遊戯王 復活のオレイカルコス   作:みんふみ

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炎、そして宵と明

 まったく予想外の展開になった。

 海馬コーポレーションの副社長室に突如現れた、ハーゲンという男。

 アミューズメント企業であるシュナイダー社のナンバー3だというその男と、海馬コーポレーションの副社長である海馬モクバとのデュエル。

 なにより気になるのは、海馬コーポレーション副社長のモクバが、いったいどんなデッキで、どんなデュエルをするのか、ということだ。

 

 モクバの兄である海馬瀬人のデッキは、デュエリストなら知らないものはいない。

 高貴なるドラゴン、ブルーアイズホワイトドラゴンを3枚搭載した、海馬瀬人専用と言ってしまっても過言ではないデッキ。

 そのデュエルは何度か見たことがある。

 だが、弟であるモクバのデュエルを見るのはこれが初めてだ。

 

「先攻は僕のようだ。僕は『炎王獣バロン』を攻撃表示で召喚。さらに、カードを1枚伏せる」

 

 先攻となったハーゲンのデッキは、見たところでは『炎王』デッキか?

 破壊をトリガーにして効果が発動することの多いモンスター群だ。

 カード効果で破壊させることが多いから、ブラックホールや激流葬なんかがデッキに入っているはずだ。

 うかつにモンスターを並べて、まとめて破壊されたら目も当てられないことになる。

 まぁ、今のデュエルでは墓地蘇生の手段も豊富に存在するし、そこまでは気にならない。

 ただ、自分のターンがまわってくる前にライフを削り切られたら意味がないから、そこは注意か。

 

「これで終わりではない。僕は手札からフィールド魔法『オレイカルコスの結界』を発動!」

「ッ……」

 

 おいおい、初手から持ってたのかよ。

 俺のデュエルの時と同じように、ハーゲンとモクバを包囲するように緑の紋様が出現した。

 ……改めて、外から見ると不気味な結界だ。

 緑の光自体は綺麗という表現もできるが、それ以上に肌で感じるこの寒さが嫌だ。

 それに、なんだろう。

 この光を見ていると、妙に心がざわつく。

 いったい、なんなんだ……。

 

「結界の効果によって、僕のフィールドのモンスターは攻撃力が500アップする。炎王獣バロンの攻撃力は1800に500を足した数値、2300となる。僕はこれでターンエンドだ」

「俺のターン、ドロー! 俺は手札から魔法カード『儀式の下準備』を発動! デッキから儀式魔法カードを1枚選び、さらにそのカードに記された儀式モンスターを1体デッキ、または墓地から選ぶ。その2枚を手札に加える。俺はデッキから儀式魔法カードとして『カオスの儀式』を選択! このカードと、テキストに記された儀式モンスター『カオス・ソルジャー』を手札に加えるぜ!」

 

 ま、まさかの『カオス・ソルジャー』デッキか!?

 兄が誇り高きドラゴンの使い手なら、弟は誇り高き戦士の使い手ってことか。

 このデュエル、面白い展開になるかもしれないな。

 

「そして、手札に加えたカオスの儀式を発動! 自分の手札とフィールドからレベルの合計が8以上になるようにモンスターをリリースし、手札から『カオス・ソルジャー』を儀式召喚するぜ! 俺は手札の『疾走の暗黒騎士ガイア』と『儀式魔人ディザーズ』をリリースして、カオスソルジャーを儀式召喚!!」

 

 モクバのフィールドに、青の鎧を身にまとい、盾と剣を手にした戦士が姿を現した。

 攻撃力3000、守備力2500はブルーアイズホワイトドラゴンと同等のスペック。

 効果を持たないモンスターのため、わざわざ儀式召喚してまで呼び出すくらいなら、他にいくらでも戦いようはあるという感じで、普通ならあまり出番のないモンスターだ。

 だが、この構築ならそういうことはないはずだ。

 

