神々に祝福されし者達【完結】   作:マイマイ

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――たとえどんな現実が待っていようとも

人と人は手を取り合い、新たな絆を生みながら前へと進んでいく。

未だ進みは遅くとも、一歩一歩確実に。

人類は、前へと進んでいるのだ……。


第3部導入編捕喰78 ~変わり行く者達~

――ネモス・ディアナに、フェンリルのヘリが降り立つ

 

ヘリポートでそれを見つめるアリサとソーマ、そしてヘリの中から出てきたコウタと視線を合わせた。

 

「よっ、大変だったみたいだな」

「………ええ、まあ」

「……大丈夫か?」

 

明らかに覇気のないアリサに、コウタは心配そうな表情を浮かべる。

それに気づいたのか、安心させるように微笑むアリサであったが…見るからに無理をしているとわかるものであった。

だが仕方ないだろう、何故なら……。

 

「――カズキの所に行くぞ」

「そう、ですね……行きましょう」

「………………」

 

先に歩を進めるアリサ、その後ろ姿を見ながらコウタはソーマへと声を掛ける。

 

「アリサのヤツ、大丈夫なのか?」

「問題ねえよ、カズキ自身命に別状は無いって言われてんだ。じきに目覚める」

「ってことはまだ目を醒ましてないのかよ……もう4日も経つんだろ?」

「チッ……あのバカ、すぐ自分だけ無茶をしやがる」

 

舌打ちしつつ、アリサの後を追うソーマ。

ポリポリと頭を掻いてから、コウタもその後を追った。

 

 

 

――戦いが終わり、既に4日という時間が流れている

 

 

 

現在ネモス・ディアナは、極東支部と連携して復興作業を進めており、とりあえずの平和を維持していた。

極東支部との確執は当然残っているものの、那智を始めとした評議会の者達は一応の協力関係を結ぶ事を承認してくれた。

それにより急ピッチで復興作業が進める事ができ、同時に極東支部側から見ても今回の協力関係は大きな実りを結んでくれる結果に繋がった。

那智達が立案、そして実用化に到達させたオラクルリソースの活用術。

それは従来のものよりも遥かに運用コストが低く、これにより装甲壁に消費されるオラクルリソースを少なくする事に成功している。

この技術にはサカキも驚きを隠せず、それを伝えたコウタに興奮した面持ちで専門用語が飛び交う話を投げかけたのだがそれはさておき。

 

「なんか色々あったみたいだな、二年前に現れた化物みたいな人間に……獣の耳と尻尾が生えた女の子。更にはカズキの謎の力かあ……」

「……謎の女の子は戦いが終わった時には既に何処にも居ませんでしたけどね」

「でもそっちは味方になってくれたんだろ?」

「さあな。どっちにしろ得体の知れないヤツだって事は変わりねえ」

「まあまた会えるんじゃね? それより……カズキのヤツ、とんでもない大技を使ったんだなあ」

 

そう話しつつ、コウタの視線は塔へと向けられる。

光の剣によって抉り取られた部分はまだ修復されてはおらず、どれだけの破壊力があったのかは想像に難くない。

……だが、その力は確実にカズキの身体を蝕んでいるのもまた事実であった。

 

――あれから4日が経っているのに、カズキはまだ眠り続けている

 

命に別状は無いと言われているし、アリサが見る限りではカズキのオラクル細胞は安定している。

だがそれでも、彼が目覚めない事によって彼女の心は大きく揺れ動いていた。

 

「…………どーも」

「こんにちは」

 

と、歩いていたらサツキとユノに出会った。

ユノを見てコウタは顔を赤らめるが、そんな彼は無視してアリサは軽く会釈を返す。

 

「まさか極東の連中と評議会が手を組むだなんて思ってもいませんでしたよ、どうやって叔父さんを口説いたんですかねえ?」

「利害が一致しただけですよ、それに……きっと那智さん達が目指す道と私達が求める道は、同じものだと思いますから」

「ふーん………」

「………それより、八雲さんの事は」

「しょうがないですよ、こんな時代ですし。それにおじいちゃんだって…どの道永くなかっただろうし」

「えっ……サツキ、それって」

「遺体を調べてわかったんだけど、おじいちゃんって例の流行り病にかかっていたそうよ。あの人って他の集落とかにも見舞いに行ってた事があったらしいし。

 それで自分が死んでちゃザマないわよ、本当に…お人よしというか何というか……」

 

悪態を吐くサツキだが、その表情には確かな悲しみの色が見えている。

彼女も彼女なりに、八雲の死には堪えているようだ。

 

「……そういえば、皆さんはこれからどちらへ?」

「とりあえず、未保護の集落に向かう予定です。北西の方角にもあるようですから」

「まあどうでもいいですけど、神機使いだからってなんでも守れると思わないほうがいいですよー?」

「……なんだよあの感じ悪いオバサン」

「そこのバンダナ小僧、今何つった?」

「い、いや……別に……」

「別にアンタなんかに言われなくても、それくらいわかってるさ」

「そう? でもあなた達のリーダーはそこん所をまだよくわかってないんじゃない?

