神々に祝福されし者達【完結】   作:マイマイ

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ブラッド隊員、フィアの戦いは続く。

さて、今回の物語は………。


第3部捕喰88 ~極東支部の者~

「――チャージしてる最中だと、移動がしにくいんだよね」

「チャージに力を込めすぎだから推進力でもっていかれるんだ、移動する時はその辺の調整が必要だな」

「なるほど……やっぱりスピアの事ならギルに訊くのが一番だね!」

「………俺でよければ、もっと頼れ」

「うん、ありがとうギル!」

 

にこっと微笑むフィアに、ギルも優しい笑みを返す。

まるで仲睦まじい兄弟のように映る、それを遠目で見ていたジュリウスは…自然と表情を強張らせた。

 

「……ジュリウス、なんか…機嫌悪いのか?」

「ロミオか。別に悪いというわけではないさ……」

(じゃあなんで睨むようにギルを見てるんだよ……)

 

なんだか最近親友の様子がおかしいと、ロミオは思いつつその場を離れた。

それはともかくとして、相変わらず仲良さそうに話している2人に近づく存在が。

 

「――こんにちは。あなた達…ブラッドの人?」

「…………誰だ?」

 

突然声を掛けてきた見知らぬ少女、ギルはさりげなくフィアを庇うように移動する。

長い白銀の髪が特徴的な美しい少女だ、だがナナに負けない露出の多い服装の方が目に行く。

警戒心を露にするギルにも気にした様子もなく、少女は自らの名を明かした。

 

「ローザの名前は“抗神ローザ”、フェンリル極東支部第一部隊の副隊長だよ。よろしくね?」

「極東支部だと……?」

「うん。サカキ支部長の指示で暫くこのフライアで一緒に戦う事になったの、そっちの隊長さんからは聞いてない?」

「………そういえば、ジュリウスが昨日言ってたかも」

「なに? ……あいつ、俺達には何も言ってないくせにフィアにだけは言うのか」

「――そういうわけじゃない。ただ……予定では明日ではなかったのですか?」

 

と、ここでジュリウスがフィア達の元へとやってきた。

今日辺りにでも他の隊員に伝えようと思ったのだが、少し遅かったようだ。

 

「あなたがブラッドの隊長さん?」

「ジュリウス・ヴィスコンティです。あなたが噂に名高い“戦乙女”の抗神ローザさんですね?」

「あはは……その恥ずかしい二つ名で呼ぶのはやめてくださいよー」

 

苦笑するローザ、それを見てジュリウスは「失礼」と謝罪の言葉を口にした。

……一方、先程から会話に参加していないフィアは、じっとローザへ視線を送っていた。

彼女の容姿に見惚れていたわけではない、ただ…彼女の“内側”を見て違和感を覚えていただけ。

普通の人間には決して備わる事などない異質さに、気がついただけであり。

 

――そしてそれは、ローザも同じであった

 

「…………君は」

「………何?」

「………ううん。なんでもないよ」

 

だがローザは何も言わなかった。

彼の瞳がそれを許さないと訴えていたから、そっと胸の内に留める事にした。

だからフィアもローザの異質さに気づきながらも、何も言う事は無かった。

 

「……とにかく数日だけだけど宜しくね? えっと……」

「フィアだよ。フィア・エグフィード」

「よろしくね、フィア?」

「うん。よろしくローザ」

 

握手を交わす2人、どちらからともなく笑みを浮かべ合った。

……蚊帳の外状態になっていたジュリウスとギルが、少しだけ変な表情を浮かべていたのは余談である。

 

「ねえフィア、ブラッドの隊員ってここに居る3人だけ?」

「ううん。後はナナとロミオが居るけど……会ってみる?」

「もちろん! 案内してくれる?」

「いいよ。多分庭園エリアに居ると思うから」

 

そのまま2人は、フライアの庭園エリアへと向かっていく。

場に残されたジュリウスとギルは、暫しその場で立ち尽くしてから。

 

「――フィアは、ああいうのがタイプなのか?」

「………知らん」

 

そんなやりとりを行ってから、2人の後を追ったのだった。

それから4人は、エレベーターを経由して庭園エリアに。

辺りを見回すフィア、すると予想通りそこにはナナとロミオの姿があり声を掛けながら近づいた。

 