「何を伏せてあるか知らないけど、儀式魔人ディザーズを儀式召喚に使用した儀式モンスターは、罠カードの効果を受けない。遠慮なく攻めさせてもらうぜ。だけどその前に、リリースされた疾走の暗黒騎士ガイアの効果発動! デッキから『カオス・ソルジャー』モンスター1体を手札に加える。俺は『カオス・ソルジャー -開闢の使者-』を手札に加えるぜ。バトルフェイズ、カオスソルジャーで炎王獣バロンへ攻撃!!」

 

 先に相手にダメージを与えたのは、モクバだ。

 3000から2300を引いだ700ダメージをハーゲンに与えることに成功だ。

 だが、現代の遊戯王で先手を取ってダメージを与えても、特に意味はない。

 

「俺はこれでターンエンド。さぁハーゲン、お前のターンだぜ」

「では僕のターン、ドロー。僕は手札から魔法カード『炎王の急襲』を発動する。相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合に発動でき、デッキから炎属性の獣族・獣戦士族・鳥獣族モンスター1体を特殊召喚する。僕はデッキから『炎王神獣 ガルドニクス』を攻撃表示で特殊召喚。オレイカルコスの結界の効果で攻撃力が3200となる」

 

 モクバの表情に、わずかだけど苦悩が混じったように見えるな。

 そう、警戒すべきはモクバのフィールドにのみモンスターが存在する、そういうシチュエーションだった。

 炎王デッキならば間違いなく投入されている『炎王の急襲』が、文字通り火を噴いた格好だ。

 炎王の急襲で特殊召喚されたガルドニクスは効果を無効になり、エンドフェイズ時に破壊されることになる。

 だが、ガルドニクスには自己再生能力がある。

 このコンボが決まれば、モクバも苦しくなる。

 

「さらに、手札の『熱血獣士ウルフバーク』を攻撃表示で召喚。ウルフバークは1ターンに1度、自分の墓地の獣戦士族・炎属性・レベル4モンスター1体を守備表示で特殊召喚することができる。もっとも、蘇生されたモンスターの効果は無効化されるがな。さて、僕は墓地の『炎王獣バロン』を守備表示で特殊召喚。そして今、僕のフィールドにはレベル4のモンスターが2体だ」

 

 同じレベルのモンスターが複数……。

 これはまさか、エクシーズ召喚か!?

 

「僕はレベル4のモンスター、炎王獣バロンと熱血獣士ウルフバークでオーバーレイ!! エクシーズ召喚!! 現れよ! ランク4、『鳥銃士カステル』!!」

「これが、エクシーズ召喚……!?」

 

 初めてエクシーズ召喚を目の当たりにするモクバが驚きの表情を見せる。

 そりゃそうだ。

 同レベルのモンスターを複数体揃えるだけで、エクストラデッキからモンスターを特殊召喚できるのは、融合や儀式召喚よりはるかに簡単に思える。

 俺たちが墓地や手札にせっせとキーカードを集めている間に、下手したら2体か3体モンスターを特殊召喚されるのは、あまりに速度が違いすぎる。

 

「鳥銃士カステルには二つの効果がある。このカードのエクシーズ素材を一つ取り除いてフィールド上の表側表示モンスターを1体裏側守備表示にするか、あるいはエクシーズ素材を二つ取り除いて、このカード以外のフィールド上表側表示になっているカード1枚をデッキに戻すか、だ」

「なに……!?」

 

 なんてえげつない効果なんだ。

 特に、エクシーズ素材を二つ取り除いた時の効果が強すぎる。

 表側表示であればモンスターカードである必要はなく、さらにデッキに戻すというのが効果を際立たせてやがる。

 破壊や墓地送りであればそれに誘発される形で効果が発動するモンスターは多いが、デッキに戻された時に効果を使えるカードはほとんどない。

 さらに今回でいえば、儀式モンスターをデッキに戻されるのがなによりキツい。

 再度召喚するにはまた儀式召喚が必要になり、その手間は尋常ではない。

 体勢を立て直すことも出来ずにライフを0にされてもおかしくない。

 

