BLEACH-暖かい雪-   作:D家の居候

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雪の心と化け物の進撃

十刃落ち(プリバロン・エスパーダ)であるドルドーニは困惑していた。

今彼が居るのは3ケタ(トレス・シフラス)の巣の中にある自身の部屋。そしてその部屋には自身を含めて三体の破面が居た。

 

「うわぁぁぁああぁぁあん!!良かったヨォォォ!嫌われたかと思ったよぉ!!」

 

「(吾輩は幻覚でも見ていたのか?)」

 

少年の姿をした破面、ディークは同じく少女の姿のエフィに抱き付きながら泣き喚いていた。ディークはゴーグルの中を涙で一杯にしており──痛くないのだろうか?──隙間からダバダバと涙が溢れている。

そしてエフィはディークに抱き付かれて、何とも言えぬ表情で……鬱陶しそうにしている。

エフィも本当はディークを直ぐにでも突き飛ばしたい所なのだろうが、先程ディークにしてしまった態度に思う所が有るのだろう。なすがままにされていた。いや、限界だった様だ、今突き飛ばした。

 

先程、圧倒的な強さを見せた少年の破面がこんな有り様なのだ。ドルドーニの困惑は当たり前の反応であろう。

 

それから暫くはディークが抱き付く、エフィがうざったそうに突き飛ばすを繰り返していた。

ようやくディークが折れ、しょんぼりと体育座りをした。

 

「…大丈夫かね?坊や(ニーニョ)

 

「ハ、ハハ…大丈夫ですょぉ~ジルバーニさん、オラは元気百倍ですよぉ?」

 

「…ドルドーニだ」

 

名前を訂正する声は小さい物だった。

 

「して坊や(ニーニョ)よ、何故この様な場所へ来たのだ?吾輩達に用が有る訳では無かろう?」

 

「…迷っただけです」

 

「ム…そうか…」

 

「ああ、でも…一つ用が有るな。ドルドーニさん、ちょっとした質問しても良いかな?」

 

「何だね?」

 

「こちらを探ってくる『探査回路』(ペスキス)を止めさせるにはどうすれば良いと思う?」

 

『探査回路』(ペスキス)を?それは無理ではないかね。誰であろうと新入りに少なからず興味は有る筈だ。それに先程の事もある。興味を無くす事も無いだろう」

 

「…マジかぁ」

 

ため息混じりにディークは項垂(うなだ)れた。

 

「何故止めさせたいのだ?実力を知られたくないのかね?」

 

「まあ、それも有るけど…エフィちゃんが辛そうだからね」

 

エフィはコクコクと頷いている。

ドルドーニは顎髭を弄りながら唸った。

 

「確かに、か弱いお嬢さん(ニーニャ)には辛い物だろう…だが、コレをどうにかするには藍染殿か副官達にしか無理であろうな」

 

「あの人達がこんな些細な事で動くと思えないんだけど…」

 

「吾輩も同感だ」

 

エフィもどんよりとした表情をする。彼女の頭の中は既に胃に穴が開いた後の治療の事について考えている。

 

「だが、確か第8十刃(オクターバ・エスパーダ)…ザエルアポロの研究室には『探索回路』を通さぬ部屋が有るとか…」

 

「その話、詳しく頼む!」

 

ディークが身を乗り出す。エフィも顔を上げ、その瞳にも期待の色が見える。

 

「お、落ち着きたまえ坊や(ニーニョ)。恐らくそんな部屋が有るのは確実だろう。だが相手はザエルアポロだ、簡単に貸し出すとは思えん。下手をすれば罠を仕掛けて来るやもしれん。」

 

「そんなヤバイ奴なのか?その…ザエルアポロって奴は?」

 

「何故吾輩の名前は間違えるのにそちらの名前は間違えないのかね?