「ナナ、ロミオ」

「ん? フィア、どうしたの…って、どちら様?」

「うお……すげえ美少女………」

「この人は抗神ローザ、極東支部の神機使いなんだって」

「はじめまして。抗神ローザだよ、よろしくね?」

「あ、はい。はじめまして、こちらこそよろしく……」

「よ、よ、よ、よろしく、おね、お願いします!」

「……ロミオ先輩、なんで盛大にキョドってるの?」

「おま、当たり前だろ! こ、こんな綺麗な子が現れたら……」

「えへへ。嬉しいな、ありがとうロミオさん」

「……………」

 

名を呼ばれたのが嬉しいのか、ロミオは顔を赤らめながらも確かな笑みを浮かべていた。

それが少し気持ち悪いと思ったナナは、さりげなくロミオから離れる。

内心幸せに包まれていたロミオだったが……暫くして、ハッとしたような表情を浮かべ声を上げた。

 

「ん? ちょっと待った、抗神って……もしかしてローザさん、あの“抗神カズキ”さんの親戚?」

「義理だけど妹なんだ。でもさすがお兄ちゃん、ブラッドの人にまで名が知られてるなんて凄いなあ」

「ロミオ先輩、抗神カズキって誰の事ですか?」

「バッカ、お前ゴッドイーターなのにしらねえの!? 極東支部の抗神カズキって言ったら超有名人じゃん!!」

「………そうなの?」

 

今度はフィアに問いかけるナナ。

しかしフィアも知らないので、さあと肩を竦め答えを返す。

 

「……抗神カズキ、極東支部第一部隊の隊長で世界最強の神機使いと謳われる生きた伝説だ」

「ほえー……世界最強かあ……」

「確かに神機使い…フェンリル関係者であるなら、彼の事を知らない者は居ないだろうな。

 それだけの功績を残している人だ、俺も直接会ったわけではないが……彼の功績には頭が下がる」

「そ、そんなに凄い人なんだ……」

「なんでも百体のアラガミに囲まれても、たった一人で全滅させたとか…あとはあらゆる神機を使いこなしてどんなアラガミも一撃で倒してしまうとか……なんかとにかくすっげえんだよ!」

「さすがにそれは誇張し過ぎだよ……あ、でも百体のアラガミの方はお兄ちゃんならやりかねないかも……」

「マジで!?」

「うん。だってこの間だってスサノオとディアウス・ピターとアイテールとラーヴァナとテスカトリポカを同時に相手にして勝っちゃったし」

「………凄まじいとしか、言いようがないな」

 

今出たアラガミはどれも強力であり、並の神機使いでは遭遇すら禁忌とされている種だ。

それをたった一人で同時に相手をして勝利するなど……さすがのジュリウスも驚くしかできなかった。

ロミオに至ってはポカンとしているし、ギルも表情には出さなかったものの内心では驚愕に包まれていた。

 

「……その人、本当に人間?」

「あはは……でもお兄ちゃんだって最初から凄かったわけじゃないんだよ? 沢山の仲間や親友がお兄ちゃんを支えてくれたから…どこまでも高みへと昇っていったの」

「結束の力、それは牙も爪も持たない人類が強大な敵に立ち向かい勝利してきた際に用いた約束の剣。成る程……彼もまた、その結束の力を大切に守ろうとして強くなっていったのですね」

「うん。まあそれを差し引いても凄すぎだけどね……」

 

きっと今頃、普通の神機使いが苦戦するアラガミを事も無げに倒している事だろう。

確かに彼を強くしたのはジュリウスが言った結束の力のおかげだ、とはいえ……あの強さにはただ脱帽するだけだが。

色々な意味で、彼の領域に辿り着ける人間はいないだろう。可能性としては、彼が唯一頭の上がらない奥さんぐらいかもしれない。

 

(いや……もう1人居るかも)

 

そう考えながら、ローザは視線をフィアに向ける。

戦う姿を見ていないにも関わらず、ローザはなんとなくフィアの力を推し量れた。

普通の神機使い以上の力が見え、しかもそれは際限なく高まっていくと予感できる。

この少年は間違いなく今よりも強くなる、もしかしたら最強と名高い自分の兄に届きうる可能性が……。

 

「ん? 失礼、通信が入った……」

 

そう言ってジュリウスは懐にある通信機を手に取り起動する。

そこから聴こえてきたのは、フライアのオペレーターであるフランの声だった。

 

「フラン、どうした?」

『フライアの進行方向に多数のアラガミを確認しました、迎撃をお願い致します』

「わかった。すぐに出撃する」

 

通信を切るジュリウス、すぐさま彼は皆にアラガミの事を伝えた。

 

