IS学園一年、クラス対抗戦『リーグマッチ』当日心月は更衣室にいた。
しかし心月しかいない空間には、邪気の空気が充満していた。
「・・・・・」
心月は自分のロッカーを見て絶句する。
複数あるロッカーのうち心月のロッカーだけボロボロに破壊され、さらにはスプレー缶で『死ね』という落書きがされていた。
心月はため息をつく。こんなことをする人物には心当たりがある。
女尊男卑主義者・・・。
フェミニンを追求した男性・・・オネエである心月は女尊男卑主義者の眼からみれば
彼の存在は目障りであった。
ロッカーの被害から察するに、4人程度の犯行であることがわかった心月は、
ロッカーを開き中身を確認する。
幸い心月はロッカーにはプロテインと栄養剤しか入れておらず被害はほとんどなかった。
しかし壁には黒いマジックで心月に対する悪口が書かれていた。
「あら・・・」
『死ね!』
『消えろ!!』
『男のくせに!』
心月はこの落書きをした女に対して、怒りではなく、憎しみでもなく
ただただ、哀れみを覚えた。
「随分、幼稚なことするのね・・・」
そういうと心月はロッカーを閉め、ISスーツに着替え始める。
「美しくない・・・・本当に・・美しくない」
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選手待機室、そこにはクラス代表生の四人が待機していた。
一組代表、日本代表候補生『花崎玲奈』
二組代表、男性操縦士『篠ノ之心月』
三組代表、イギリス代表候補生『サラ・ウェルキン』
四組代表、ロシア代表候補生『更織楯無』
心月以外どこかの国の代表候補生で強者。そんな中、彼は余裕の表情を醸し出していたが内心
不安や緊張感を感じていた。
『では、今からトーナメント表の発表に移ります』
待機室のスクリーンから音声が流れ、ランダムに決められたトーナメント表が出る。
『第一アリーナにて 二組代表:篠ノ之心月 対 三組代表:サラ・ウェルキン』
『第二アリーナにて 一組代表:花崎玲奈 対 四組代表:更織楯無 』
「あーら、心月くんとの戦いは決勝までお預けね」
「まぁ・・・一回戦は心月さんですか」
「そうみたいね」
「たとえ心月さん相手でも、手加減はしませんよ。」
「あまり激しくしないでね、ネイルが剥がれちゃうから」
「それは難しい注文ですんね、まぁ努力してみます」
そう言うとサラはピットに向かった。
「ねぇ心月くん・・・決勝戦に進めるように頑張りなさい!」
楯無は心月の背中に抱きつき首に腕を回し、エールを送る。
「はいはい。」
心月はあまりのあざとさに鬱陶しさを覚え、楯無の腕を無理やり離す。
「きゃー!篠ノ之クーン!!」
「デザートのために頑張ってー!!」
「ふれーふれー篠ノ之くーん」
「あれって、篠ノ之くんの専用機?見た目変わってなし?」
数分後心月はアリーナでゴーレムを展開していた。
改造したゴーレムの初舞台、周りの観客もゴーレムのあまりの豹変ぶりに驚きの声が上がる。
「男なんかに負けるなー!」
「ウェルキンさん!あんなやつやっつけちゃって!!」
「がんばれーサラー!」
1分遅れでサラもアリーナに出る。
「まさか一回戦目で心月さんとは・・・神様はなんて残酷な運命を与えたのでしょう」
「あなた・・・専用機じゃないのね・・・」
心月は気づく。
彼女が展開していたISは試合用に彼女が装備変更の許可を得て改造した訓練機ラファール・リヴァイブであった。右手にはIS用アサルトライフル『フール』左肩には40mm連装機銃『フィーバー』とIS学園には存在しない武装だった。
「はい、残念ながら私の専用機はありません・・・ですが、私は訓練機でありながらも常にISバトルではトップの成績を有しています!それは専用機相手でも同じこと。それに このISの武装は祖国から送ってもらった特注品です・・・舐めると痛い目にあいますよ?」
「それはそれは・・・素晴らしいわね、ぞくぞくしちゃう」
「私のナイトであろうと私が祖国の名を背負っている以上手加減はできません・・・ネイルのこと、今のうちに謝ります。」
「・・・・・・」
互いに武器を構える。アリーナに静かな風が吹き抜ける・・・
『では試合開始!!』
ビーーーーーーーーーー!!
