レベッカさんとヴィヴィアンのデュエルは佳境に入ってきたな。
状況はヴィヴィアンに有利に傾いている。
レベッカさんはキュアバーンでありながら、ロックを構築できないのが厳しい。
仮にロックの布陣を敷いても、レベルを持たないエクシーズモンスターには抜けられる可能性が高い。
だが、まだレベッカさんには切り札があるはずだ。
「私のターン、ドロー! ……!!」
カードを引いたレベッカさんの表情がわずかに変わった。
状況を好転させるカードを引き当てたのか?
「スタンバイフェイズ、堕天使マリーの効果で私のライフは200回復し5000になったわ。でも5000のライフなんて、現代のデュエルじゃ何の意味もない」
「よく分かってるじゃない。諦めてサレンダーする?」
「冗談。私は最後までデュエルを諦めたりしないわ。途中で投げ出したら、ダーリンに合わせる顔が無いわ。私はこのカードに賭ける! メインフェイズ、手札から『復報のビッグバンガール』を守備表示で特殊召喚!!」
レベッカさんのフィールドに現れたのは、一見するとビッグバンガールと変わらない人型のモンスター。
だが、その表情は通常のビッグバンガールとは違っている。
通常のビッグバンガールは無表情とというか、顔つきからは特に何の印象も受けない。
だが、復報のビッグバンガールは違う。
顔こそ同じだが、その表情からは怒りと言うべきか威圧感と言うべきか、見ていると気圧されるような印象だ。
「復報のビッグバンガール……初めてみるカードだわ」
「アメリカで先行発売されてるカードだもの。このカードは通常召喚できず、自分の墓地に「ビッグバンガール」が1枚以上存在する時のみ、手札から特殊召喚できる。そして、このカードは「ビッグバンガール」と同じ効果を持ち、さらに自分の墓地の「ビッグバンガール」の枚数によって追加効果を得るわ」
「追加効果?」
「ええ。墓地のビッグバンガールが1枚以上の時、このカードは戦闘では破壊されず、1ターンに墓地の「ビッグバンガール」の数まで魔法・罠・このカード以外のモンスター効果を受けない」
「つ、強いじゃない……」
つまり、このカード1枚で戦線を維持でき、さらに墓地のビッグバンガールの枚数に依存するものの、魔法や罠、モンスター効果にも耐えられるのか。
特殊召喚には墓地にビッグバンガールが最低1枚は必要だから、大抵は魔法・罠・モンスター効果を1回は防げることになる。
「これがキュアバーンデッキの新たな切り札よ。私はさらにモンスターをセットしてターンエンド」
「……私のターン、ドロー!! レベッカのターンにカンフーダーロンが戦闘を行わなかったから効果を使えるけど、使うと攻撃力が400ダウンしてしまう。私はカンフーダーロンの効果を使用しないわ。メインフェイズ、私は『逆ギレパンダ』を攻撃表示で召喚!」
逆ギレパンダは相手フィールド上のモンスター1体につき攻撃力が500アップし、さらに貫通能力も持っているモンスター。
恐らく、逆ギレパンダで復報のビッグバンガールをサンドバッグにするつもりなんだろう。
「今、レベッカの場には2体のモンスターがいる。よって、逆ギレパンダの攻撃力は1000アップして1800になる。復報のビッグバンガールの守備力は1500。たった300だけど、あなたにダメージを与えられるわ。バトルフェイズ、逆ギレパンダで復報のビッグバンガールへ攻撃して、ターンエンド」
「私のターン、ドロー! 堕天使マリーの効果で200回復し、復報のビッグバンガールの効果であなたに500のダメージ。私は攻撃力1000の『炎王獣キリン』を攻撃表示で召喚し、バトルフェイズ、達人キョンシーへ攻撃! 750のダメージを受けるけど、炎王獣キリンの効果を発動させてもらうわ。このカードが破壊され墓地へ送られた場合、デッキから炎属性モンスター1体を墓地へ送る事ができる。私はデッキからビッグバンガールを墓地へ送るわ」
「これで墓地のビッグバンガールが2体……」
「墓地のビッグバンガールが2枚以上の時、メインフェイズ1の開始時にのみ発動できる効果があるわ。1回につき100ポイント、n回まで自分ライフを回復する」
「n回?」
「ええ。そして、nのところには『自分の手札の枚数』が入るわ」
うわ、これはまたえげつないな……。
「ねぇ優輝君、なんで1回につき100ポイント、n回までなんだろう? 同じ回復するなら、手札の枚数×100ポイントでも良い様な……」
「ビッグバンガールの効果は、一度に何ポイント回復しようと、与えられるダメージは500だ。大切なのは、質でも量でもなくて、回数なんだ。だから、その効果を最大限生かせるように、回数をわざわざ分ける効果なんだろうな」
「あ、そういうことなんだね」
「復報のビッグバンガール……キュアバーンの救世主になるかもな。耐久力に加えて、回数を小分けにして何度もダメージを与えられるのか」
「私はこれでターンエンド。さぁヴィヴィアン、あなたのターンよ」
