1話 不器用なキミ
今や世界は呪われたように退廃し、生き物たちは滅んでゆく。
いくつの種が滅びたか──数えるには手足を使っても全く足りない。それに、木や草などの植物をも含めるとそれはそれは絶望的だろう。そんな世界で人間はいつまで生き残れるだろうか。もしも、世界で最後の一種として残っても、この呪われたような世界では結局滅んでしまうのかもしれない。
この世界で生きる者はそんなこと解りきっているだろう。ただ、それを言ってしまえば現実になってしまいそうだから口に出せないのか、ただそんな不安すら感じてない鈍感を超えた鈍感なのかわからない。
ともかく、この退廃は止まることなく進み続けてるのは確かで、止まる可能性がないのも確かだ。
そんな世界である日聞いた与太話。
──『宇宙へと旅立つための大きな船を造っているらしい』という、なんともよくある与太話だ。
もちろん誰も信じやしない。
携帯電話などの電波が飛んでないことはもちろんのこと、それどころか電子機器が一切機能していない世界は、まるで原子時代と同様なのだから。いや、でもそれ以上にここらでは食料さえ不足している。よって原始時代よりも最悪なのかもしれない。
でもこんな絶望的な世界でもキミは、その船を探そうと言うんだ。昔から楽観的で、こんな世界になろうものならすぐに死んでしまいそうなものなのに、今日までよく生きてこれたものだと感心する。
キミの意見に賛成し、行動に移すとしても、場所どころか色や形すらもわからない。そんなものをみつけるのは不可能だ。
こう言わざるを得ないかった。
「でも手がかりも何もない」
と。しかし、ボクがこう言うことを察していたのか、キミは笑顔でそして、ドヤ顔でこう答えてみせた。
「一番遠い世界の果てにある」
それは根拠も自信もない答えだった。
一番遠い世界の果とはどこか、そこまでどれくらいの距離があるのか、訊きたいことが溢れだし、口を開こうしたが──。今度はボクが口を開く前にキミが付け足すように答える。
「果ては一番上!」
と北を指し再び笑顔を見せる。
やはり、とても絶望的世界に生きる者の考えとは思えないほど、楽観的だった。その後も『必ず見つけだす!』とキミは子どものように意気揚々と語り始めた。そんなことを聞いていると、つい思ってしまう。
──夢にすがりたいだけの人の作り話なのに……。
こんなバカげたことにボクは付き合えない。でもそれ以上に独りで行かせられない。キミは不器用だから、独りで生きていくことも戦うこともできないだろうから。
だからいろいろ教えるよ。獣の狩り方や安全な眠り方。そういうことをキミに学んでほしいから、ついていくだけだよ? わかってるかな。
とにかく、そういう旅にしよう。