神々に祝福されし者達【完結】   作:マイマイ

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もっと強くならなければならない。

現実を改めて再認識したカズキは、自らの身体を痛めつける。

それが、仲間達を心配させる原因になろうとも、彼は歩みを止める事は無かった……。


捕喰11 ~アリサとカノン~

「はぁ…はぁ……」

 

 荒い息をしながら、エントランスロビーを歩くカズキ。

 ……先程まで、アラガミと命のやりとりをしていたのだ。

 

「ヒバリちゃん……討伐ミッション、ある?」

 

 受付のヒバリに話しかける、しかし彼女は少し呆れたような表情で言葉を返した。

 

「カズキさん、今日はもうお休みになられた方がいいですよ?」

 

 最近、彼は1日に何度も討伐ミッションに出撃している。

 明らかに無理をしているのがわかるので、ヒバリはそう進言するのだが……カズキは首を横に振った。

 

「大丈夫だよ。さっきだってコンゴウ一体とオウガテイルが四体だけだったから」

「でも、たった1人で倒したんですから、疲労だって相当でしょう?」

 

 ゴッドイーターとして成すべき事をしているだけなのだが、彼は少し頑張りすぎだ。

 

「どうしたんですか?」

 そんな中、カズキ達に近づく1人の少女が。

 

「カノン先輩……」

 

 明るいピンク色の髪の少女、台場カノン。

 ミッションを受注しに来たのだろう、しかしカズキ達の話し声を聞いたのか、首を傾げている。

 

「こんにちはカズキさん、これからミッションですか?」

「ええ、まあ」

「カノンさんからも言ってあげてくれませんか? 今別のミッションを終えたばかりなのに、また行こうとしているんですよ?」

「ええっ、それは、大変ですよぉ……やめておいた方が」

 

 ヒバリの呆れを含んだ言葉に、カノンは驚きつつもカズキにそう告げるが。

 

「カノン先輩、これからミッションに行くなら僕も手伝います」

「えっ、えっ……?」

 

 逆にそう言われてしまい、困惑してしまった。

 そして、また別の少女が現れてしまう。

 

「抗神さん、これからミッションですか?」

 威圧的な態度を出す少女、アリサの登場である。

 

「うん。それでカノン先輩、もしミッションに行くなら僕にも手伝わせてくれませんか?」

「えっと、あの……」

 

 確かに、手伝ってもらえるなら有り難い事この上ない。

 カズキはまだ新兵でありながら、雨宮姉弟の教育もあってか確実に実力を伸ばしている。

 それに、自分が受けようとしていたのはグボロ・グボロ2体の討伐なので、彼が足手まといになる要因はなく、もしかしたら自分の方が足手まといになる可能性すらあるかもしれない。

 しかし、先程の言葉を聞いてしまった手前、「じゃあお願いします」と言うのも些か躊躇いが生まれてしまう。

 と、アリサが口を開いた。

 

「だったら、私もそのミッションに参加します」

「えっ?」

「ちょうど他のミッションもありませんし、正直抗神さん達だけじゃ不安もありますから」

 

 相変わらずの上から目線、さすがのカノンも少しだけカチンと来たが……ここは我慢して口を開いた。

 

「………それじゃあ、お願いします」

 

 本当は今のカズキを連れて行きたくはないと思っているが、彼を止める術がない以上は仕方がない事ではあるし、アリサも参加してくれるなら何かあった時にフォローが間に合うだろう。

 

「……では、ミッション受注を承りました」

 

 少し呆れたような口調でそう言いつつ、コンソールを操作するヒバリ。

 

「それじゃあ行きますよ」

「カノン先輩、行きましょう」

「あ、はい……」

 

 新型2人と一緒の任務は初めてだなー、と思いながら、カノンは鉄塔エリアに向かう為に出撃ゲートへと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

――鉄塔エリアに到着する3人。

 

「今回はグボロ・グボロ2体の討伐でしたよね、なら余裕です」

「アリサちゃん、油断は禁物だよ」

「わかってます。偉そうに言わないでください」

「…………」

 

 2人のやりとりを見ながら、カノンは思う。

 

(仲、良いなぁ……)と。

 

 ややズレた考えだが、あながち間違いではないかもしれない。

 相変わらずアリサの物言いは高圧的であるものの、カズキ自身まるで気にした様子もなく、笑って受け流すので口喧嘩になる事はない。

 アリサもアリサで、カズキの事をなんだかんだ言いつつ信頼しているので、これはこれでいい信頼関係を築いているのかもしれない。

 

 でも……それが、何となくカノンには気に入らない。

 あんなに優しいカズキに対して、偉そうな態度を崩さないアリサも。

 また、あんな態度のアリサにも甘いカズキも。

 なんだか……カノンには気に入らなかった。

 

「カノン先輩」

「ひぇ?」

 

 カズキの声で我に返る、すると2人は立ち止まり気配を殺しながらある場所に視線を向けていた。

 その視線の先には――アラガミが一体。

 魚類の頭部とヒレを、そのまま大きくしたような身体。

 背中には楕円型の盾のような背ビレを持ち、額には砲塔のような突起が。

 