まあ良い、奴の噂はここでも良く聞く。

様々な事を研究している狂人(ロコー)で、自分の従属官は殆ど奴に改造された破面らしい。奴は自身の研究の為ならどんな手段も選ばない。卑劣な手でも平気で使う奴だ。恐らく坊やも研究対象に入れるだろうな。」 

 

「じゃあ、交渉とかは意味無いと…でも現時点で安全なのはそこしか無いんだろう?」

 

「そうだ……おい、まさか!?」

 

「『力尽く』しか思い付かないのが嫌だよねぇ、この頭は」

 

話して駄目なら奪うだけ。

悪霊である虚なら別に変ではない考えだ。だが、相手は十刃(エスパーダ)、並大抵の相手ではない。

だが、目の前の少年はそれをやってしまうだろう。

 

「…エフィちゃんは……それで、良いかな?」

 

ディークはその横に居るずっと黙って話を聞いていた少女に問いかけた。エフィは少しの間考える様な素振りを見せた後、口を開いた。

 

「─────────……?」

 

「そうだろうね」

 

「───────……?」 

 

「…少なくとも、俺はそう思うね」

 

「………」

 

少女は口を動かすが、その声は聞こえない。聞こえているのはディークだけだ。故にドルドーニは二人がどんな会話をしているのか分からない。

 

「──────…──────……」

 

「そっか…エフィちゃんは、優しいな……」

 

この時ドルドーニはエフィがディークを止めたのだと思った。『危ないから止めてくれ』とそう言ったのだと思った。

 

「そんじゃ…早速行きますか、そのザエルアポロ(糞 野 郎)の居る所に」

 

「何故そうなったのだ!?」

 

「え?だってエフィちゃんが『実験台にされてる子達がかわいそう』って言うから。部屋は二の次にして先ずはザエルアポロ(外道野郎)をぶっ飛ばそうかと……」

 

「そんな事を話していたのかね、お嬢さん(ニーニャ)は!?」

 

ドルドーニはエフィがディークを止めなかった事よりも、実験台にされている破面を気に掛けている事の方が驚いた。

元々弱肉強食のこの世界で仲間でも無い者を気にかけるなど言語道断だ。

 

「全く!お嬢さん(ニーニャ)は甘いぞ!!まるでチョコラテの様だ!!」

 

「まあまあ、ドルドーニさん。それがエフィちゃんの良いところさ、そんな怒らないでやってくれ。」

 

「その甘さが命取りになる事もあると言うのに、全く…

して、どうするのかね坊や?もう行くのか?」

 

「そうだね、さっさと行って、さっさと終わらせたいね。」

 

「ならば、吾輩が第八宮(オクターバ・パラシオ)まで案内しよう。」

 

「おっ、気が利いて助か──」

 

「──だがッ!一つだけ条件を付ける!」

 

ドルドーニがビシッとディークを指差して叫んだ。

 

「これからザエルアポロをぶっ飛ばすと言うのであれば、それ即ち坊やが新たな十刃となると言う事!それを見越しての吾輩からの頼みだ!

全て終わった後、吾輩と手合わせを願おう!!」

 

勝敗が見えた挑戦。

それはドルドーニにも分かっている。だが、未だに忘れられぬ十刃だった頃の眺め。今でも鍛練を怠らないのはもう一度十刃に返り咲く為だ。

十刃に戻るには今居る十刃を倒すしか無い。

ならば、勝てぬと分かっていても立ち向かわずにはいられない。

 

「…なあんだ、もっとキツい条件かと思ったらそんな事か…何時でも、何度でも受けてやるよそんなの。勿論、全力とは言わないけど、真剣にね」

 

「…ありがとう(グラシアス)

 

「─────……」

 

「そう言うなって…」

 

「ム、お嬢さんは何と言ったのかね?」

 

「『男の熱い友情は分からない』だってさ…」

 

「カァー!これの良さを分からぬとは!お嬢さんもまだまだだ!」

 

そうして、二体の破面が熱い友情(?)により結ばれた。

 

そして、少しずつ運命の歯車は狂いだす。

 

 

 

 

 

 

無機質な機械、不気味な実験道具、気味の悪い薬品。

それらがずらりと並んだ部屋で二体の破面が話していた。

 

「侵入者だと…?」

 

「ハイ、ザエルアポロ様……」

 

