蒼の彼方のフォーリズム 速さより技でしょ!   作:rockless

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これからに必要なこと

「合宿ですか?また?」

 

 地区予選が終わり、休養日の明けた日のこと

 部活に来た晃と莉佳、他高藤のFC部員は、朝のミーティングで麗子から発表された計画に目を点にする

 

「えぇ、そうですわ。明石君の全国大会への追い込みをかけるつもりで計画していますわ」

 

「なんか自分のために悪い気が・・・」

 

 自分のため、ということにかなり引け目を感じた晃は少し苦い顔をする

 そんな晃に莉佳が横から肩をチョンチョンとしてから耳元で・・・

 

「部長になったから張り切ってるんだよ、きっと」

 

 っと小声で教える

 全国大会に進めなかった一成は、地区大会の終了とともに部活を引退し、新たな部長には麗子がなった。副部長には別の2年生が選ばれ、部は代変わりをした

 

「ちなみに、地区大会で目を付けた学校や選手も招待しての合同合宿を予定してますわ」

 

「マジかよ・・・」

 

 ドンだけ張り切ってんだ・・・っと晃は天を仰いだ

 

 

 

 

 

 数日後、合同合宿初日

 

「うわぁ・・・すごい人数・・・」

 

「だね・・・」

 

 練習場に集まった各校の選手たちを見て、晃と莉佳は顔を引き攣らせる

 前回合同合宿をした久奈浜学院の面々に、四島水産、海凌、堂ヶ浦工業まで集まっている。元々人数の少ない久奈浜学院以外は、さすがに遠慮したのだろう、レギュラーメンバーや地区大会参加メンバーのみに参加者を絞っていたが、それでも参加者が多いことに変わりはなかった

 

「晃、全国大会出場おめでとう」

 

「あぁ、ありがとう。真白」

 

「決勝終わったあとで倒れたの、私も心配したんだからね」

 

「ハハハ・・・ごめん」

 

 晃たちを見つけた真白が近付いて声をかけた

 決勝戦のことを言われ、晃は苦笑しつつ謝る

 

「本当にあの時は驚きました。前に言いましたが、体調管理は選手の義務ですよ」

 

「・・・今日は大丈夫?」

 

 そこにイリーナと沙希がさらにやってきて話す

 

「はい、大丈夫です。なんなら準決勝のリベンジマッチでも・・・」

 

「・・・それはやめておく」

 

 晃の練習試合の申し込みに、沙希は首を横に振って返す

 

「あなたには私たちに勝ったものとして、全国大会で優勝してもらわないといけませんので・・・」

 

「・・・あなたが優勝すれば、資金援助の減額幅も小さくなる」

 

「あ、そうですか・・・」

 

 割と本気の目の2人の言葉に、晃は少し引く

 

「にしても、本土からよく参加してくれましたね?」

 

「一番の節約は、休みの日に家にいないことなんですよ・・・」

 

 遠い目をして語るイリーナに、場はなんともいえない空気になった

 

 

 初日は移動の疲れがあるので流す程度のメニューで終わり、各校同士の交流が主だった

 

「はぁ~生き返った~」

 

 男性浴場へと続く脱衣所から、入浴を終えた晃が出てきた

 それと同時に、女性用の脱衣所からも、1人の女子生徒が出てきた

 

「あ・・・」

 

「どうも、お疲れ様です」

 

 その女子生徒、鳶沢みさきが小さく漏らした声に、晃は反応して挨拶をする

 

「・・・」

 

「?」

 

 妙に沈んだ様子のみさきに、晃は疑問を持ちつつも、スルーして脱衣所の出口の近くに設置してある冷水機で、冷水を紙コップに注ぐ

 

「えっと、飲みます?」

 

「え?あ、うん、ありがと」

 

 他校とはいえ、一応先輩なので気を使って聞くと、みさきは驚いた様子で晃に返し、コップを受け取る

 グイッと一気飲みした晃を、みさきはチビチビと飲みながら見る

 

「ねぇ、聞いてもいい?」

 

「え?あ、はい」

 

 飲み終わった晃がもう1杯と、冷水を紙コップに注いでいると、みさきが声をかけた

 

「FCをするのが怖いって思ったこと、ある?」

 

「FCをするのが怖い・・・?」

 

 みさきの言葉を繰り返して呟く晃

 紙コップの水面を見つめて少し時間をかけて考える

 

「ありますよ」

 

 晃の答えに、みさきは意外そうな表情をした

 なんせ人生をかけてやってるくらいだし・・・っと、晃は心の中で付け足す

 