風がやんだ瞬間、ブザーがアリーナに響き渡る。
「!!」
先制攻撃はサラだった
「・・・・・は!」
40mm連装機銃を心月に向けて打つ。
心月はギリギリ躱しながら、肩からビーム砲を撃ち返す。
サラも同じくギリギリのところで躱しアサルトライフルを撃つ。
さすがに心月も躱しきれず巨大な手のひらを盾にし防ぐ。
「っく、早いわね!」
「いつまで守ってられますかね!」
「・・・!」
攻撃を受けながらも、心月は月光にエネルギーチャージを開始する。
それにサラは気づいたのか、攻撃をやめ、不規則に飛行し心月の照準をくらませる。
「っく!!」
「どうしました?心月さんはこの程度でしたか?」
不規則に飛びながらもサラは40mm連装機銃を連射をし、確実に心月に当てる・・・。
「っぐ!?・・・・いえ・・・まだまだよ」
「そう・・・では私も本気をだします!」
そういうとサラは40mm連装機銃を粒子化し別の武器を展開する。
その武器を見て心月は焦る・・・それは200mm榴弾砲『シルバー・ドラゴン』だった。
「シルバー・ドラゴン・・・っく!!」
「食らいなさい!」
ドン!!
サラは心月に向けて一発撃つ。その放たれた衝撃音はアリーナに響き渡る。
心月は砲口を見た瞬間シャージしたフルパワーのビーム砲を撃ったため互いに攻撃が激突する。
ドガガガガガガ、ッドガァァアアア!!!
榴弾砲はビーム攻撃により大爆発する。アリーナには強烈な爆音が轟く。
その迫力はその場にいる全員が息を飲んだ。
「やりますね・・・」
「っく、今度はこっちの番よ!」
心月は肩のビーム砲を連射し、発射によって動けなくなったサラに向けて光る雨を降らせる。
何発かは食らうものの、攻撃をある程度かわしながら、アサルトライフルで迎え撃つ。
「っく・・!?」
(さすが代表候補生)
心月は数発の弾丸を浴びてしまう。
そのように違い譲らない戦いをする中、数分後試合はサラの方が優勢になっていく。
(っく、まずいわ)
なぜならゴーレムのエネルギー量が少なくなっているのだ。
ビーム砲はエネルギーを大量に使う、その弱点を補う能力もあるが、サラの武装ではその効果を発揮できなかった。
「攻撃の数が減っていますね・・・私の思ったとうり・・・」
「・・・・・!」
心月のピンチにサラも気づく。
サラ自身このような状況を持っており、全てはサラの計算通りだった。
「心月さんのISはエネルギーを大量に消費する機体・・・そのため貴方の武器にはあらかじめエネルギー攻撃を吸収する能力が備わってしますよね?つまり・・・」
「なるほど、あなたがエネルギー系武器を装備していない理由がわかったわ。やるじゃない」
そう、心月の多目的エネルギー砲『月光二式』はISエネルギーを大量に消費するだ。そのため、弱点を補うために月光の腕には相手のエネルギー系の攻撃を吸収し自分のエネルギーに転換する機能が備わっていた。しかしサラは実弾系の武器しか装備していない。
つまり試合が始まった時から心月は不利の状況にあったのだ。
心月の専用機について調べ尽くした上で作戦を立て、訓練機でありながらでも試合を有利に持ち込む。これこそイギリス代表候補生『サラ・ウェルキン』の戦い方であった。
心月は彼女を甘く見ていたことに、後悔する。
(たしかに機体エネルギーが残り少ない・・・ビームは使えない・・・だったら!)
「ありがとうございます。・・・ではそろそろ地獄へ突き落とします!!」
「・・・っは!」
心月はスラスターの出力を上げサラから逃げるように距離を置く。
「待ちなさい!!」
サラもその後を追う。
「月光二式、エネルギー圧縮解放・・『月面舞踊(ムーン・ダンス)』」
心月は月光のエネルギーの蓄積されたエネルギー機体に流す。
その瞬間スラスターの今まで以上に出力が上る。
この『月面舞踊(ムーン・ダンス)』という技は心月が編み出した最終手段だった。
(動きが早くなった!?)
ゴーレムの姿勢制御用のスラスターを生かし、逃げながらも後ろを向き
右腕のビーム砲を撃ち距離をより離す。
「っく!? やりますわね・・・でも・・・きゃ!?」
攻撃を躱し少しバランスが崩れたサラに、さらに猛攻撃が襲う。
「おしゃべりしている暇わないわ・・・」
瞬間、ゴーレムのスラスターは勢いよく逆噴射し、左腕の拳を一気にサラに打ち込む。
ガン!!
「・・!?」
サラは急ブレーキすることができずそのまま振りかぶったゴーレムの拳に激突する。
「っぐは?!」
そしてそのまま彼女を巨大な手で掴み、右腕に圧縮エネルギーをチャージしそのままパンチとともに打ち出す『エネルギーナックル』を腹部に食らわせた。
「はぁあああ!!!」
ッガッコン!!
