はずがすでに整っていた。

 どうやら、防犯カメラか衛星の映像で、俺のデュエルは見られていたらしい。

 海馬コーポレーションのデータベースにはオレイカルコスの結界のデータがあって、それをもとに俺のデュエルを監視していたのだろうか……。

 

「あの、レベッカさん」

「ん?」

 

 聞いてみるしかない。

 さっきの動揺していた姿から察するに、レベッカさんはオレイカルコスの結界について何か知っている。

 そして、海馬瀬人も。

 

「レベッカさんは、その……オレイカルコスの結界について、何を知ってるんですか?」

「……」

 

 香里奈も、レベッカさんに視線をむけている。

 レベッカさんはしばし思案顔だったが、俺と香里奈の視線に耐えかねたのか、やがて口を開いた。

 

「二人は、5年前に何が起こったか、覚えてる? 正確には、5年前の第一回バトルシティ後に」

「第一回バトルシティ後……ですか」

 

 第一回バトルシティ。

 あの大会のことは今でも鮮明に覚えている。

 特に、個人的にだが武藤遊戯と海馬瀬人の準決勝が印象に強い。

 今でもデュエルモンスターズ界の頂点に君臨し続けている二人の、血の一滴までも使い果たすような至高の戦いだった。

 そして、遊戯さんが初代王者となって幕を下ろしたバトルシティ。

 その後に起こったこと、か。

 

「……原因不明の、モンスターの実体化ですか?」

 

 バトルシティ後、全世界で突如モンスターたちが実体化し、そこかしこでパニックが発生する出来事があった。

 マスコミは海馬コーポレーションが開発したソリッドビジョンシステムの不具合ではないかとして大々的に報道していたが、当の海馬瀬人は全面的に否定していた。

 さらには、全世界で異常気象も発生し始めた。

 この世界の終焉まで唱え始める人もいたが、そういった一連の異常現象は、ある時パタリと止んだ。

 そして、海馬瀬人が緊急会見を開き、アメリカに本社があるパラディウス社と、そこの総帥であるダーツという男が一連の出来事の黒幕であると公表。

 その元凶を止めたことで、世界に平穏が戻ってきた……確か、こんな感じの事件だったはずだ。

 

「そう。事件後の海馬瀬人の公表の通り、あの出来事はダーツという男とその部下たちの組織である『ドーマ』が引き起こしたものなの」

「ドーマ……」

「ただ、瀬人の会見ではその全容までは公開されてないわ。特に、ドーマの目的についてはね」

「ドーマの目的……それと、さっき優輝君が戦った人が使ってきたオレイカルコスの結界と、関係があるんですね?」

 

 香里奈の疑問に、レベッカさんは頷いた。

 

「奴らの目的は、オレイカルコスの神を復活させることだった。まぁもっとも、私もダーツと直接対峙した訳じゃなくて、ダーリンやおじいちゃんから聞いたんだけどね」

「そういえばアイツ、オレイカルコスの力は武藤遊戯も飲みこんだ……とか言ってたな。レベッカさん、今の話から察するに、遊戯さんもドーマとの戦いに参加していたんですか?」

「……ええ。ダーリンも、ドーマとの戦いに参戦してたわ」

 

 そう言ったレベッカさんの表情が、険しいものになっていた。

 思い出したくないものを思い出してしまった、そんな風に感じられた。

 

「それじゃ、遊戯さんが闇に飲み込まれたっていうのは、つまり、あの遊戯さんが負けた……ってことですか?」

「……」

 

 レベッカさんはキッとした顔つきで、ただ前を向いて歩く。

 沈黙は肯定を意味する……なんてのは良く言われるが、この沈黙もそういうことなのか。

 

「公式戦で勝率10割の遊戯さんが……優輝君、信じられないね」

「ああ。でもそうすると、遊戯さんの魂もオレイカルコスの結界に閉じ込められたってことになる。助け出したのは……海馬瀬人?」

 

 遊戯さんを倒せる相手を攻略できるとすれば、海馬瀬人がまず筆頭の候補のはずだ。

 

「いいえ、違うわ。これはちょっと説明しにくいんだけど……ダーリンを救い出したのも、武藤遊戯なの」

「……え?」

「ダーリンの中にはもう一人、主にデュエルの時に出てくるもう一人の人格があったの。負けてしまったのはそっちの人格の方。その時、私のダーリンが身代わりになってオレイカルコスの結界に魂を奪われてしまった……」

「「??」」

 

 言葉の通りに解釈すれば、遊戯さんは二重人格であり、そのうちの片方が結界に捕らわれてしまった。

 だがまず前提として、一人の人間に二人分の魂があるなんてことが信じられない。

 香里奈の方に視線を送ってみるが、香里奈もサッパリのようだ。

 だけど、ここでレベッカさんが嘘を言う必要性もない。

 理解は追いつかないが、ここで話を止めてもしょうがない。

 ひとまず、そういうことにしておいて話を進めよう。

 

「と、とにかく、5年前の戦いでドーマは倒されたんですよね? それなら、どうして今になってまた……」

「それは分からないわ。でも、オレイカルコスの闇の力の根源は、人の心の闇だったわ。人から決して消えることのない、心の闇……」

 

 オレイカルコスの根源は、人の心の闇……。

 心の闇が存在する限り、オレイカルコスもまた不滅……そういうことなのか?