「怖いなら、辞めたいって思わない?」

 

「辞めたらもっと怖いんで、辞められないんです」

 

「そっか、そうなんだ・・・」

 

 晃の言葉に、みさきはよくわからないという表情で、冷水を飲み終わった紙コップをゴミ箱に落とすように捨てて、その場から去っていった

 

 

 一方その頃、女性浴場

 

「なぁ、莉佳はあいつと付き合っているのか?」

 

「ふぇ?!」

 

 お湯に浸かって温まっている莉佳に、四島水産の高級マグロこと、虎魚有梨華が突然聞いた

 あまりに突然だったために、横で聞いていた真白が驚いてポチャンと頭まで沈んでしまうほどだった

 

「ケッケホ・・・あ、有梨華!いきなり何を?!」

 

 真白が咳き込みながらザバァッと立ち上がって、有梨華に詰め寄る

 初日の交流で、真白から有梨華を紹介され、すっかり仲良くなったが、すばりと聞きすぎだろうと真白は思った

 

「えー、だってうちの学校の部員はみんな噂してるから・・・」

 

「だからって・・・ねぇ、莉佳?」

 

 お湯で温まったからではない頬の赤みを浮かべつつ、真白は自分と同じように頬の赤い莉佳に話を振る

 

「っで、どうなんだ?」

 

「ううん、付き合ってないよ」

 

 莉佳は苦笑しつつ答え、真白はその答えにホッと安心をした

 

「でも好きではある、と?」

 

「それは、まぁ・・・うん」

 

 有梨華の言葉に、誤魔化せないと思った莉佳は素直に頷いた

 そんな莉佳の様子を見ながら、真白は再びお湯に体を沈める

 

「告白しないのか?」

 

 ポチャン・・・真白がまた頭まで沈んだ

 

「真白、お風呂で潜るのはよくないぞ」

 

「誰のせいだと!」

 

 注意する有梨華に、またザバァッと立ち上がって言い返す真白

 

「・・・いつかは、すると思う。けど・・・それは今じゃないと思う。夏の大会が終わった後か、あるいはもっと先か・・・」

 

「そっか、ガンバレ」

 

 莉佳の言葉に、有梨華は肩をポンッと叩いて応援した

 

「とゆーか、なんで有梨華が先輩面してんの?」

 

「そりゃあ、あたしはお姉さまと・・・」

 

 話を逸らしたい真白の言葉に、有梨華は体をクネクネとさせながら返し、莉佳と真白はドン引く

 話すことに夢中になる有梨華から、莉佳と真白は徐々に距離をとっていき、有梨華を残して2人はお風呂を出た

 

「あら?2人はもう上がるのですか?せっかく背中を流してあげようかと・・・」

 

「う、うわー残念だなぁー。ねぇ莉佳?」(棒)

 

「う、うん。でも、これ以上は逆上せちゃうし・・・」(棒)

 

「そ、そうですか・・・」

 

 脱衣所で体を拭いていると、合宿の諸々の雑事を終えた麗子がやってきた

 お風呂から上がった2人に、麗子は自身の楽しみを奪われたようにシュンっとなる

 

「あ、でもまだ有梨華・・・私の友達が入ってますので、その子にやってあげると喜ぶと思います」

 

「あら、そうですの?ではそうしましょう」

 

 数分後、女性浴場から『お姉さまぁああああーっ!!』などという奇声が上がり、妙にピカピカに磨かれた有梨華が発見されることとなる

 

 

 

 

 

 合同合宿2日目

 

「あれ?莉佳がいない・・・?」

 

 午前の練習が始まるという頃、晃は莉佳が練習に出てきていないことに気付く

 

「そういえば、セコンドの講習に出るって言ってたような・・・」

 

「セコンドの講習・・・でも莉佳はレギュラーの選手じゃ・・・?」

 

 真白に教えられ、晃は疑問を持った

 

 

 その頃、合宿所の中では、各校のセコンドを集めての講習が始まろうとしていた

 

「それではまず、私たちセコンドに、試合中に求められていることから話していきましょう」

 

 講習の進行役として、イギリスでのプレー経験のある沙希のセコンドを務めているイリーナが話す

 

「まず第一に、選手への指示出しやアドバイス。第二に、試合中に選手が対戦相手を見失った場合の位置情報の提供。これが試合中にセコンドに求められている主な役割とされています・・・が、それは間違いです」

 

 いきなり当たり前になっていたセコンドの役割を否定され、講習に出ていた生徒たちがザワついた

 