「くっ、私のターン。私は手札から『戦士の生還』を発動。墓地の戦士族モンスター『カンフーニャンニャン』を手札に加えて、そして攻撃表示で召喚。そして魔法カード、『五色の彩暮(ウーソーサイユ)』を発動!! 自分フィールド上に表側表示で存在する「達人キョンシー」と「カンフーニャンニャン」を1体ずつリリースして、デッキから『皇帝龍淑女(ドラゴン・レディ)』を攻撃表示で特殊召喚する!」
ヴィヴィアンのフィールドに、攻撃力2500のモンスターが現れた。
恐らくだが、復報のビッグバンガールを破壊できる目算が立つまでフィールドの整備を行うつもりだろう。
「バトルフェイズ、逆ギレパンダで復報のビッグバンガールに攻撃! カードを1枚伏せてターンエンド」
「私のターン、ドロー! 堕天使マリーの効果で200回復し、復報のビッグバンガールの効果であなたに500のダメージよ」
「あなたのスタンバイフェイズ終了時に、リバースカードオープン! 罠カード、『おジャマトリオ』を発動! レベッカ、あなたの空いているモンスターゾーン3か所におジャマトークンを守備表示で特殊召喚するわ! モンスターが増えたことで、逆ギレパンダの攻撃力がアップし3300になったわ」
これでヴィヴィアンは次のターン、貫通ダメージによる3300のダメージと、おジャマトークンが破壊された時の300のダメージ、計3600のダメージを見込める計算だ。
レベッカさんの今のライフは4050。
残り450なら、おジャマトークン2体を破壊すれば削り切れる。
一方のヴィヴィアンのライフは残り2500。
際どい勝負だ。
「メインフェイズ1の開始時に、復報のビッグバンガールの効果を発動! 私の手札は1枚、よって1回、100ポイント回復する。そして、相手のライフに500のダメージを与える」
これでヴィヴィアンのライフは残り2000だ。
レベッカさんのライフは100加算して残り4150。
「私はこれでターンエンド」
「なら、私のターン! ドロー! ……このままバトルフェイズに入り、逆ギレパンダでおジャマトークンへ攻撃!!」
「……この時を待っていたわ!! 私は手札の『クリボー』を墓地へ捨て、この戦闘で発生する戦闘ダメージ……つまり、貫通ダメージ3300を0にする!!」
「く、クリボーですって!?」
「ええ。ダーリンがオススメしてくれたの。ロック系のデッキなら万が一の時に役に立つかもしれないから、1枚くらいは邪魔にならないだろうってね」
「これで、レベッカさんのこのターンでの負けはなくなったね」
「ああ。クリボーはモンスターの戦闘破壊は防げないから、おジャマトークンを破壊されることによる300のダメージは防げないけど、何より貫通ダメージ3300をしのげたのはデカい」
「本当に諦めが悪いわね……なら、私はこれでバトルフェイズを終了してターンエンドよ」
残りのおジャマトークンへ攻撃しなかったか……。
ここでトークンを減らして逆ギレパンダの攻撃力を下げるのを避けたのか。
「私のターン、ドロー! 堕天使マリーの効果で200回復し、相手に500のダメージを与える」
ヴィヴィアンのライフは残り1500だ。
「さらにメインフェイズ1の開始時に、復報のビッグバンガールの効果を発動。手札は1枚、よって1回、100ポイントライフを回復するわ」
これで残り1000。
だが、このターンでもう2回復報のビッグバンガールの効果を発動できなければ、決着は先送りになる。
次のターン、ヴィヴィアンが攻撃力2800の逆ギレパンダで攻撃し、さらに残りのおジャマトークンへ攻撃しても、2800+300+300で3400のダメージ。
レベッカさんのライフは今4050だから、すぐには負けないはずだ。
だが、デュエルに絶対はない。
できることなら、このターンで1000ポイント削り切りたい。
「……長いデュエルもそろそろ終わりにしましょう。私はセットしていた『アロマージ-ジャスミン』を反転召喚! さらに手札から速攻魔法『ご隠居の猛毒薬』を発動するわ! このカードにはライフを1200回復するか、相手に800のダメージを与える効果がある。私は1200ポイントライフを回復する方を選ぶわ。そして、ライフが回復したことで、復報のビッグバンガールとアロマージ-ジャスミンの効果が発動! あなたのライフに500のダメージを与えて、デッキからカードを1枚ドロー!」
「レベッカさん、賭けに出たね」
「ああ。アロマージ-ジャスミンの攻撃力はたったの100だ。次のターン、攻撃を許せば負ける。だが、このドローで何か引ければ……」
「……ドロー!! ふふ、私の勝ちねヴィヴィアン。手札の『黄金の天道虫(ゴールデン・レディバグ)』の効果発動!! 手札のこのカードを相手に見せて発動でき、自分は500ライフポイント回復する! 復報のビッグバンガールの効果で500ダメージ……これであなたのライフはちょうど0よ!」
す、すげぇ……。
たった1枚のドローで決着をつけたのか。
「あぁ、またあなたには勝てなかったわね」
「さぁヴィヴィアン、オレイカルコスの結界のカードを渡して」
「どうぞ、元々私のじゃないし」
そう言うとヴィヴィアンは、手にしていたオレイカルコスの結界のカードをレベッカさんに手渡した。
……手にしていた?