「っげはぁあ!!」
まともに腹部に食らったサラはそのまま勢いよく地面に激突する。
「ぐぅぅうう・・・・やりましたね・・・心月さん!!」
アリーナの監視室、そこには複数の教師と上級生がISバトルの審判と学園内の監視を行っていた。
千冬と山田は第一アリーナで行われている心月たちの試合の様子を見ていた。
「し・・・心月くん、女性相手でも手加減ありませんね・・・」
少女相手に思いっきりぶん殴った心月に若干引く山田。
「あいつは、誰であろうと手加減はしないやつだからな」
「しかし、心月くん急に接近戦に持ち込みましたね、機動性もスピードも上がっていますし・・・」
「何を細工したか武器に蓄積されている圧縮エネルギーを機体全体に回したんだろう・・・・。ビームの威力は落ちるが、ゴーレムのエネルギー量は全ISの中でもトップクラス、機動性、速度の向上もかなりのものだろう。まったく考えたものだ。」
巨大化された腕には、圧縮されたエネルギーを貯めており、高出力ビームを撃てるのもこのためであった。ちなみに腕が巨大化したのはエネルギー貯蔵量が多いことと圧縮装置が巨大だからである。心月はその圧縮し貯蔵されたエネルギーを機体全体に流すことによりスペックアップを図ったのだ。
しかしそれはリスクを伴うものだった。
「へー、そんな方法を思いつくなんて・・・」
「しかし、あれは長くは持たん・・・」
「え?」
「く・・・時間がないわね」
シュー・・・
ゴーレムから煙が出る。
そう、月面舞踊には機体自体にダメージを負ってしまうリスクがある。
「!!隙ありです!」
サラは心月のわずかの隙を見つけて右肩に40mm連装機銃を展開し連射する。
「っく!!」
心月はギリギリ躱すが機体の煙は勢いを増す。
(っく・・・SEが)
機体のエネルギー流出を止めないかぎりSEは減少し続ける。
「あれは・・・オーバーヒート?」
その様子を見ていた山田が言う
「そうだ。そもそもあの機体は、武器のエネルギーを機体に回すことを想定していない・・・あまりのエネルギー量にIS自体がオーバーヒートをしダメージを負ってしまう。」
サラもその煙の正体がオーバーヒートだと気づき
そのままアサルトライフルを連射する。
「策士策に溺れるとはまさにこのことです!」
「っぐ・・・だったらこれでどうかしら」
ビームを地面に撃ち土煙と爆煙を起こす。
「っく・・・小癪なまねを・・・」
サラが煙の中から出ようとした瞬間何かに縛られ動けなくなる。
ギューイン!!
「!?、これは・・・」
細い何かに機体を縛られる・・・サラはその正体に気づく。
「ワイヤー!?」
「はぁぁああああ!!!」
そう、それはゴーレムの腰につながれていたIS用追加装備のワイヤーだった。
煙の中からワイヤーをたどり、心月は強力なパンチをサラに食らわせる。
サラの機体は金属音の悲鳴を上げ、SEが一気に削れる
「っきゃ!?」
しかし心月の攻撃は終わらない。
サラは吹き飛ばされるが、ワイヤーを引っ張り、無理やり強引に接近させ、もう一撃食らわせる。
「っがは!?」
さらにもう一撃
それはまるで玩具のヨーヨーのようだった。
「ぐっへ!?」
「ま、だ、わ、よ!!」
再びワイヤーを引っ張り、心月はエネルギーナックルの最大出力を彼女の頬に打ち付ける。
「っがぁあああああ!!?」
あまりの威力に絶対防御が発動し、ワイヤーが切る。そのままサラは勢いよくアリーナの端まで吹き飛び、観客席を守るシールドに叩きつけられ、地面に落ちてしまう。
「冷却!流出停止。」
エネルギーの流出を止め熱くなった機体に冷却作業をする。
パーツの隙間、装甲の隙間から機関車のように水蒸気が噴射される。
「ふぅ・・・」
相手も自分も残りのSEは少ない。
決着をつけるために心月は月光のエネルギーチャージをする。
「っくぅぅう・・まだよ・・・」
「まだ終わってないわ!!」
土煙の中心月にターゲットをロックオンし、200mm榴弾砲を向ける。
「食らいなさい!!」
「!!」
心月ISに警告反応が出る。
それに気づく前にサラは榴弾を心月に向けて打ち込んだ。
しかし、心月はその榴弾をギリギリで躱す。
「え!?嘘!?」
サラが驚愕する。それも当然だ、音速をも超える榴弾をあんなにあっさり躱すことなど不可能なはず。
しかし心月はそれをやってのけてしまったのだ
「トドメよ!!」