 このアラガミこそグボロ・グボロ、アラガミの中で唯一の水上でも行動できるアラガミだ。

 今は捕喰中なのか、壁などをバリバリ食べている。この分なら奇襲は充分可能だろう。

 

「それじゃあ、まずは銃撃で奇襲して、僕とアリサちゃんが前衛で戦うから、カノン先輩は後方で――」

「いきます!!」

 

 カズキの作戦が全て話される前に、アリサは神機を剣形態に変形させグボロ・グボロへと向かっていく。

 

「アリサちゃん!?」

「あ、あの……勝手な行動は」

 

 少し遠慮がちに言うするカノンだったが、時既に遅くアリサは奇襲の一撃をグボロ・グボロの背ビレに叩き込んだ。

 

「ググッ……」

 

 くぐもった声を漏らすグボロ・グボロ、その隙にアリサは間合いを広げる。

 

「はぁ……」

 

 気づかれた、こうなってしまえば奇襲などできるわけがない。

 ため息をつきつつ、カズキは神機を握りしめアラガミの元へ。

 

「アリサちゃん、1人で勝手な事をしちゃダメじゃないか」

「こんな程度のアラガミなら、私1人で充分だと判断したまでです」

「たとえそうだとしても、仲間が居るんだから勝手な行動は厳禁だよ。

 1人で戦ってるんじゃない、僕達はチームなんだから」

 

 ちょっと強めの口調でそう言うと、アリサはあからさまに不満そうな表情を返してくる。

 

「ひゃあ!?」

「わっ!?」

 

 同時にその場から飛び退く2人、瞬間そこに銃撃が通り過ぎた。

 

(ああ、またか……)

 

 頭を抱え、ため息をつくカズキ。アリサは突然の事態に驚いている。

 銃撃を放ったであろう場所には……。

 

「――射線上に入るなって、わたし言わなかったっけ?」

 いつものように「変わった」カノンが、口元に邪悪な笑みを浮かべて立っていた。

 

「な、な、な……何するんですかあなたは!?」

「勝手な行動に出たくせに、よくそんな事が言えるわね」

 

 普段の弱々しさなど欠片もなく、冷ややかな目をアリサに向けるカノン。

 これには、アリサも黙ってはいなかった。

 

「ふ、普段は弱々しくて鬱陶しいくらいなのに、何で急に強気になってるんですか!!

 大体、誤射率が一番高いくせに偉そうな事言わないでください!!」

「それはわたしが悪いんじゃない、射線上に立つ方が悪いのよ」

「そういうの開き直りって言うんですよ!!」

「あなただって、新型だからって無駄に高圧的だし、カズキに迷惑掛け過ぎなのよ」

 

(呼び捨て……)

 

「そういうあなたこそ、誤射ばかりで抗神さんも迷惑だって思ってますよ!!」

「何ですって!?」

「何ですか!?」

 

 アラガミそっちのけで、口喧嘩を続けるアリサとカノン。

 

「2人とも戦って!!」

 

 その間にも、カズキは必死に1人でグボロ・グボロと戦っていた。

 背ビレが天に向かって立ち、額の突起物から放たれる複数の水大砲。

 

「くっ………!」

 

 それを右方向のサイドステップで回避、すかさずジャンプして放電チェーンソーの刃をグボロ・グボロの砲塔に叩きつける。

 刃は砲塔の途中で止まり、何かに引っかかったのか抜けない。

 

「っ」

 

 口を開くグボロ・グボロ、すかさずカズキは半分ほど切断された砲塔を蹴り上げ背ビレの上に乗り出す。

 すると、急にグボロ・グボロが顔を仰け反らせた。

 

「ちっ!!」

 

 ターミナルで記録されていた動きを思い出し、刀身を無理矢理引き抜いてグボロ・グボロと距離を離した。

 刹那、グボロ・グボロの周りに降り注いだのは――強力な酸を含んだ雨。

 グボロ・グボロの特徴的な攻撃の一つだ、さすがに溶けてなくなったりはしないが、大きなダメージになるのは必至。

 と、急にグボロ・グボロが進路を変更。

 

「っ、アリサちゃん、カノン先輩!!」

 

 向かう先は、いまだに喧嘩を続ける2人にだ!!

 すぐさま駆け寄ろうと走るカズキ、だが……。

 

『うるさい!!』

 

 まったくの同時に、2人から放たれた怒声。

 先程までいがみ合っていたというのに、打ち合わせでもしてたんじゃないかというタイミングでそれぞれ神機を構え、向かってくるグボロ・グボロに強力な砲撃を連続で叩き込む。

 

「ググゥゥゥゥ……!」

 

 小さく低い苦悶の声を上げるグボロ・グボロ。

 アリサの攻撃は砲塔を完全に破壊し、カノンの攻撃は牙を砕く。

 

「…………」

 

 その光景に、カズキはおもわず動きを止めてしまった。

 その後、2人はまたも喧嘩を始めてしまう。

 

(………もう、いいや)

 

 下手に口出しすれば、間違いなくこちらへと飛び火してしまう。

 そう思ったカズキは、2人を一旦放っておく事にして、辛うじて生きているグボロ・グボロにトドメを刺そうと、剣を振り上げた。

 