話していた、と言うのは語弊が有るかもしれない。正確に言えば報告であった。

第8十刃(オクターバ・エスパーダ)、『ザエルアポロ・グランツ』は自らの従属官からとある報告を聞いていた。

 

「一体どんな奴なんだ、もし邪魔な様であればそっちで片付けて構わないよ。」

 

「それが…新たに入った破面でして……」

 

「何…?」

 

そこでようやく背中で聞き流していたザエルアポロは従属官に向き合った。

ピンク色の髪、眼鏡の様な仮面の名残を掛けた彼は従属官に問いかけた。

 

「新入りの破面が一体何の用なんだ?」

 

「それが…ただ『ザエルアポロを呼んでこい』と叫ぶばかりで……」

 

「僕を、かい?」

 

ザエルアポロはモニターを確認した。

すると入り口付近での映像に小柄な破面が映っていた。

ゴーグルの様な仮面跡を着けた白い肌の破面はその場で腕を組んで仁王立ちしている──本人曰く道場破りのつもりらしい──他の従属官が帰るように促しているが一向に聞く耳を持たない。

 

「仕方がない…『戦闘実験用区画』に戦闘用の従属官を集めておけ。後は適当に僕がそこで待ってるとか言っておけば勝手に行くだろ。」

 

「ハッ…失礼しました」

 

響転(ソニード)で従属官が消えるとザエルアポロは作業に戻った。たかが実力差も理解せず、破面になって浮かれた馬鹿だと決め付け、自身が出るまでも無いだろうと予想して。

 

 

 

 

ディークは従属官に言われた通りに廊下を進んでいた。ザエルアポロの予想通りと言うか、ディークは素直にそれを信じ、この先にザエルアポロが待ってるとばかり思っていた。

そして、目的地であろう強固な扉の前に着いた。

だが、そこで疑問に思った。

 

「(大きな霊圧が無いな……)」

 

ディークは『探査回路』(ペ ス キ ス)を使って扉の中を探っていた。何体か中で待ち伏せしている様だが、肝心の十刃(エスパーダ)らしき霊圧が無い。

 

「(小手調べ…って所か?)」

 

恐らくこの雑魚(・・)共を倒せない様では会う気は無いのだろう。そうディークは判断した。

 

ディークは扉の前に立ち、右足で扉を蹴り開けた。

 

「頼もぉーーーーーう!!!」

 

大声でそう叫びながら部屋に入った瞬間、左右から破面が飛び出した。

片方は両拳を握り会わせ、ハンマーを降るように。片方は棍棒の様な物を振りかぶり。

そして同時に地面を(・ ・ ・)叩き割った。

 

「やあやあ、いきなり手厚い歓迎だね。新人だからもっと簡易的な物で良いのにさ…」

 

ディークは既に部屋の真ん中辺りまで移動していた。だが、続けざまに巨体の破面が拳を振り上げ襲いかかる。それもディークは響転(ソニード)を使って避ける。

上へと移動したディークは広い部屋を見渡した。

 

「ひーふーみーよー、(スィンコ)(セイス)(スィエテ)……うん、数え切れねぇや」

 

部屋中に様々な容姿の破面が溢れかえっている。そしてどこか異質な破面達は皆一様にディークに襲い掛かろうとしている。

 

「皆殺る気満々って所か……」

 

ため息混じりに呟き、ディークはその場から消えた。そして立っていた場所には赤い閃光が走ったが、ディークが消えた後なので意味を成さなかった。

 

「…ま、少し落ち着きなよ、ね?」

 

ディークは響転で虚閃(セロ)を放った破面の横まで移動していた。そしてその骨の様に白く小さな手を軽く握りトンと相手のこめかみ辺りを軽くノックした。

たったそれだけだった、ディークの攻撃と言うべき行動はその軽いノックだけだった。それなのに、相手の破面は糸の切れた人形の様に地に倒れ伏した。

 

その後はただの作業(・・)と化した。

破面が拳を振るう。響転で背後に回られる。倒れる。

破面が刀で斬り掛かる。響転で頭上に現れる。倒れる。

二体同時に殴り掛かる。響転も使わず跳躍だけで避ける。二体共倒れる。

ただ、それの繰り返し。大量に居たザエルアポロの従属官の破面達はあっと言う間に全て沈黙した。

 

