Fate/Shadow Lie   作:むっすー

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Side by ロラン・マルフォレイ

~ロラン・マルフォレイside~

 

 ――もしも。

 もしも万能の願望器なんてものがあるならば、彼は何を願っただろうか。

「……技術と知識」

 何度自身に問うても、導き出される答えはそれだけだった。

 そんなものどの魔術師だって欲している。彼の欲だけが人一倍強いという訳でもない。

 彼はただの普通の魔術師だ。

 モノ作りの好きな魔術師だ。

 それに要する知識と技術は、欲しても欲しても満たされない。

 そんな飽くなき欲望。

 彼の中にはそれしかない。

 なのに、どうして?

 どうして僕なんかに、令呪なんてものが現れてしまったのだろう……?

 左手にくっきりと浮き出たそれは、見紛うことなく令呪であった。

 混乱した。それはもう混乱した。プラモデルを作っていてトレードマークたるアンテナ部分をニッパーで両断してしまったり、卵を割ったあと中身を三角コーナーにイントゥしたり、帰宅して脱いだ靴下を冷蔵庫にシュートしたりするくらいには混乱していた。

 何を思ったか頭だけ炬燵に突っ込んだまま眠ってしまったり、、トイレの蓋を閉めてから座ったり、河原で電話をしていて石を投げるつもりが携帯電話の方を投げてしまったりするくらいには動揺していた。

 嫌だったわけではない。寧ろ嬉々とした。だからこそ理解できなかったのだ。

 僕なんかが選ばれていいのか、と。

 けれど、なし崩しに準備を進める中で徐々に頭は冷えてきた。

 過程はどうあれ、今彼には令呪が宿っている。

 それは変えようも無い事実。

 すなわち、聖杯戦争への参加権があるということなのだ。

 ならば参加しよう。

 奇跡の魔術礼装、万能の願望器を手に入れるチャンス。そんなもの人生に二度とない機会なのだから。

「――まあ、僕正直聖杯自体には興味ないんだけどねー」

「ええっ!? それどういう――うわっちち! 熱い熱い!」

「……こぼしたお茶は拭いといてよ」

 ガリガリとヤスリがけの手は止めないまま、ロラン・マルフォレイは呆れ混じりにそう呟く。

 そう、彼には聖杯を求める確固たる理由が無かった。

 先述の通り、彼が強いて求めるものは技術と知識。だがそれは、決して安易に手に入れていいものではない。

 無論、ある程度先天的な資質や才能があるのは仕方のないことだ。代を重ねた血筋が優秀という事も、魔術師の界隈では揺るぎない法則である。

 その恩恵が少ないからこそ、後天的な力は己が実力を持って手に入れる必要があるのだと。

 自身の研究の果てに手に入れるからこそ、それらには意味があるのだと。

 結果も勿論大事だが、そこに至る過程もまた重要なのであると。

 ならば彼は何を思って聖杯戦争に望んだのか。

 それも『過程』なのだ。

 7体のサーヴァントと7人のマスターによる殺し合い。その極限の中で無ければ見出せないモノもあろう。

 つまり彼は、1つの大きな経験として聖杯戦争に臨むのだ。

 無論それがとんでもなく馬鹿なことなのだろうとは思っていた。親父に言ったら殺されるだろう。

 けれど、彼はその道を選んだ。

 だから後悔などない。寧ろ期待が膨らむ。

 他のサーヴァントの宝具、他のマスターの礼装や術式、全てに興味があった。

 経験に勝る糧は無い。それがロランの信条であった。

 そもそもこうして日本にいる事だって、色々な経験を積むためなのだから。

「ちょっとマスター! 聖杯に興味が無いってどういうこと!?」

 ふいに正面から可愛らしい怒鳴り声が聞こえる。ヤスリがけの手を止めて顔を上げると、そこには本気で焦燥した美しい顔があった。近い。

 ……まあ、こいつとの出会いもまた経験だなと回想する。

 

 

