さて、今回の物語は……。
「――諸君、よく集まってくれた」
極東支部のラウンジ内。
そう言って口火を切ったのは、極東支部第三部隊隊長の真壁ハルオミ。
リンドウに続く年長者であり頼りになる男なのだが……如何せん自身の欲望に弱いのが玉に瑕。
そんな彼の周りには、タツミにコウタ、そしてロミオにジュリウスにフィアといった男性陣がソファーに座っていた。
「……一体、何の集まりなんだ?」
「さあ? ボクはロミオとコウタに連れてこられただけだから」
小声で話すフィアとジュリウス、一体今から何が始まるというのか。
すると、ハルオミは真剣な表情のまま口を開き。
「――今から、極東支部の女性で誰が一番魅力的か語り合う会を始める!!」
馬鹿馬鹿しい事を、ほざきやがりました。
ポカンとするフィアとジュリウス、しかし他の男性陣はやんややんやと騒ぎ立てる。
「さあ。口火を切るのは一体誰だ!?」
「はい!!」
元気よく返事をしながら立ち上がったのは――タツミであった。
だが周りの男達は、一気にテンションを下げため息をつく。
「な、なんでそんなテンション下げてんだよ!?」
「だってさー……どうせタツミさんは、ヒバリちゃんの事を力説するんでしょ?」
「当たり前だろ!! 俺にはヒバリちゃんしか居ないんだ!!」
「3年経っても変わりませんね、タツミさん」
まあ、一途という意味ではたいしたものだとコウタは思った。
けれどだからといって聞き飽きたタツミの話を聞く気にはなれない、なので却下する事にした。
「よーし、じゃあまずは第一部隊隊長になったオレから話そうか!」
「わー、いいぞーコウタさーん!!」
「ねえ、帰っていい?」
「俺も付き合いきれん」
「何言ってんだよ2人とも、男の親睦を深めるにはこういう会話が一番いいんだって!」
「……そうなの?」
「間違いなく違うな。……フィアに悪影響を与えないでいただきたい」
「ジュリウス……フィアのお父さんみたいになってないか?」
「何を言っているんだロミオ、俺はただフィアには正しく育ってほしくてだな……」
(お父さんだ………)
だがしかし、フィアもジュリウスもハルオミ達によって逃げ出す事もできず結局このアホみたいな会話に参加する事になってしまった。
「話を戻すぞー、そうだな……魅力的な女性は沢山居るけど、やっぱサクヤさんでしょ!」
「まさかの人妻かよ!?」
「魅力的な女性を語るんだから、別に人妻でも一向にいいんだよ」
「オレ、初めてサクヤさんに会った時マジで惚れそうになっちゃったんだよなー……」
「おおっ、まさかの新事実!?」
「だが俺もコウタの気持ちはわかるなー、特にあの服装……見えそうで見えないアレがまた……」
「ハルオミさん、軽く引きますけどその気持ちは同意できます!!」
「……あのー、俺サクヤさんって人知らないんですけど」
「そうだったな。じゃあそんな可哀想なロミオ君に俺の秘蔵コレクションを見せてやろう」
そう言ってハルオミは懐からある写真を取り出す。
そこに映っていたのはサクヤ、しかし……アラガミとの戦闘中の写真であった。
だが激しく動き回っているからかスカートは乱れており、そのアングルはなかなか官能的に映っている。
「う、うおおおおおお………!?」
「どうだいロミオ? これでお前もオレがサクヤさんを推す理由がわかっただろ?」
「は、はいコウタさん!!」
「……………」
「はぁ……」
もう帰りたい、ジュリウスはその感情を溜め息として吐き出した。
しかしまだこのアホ会話は続く、続いては……ハルオミが挙手した。
「正直言って、皆が皆魅力的過ぎるから一番を決める事はできなかった。
しかし敢えて推すとするならば……俺はアリサだな」
「アリサさんかあ……! 確かに、魅力的ですよね!!」
「うーん……オレとしては第一部隊時代から何かと弄られてきたからなあ……」
魅力的に感じないと言えば嘘になるが、コウタとしてはアリサは推す対象には選べなかった。
そんな彼に、チッチッチ…とわざとらしく指を振るハルオミ。
「わかってねえなコウタは、確かにあの子はまだ子供と言える年齢だが……結婚して、人妻になっただろ?」
「ええ、まあ………」
「それによってかはわからんが、なんというか……エロくなったと思わないか?」
「……そ、それは確かに」
(なんだこの会話……)
「最初見た時はまだ子供に見えたが……時々表に出す女の顔とか、見えそうで見えない下乳とか…いいと思わんか?」
『思います!!!』