「無論、俺は二番目の効果を使用する。エクシーズ素材となっている炎王獣バロンと熱血獣士ウルフバークを取り除き、カオス・ソルジャーをデッキに戻させてもらおう」

「させるか! 俺は手札の『エフェクト・ヴェーラー』の効果を発動! このカードを手札から墓地へ送って、相手モンスターの効果をターン終了時まで無効にする! これで鳥銃士カステルの効果は無効になる!」

「ほう、良いカードを手札に持っていたようだな。ならば仕方がない。本当はこのターンで早々に決着をつけてやろうと思っていたのだが……バトルフェイズ、まずは炎王神獣ガルドニクスでカオス・ソルジャーへ攻撃!」

「ぐっ……」

「さらに、鳥銃士カステルでプレイヤーへダイレクトアタック! カステルもオレイカルコスの結界の効果で攻撃力が500アップしているから、モクバ、お前に2500のダメージだ」

 

 これでモクバのライフは残り1300か……。

 エクシーズモンスターの出しやすさに、オレイカルコスの結界の攻撃力500アップが追い風になっている感じだ。

 500という上昇率は決して高くはないけど、初期ライフが4000であることを考えれば十分な増強手段だ。

 

「僕はこれでターンエンドだ。このタイミングで炎王の急襲によって特殊召喚されたガルドニクスが破壊される。さぁモクバ、早くも危険水域になってきたな?」

「くそっ、俺のターン、ドロー……!!」

「お前のスタンバイフェイズに、カード効果で墓地へ送られたガルドニクスの効果が発動。ガルドニクスを墓地から特殊召喚し、ガルドニクス以外のモンスターをすべて破壊する」

 

 これでフィールドに存在するモンスターは、ガルドニクスのみとなった。

 攻撃力3200となったガルドニクスに対し、モクバを守るモンスターは1体も存在しない。

 このターンで手を打たないと、間違いなくモクバが負ける。

 だが、容易にはいかない。

 ハーゲンのフィールドには伏せカードがある。

 炎王デッキであることを考慮すれば、伏せカードが激流葬のようなカードである可能性は十分にある。

 果たして……。

 

「モクバさん、大丈夫かな……」

 

 香里奈もこの状況が心配の様子だな。

 

「ハッキリ言えば、海馬モクバに不利な状況ね。ただ、モクバはカオス・ソルジャー降臨に使った疾走の暗黒騎士ガイアの効果で、開闢の使者を手札に加えている。あれを特殊召喚できれば、まだ勝機はあると思うわ」

 

 これはレベッカさんの意見だ。

 確かにモクバの手札には、強力な効果を持つカオス・ソルジャー開闢の使者がいる。

 特殊召喚には墓地に光属性モンスターと闇属性モンスターが1体ずつ必要だが、そのどちらもモクバの墓地には揃っている。

 ただやはり、そうなるとハーゲンの伏せカードが厄介な存在になる。

 

「ここでサイクロンみたいな、伏せカードを破壊できるカードを引けていれば良いけど、そうでなかったら賭けに出ることになるわね。このデュエル、ここが山場って訳ね」

 

 ヴィヴィアンの言葉がこの状況を端的に表している。

 まさに、山場のはずだ。

 さぁ、どうなる……?

 

 

 

――つづく。




モクバのデッキは少し悩みました。
最終的には、兄である瀬人がドラゴンを象徴するブルーアイズを使っているので、モクバは剣士を象徴している(と自分が勝手に思っている)カオス・ソルジャーにしました。

魔法使いの象徴は遊戯のブラック・マジシャンなので、一応バランスは取れたかなって感じです。

さぁ、モクバは勝って海馬コーポレーションを守れるのか……?
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