「う~ん…やっぱ手加減すると遊び(・・)にもならないな……」

 

 

 

 

 

 

報告を聞いたザエルアポロは驚愕した。その勢いで目の前の実験道具を倒してしまう程に。

 

「たった二分で……全滅だと」

 

通常なら有り得ない。数十体の改造破面達が一体の新人破面にやられるなど。そしてその掛けた時間も異常だ。二分、戦闘においては一瞬とも言える時間。その間に数十体を倒すなど。

それを出来るのは破面でも一握り。なら、新人である奴は…

 

「僕の数字を…奪いに来たと言う訳かい……」

 

ザエルアポロの表情は怒りと焦り。その理由はシンプルな物。

絶対にこの座は譲らない、だが勝てるのか?

その感情を鎮めるように眼鏡の位置を直す。

 

「ならこちらも色々と策を講じるだけさ……」

 

ザエルアポロは静かに、だが怒りを湛えた目でモニターに映る忌々しい小柄な破面を睨み付けた。

 

 

 

 

 

 

「……遅っせえ」

 

無機質で設置物の何も無い広大な部屋の真ん中でディークは胡座をかいて暇そうにしていた。

部屋の隅には大量の破面達が山の様に一ヶ所に積み上げられている。一応ディークは『かわいそうな破面達』を助ける為に来たので、この後の闘いに出来る限り巻き込まない様にする為の配慮だった。

 

「罠でも張ってるのかねぇ……」

 

ぼんやりと上を見上げながら呟く。

ディークは探査回路を使っていた。それによれば恐らくザエルアポロであろう霊圧は部屋の中で忙しなく動いている、何かを準備しているのだろう。

 

「準備するのは良いけど、さっさとして欲しいもんだな…てか、律儀にここで待つ必要も無いような……」

 

そう言うとディークは「よっこらせ」と立ち上がった。

 

「うん、暇だし、罠もめんどいし…最短で(・ ・ ・)会いに行きますか!」

 

両手を前に突き出し、霊圧を固める。赤い霊光が強さを増して行き、色まで変わった。禍々しい黒い塊となった自らの霊圧を見てディークは首を傾げた。

 

「あれ?虚閃(セロ)が黒くなった……破面化の影響かねぇ?」

 

ディークは気付いていない、いや、知識に無い様だがこの黒い虚閃は黒虚閃(セロ・オスキュラス)と言う解放状態の十刃しか使えない筈の技だ。

その威力は──

 

「なあッ!?」

 

壁に放たれた黒い虚閃は『戦闘実験用区画』からザエルアポロの研究室までの数百メートルの距離をぶち抜いた。

背後を通って行った霊圧の塊に驚愕の声を上げるザエルアポロ。彼が霊圧の発生源を見るとポカンとした顔のディークが居た。

 

「あらら…やっぱ破面て凄いな、思ったより威力出ちゃったよ…」

 

黒い霊光は数百メートルを破壊するだけに留まらず、第八宮(オクターバ・パラシオ)の外壁を貫通させて日の光が見えていた。

 

ギリリと奥歯を噛み締める音が響く、憎悪を露にした形相でディークを睨み付けるザエルアポロは斬魄刀を抜き、口で刃を呑み込んだ。

そして──

 

(すす)れェ!『邪淫妃』(フォルニカラス)!!!」

 

解号を唱え、霊圧が爆発するが如く解放された。

 

 




結論、ディークの正体は只のウザイ奴(←

初回投稿する前に一ヶ月分以上ののストック作ってた筈なのに今は殆ど無くなってしまいました!自分、かなり遅筆なので焦ってます!!
でも早く破面達の日常風景を書きたい一心で頑張ります!え?戦闘?その内あるんじゃないでしょうか?(殴)

週1定期更新を目標にしてたのに…不定期になりそうです、申し訳ございません。

次回はザエルアポロさん、解体研究(どちらがとは言ってない)です!
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