待てよ、今のデュエル、ヴィヴィアンの最後の手札は1枚だけだったはずだ。
その1枚はドローしたけど、結局ヴィヴィアンのターンに使われることはなかった。
そのカードが、オレイカルコスの結界?
「……ヴィヴィアン、あなた、オレイカルコスの結界を手札に持っていたの?」
「そうよ。それが?」
「そのカードを『ワンリーツァンツェン』に上書きして発動していれば、逆ギレパンダの攻撃力を3800に出来た。3800の貫通ダメージにおジャマトークン破壊による300のダメージ……計算上では、私はあなたの最後のターンで負けていた」
「それはないわ。あなた、クリボーを持っていたじゃない」
「クリボーで防げたのは結果論に過ぎないわ。あなたはオレイカルコスの結界を発動していれば勝てていたかもしれない。でもそれをしなかった」
「……レベッカ。あなた、この私、ヴィヴィアン・ウォンを少し甘く見てるんじゃない? このカードのことは風の噂で聞いたわ。確かに強力な……いえ、インチキじみたカードだわ。でも、こんなものを使ってあなたに勝っても、私のプライドが許さないの」
「プライドぉ? 私に負けたのに性懲りもなくダーリンに戦いを挑んだあなたがプライドねぇ……」
「何とでも言いなさい。とにかく、私はこんなカード使わないわ。もし使う気があったのなら、8ターン目にテラ・フォーミングで手札に加えてたわ」
確かにそうだ。
ヴィヴィアンは都合2回、オレイカルコスの結界を使う機会があった。
一度はテラ・フォーミングを発動した時。
もう一度はヴィヴィアンのラストターン。
そのどちらでも使わなかったというのは、ヴィヴィアンの強固な意志を感じざるを得ない。
「さ、そのカードを持って海馬コーポレーションに行くんでしょ? 私も一緒に行くわ」
「え、あなたも?」
「そんなインチキカードを作ったのは誰か、興味あるもの」
こうして俺たちは4人で、童実野町にど真ん中にそびえる海馬コーポレーションへと向かった。
・「カンフーダーロン」……エクシーズ・効果モンスター、ランク4、光属性、ドラゴン族、攻撃力2800、守備力2400。このカードをエクシーズ召喚する場合、使用する2体のレベル4モンスターのうち少なくとも1つは「カンフー」モンスターでなければならない。(1)自分フィールド上に表側攻撃表示で存在するこのカードが戦闘を行わずにターンを終了した場合、次のプレイヤーのスタンバイフェイズに発動できる。フィールド上のカードを1枚破壊する。この効果を使用した場合、このカードの攻撃力は400ポイントダウンする。(2)1ターンに1度、自分のメインフェイズに発動できる。エクシーズ素材を1つ、または2つ取り除き、手札・デッキから「カンフー」モンスターを1体特殊召喚する。2つ取り除いて特殊召喚した場合、特殊召喚した「カンフー」モンスターの効果をその場で発動できる。この効果を使用ターンはそれ以降、モンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚できない。
・「ワンリーツァンツェン」……フィールド魔法。(1)自分フィールドの「カンフー」モンスターの攻撃力と守備力は300ポイントアップする。(2)自分フィールドの「カンフー」モンスターは1ターンに1度、戦闘では破壊されない。(3)1ターンに1度、自分のメインフェイズ2に、このターン攻撃宣言を行った「カンフー」モンスター1体を対象に発動できる。次の自分のスタンバイフェイズにこのカードがフィールド上に存在する場合、選択したモンスターは効果を発動できる。
・「復報のビッグバンガール」……効果モンスター、レベル4、炎属性、炎族、攻撃力1300、守備力1500。このカードは通常召喚できない。自分の墓地に「ビッグバンガール」が1枚以上存在する時のみ、手札から特殊召喚できる。このカードは自分フィールドに1枚しか存在できない。このカードは「ビッグバンガール」と同じ効果を持ち、さらに自分の墓地の「ビッグバンガール」の枚数によって以下の効果を持つ。(1)1枚以上の時、このカードは戦闘では破壊されず、1ターンに墓地の「ビッグバンガール」の数まで魔法・罠・このカード以外のモンスター効果を受けない。(2)2枚以上の時、メインフェイズ1の開始時にのみ発動できる。1回につき100ポイント、n回まで自分ライフを回復する。nには「自分の手札の枚数」が入る。(3)3枚の時、このカードが破壊された場合発動できる。互いのライフポイントを0にする。
以上三枚、オリカ紹介でした。
エクシーズモンスターが登場して以来、ロック系のデッキは肩身が狭くなってしまった感がありますね。
自分はロック系のデッキが好きなので、「復報のビッグバンガール」みたいなカードが出てくれればいいなぁ、なんて思ってます。正直、これくらいのカードを出しても破られそうなくらい、今のデュエルは高速化していると思いますが……。