魔法と科学が対立せず、並列し、両立している世界。
魔法と科学が調和した世界。
科学による文明の発展としかしその代償である環境や生態系の汚染と破壊を、魔法が解決し、あらゆる生物、あらゆる環境において人間は共存することが出来ていた。
広大な砂漠地帯や、何もない海のど真ん中に、所謂都市が作られ、多くの人間が移住していた。
環境を壊すことなく、尚且つ周囲の生態系を乱すことなく、人間は人間で、絶滅しない程度の狩りとある程度の牧畜や農業、漁をすることで、人間は地球そのものから排除されないように、つまりは異常気象や大地震が起こらないように、賢く生きていた。
そんな世界の、人間が住むエリア。即ち住居区にあるとあるマンションに、二人の天才がいた。
片や魔法適正値が常人の数百倍という圧倒的資質を持ち、片や未だに科学には伸びしろが存分にあるがその才能を持ってすればその伸びしろを使い果たす、つまりは科学技術を最終段階にまで引き上げることが出来るであろう。
しかし、彼らは未だ、落ちこぼれのような扱いを受け、そして自分を落ちこぼれだと思い込んでいる。
残念なことに彼らは天才でありながら、もう一つ、天才級の馬鹿でもあった。
「うわッ!? あっぶねぇ!?」
魔法の暴発。
魔法は、魔素と呼ばれる、この世に存在しない存在を変換するものだ。
この世に存在しないということは、どこにもないということであり、それを利用するということは、無限に、無尽蔵に、永遠に、永久に利用することが出来る。
しかし、存在しないものを変換するという感覚がない、つまりは魔法適正値が低い人間はよく暴発を起こしてしまう。暴発であり、爆発。
しかし少年は爆発が、魔素の変換量と比例していることに気付き、そのデータを取り、安心安全に、具体的には爆竹が破裂する程度の爆発になるように魔素の変換量を調節することで、爆発による負傷を最低限零にしていた。
「あ、あの、もう、止めた方がいいのではないでしょうか?」
「うるさいなぁ! 僕にはこの道しかないんだから、練習するしかないでしょ!」
癇癪を起こした子供のように――実際、十五歳の子供ではあるが――、助言を突っぱねる。
「あー、んー、どうしてだろう」
どれだけ考えても、理由が分からない。
魔素の変換さえ上手くいけば、あとは簡単なはずなのに。延々と、可能性を考え、虱潰しに検証し続ける。
「とりあえず、ちょっとベランダにでも出ていてよ、集中するからさ」
「分かりました。お体にお気をつけ下さい」
「分かってる、分かってる」
一方、その隣で。
「あー、もううるさいなァッ!!」
その一言で、わいわいと騒いでいた子供達が静まり返る。
「……あ、ごめんね、みんな。でも、ちょっとだけ静かにしてね」
泣きそうになる子供達の為に咄嗟にフォローをして、なるべく笑顔を保ったまま、諭す十五歳の少女。
全く、一体どうしてこんなことになったのだろうか。
「ねぇ、お姉ちゃん。お姉ちゃんはどうして、科学の道に進もうと思ったの?」
子どもたちの一人。最初の子供の一人が、そんなことを尋ねる。
「あれは、私が最初で最後の魔法適正値検査を受けた時のことよ」
「ふむふむ」
「適性検査の結果の時にね、それを発表する人間が、大笑いして、過呼吸になって倒れたのよ。そんで次の人も、次の人も、次の次の次の次の人も……、全員、何かしらの理由で倒れていったのよ。――あんなの、私の魔法適正値が低すぎたからに決まってるのよ……」
「そ、そっか、なるほど……。えっと、それで、お姉ちゃん。その魔法適正値は、聞いたの?」
「ううん。その場にいられなくなて、帰って来た」
「あははは……、はぁ……、――お姉ちゃんの馬鹿」
「え? あれ? 私何か変なこといったっけ!?」
「……さて、みんな。ベランダで遊ぼっか!」
「ねぇ! なんで、私今罵倒されたの!? ねぇ、ねぇったら!!」
「……はぁ、どうして、あの方は、気付かないのでしょうか」
一切の無駄なく、呆れや嘆きといった感情すらも完璧にプログラミングされた、アンドロイドは呟く。
「お姉ちゃん、どうして気付かないんだろうね。僕達を創りだした癖してさ」
魔素を変換して創りだされ、弟として、子供として、単なる孤独を紛らわさせる為に創られたくせに、自我を持ち自由気ままに行動する子供たちは、「ねー」と首を傾げる。
どんな優れた才能も、無自覚ならば無能でございます。