 だとしたら、文字通り不死の存在に違いない。

 何故なら今レベッカさんが言ったとおり、人間の心から闇が消えることなんて、限りなく100%に近い確率で起こりえない。

 犯罪が起こらない日なんてないし、人間の醜い欲望が尽きる日もない。

 闇を食らって無限に出現するとか、永久機関もビックリのシステムだ。

 

「確実に言えることは一つ。もしオレイカルコスの力が本格的に蘇りつつあるのなら、早めに手を打たないと。そうしないと、世界中の人間の魂が危険にさらされることになるわ」

「そうですね。海馬コーポレーションに急ぎましょう」

 

 俺たち三人は、完全に夜に支配された童実野町を歩く。

 昼間ほどの活気はなくなり、通りを歩いているのは仕事帰りのサラリーマンが大半だ。

 ちょうど俺たちの脇に童実野公園があるが、ここも街灯に照らされているだけで人気はほとんど……

 

「ん?」

 

 だが、そんな静かな公園に、一人の女性が立っていた。

 その女性はベンチに座るわけでも、ましてや遊具で遊ぶわけでもなく、ただ公園の中央に立ち、月へと視線を送っていた。

 そして、そんな女性の左腕には、デュエルディスクとおぼしき物体が装着されている。

 

「どうしたの優輝君」

「いや、公園の真ん中で突っ立ってるあの女の人……何やってんのかなって」

「……あ、あの人は!?」

 

 レベッカさんは女性に見覚えがあるらしく、驚きの声をあげる。

 そのレベッカさんの声が聞こえたのか、女性もこっちを振り向いた。

 俺と香里奈の顔を見て、そしてレベッカさんの顔を見た時、その女性はクスッと笑ってこちらへ向かってきた。

 

「あーらレベッカ、久しぶりね。元気にしてた?」

「あなたは……ヴィヴィアン・ウォン!」

「ヴィヴィアン・ウォン……だと」

「優輝君、知ってるの?」

「名前だけな。アジアのデュエル大会で上位常連のデュエリストだ」

 

 この二人、知り合いみたいだな。

 まぁ、どちらも国際大会に出場してるデュエリストだ。

 面識があっても何の不思議もないか。

 

「普段アメリカにいるあなたがどうして日本へ?」

「ちょっと、ね。それより、あなたこそどうしてここに? 中国が活動の拠点でしょ?」

「武藤遊戯に会いに……ね」

 

 そう言ったヴィヴィアンの表情は、大人の女性を思わせるというか、少しアダルティーな感じだ。

 

「あなた、ダーリンがどこにいるか知ってるの!?」

「いいえ、知らないわ。だから探しに来たのよ。会って、私と遊戯で最強デュエルカップルを作るために」

「あなた、まだそんなこと言って……!!」

 

 なんだか、ヴィヴィアンの挑発に対して、レベッカさんも静かに闘志を燃やしているようだ。

 

「ま、カップルうんぬんは冗談として。遊戯に用があるのは確かよ……でもその前に、あなたで腕試しといくのも良いわね」

「……?」

「普段は国際試合でしか戦わない私たちだけど、どう? たまにはストリートデュエルというのも」

「臨むところよ……と言いたいところだけど、私たちは海馬コーポレーションに用があるの。また今度にお願いできない?」

「へぇ、海馬コーポレーションに、ね。それは、このカードの調査のため……といったところかしら?」

 

 そう言ってヴィヴィアンが一枚のカードを取り出して、俺たちに見せてきた。

 そのカードは魔法カードで、かつフィールド魔法で、そして……。

 

「ちょっとそれ、オレイカルコスの結界じゃない!? ヴィヴィアン、あなたそのカードをどこで!?」

「どこでもいいじゃない。そんなことより、やるの? やらないの?」

 

 レベッカさんはしばらくのあいだ、ヴィヴィアンのことをジッと見つめていた。

 だがやがて、決意を固めたように小さく息を吐くと、デュエルディスクを起動して構えた。

 

「……いいわ、相手になってあげる! あなたが結界を発動しようとしまいと、私が勝つ!!」

「ふふ、レベッカ。あなたのその自信、今から粉々に打ち砕いてあげるわ」

 

 

 

 つづく。




そろそろ、簡単な舞台設定とか、オリカの設定とかもちょこちょこ出して行った方が良いかもしれないですね。
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