神々に祝福されし者達【完結】   作:マイマイ

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今日はアラガミでありながら人として生きるラウエルの日常を紹介しよう……。


第3部導入編捕喰82 ~ラウエルのアラガミ日誌~

『~~~~~~~~♪♪♪』

 

アナグラのエントランスロビーに、楽しげな歌声が響く。

歌を歌うのは2人の少女、それぞれ名はシオとラウエルという。

正確には2人は人間ではなくアラガミであり、様々な偶然が重なり今では人としての生を謳歌していた。

澄んだ綺麗な歌声に、他の者達は自分の作業をしながらも彼女達の歌に耳を傾ける。

誰しもが穏やかな表情を浮かべており、中には近くで聴き入っている者達も存在していた。

 

――やがて、2人の歌が終わる

 

目を閉じて歌っていた2人が目を開くのと同時に、周りからは拍手が巻き起こった。

初めはキョトンとしていた2人であったが、自分達を褒めてくれているとわかり満面の笑みを浮かべる。

別に誰かに聞かせるわけではなく、ただ歌っていただけなのだが…それでも、周りの者達の心を癒せたようだ。

 

「相変わらず、シオちゃんとラウエルちゃんの歌は綺麗だよねー」

「うんうん。もうプロになっちゃえって思うくらいだよ!」

「でもさ、プロになっちゃったらここで生の歌を聴けなくなっちゃうだろ?」

「それは困るー」

 

口々に周りの者達がそう言っているが、当の本人達は互いに顔を見合わせ苦笑する。

歌を褒めてくれるのは嬉しいが、そんなつもりなど毛頭無いのでそう言われても少々困る。

大体自分達はアラガミではないか、テレビに出たりしたら大騒ぎになってしまう。

 

「おいみんな、テレビ見てみろ!!」

そんな中、1人の男性神機使いの声が場に響いた。

なんだ、どうしたと周りの者達も近くのモニターに視線を向け……驚愕する。

 

「マジかよ……“ユノ”じゃん!!」

「遂に公共電波にユノがきやがったーーーーっ!!」

 

モニターに映るのは、瞳を閉じ歌を紡ぐ1人の少女。

それはかつてカズキ達がネモス・ディアナで出会った、葦原ユノであった。

今までフェンリルの電波をジャックして(当然主犯はユノの幼馴染であるサツキの仕業)現れていたが、今回は違う。

すなわちそれは、他ならぬフェンリルが直々にユノの歌を認め依頼した事ということである。

皆がモニターに釘付けとなり、中には興奮した面持ちの者も。

 

「綺麗な歌だなー……」

「そうだねー……」

 

ユノの歌を聴いて、ラウエルとシオも純粋な評価を口に出す。

彼女の歌は聴いていると元気が出る、自然と笑みが浮かぶ優しく暖かい歌だ。

歌う事が好きな2人だからこそ、ユノの歌の本質をいち早く気づいていた。

 

「おい、シオ」

「んー? あ、ソーマ!!」

「……飛び込んでくるんじゃねえって言ってんだろ」

 

声を掛けられ、いつものようにソーマへと抱きつこうとするシオ。

しかしいつもの事、慣れた動作でそれを防ぎソーマはため息をついた。

 

「それで、シオに何か用かー?」

「……ちょっとな、今…いいか?」

「もちろんだぞー! じゃあラウエル、またねー?」

「うん、バイバイ!」

 

楽しそうに、ソーマと歩いていくシオを見送るラウエル。

……少しだけ羨ましいと思ったのは、内緒だ。

さてどうしようか、カズキやアリサは今日もクレイドルの任務で極東支部には居ない。

暇だなー、どうしようかなーと呟きつつ、ふよふよと浮かんでいると。

 

「ラウエルー!」

「んー?」

「よお、ラウエル。暇そうにしてるなー」

 

ラウエルに声を掛けたのは、これから任務であろうエリナと…1人の少し軽そうな青年。

彼の名は真壁ハルオミ、この極東支部第三部隊隊長であるリンドウに続く古参の神機使いである。

明るく朗らかで面倒見がいい良き先輩……なのだが、少々女好きな面も。

 

「今日はラウエルのおしり、じっくり見ないんだね」

「えっ………」

「…………ハルオミ先輩?」

「あー、ラウエル君。君は少し誤解している。

 あの時のあれは決してセクハラというわけではなくてだね……」

「……どん引きですね」

「ちょっとエリナちゃん? そんな冷たい目でおじさんを睨まないでくれないかなあ?」

 

絶対零度の瞳を向けられ、たじろぐハルオミ。

このままでは拙い、そう思ったハルオミは無理矢理話題を変える事に。

 