心月はエネルギーナックルの最大出力をサラに向けて打ち込む。
「あぁ・・・・」
『試合終了勝者:篠ノ之心月』
「はぁー・・心月さん・・・お見事ですわ・・・どうして、あの距離から・・・」
サラはISが強制解除され、その場に座り込む。
「あなたは喋りすぎよ・・・榴弾砲を構え『食らいなさい』って言った0.55秒に攻撃が来る。それは最初の榴弾砲の砲撃で分かったわ。それを踏まえて、私は自分の居場所と砲口からの弾道を予測し自分の反射速度を計算した上で、瞬時に回避行動を実行することができたのよ。」
心月は、サラの前に着陸をしISを解除する。
「さ・・・さすがです。まさかそこまで」
「でも、私もまだまだよ・・・あなたが訓練機だから訓練機用の作戦を立ててきたけど、まさか武装を変えてくるなんて予想外だし、それにあなたもあなたで私の戦略を考え実行し作戦はほぼ成功だった・・・さすが代表候補生ね」
「でも、その作戦を破った心月さんは・・・もっともっとすごいです・・・さすが、私のナイト!」
サラは心月の元まで駆け寄り、そのまま彼の胸へ飛びこむ。
「え!?」
「・・・私の完敗です、おめでとうございます心月さん・・・これは私からのプレゼントです。」
チュ
サラは心月の頬に口ずけをする。
その瞬間会場は、ざわめきだす。
「きゃー、キスした!」
「いいな!私も心月くんにキスしたい」
「サラちゃんだいた〜ん!」
心月は今起こった出来事に、困惑の表情をする。
「あ・・・あのねサラちゃんこういううのは、私じゃなくてもっと男らしい人に・・・」
「ただ男らしいじゃダメです・・・心月さんのように美しい殿方でないと私はなびきません」
心月はサラから発せられる憧れのオーラに頭をかかえる。
が彼自身まんざらでもなかった。
『おい、いつまでそこにいる!さっさとピットの戻れ!』
スピーカーから千冬の声が響き渡り、二人はそれぞれ待機室へ向かった。
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「〜♪」
京都のどこかにある高級レストラン。
そこに一人の女性が現れた。
「ご予約は?」
「待ち合わせをしている。レベッカだ」
「お待ちしておりました。こちらへ」
女性は店員に連れられ、高級レストランでもVIPしか立ち入ることのできない
個室へと案内される。
そこにはもう一人の女性が食事をしていた。
「・・・・誰かと思えば、あんたかスコール」
「ええ・・・久しぶりね」
「私をこんなかたぐるしい所に呼んで・・・いったい何の用だ?」
女性はスコールの正面の席に座り、店員に食事を注文する。
「貴方に・・・殺してもらいたい人がいるわ・・・殺し屋のペイル・レベッカさん」
「・・・ほう、かの『ファントムタスク』が私に頼るなんて・・・今日は嵐か?」
謎の組織ファントムタスクの幹部であるスコールは胸元から一枚の写真を出す。
そこにはIS学園で有名な初の男性IS操縦士『篠ノ之心月』とその横、ロシアの代表候補生の『更織楯無』
がツーショットで写っていた。
「この娘よ・・・」
スコールは楯無を指す。
「こいつは・・・・おいおいおい、更織家の当主さんじゃねぇか」
「そうよ、こいつは私たちの目的の障害になっているから早めに排除して欲しいの。貴女ならできるでしょ?」
「・・・・・・まぁできないことはないが、その後のリスクが高すぎる」
「後のことは私たちが保護するわ。それと・・・これを」
スコールは指ぱっちんをし、扉の奥から同じファントムタスクの隊員を呼び出す。
彼の手にはアタッシュケースが握られており、それを開け、レベッカに見せる。
「!?こいつは・・・いったいどこで」
そこにあったのは腕輪型のISの待機状態だった。
「私たちが鹵獲したやつよ・・・元代表生の貴女なら扱いやすいんじゃない?」
「へへ・・・まさかこいつに再会できるとはなぁ」
「報酬も貴女が望む額を出すわ・・・いかがかしら?」
「あぁいいぜ・・・ぶっ殺しってやるよ、金用意して待ってな!!」
「期待しているわ・・・」
レベッカは食事を取らずレストランを出る。
そこに一人残されたスコールは再び食事を始めポツリと呟く。
「・・・・・必ず貴方を手に入れるわ・・・・『篠ノ之心月』さん」
その日、京都には不気味な風が流れた。
もう一つの小説があまりにも鬱展開だったので気分転換でこっちを書いています。