 時を遡ること2日前。

 ロランの拠点は都市部の片隅にあった。

 何の変哲も無い二階建てベランダ庭付きのちょっと豪華な家だ。知り合いのツテで安く手に入れた物件である。

 普通に生活する分には何一つ不自由しない。そして最大の見所は地下にある。

 いい具合に魔力のたまった地下室。さらにその土地は霊地としても悪くない。彼の研究と作業にはもってこいの場所だった。

 ロラン・マルフォレイという人物にはこれといった特徴が無い。

 髪型は短髪で、色は天然のブロンド。瞳は碧眼。生粋の外国人である。

 身長だって平均くらいだし、肉付きも言うほど無い。

 錬金術の流れを汲む家系に生まれ、生育過程に置いてこれといった事件も無く、成人式も迎えた現在二十歳で彼女なし。

 平々凡々。

 そんなことを気にする様子も無いのが彼らしいといえば彼らしいが。

 その日は前々からサーヴァントの召喚を行う日と決めていた。

 召喚用の触媒も、手配通りどうにか手に入った。

 黒い角笛の破片。

 上手くいけば彼が召喚できるはずだ。

 数々の道具を有し、戦場を駆け抜けたかの騎士が。

 そして深夜、召喚の儀式は決行された。

「抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ――!」

 ぽけっとしつつもしっかり者のロランは、なんの滞りもなく召喚の儀式を終了させた。

 その体にかかる負荷さえ全く気にした様子もなく。聖杯はサーヴァントを招いた。

 魔方陣から迸る圧倒的な輝き。期待に胸躍らせ、ロランはかたどられて行くその人影を凝視し続けた。

 彼が、来る。

 シャルルマーニュ12勇士が1人、美貌の騎士アストルフォ――!

 魔獣ヒッポグリフォを乗り回し、数々の道具を活用して勝利をもたらした英雄。

 ロランの狙った英霊が。

 やがて光は収束し――召喚された英霊の全貌が明らかになる。

 身長はそう高くも無い。白い外套の内側に収まる体躯はどちらかというと細い。黒いものを着ているからだろうか。

 腰には様々な道具が下がっており、触媒として使用したもののオリジナルであろう角笛もうかがえた。

 ここまでならば、まあアストルフォといってもそうかと頷ける。

 だが、これはどういうことだ?

 イメージと違ったとか言う次元じゃない。

 文字通りロランは言葉を失っていた。

 そんなことはお構いなく、目の前の『美少女』は快活な笑顔で言うのだった。

「キミが、ボクのマスター?」

 声音も高く、まあ所々に見受けるそれっぽい紋章などから察するに騎士ではあるのだろうが、やはり『少年』の色が濃く、しかし出で立ち全てを総合してみると、それはどう足掻いても『美少女』なのだ。

 頭には黒い髪飾りがついていて、編んで纏められた桃色の長い髪は背中へと垂れている。

 スラリと脚は長い。ええっと、なんだっけ、なんていうのあれ、膝上のソックスを上から吊るやつ、ガースーベルト? 違う、それではどこぞの年末特番ではないか。

 それに短いスカートのように見えるけれどアレはスカートなのか? どういうことなんだ?