「よく考えてください。FCにおいて、真に強い選手というのは、まずどんな状況でも相手を見失うことはありません。見失うということは、死角に入られているということ、相手にこちらの選手の隙をつかれているということです。これは選手が日々の練習で解決する問題であり、セコンドが試合中に相手の位置を教えたところで、もう遅いのです。なのでこの第二の役割をセコンドに求めるようでは、選手として上には行けません」

 

 イリーナの言葉に、生徒たちは納得をして頷く

 事実、試合中はドッグファイト時でもそれなりのスピードで選手たちは飛行しているので、セコンドの指示を聞いていたら後手に回ってしまうのだ。ましてや相手を見失って位置などを聞いていたら、相手がファイターならタッチを奪われるし、スピーダーならドッグファイトから逃げてブイをタッチをされてしまう

 

「そして第一の役割についてですが、これはプロの話になりますが、一般的にプロの選手に付くセコンドは、選手との兼業ではなく、私のようにトレーナー、あるいはコーチとの兼業でセコンドをしています。そして、試合中の細かいアドバイスについては、理論的なものより、感覚的なものが多くなるでしょう。そのとき、選手より理論的には上を行っていても、実際の技術に劣るコーチにアドバイスができるでしょうか?」

 

 続くイリーナの言葉に、生徒は考え込む

 ここにいるセコンドは、ほとんどがイリーナが言うところの『選手との兼業』のセコンドなので、すぐにはピンと来ないのは仕方がなかった

 

「あの・・・では強い選手のセコンドは、試合中にいったい何をするのですか?」

 

 そんな中、莉佳が挙手をしてイリーナに質問する

 

「組んでいる選手次第、と言ったところですが、一般的には3つです」

 

「3つ・・・?」

 

「1つ目、選手は試合中、熱くなっていますので、ブレーキ的存在になること。試合は何が起こるかわかりません。予想外のことが起こったとき、冷静さを欠いてしまった選手を落ち着かせ、集中し直させること」

 

 イリーナは説明しながら、沙希と晃の試合での自分を思い出し、耳が痛いと思った

 

「2つ目、相手選手の観察、長所短所やグラシュの性能特性などは試合中でなくとも事前に映像等でわかりますが、飛行中の細かな癖や飛行軌道の偏りなどは、実際に見ないとわからない場合があります。そういった部分を観察、分析して弱点を見つけること。もちろん選手も行っているでしょうけど、第三者的視点でないとわからない部分はあります」

 

「でも、試合中にわかって選手に伝えても、イリーナさんが言うには『遅い』のですよね?」

 

「はい。ですからその上で3つ目です。これは試合が始まる前にやっておかなければならないのですが、ありとあらゆる状況を想定した作戦パターンの作成。そして、試合での的確なその選択。例えるなら、Aパターンがダメだったなら、なぜダメだったかを素早く分析し、次のラインでより効果的なパターンを選手に提案する。作戦が失敗したという状況は、選手に焦りを与え、思考を鈍らせます。そんな中で選手の代わりに思考し、選手を勝利に導くのです」

 

 一通り説明を終え、部屋の中がシーンとなる

 

「それはつまり、選手が何があっても冷静で、相手を観察でき、自分で勝てる作戦を考えられるのなら、セコンドはいらないということですか・・・?」

 

 莉佳は恐る恐る、質問を続けた。普段の莉佳ならば今の話を理解したなら聞かなくても分かる内容の質問を・・・

 莉佳から見た晃は、まさにその質問の例えそのものだからだ

 

「いえ、そうは言いません。どんなに完璧な選手であっても、人間である以上、1人より2人で試合に臨むほうが、よりよい結果が残せる・・・私はそう信じています」

 

 質問をした莉佳に真っ直ぐ向いて、イリーナは答えた

 莉佳の心情を察して、あえて理屈ではなく感情論で、イリーナは返した

 

「なら、そんな選手と組むセコンドは、いったい何をすればいいのでしょう・・・?」

 

「そうですね・・・色々とありますが・・・あなたの場合はまず、パートナーの選手を理解することから始めるといいでしょう」

 

「選手を、理解・・・?」

 

「そうです。得手不得手や、プレースタイルなどの表面的なことではなく、具体的に何ができて、何ができないのか・・・どういう性格で、どんな戦術を好むのか・・・もっと細かく言えば、最高速度は時速何キロで、そのときの体の負荷を考えた最小旋回半径は何メートルか・・・などです」

 