 戦えない人達を守る、志は立派かもしれませんけど……それで自分の命を投げ出そうとするなんて、愚の骨頂ですよ?」

「なっ……!?」

 

今の言葉には、コウタも我慢できなかった。

大切な友人であり尊敬する仲間であるカズキを馬鹿にされた、拳を握り締めサツキに詰め寄ろうとして……アリサに止められる。

 

「そうかもしれませんね。でも……それがカズキの選んだ道ですから」

「……………」

「誰かに強制されたわけじゃない、カズキが戦いの中で見つけた答えです。

 それは確かに愚かな道かもしれない、でも……それを否定する事も馬鹿にする事もできる人間なんか居るわけがない。

 サツキさん、私達が嫌いなのはわかりますけど……あまり、余計な事は言わないでもらえませんか?

 そうしないと私……あなたの事、嫌いになりますから」

 

真顔でそう告げるアリサの瞳には、おもわず震え上がってしまうほどの怒りの色が宿っている。

それを見てサツキは喉を鳴らし、近くに居たコウタ達もおもわずアリサから離れた。

……たとえ誰であっても、カズキを馬鹿にする者は絶対に許さない。

そんな思いが彼女から感じられ、サツキはこれ以上何も言わないように口を閉ざす事にした。

 

「……カズキさん、まだ目を醒まさないんですよね?」

「ええ……でも大丈夫です、カズキならそのうち目を醒ましてまた私の所に戻ってきてくれますから」

「ふふ、アリサさんは本当にカズキさんの事が好きなんですね」

「当たり前ですよ。あの人は私の旦那様なんですから」

「なんだか、ちょっと羨ましいな……カズキさんみたいな優しい人といつも一緒に居られて……」

「ユノさんには居ないんですか?」

「はい、残念ながら……」

 

そう言って、ユノは苦笑を浮かべる。

 

「でもユノさんならすぐ見つかりますよ、きっと」

「ありがとうございます。でも……暫くは世界を見てみようと思うんです。

 私には戦う力なんてない、何もできないかもしれないけど……おじいちゃんや皆さんみたいに、私にも何かできる事があるかもしれないから」

「戦う事が救いって訳じゃないわよユノ、あなたの歌はね……きっとそれを証明できる力がある。

 というわけで、これからフェンリルの電波をジャックしていくのでそのつもりで」

「はい、楽しみにしてますね!! それと、ユノさん」

「はい?」

「自分のできる事、望む事、それは簡単に見つからないかもしれないけど……きっと何処かにあるから探す事を諦めてはいけない。

 前にカズキが言ってくれた言葉です、サツキさんの言う通り戦いが救いになるとは限りません。現にユノさんの歌で救われた人がこのネモス・ディアナには沢山居るはずですから」

「―――――はい!!」

 

華のような可憐な笑みを浮かべ、ユノは瞳に新たな決意の色を見出す。

彼女はきっと強くなる、そして沢山の人を救うだろうとアリサはどこか直感した。

 

――その後、2人と別れアリサ達はカズキが眠っている医療テントへと向かう

 

そして中を覗くと……誰も居なかった。

驚愕するアリサ達、彼は一体どうしたのかと思いながら急ぎ外へと出ると。

 

「あ、おはようアリサ。2人もおはよう」

 

そこには、医療班と共に医療器具を運んでいるカズキの姿があった。

ポカンと呆けるアリサとコウタ、ソーマは冷めた目で彼を見つめつつ内心では安堵していた。

 

「心配かけてごめんね、でももう大丈夫だから」

「――――な、な、な」

(あ、これはヤバイな)

(離れておくか………)

 

そそくさとその場から離れるコウタとソーマ、そして。

 

「――――何をしているんですか!!!」

 

アリサの怒声が、周囲に響き渡った。

その声に驚くカズキ、しかしアリサは怒り心頭のまま彼へと詰め寄っていく。

 

「4日も眠りっぱなしだったのに、起きて早々何をしているんですかあなたは!!」

「え、あ、いや、みんな大変そうだったから……」

「カズキだって病人なんですよ!? ああ、もう……サツキさんにはああ言いましたけど、やっぱりカズキのは度を越してます!!」

「えっ、何の事……?」

「いいですかカズキ、今日という今日はですね………!」

 

ガミガミガミガミ、顔を真っ赤にさせカズキに説教を始めるアリサ。

混乱するカズキであったが、彼女の気迫に圧されおとなしく説教を受ける羽目に。

それを遠巻きで見ている2人は、揃って肩を竦めた。

 

「まあ、カズキらしいというか………な?」

「アイツらしいといえばそれまでだが、今回は同情してやらん」

「だよなあ……そういえばさソーマ、なんか本部の直轄支部で新しい部隊が発足されるって話、知ってるか?」

「ああ?」

「まだ詳しい事はわからないんだけどさ、なんか凄い技を持ってるらしくて極東支部じゃその噂で持ちきりなんだよ」

「………そうかよ」

「なんだよその反応、どんなんだろうな?」

「知るか。そんな事より……アレ、止められるか?」

「……………無理だろうなあ」

 

ガミガミガミガミ。

まだ怒っているアリサに、怒られてしょんぼりしてるカズキ。

周りに見られている事にも気づかずに、2人のおかしな光景は暫し続いたとか………。

 

 

「反省しましたか!?」

「はい、反省しました……反省しましたからもういいですか?」

「………もう、しょうがないですね」

 

「カズキって、尻に敷かれてるんだな……」

「リンドウとサクヤも似たようなもんだろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To.Be.Continued...




GE2編まではもう少し掛かります。

次回は極東支部の神機使いのお話(の予定)ですね。
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