 名称も思い出せないまま、ロランは再び困惑する。

 顔立ちは美しい。確かに美貌だ。美貌の騎士の名に相違は無かった。

 しかし、それにしたって、これは……これは、どういうことだ。

 ロランは心中で叫んだ。

「……? マスター、だよね?」

 再び問いかけられ、ロランはハッと気を取り戻す。

「あ、ああ、そうだ。僕がお前を召喚、したんだが……ええっと、待って、確認させてくれ、お前はライダーのサーヴァント、アストルフォで間違いない?」

 そう言うロランの心中はとても複雑だった。

 YESと言って欲しいけれど、どこかで否定して欲しくもあった。

 彼の中にも、召喚する英霊のイメージというものはあったから。

 もっとこう、思わず憧れてしまうようなオーラを纏った美青年を期待していたのだ。

 違うといわれて、「ですよねー」という返答をする未来を手繰り寄せようとするが、

「いかにも! ボクはシャルルマーニュ12勇士が1人、アストルフォ! 此度の聖杯戦争、ライダーのクラスで召喚に応じたよ」

「ですよねー」

 台詞以外の未来は変えられそうも無かった。

「さて、契約完了だね……どうしたの? マスター、なんか顔色悪いような」

「ああ、うん、その、思い違いというかなんと言うか、カルチャーショックじゃなくてジェネレーションギャップじゃなくて、ええっとなんていうか……」

 あたふたするロランをライダーは怪訝そうな顔でうかがう。

 そこで初めて、彼は己がサーヴァントの目を正面から見た。

 ……先ほど、彼に彼女がいないと紹介したが。

 付け加えるならば「いたこともない」のだ。

 要は女性経験皆無なわけである。

 幼い頃から人と遊ぶより自分のことを優先する人間だったロランは、そもそも同性はもとより異性とこうして間近で話したことなど数えるほどしかないのだ。

 そんな彼にとって、このサーヴァントは上級者向けすぎた。

 初めて合わせたアストルフォの瞳は、ただ純粋だった。

 純粋に綺麗だなと、ロランは思った。

(だ、駄目だ駄目だ、何考えてるんだ僕は。頭を冷やせ、こいつはサーヴァントなんだ……!)

 そう自分を叱咤するも、やはり情けないとは思いながら、彼は顔に血が上っていくのを止める事ができなかった。

「青かった顔が赤くなってく……熱でもあるの? マスター」

 そんなロランのウブは心情などつゆ知らず、ライダーはロランに近寄り前髪をかきあげて額と額をくっつけた。

 …………。

 はは、笑うがいいさ。

 二十歳にもなってその反応かよだっせえと笑うがいいさ。

 指差して腹抱えて爆笑するがいいさ。

 だって動けないんだよ仕方無いだろう。

 突然現れた美少女がおでこくっつけて「熱があるの?」とかどこの出来の悪い作り話だ、くそったれ。

 誰にでもなくロランは心中でそう開き直る。

 彼はゼロ距離まで迫ったライダーの顔から目をそらすのに必至だった。

 心臓がバクバクとうるさい。そのくせ肺はなんだか仕事をしていない。

 まさか自分のサーヴァントに可愛いなんて感情を抱くとは思っても見なかった……なんとなく恥ずかしい気持ちになる。

 無意識的に求めたか、あるいは距離故の不可抗力か、タイミング悪く嗅覚がライダーを捉える。

 ああ、女の子っていい匂いがするんだなあ。

 頭が麻痺するという感覚を、ロランは今になって思い知った。

「うーん、熱は無いよね……一体どうしたの?」

 それでも本気で気遣ってくれているらしいライダー。言えるもんか、お前が可愛くて死にそうだったなどと死んでも言えるもんか。

 召喚したてということもあるのだろう、心の内が相手に伝わっていないのが何よりの救いだった。

「あ、う、その、あれじゃないかな召喚で魔力使って疲れてるとかそういう類のそれ的なあれでございましょうよ?」

「マスター、日本語狂ってるよ?」

 異国のサーヴァントに日本語を正されるなどと誰が想像しただろうか。はたして、この経験も立派な糧なのだろうか。

「と、とりあえず召喚は上手くいったみたいだし、よしそうだな、僕は寝るとするよ……」

 一刻も早くこの状況、具体的にはライダーから離れなければ。離れて落ち着かなければ。きっと慣れるさ、そうさきっと慣れる。人間ってそういう生き物。

 きっとこのサーヴァントなら献身的なようだし大丈夫わかってくれる……!