 答えられますか・・・?っと問うイリーナに、莉佳は何一つ答えられず、黙ってしまう

 そして、この場にいるセコンドで、そのレベルでパートナーを理解しているのはイリーナだけだった

 

「それらがわからないと、事前に作戦パターンを作成することもできませんよ。最高速度や最小旋回半径も大まかにでも数字を把握していないと、飛行軌道のプランニングもできません。選手の限界を知ることはとても重要です」

 

「はい・・・」

 

 イリーナの厳しい言葉に、莉佳は今までの自分を反省し、本当に自分はセコンドとして、なにもしていなかったのだと、ショックを受けた

 

「落ち込むことはありません。あなたの場合、まだ全国大会に間に合う方法があるのですから」

 

「え?」

 

 ニッコリと笑顔で話すイリーナに、莉佳はキョトンとした

 

 

 その日の夜、夕食後の時間

 

 本来ならば練習もないはずのこの時間に、晃は海上の試合コートのスタート位置にいた

 隣には少し申し訳なさそうにしている莉佳がいて、海岸からは数人の見物人が見ている

 

「それじゃ・・・よろしく?」

 

「うん、よろしく・・・」

 

 日が落ちて、野球場のあるような照明に照らされたコートで2人はこれから試合をする

 

「それでは試合を始めますよ」

 

 2人ともセコンドは付けず、2人が着けているインカムは周波数を合わせていて、試合中にも会話ができるようにしたお互いの理解を深めるための特別試合

 2人のインカムに、スタートの合図を送るイリーナが海岸から声を送る

 

「晃・・・私、全国大会では、もっとちゃんと晃のセコンドをしたい・・・だから、晃の全部を見せて」

 

 そう晃に言ってから先にスタート位置に着こうとする莉佳

 

「全部、ねぇ・・・そういう理由でも、タダで見せる気にはならないなぁ」

 

「え?」

 

「莉佳だって選手で、高藤のレギュラーなんだから、見たいのなら引き出させるくらいじゃないと。気持ちは嬉しいけど、俺は莉佳に選手を辞めてほしくないよ」

 

「でも・・・」

 

 晃の言葉に、莉佳は戸惑う

 今日、莉佳がセコンドの講習に参加していたのは、選手を辞めて晃のセコンドのみに集中したほうがいいのではないかと、迷っていたからだった

 

「別に試合はこの1回きりってわけじゃない。全国大会まで何日かあるわけだし、秋の大会も来年の夏の大会だってある。時間かけてゆっくり見極めてってよ、俺の全部ってのを・・・」

 

「晃・・・うん、ありがとう」

 

「いや、俺のほうこそ・・・初めは流れでなってもらったセコンドなのに、入部した後も続けてもらって・・・ありがとう。あと、これからもよろしく」

 

「うん・・・よろしく」

 

「はーい。お話はそこまでにしてくださいね。あと、私が聞いてること忘れてはいけませんよ」

 

 甘酸っぱい会話を聞かされたイリーナから、スタート準備の催促がかかる

 イリーナに聞かれていることを忘れていた2人は、恥ずかしさで顔を真っ赤にして慌ててスタートの体勢に入る

 

「それでは改めて試合を始めます。レディ!」

 

 スタートの体勢のまま、晃と莉佳がお互いに視線を向けた。日が落ちて暗くなっていたので、晃がサングラスを着けておらず、2人はバッチリと目が合い、少し照れながら前に視線を戻した

 

「ゴー!」

 

 今、2人の関係が新たなラインに突入する




くぅ~つか、これ完です
俺たちの戦いはまだまだ続くぜ!的最終話です。やっぱり全国大会をカットするのはおかしいかなって、でも全国大会での対戦相手の設定考えるのはだるい・・・ということで、全国大会に入る前で終わらせます

最後ということで、色々と人を出したかったんだけど・・・新たに出たのマグロちゃんだけか・・・
しかし、マグロちゃんは1年生キャラの中では、唯一のリア充(?)キャラなんですよね

イリーナ先生のセコンド教室は、本当はやりたくないイリーナを講師料という実弾で落としたという感じ。佐藤グループ怖いね
ちなみに内容は割りと適当です

告白シーンがないですが、ルートはほぼ莉佳ルートですね
試合シーンカットなのは、書くまでもなく晃が圧倒的に勝つだろうから
べ、別に面倒だなんて思ってないんだからね!

今、2人の関係が新たなラインに突入する(キリッ)

だっておwww

色々と設定間違い等ありましたが、お読みいただき、ありがとうございました
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