終わりの惑星のLove Song   作:瀬川 蒼依

3 / 6
3話 春の季節に──

 また、あの時のと同じような春がきた。桜が満開で花びらは桃色で彩られていて、寒過ぎず、暑過ぎない過ごしやすい季節。──だが、過去が変わったことによって唯一変わった未来があった。それが、今だ。キミがここを発つと決める未来。

 春は出会いと別れの季節なんだ。改めてそう自覚した時、こんな四字熟語が頭に思い浮かぶ。

 一期一会。

 キミはアタシにとって大切な存在だった。小学生からランドセルを取ったら何も残らないのと一緒で、アタシからキミを取ったら何も残らない。言わば──いや、言わずともキミはそれくらい大切な存在。

 けれど、これ以上アタシの都合で未来は変えられない。そんな神様のような事は本来するべきではないのだ。

 せめて、キミを見送ろう。家に行くとトラックが停まっていて、荷台と家を業者の人が行き来していた。そこにたまたまキミのお父さんがすれ違ったので、咄嗟に声をかける。

「あの──」

 

 百段近くある階段を上がった所には桜並木があった。そこはこの時期、たくさんの桜の花が舞い散り、それを一目見ようと、観光しにくる客達がいる。はずなのだが、偶然か必然かどちらにせよ、私とキミの二人きりの状況だった。

 全力疾走で百段近くある階段を上ってきただけあって、まだ息は整ってなかったものの、言葉は自然に口からこぼれ出た。

「ここにいたんだね…」

 キミはアタシに背を向けたまま、懐かしむような声で呟いた。

「はい。友人とここでよく遊んでたんです」

 その友人は訊かずともわかった。きっとアタシの事なんだと……。

 口を開く。しかし声は出ない。

 ここで遊んでいた友人はアタシだと伝えたい。キミのことが好きで、キミのタイプに合わせようとして未来から来たことを伝えたい。もうなにもかも全てを、真実を伝えたい。でも、どうしても声が出ない……。

 キミは深呼吸をすると急に振り返る。幼いキミの目に映るのは高校生のアタシ。年齢が違うという異常な状況だけど、それはもう今更のこと。そして、アタシが見るキミは紛れもないキミだ。アタシがいつも一緒にいたキミだ。キミ以外の何者でもない。

 もう、なんて言葉をかければいいのかわからない。もし、かけるような言葉があったとしても、きっと、声にはならないだろう。そんな自分の弱さが悔しかった。

 そして、ゆるやかに流れていた時間は急に加速する。

 キミが口を開き──。

「もしあなたがあの人だったらよかったのに」

 そう言い残し、キミが歩き出した瞬間に。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。