「えー、マスター寝ちゃうの? もっとお話しようよ、色々と!」

 しかしそう上手く世の中は回ってはくれない。あろうことか12勇士と名高い美貌のお調子者はマスターの睡眠を許さなかった。

「え? いや、ほら、僕眠いし、0時回ってるし……」

「じゃあ今日は徹夜だね!」

「なぜじゃあに繋がった!? しかも召喚直後に貫徹とか僕を殺す気か!?」

「大丈夫だよ、ボクがずっと傍にいるから」

「そういう類の発言は今はやめてくれ寿命が縮まる!」

「どんな敵が来ても、ボクは絶対にマスターを守るから!」

「いやそりゃ嬉しいけども、まださすがに襲ってはこないだろうからほら大丈夫だから」

「あ、そうだ! 密着していればいつでも身を挺して守ることが出来るよね!」

「はわっ!?」

 我ながら情けない悲鳴じみた絶叫だったと思う。

 ライダーに抱きつかれた。

 いや、さすがに密着のくだりは本人も冗談なのだろうけれど。

 抱きついてきたのも軽いスキンシップのつもりなのだろうけれど。

 それこそ冗談じゃない、と言いたい。

 背中に回された手とライダーの細い体に挟まれて、ロランは意識が途切れていくのを感じた。

 ああ、でも。

 柔らかいや。

 

 

 時間軸は1日進み、次の日の朝。

 ロランはいつもと同じ目覚ましの音で目が覚めた。

「……? あれ、ここは……」

「あ、気がついた? おはよう、マスター」

 声のするほうに目を向ける。すぐ右隣だ。

 ロランはベッドではなく敷き布団での睡眠が好きだった。

 だから居間兼寝床は畳だし、今彼が寝ている場所もいつも通りの布団の中だ。

 右隣にくるりと首を向けると、そこにはこちらをのぞき込むライダーの顔があった。

 ワリと近い。

 ……。

 …………。

 ………………。

「ほわっつ!?」

 理解してロランは飛び起きる。

「な、なななな、ララライダー!? 何してんだお前はこんなところで朝っぱらから!?」

「今現状だけを言うなら、マスターの寝顔鑑賞。結構可愛い顔してるね、マスター」

 爽やかな笑顔でライダーはそう言った。

 朝からライダーに殺されかかっています、どうもロラン・マルフォレイです。

「一応いきさつを説明すると、昨日マスター急に気絶しちゃったから、ああ疲れてるんだなと思って。部屋に来て見たら、布団っていうのかな? これが敷いてあったから、ああここで寝るのかと思って横にしたんだけど……」

「あ? あ、そうか、昨日……」

 落ち着きを取り戻しつつある思考が数時間前の事件の記憶を呼び起こす。

 ……召喚の疲れもあるとはいえ、しかし気絶するってどういうことだよ。

「ここまで運んでくれたのか。それはすまんな、ありがとう。ライダー」

「いえいえ、マスターの為にボクはここにいるんだから。お礼は寝顔で十分だよ」

 ははは、とロランは軽く笑う。

 幾分落ち着きを取り戻せてはいるようだ。

 まともに話せるようになったところで、ロランは特に意図もなく口を開く。

「もう勘弁して欲しいけどね……いやしかし、驚いたよ、ライダー」

「何が?」

「いやほら、まさかシャルルマーニュ12勇士が1人、美貌の騎士アストルフォが、こんな美少女だったとは思わなくてね」

 すると不思議なことが起こった。

 序急破で説明しよう。

 まずは序。

 当の本人はきょとんとしていた。

 続けて急。

 わなわなと少し震えだし、心なし顔が朱を帯び始めた。

 そして破。

 叫んだ。

「――ボクは……男だああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」

 

 