「早速戦う機会が出てきたってわけか……」

「あなたの力も貸してもらいます」

「もっちろん。ローザはその為にここに来たんだから、それはともかくとして…6人居るから、3・3の二チームに分かれよっか?」

「それはいい案だけど……どうやって分けるの?」

 

『俺とフィアは同じチームで行動するぞ』

 

まったくの同時に、同じ言葉を放ったのは…ジュリウスとギル。

暫し沈黙が続き…2人はお互いを軽く睨み合った。

 

「……フィアはまだスピアの扱いに慣れてねえ、ここは同じ武器を使う俺が一緒のチームの方がバランスがいい筈だ」

「ならば隊長として俺が同行した方がいい。同じチームに武装が固まるのは得策とは言えない」

『………………』

 

「……ねえナナ、ジュリウスとギルって仲悪かったっけ?」

「うーん……そんな事ないと思うけど、どうしたんだろうね?」

(このお子様コンビは…今漂ってる不穏な空気に気づかないのか……?)

 

いつも通りなフィアとナナに、ロミオはため息を吐きつつ一刻も早くこの場から逃げ出したかった。

ジュリウスとギルもフィアに対して過保護が過ぎる、まあその気持ちもわからなくもないが……。

 

「――ローザとフィアとナナさん、この3人でチームになろうか?」

『何………!?』

「いいですよね?」

「………………わかりました。では俺とギルとロミオの3人で別チームになりましょう」

(ええ~………)

 

嫌だ、俺も向こうのチームがいいとロミオは言えるなら言いたかった。

「宜しくお願いしまーす」とやりとりをしながら、既に向こうは仲睦まじい雰囲気を出している。

対するこちらは……男ばかりのチームで、ロミオが戦う前から戦意を喪失していくのを感じていたのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ガルムにヴァジュラ、それとグボロ・グボロに複数の小型アラガミかあ」

「うわあ、結構数が多いけど大丈夫かな……?」

 

戦場に赴き、まずは遠くからアラガミの戦力を確認するフィアチーム。

今頃ジュリウスのチームも別のエリアでアラガミと交戦している頃だろう。

 

「グボロ・グボロは遠距離攻撃が厄介だから注意してね?」

「はい、了解です!」

「……ジュリウス達、大丈夫かな?」

「大丈夫だよフィア、隊長達はすっごく強いんだし」

「それより、自分の心配もした方がいいよ?」

「うん………わかった」

 

ローザの言う通りだと、フィアは神機を強く握り締める。

顔つきが変わり、一瞬で戦士の顔に変化したフィアを見て…ローザは複雑な表情を浮かべた。

彼は最近ブラッドに入った新人だと言っていたが、とてもそうは思えない。

既に幾多の戦いを乗り越えていると、同じく戦いを繰り返してきたローザにはそう直感できた。

そして同時に、戦いによって発生する憎しみや怒り、悲しみといったものを背負っていると…そう思えた。

 

「―――ローザさん、どうかしました?」

「っ、ううん……よし、それじゃあローザが後衛を担当するから、ナナさんは前衛でフィアは遊撃をお願いします」

「了解です。フィア、無理しないでね? 無茶な事したらダメだよ?」

「ナナは心配性だなあ」

「……心配したくなるよ。とにかく無茶はダメだからね?」

「わかった。約束するよ」

 

言うやいなや、フィアは地を蹴りアラガミの群れに向かっていく。

無茶をするなと言ったばかりなのに、そう呆れたような呟きを放ちつつナナも走る。

ローザもそれに続き……ふと、戦場に居るというのに彼女は歩を止めてしまった。

 

(これは……早く勝負を決めてしまわないと)

 

複数のアラガミの気配、それを察知しローザの表情が険しくなっていく。

このままでは合流されてしまうだろう、そうなれば戦いが激化し生存率が著しく低下する。

焦らず、けれど迅速に現存するアラガミを撃破する……己にそう言い聞かせて、ローザは今度こそ戦場へと赴いた………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

To.Be.Continued...




ジュリウスさんとギルの兄貴の言動はスルーしてください(笑)

うちのロミオさんがブラッドの苦労人ポジションになってしまった……残るシエルさんはどんなポジションになるのだろうか?

原作ではエミールでしたが、ローザに変更させてもらいました。

理由としてはこの後のあるイベントをシリアスにしたかったからです、別にエミールがギャグ要員だから省いたわけじゃないですから……(震え声)

原作に沿って基本は進みますが、これはあくまで二次創作なのでご了承の程をお願い致します。
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