今日、夢を見た
もう2度と叶わない夢だ
広大なフィールドを駆け抜けこちらのチームと相手のチーム、全力で互いを叩き潰す。夢の中とは思えない程の緊張感、そして高揚感を感じる。主砲の照準を敵の車両にぴたりとを合わせ全身と辺りの空気を震わせ主砲を放ち着弾を待つ。そして、相手に着弾するその瞬間にその夢は儚く終わってしまったのだった……
意識がハッキリしてくる。私が居るのは暗く閉ざされた整備場。もうこの場所に来てから20年は経とうとしているのか。あの頃に大地を踏みしめていた履帯は千切れ、もう動かすのは不可能だろう。敵に向かって砲弾を送り出していた主砲には山の様に埃がつもり、砲塔基部の旋回装置は所々錆び付き旋回が困難な状態になってしまっている。こんな状態ではもう2度と叶わないであろうが20年経っても捨てきれない想い。もう一度で良いから走りたい、あんな夢を見た後だったからかいつも以上に強く思う。
その夢を見てから数日が経過した。今日はやけに騒がしい。いつもはこの整備場には誰も来ない。用が無いのなら当然であろう。それが今日は…10人、いやそれ以上いるだろうか、ここ20年で一番人が集まっている気がする。チーム分けでもしているのだろうか、暫くざわついた後にゆっくりと扉が開き一筋の光が差し込む。久しぶりの光だ、以前も感じてはいたはずだがやはり眩しく感じる。その向こうには大勢の少女達。私を見て何と言うだろうか、そう思っていると少しずつ内容が聞こえてくる。しかしその内容は…散々たるものだった。ボロい、錆だらけ、侘び寂び…最後の一つを除いては(いや、最後の一つも含むか)やはり戦車としては言われたくない言葉である。しかしそもそも私がこの様になったのは20余年間手入れを全く受けれなかった、つまりこうなったのは私では無く怠ったそちら側にも責任があるのではないだろうか。いくら強力な主砲を積もうが、或いは強固な装甲を積もうが戦車は自分自身でそれらは出来ない。使う人間がしなければならない。整備もまた然りである。それをせずにここまで言うか…等と考えてしまう。
そんな中1人の少女が前に出てそっと私の履帯に触れる。そして安堵したように告げた。
「装甲も転輪も大丈夫そう。これでいけるかも」
彼女がそう告げると辺りの少女達がわあっ、と歓声を上げた…
これが私……IV号戦車D型と大洗女子学園戦車道チームの隊長、西住みほとの出会いだった
今回からハーメルンにて小説を投稿させていただくさんPと申します。今回投稿した第一話…短い(笑)自分でも分かっているのですが戦車がアニメの一話で出てくるのも短いのでご容赦下さい。次回はオリジナルのシーンを入れつつ…みたいに書きたいと思っておりますので多分長いです。それではまた次回