 そして時間軸は現在へと舞い戻る。

 昨日は色々とあったが、まあ語るまでのことでもない。

 というか個人的に思い出すとまた心臓に重労働を強いることになる。

 ともかく、ちゃんとアストルフォは男性らしい。ロランようやく普段の自分を取り戻しつつあった。

「だから、言葉通りだよ。聖杯自体にそんなに興味は無いんだ」

「え? え? 待ってよ、じゃあなんで? なんでボクは呼ばれたの?」

「なんでって、聖杯戦争に参加するからに決まってるじゃないか。僕はお前を愛でるためだけにお前を召喚したわけじゃないよ」

「誰もそんなこと思ってないよ! ……ま、まあ、マスターがどうしてもって、言うなら、その……別に、そういうのもいいけど……」

「はぁっ!?」

 思わずロランは素っ頓狂な声を上げてしまう。

 当のライダーは顔を赤らめて上目遣いでロランを見る。無論美少女と見紛う容姿をもっての攻撃だ、破壊力は抜群である。

 本気のようにも見えるが、さすがに冗談だろう。冗談であれ。頼む。

 ……かくいう自分も、そういうのも満更ではないかもしれないとか思ってしまった。これは秘密にして墓まで持っていくことにした。

 そもそも女の子に見えてしまうような格好をしていたのも、生前親族や身内からそういう風に遊ばれていたから、というものらしいが。

 だからって召喚に応じる際の格好もそれを引き継ぐとは……本人も案外そういう願望があるのかもしれない。

 ともあれ、ロランはアストルフォのとんでもない一面を垣間見てしまった気がした。

「ま、まあ、それはいいとして。聖杯自体にそこまでの興味はないけど、僕は聖杯戦争そのものに興味があるんだよ」

「そのものに……?」

「そう。7体のサーヴァントと7人のマスターの殺し合いともなれば、みんなそれぞれ宝具とか礼装とか持ってるよね。僕はそれらが見たいんだ。アイデアとしてもそうだし、そこから閃くものがあるかもしれないし。それ以上に、魔術師同士、英霊同士の戦いそれ自体稀有な事態だからね。それに、甘い考えだろうけど、聖杯戦争に参加っていう『経験』はすごい大きな糧になると思うから」

 だからお前が必要なんだよ。

 ロランは言い切った。

「なるほど……そういえば、マスターはモノ作りが得意なんだっけ」

「得意っていうか好きっていうか、まあまだ上手ではないけどね」

 そもそも彼の家系はそういった分野に重きを置いて研究を重ねてきたのだ。

 魔術で物を作る。

 錬金術の流れを汲んだ系統。

 それがマルフォレイ家なのだから。

「そういえば、ライダー。お前はどうなの?」

「え、ボク?」

「そう。召喚に応じたってことは、お前も願いがあったんだろう? それはやっぱり知っておきたいんだけど」

 聖杯を求める理由は、マスターとサーヴァントともに知っておく必要があるだろう。そういった小さなすれ違いが命取りとなる可能性もあるのだ。

 するとライダーは困ったように頬をかいた。

「いやー、その。なんていうか。ボクもこれといった願いは、ないんだけど……」

「……お前人の事言えないぞ」

「う、うるさいなあ!」

 顔を赤くして誤魔化すライダー。この赤はさすがに本気の赤だろう。可愛く見えてしまったが、ロランはすぐに頭に冷や水をかけた。

「……楽しそう、だったから」

 だがライダーの口をついて出たのは、予想外の言葉だった。

「へ?」

「だから、その……楽しそうだったから」

「……まあ、そうか。アストルフォってそういう性格だったね、そういえば」

 思わず閉口しかけたところで思い出し、ロランは納得する。

 冒険好きのトラブルメーカー、どこにでも顔を出すお調子者。悪事という概念無く好き放題暴れまわるが、最悪の事態には踏み込まない。

 そういった彼の性格的特長を考えれば、楽しそうだったからというのはしっかりと理由になっているではないか。

「でも! でも、マスターが聖杯に興味が無くても、ボクは絶対にマスターに聖杯をあげるから……全力で頑張るから」

 それが、ライダーとしてのボクの役割だから。

 ……まだ召喚して3日目だが、ライダーの真剣な眼差しは、初めてみたかもしれない。

 純粋で真っ直ぐ。騎士だからというのもあるのかもしれないが、ロランにはそれが彼の本質なのだろうと思えた。

 だから、その瞳を見返し、笑顔で応ずる。

「ああ、頑張ろうな、ライダー」

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