「そ、そんな事よりラウエル。今時間あるなら手伝ってくれない?」

「アラガミを倒すんだねー、わかった!!」

「ハルオミ先輩、あからさまに話題を逸らさないでください」

「まあまあいいじゃないかエリナ君、そんな事より任務だ任務!」

 

そう言って、逃げるようにエレベーターへと向かっていくハルオミ。

色々と言ってやりたいエリナであったが、確かに任務の方が大事だと己に言い聞かせる。

………それに、今の話は後でじっくり尋問すればいいだけの話だ。

 

「ラウエル、手伝ってくれる?」

「もちろん! 一緒に頑張ろうねー?」

「うん!」

 

にっこりと微笑むラウエルに、エリナも同じように微笑みを返す。

そんな美少女2人の光景を、ハルオミはエレベーター前でしっかりと観賞していたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「――そういえばよ、あの話…聞いたか?」

「? あの話って、なんですか?」

 

討伐対象のアラガミを掃討し、帰りのヘリを待つ中でハルオミが口を開いた。

このまま黙っているのも何なので、エリナは壁に背を預けつつ彼の話を聞く事に。

ちなみにラウエルは、討伐したアラガミをむっしゃむっしゃと食べている。

食べているアラガミは最近出現したウコンバサラ、どうやら彼女はこのアラガミが気に入ったらしい。

 

「何でもよ、えっと…フェンリル極致化技術開発なんちゃらで新しい部隊ができたんだと」

「そこまで言ったなら最後まで言ってくださいよ。確か……“ブラッド”、でしたよね?」

 

その話はコウタから聞いている、何でも見た事のない力でアラガミを倒せる神機使いが居るらしい。

とはいえその全貌を判っている者は誰もおらず、そもそもどんな部隊なのかもわかってはいない。

 

「新しく出た“感応種”とも戦えるらしいし……そんなヤツが極東に来てくれたら、楽なんだけどなあ」

「何言ってるんですかハルオミ先輩、確かに感応種は脅威ですけど私達が頑張らないと!」

「まあそうなんだけどさ、オッサンには色々と厳しいわけですよ」

「ハルオミ先輩より年上のリンドウさんだって頑張ってるんですから、情けない事言わないでください」

「ありゃま、エリナは厳しいねえ……ラウエルもそう思わないか?」

「そうだねー、エリナはちょっと恐い時があるかなー」

「なっ、ラウエルまでそんな事言わないでよ!!」

「怒ったー!」

 

楽しげに言いながら、逃げ出すラウエル。

それを顔を赤らめながら追いかけ始めるエリナ、その光景を微笑ましそうに見つめるハルオミ。

廃墟の中だというのに、場には和やかな雰囲気に包まれていた。

 

――暫く鬼ごっこを続けていると、迎えのヘリがやってきたので3人はアナグラへと帰還する

 

「ただいまー!」

「おかえりなさい、ラウエル」

「あー、アリサー!!」

 

ロビーに戻ると、そこには久しぶりに会うアリサの姿が。

嬉しさのあまりラウエルはアリサ目掛けて一直線に向かい彼女の胸に飛び込む。

突然の事に驚くアリサであったが、すぐに優しく微笑みラウエルを受け止め頭を撫でてあげた。

 

「アリサ先輩、お疲れ様です」

「お疲れー、愛しの旦那は一緒じゃないのか?」

「お疲れ様ですエリナさん、ハルオミさん、カズキは第003建設候補地の警護に行ってるんです」

「大変だなあ……だがクレイドルのおかげで、予定よりずっと早く最初のサテライト居住区が完成したんだろ?」

「はい。もう既に一部の住人が移住を始めていまして、ようやく第一歩といったところでしょうか……」

 

現在、5つのサテライト居住区の建設が始まっている。

その内の一つの居住区は既に完成し、早くも住民達の移住が始まっていた。

もちろんまだ問題は山積みだ、新たな居住区故に発生する問題というものもあるだろう。

第一歩とは言ったものの、その道のりが長く険しいものだというのは言うまでもなく。

 

「まだまだ、夫婦水入らずで暮らすっていうのはできそうになさそうだなあ……」

「あはは……でもいいんです、たとえ離れていたとしても…ちゃんとカズキと繋がっていますから」

「おーおー、さすが極東一のバカップルなだけはあるな」

「褒め言葉と受け取っておきますね、ハルオミさん」

「………強いねえ、本当に」

 

本当は寂しいくせに、とはハルオミは口にしなかった。

この2人は自分達の意志でこの道を歩んでいる、ちゃんと覚悟を持って歩みを進めているのだ。

そんな言葉など無意味でしかない、だからそれ以上は何も言わなかった。

 

「ラウエルも頑張ってるみたいね」

「うん! ラウエルもっと頑張ってみんなを守るよー!」

「偉い偉い」

「えへへー……」

 

