「は…はっきゅん?…わしがか?」
それが磯部嬢の言葉を受けたわしが放った最初の言葉だった。隣で二階建てがそこに突っ込むのかよ⁉︎と言っているが今は二階建てに構うどころでは無い。
「うん。八九式中戦車、略してはっきゅん!」
「なるほど…ってそうじゃなくて、お主…わしの声が聞こえるのか?」
「うん…気付いたら聞こえてた感じなんだけど」
「全く珍しいことがあるものじゃのぅ…」
戦車と喋れる人間など知る限りでは1人もいない。二十数年間放置される前に戦車道に参加していた頃も聞いたことは…いや、1人いたかもしれない。確か名は…
「ところでさ、はっきゅんがさっき言ってた二階建てって?」
深く考え込む前に磯部嬢が再び話しかけてくる。
「ああ…あれはな」
「俺のことだろうな、なあ爺さん?」
「じゃろうな」
「もしかして…ウサギさんチームの…」
「そういうこった。よろしく頼むな、嬢ちゃん」
「こちらこそ!」
僅かだが二階建ての声のトーンが高い。まあ人間と話すのは初めてのことじゃろうし仕方あるまい。
「ところで磯部嬢」
「どうしたの、はっきゅん?」
「辺りは真っ暗じゃが…時間は大丈夫なんじゃろうか?」
磯部嬢が来た時の時間から考えてもう12時近いだろう。この時間に外出しているのが風紀委員にバレたら色々と面倒な事になるだろう。
「しまった!はっきゅん時間分かる?」
「あいにく時計は無いからのぅ…月の位置から見て23時…いや24時近いのう」
「これから帰るとすると…風紀委員の夜間警備の目を盗んで、って事になるな。かなり面倒だな」
「うわぁ…はっきゅんどうしよう…」
「ならわしの中で寝ていくと良い。日の出前に起こせばなんとかなるじゃろうて」
「俺の中の方が広いし良いんじゃないか?」
「二階建て、今は口を出すタイミングじゃなかろうて。どうする磯部嬢?」
「じゃあはっきゅんの言葉に甘えさせてもらうね。リーさんはまた今度、かな」
「俺の方が火力も装甲もあるのに…」
「あはは…それじゃおやすみ!」
そう言うと彼女はわしの車内に入っていき、車長用の席に腰をかけると直ぐに眠りについた。こんな時間だから当たり前のことだろう。そう言えば人を入れた状態で夜を越すなどノモンハン以来だろうか。わしもそろそろ寝たいが磯部嬢を起こさなくてはならんし…そうだ
「二階建て、今晩は徹夜で頼む」
「はぁ⁉︎何で俺がそんなこと…」
「磯部嬢の為じゃ、3時頃になったら起こしてくれ。ではおやすみ」
こうして学園艦の夜は更けていくのだった…
どうだったでしょうか?もう一度日常回を挟んでその次からはいよいよ全国大会編にしようかと考えています。それともう1人の喋れる人に関して案を活動報告にて募集しています(作者が優柔不断極まりないため)。よろしければそちらもよろしくお願いします。それではまた次回