 

 

 

 

「――アリサちゃん、右に跳んで!!」

「わかってます!!」

 

 カズキの指示を耳に入れ、右に跳んで攻撃を回避するアリサ。

 

「そらっ!!」

 

 それと同時に、カノンの砲撃がグボロ・グボロを捉えた。

 1体目を倒したカズキ達は、すぐさま2体目のグボロ・グボロと戦闘に入っていた。

 

「カノン先輩、僕達がアラガミから居なくなるまでは待機していてください!!」

「わ、わかりました!!」

 

 言いながら地を蹴り、上段からの一撃を叩き込むカズキ。

 その斬撃は見事にグボロ・グボロの砲塔を破壊し、すぐさま後ろからアリサの剣がその大きな口に食い込んだ。

 

「ググァッ!?」

「こ、のぉ―――!」

 

 食い込んだ刀身を力いっぱい横に振り回すアリサ。

 それによりグボロ・グボロの口が更に裂け、ドクドクと噴き出した血が地面を赤く汚していく。

 その隙にカズキは神機を捕喰形態へ、倒れたグボロ・グボロを補喰し、アラガミバレットを採取。

 

「カノン先輩、お願いします!!」

 

 採取したアラガミバレットを、銃形態でカノンへと渡すカズキ。

 そして、カノンはアラガミに向かって砲身を構えながら口元に笑みを浮かべ。

 

「肉片にしてあげる!!」

 

 ニメートルを大きく越えるグボロ・グボロを、楽に飲み込める程の水大砲が濃縮アラガミバレットとして、撃ち込まれた。

 

「グッ、ガ……」

 

 まともに撃ち込まれ、グボロ・グボロの身体の三分の一が大きく“抉れて”しまった。

 

「やぁぁぁぁっ!!」

「し―――!」

 

 まだ生きている、そう判断したカズキとアリサは同時に駆け出し剣を振るった。

 刃はそれぞれグボロ・グボロを引き裂き――その命を奪い取った。

 

「…………ふぅ」

 ゆっくりと息を吐き出し、グボロ・グボロのコアを捕喰形態で抜き取るカズキ。

 

「アリサちゃん、カノン先輩、お疲れ様でした」

「は、はい、お疲れ様でした」

「こんな程度なら、1人でも充分です」

 

 それぞれ“らしい”返事を返す2人、先程は口喧嘩をしていたが、今は大丈夫のようだ。

 ……アリサは根に持っているのか、カノンを睨みつけているが。

 

「それじゃあ、そろそろ戻りましょうか」

「そうですね」

「はい」

 

 頷きを返すアリサとカノン、しかし……カズキは思い出したように立ち止まった。

 

「あっ、そうだ」

「………?」

「抗神さん、どうかしましたか?」

 

 カズキの声に反応し、アリサとカノンも立ち止まる。

 そんな彼女達に、カズキはおもむろに近づき。

 

「ふにゃ!?」

「ふぇっ!?」

 ポカリと、2人の頭を軽く叩いた。

 

「な、何するんですか!?」

 

 抗議の声を上げるアリサ、カノンは突然の事でポカンとしている。

 

「……アリサちゃんもカノン先輩も、戦いの最中に喧嘩なんかしないで。

 今回は他のアラガミがいなかったから良かったけど、凄く危ない行為なんだから」

「で、でもあれはカノンさんが――」

「言い訳しない」

「………自分だって無茶な事してるくせに」

「何か言った?」

「いーえ、何も」

 

「……とにかく、もう喧嘩しないって約束できる?」

「…………」

「約束できるよね? アリサちゃん、カノン先輩」

「……………わかりました」

「は、はい……ごめんなさい」

 

 アリサは渋々と、カノンは素直に頭を下げる。

 

「うん、良い子だね」

 

 それに満足したように、2人の頭を優しく撫でるカズキ。

 

「ふぁぁ……」

「っ、で、ですから頭を撫でないでくださいよ! 帽子がずれちゃうじゃないですか!!」

 

 顔を真っ赤にして怒るアリサだが、カズキはごめんごめんと軽く謝るだけであまり反省の色は見られない。

 それにもう一度怒鳴ろうとしたアリサだったが、もう何度も同じやりとりを繰り返したので、諦めた。

 

「…………えへへ」

 

 一方、カノンは嬉しそうにけれど少し恥ずかしそうに口元をにやつかせている。

 

「……頭撫でられて嬉しかったんですか? どん引きです……」

「ふぇっ!? あぅ……で、でもでも、アリサさんも嬉しそうに――」

「っ、し、してるわけないじゃないですか!! な、何言ってるんですかあなたは!!」

 

 がーっ、と怒鳴り早足で歩いていくアリサ。

 ……しかし、先程カズキに撫でられた時に、確かに口元に笑みを浮かべていたように見えたのは、きっと気のせいではないはずだ。

 

(素直じゃないなぁ……)

 

 言ったらまた怒鳴ってきそうな事を考えつつ、カノンも2人の後を追ったのだった……。

 

 

 

 

To.Be.Continued...

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