頭を撫でられ、ラウエルは心から嬉しそうに笑みを浮かべる。

と、アリサの通信機が鳴り、彼女はラウエルから離れ通信機を手に取った。

十秒ほど何かのやり取りをした後に通信を切り……アリサはラウエルに申し訳なさそうな表情を向ける。

 

「ごめんねラウエル、もう行かないと」

「えー………」

「本当に大変ですね……何かできる事があったら遠慮なく言ってください」

「ありがとうございますエリナさん、じゃあ…ラウエルと遊んであげてくれると助かります。

 ラウエル、今度暇ができたら一緒に遊ぼう? 約束する」

「うん……約束」

 

指きりを交わし、アリサはハルオミ達に一礼してから急ぎ足でその場を後にした。

相も変わらず忙しい事だ、無理をしなけらばいいがと思わずには居られない。

 

「……シオの所に、行くね?」

2人にそう告げて、ラウエルもその場を後にする。

ふわふわと移動するその後姿は、判り易いほどに落ち込んでいた。

 

「ラウエル、寂しそう……」

「まあしょうがねえさ。カズキもアリサもクレイドルの中で毎日駆けずり回ってんだ。

 その分俺達が、ラウエルと一緒に遊んでやればいいだろ?」

「……そうですね。でも…ハルオミ先輩が言うとセクハラにしか聞こえませんね」

「あれー? 俺結構いい事言ってる筈なんだけどなー………」

 

 

 

 

 

 

 

 

シオに会うため、ラウエルはソーマの部屋へと向かう。

まだ居るかはわからないが、会えなくてもソーマに訊けばシオの場所がわかるだろう。

すると、ちょうどシオがソーマと共に部屋から出てくる光景を視界へと入れた。

 

「おーい、シオー」

「あ、ラウエル!」

向かってくるラウエルに手を伸ばすシオ、そして2人は笑顔でハイタッチを交わす。

 

「アラガミ倒したから遊ぼう?」

「いいよー!」

「おい、さっき言った事忘れたのか?」

「あー…そうだった」

「???」

「えっとね、ラウエル……ごめんな? ちょっと暫く遊べなくなっちゃった」

「えっ、なんで?」

「――今から俺と長期の任務…リンドウ達の応援に向かうからだ」

「リンドウのー……?」

 

リンドウは現在、支部長の命を受けてツバキとサクヤと共に遠征の任務に向かっている。

既に四ヶ月が経過しているが、一度もこの極東支部に戻ってきていない。

つまり、その応援という事は……この2人も長い間戻ってこれないという事だ。

 

「残念ー……」

「ごめんなー?」

「悪いな。だがシオのアラガミとしての力が必要になるかもしれねえんだ」

「んーん、逆にソーマだけが行ったらシオが寂しがるからよかったー」

「そうだなー、ソーマだけが行ったら……シオ、すっごく寂しい」

「………そんな事はしねえよ。第一俺以外の誰がお前の手綱を掴んでおけるんだ」

「ソーマ、ツンデレー」

「ツンデレー!」

「っ、おい……ぶっ飛ばすぞ?」

 

割と本気で睨まれる2人であったが、そんなもの無意味とばかりにニヤニヤとした笑みを返す。

それに負けたのか、やがてソーマは大袈裟にため息をついて視線を逸らしてしまう。

 

「いつ行くのー?」

「明日だよー」

「そっかあ……ソーマ、シオの事守ってやらないと駄目だよ?」

「わかってる。それより色々と準備しないといけなくてな……悪いが」

「んーん。じゃあまたねシオ?」

「うん、お土産沢山用意してくるからなー!」

「そういうモンじゃねえんだよ、いいから行くぞ」

 

シオとソーマがその場を離れ、一人残されたラウエルは…ぽつりと一言。

「…………いいなー」

と、シオに向かって羨望の言葉を零していた。

 

アリサにはカズキが傍に居てくれる、心が繋がってる。

シオにはソーマが傍に居てくれる、否定するけど大事に想われてる。

でも……自分にはそういうのが居ないなと、ラウエルはふと思ってしまった。

友人なら沢山居る、自分を可愛がってくれる仲間だって存在する。

だけど、自分を“特別”扱いしてくれる存在は、アリサにとってカズキのような存在はいない。

別に構わない、構わないけれど……ほんの少しだけ、ラウエルは羨ましいと思ってしまったのだ。

 

 

 

 

 

 

(ラウエルにも見つかるかなー? “特別”な人……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To.Be.Continued...




次回はそうとう短くなります。

何故なら次回は導入編最後、すなわち……ブラッド側の主人公が出てきますから。

それと補足説明、この物語には第四部隊は存在しません、ハルオミさんもカノンさんも第三部隊所属となっています。

理由は特にないです、でもタツミさん達を出したいと思っているので、もしそうなったら部隊が違うと弊害が発生するかなーと思いまして。
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