これには、コウタ達3人の男子は同意せざるおえない。
ちなみにジュリウスは既に聞き流す体勢になっており、フィアに至っては会話についていけていない。
「すっげえ美人ですもんね、アリサさん」
「しかも時々子供っぽい顔も見せるし……カズキと結婚してもいまだ人気なのも無理ないって」
「まあ、一部の男性に対しては結構辛辣ですけどね……オレとか」
「だがそれがいい、って思ってるヤツも居るらしいぜ?」
「……そいつら、大丈夫なんですか?」
男達の会話は続いていく。
早く帰りたい、その一心でひたすら耐えるジュリウスと、会話についていけないので寝入っているフィアの事など既に忘れているようだがそれはさておき。
「じゃあ次は……ロミオだな」
「うーっす、俺はそうだなあ……」
「そういえば、同じブラッドのナナちゃんにシエルちゃんも結構な美少女だよな?」
「……それは認めますけど、ナナは先輩である俺に対して全然尊敬してないし、シエルはシエルで時々真顔で辛辣な事を言ってきますからね……」
(……何だろう、ロミオの待遇がオレと似てる気がした)
妙な共通点を見つけたコウタはさておき、ロミオの話は続いていく。
「俺は……カノンさんとかですかね?」
「カノンちゃんかあ、なかなかなチョイスだなロミオ君」
「あのちょっと天然な所が良いんですよね…見てて和むというか」
「でも、出てる所は出てんだよなあの子」
「しかも料理上手でドジっ娘って所もいいよな」
「ただ……誤射した時の性格改変はちょっと恐いです」
『それは確かに』
この三年で、カノンの誤射は当時と比べものにならないほど減った。
しかし戦闘で性格が変わる所は直っていないので、それを始めて見た時ロミオが割とマジでビビッたのは余談である。
「じゃあ次は……ジュリウス!!」
「…………は?」
「あーっ、フィアはなんで寝てんだよ!!」
「まあいいじゃねえか、お子様にはまだ早い大人の会話だからな」
(大人の会話……?)
「ほらジュリウスも話してみろって」
「いや、俺は……」
「ていうかさ……ジュリウスに訊きたい事があったんだよな」
「何だ? ロミオ」
「お前さ……なんであんなにユノさんと親しいんだよ!?」
「えっ、何だそれ初耳なんだけど!?」
「ほーほー……これは是非とも話してもらいたいもんだなあ」
「……………」
詰め寄ってくる男性陣に、ジュリウスは冷たい視線を送ってやった。
しかしそんな事で離れる彼等ではなく、ジュリウスはため息混じりに質問を答えた。
「立食パーティー等で何度か会話を交わしていてな、歳も割と近いから話すようになっただけだ」
「えー、その割には随分と仲が良すぎるというか……」
「歌姫とイケメン隊長の恋……なかなかだな」
「何を言っているのか、理解に苦しむんですが」
「で、実際の所は?」
「……彼女とは良き親友というだけです、まあお節介が過ぎる時もありますが」
「ちくしょー、なんだよ……やっぱ男は顔なのか!?」
「まあまあロミオ君、今夜は一緒に飲もうじゃないの!」
「…………話、終わった?」
あまりにうるさかったからか、寝入っていたフィアが目を醒ましてしまった。
「ちょうどいい、ここは副隊長殿にも訊いてみようじゃないの~!」
「でもハルオミさん、フィアはそういうのよくわかってないですよ?」
「? 何の話?」
「フィア、気にしなくていい。そろそろ行こう」
「なんだよジュリウスー、俺はまだお前の尋問を終えてないぞ!!」
「だから、俺とユノはそういった関係ではないと何度言えば……」
「――あ、いたいた。フィアーー!!」
「フィアさん、こんな所に居たんですね」
ぎゃいぎゃいと騒ぐ男達の前に現れたのは、ナナとシエル。
まだ寝ぼけ眼のフィアを見て苦笑しつつ、2人は彼を立ち上がらせた。
「フィアさん、お時間がありましたらブラッドバレットの件で色々と話したい事がありまして……」
「シエルちゃん、それはまた今度にしてお茶会にしようよ!」
「ですが………」
「はいはい。それじゃあフィアを借りていきますねー?」
「………じゃあね」
こちらの意見は聞かないのかと思いつつも、ここに居ても面倒な事に巻き込まれそうだと判断したフィアは、おとなしく2人についていく事にした。
……美少女2人に挟まれるフィアを見て、ジュリウスを除く男達は暫し呆然とし……我に返った時には、なんだかよくわからない敗北感を味わっていた。
「な、なんでフィアばっかり………!」
「……くっ、三年前のカズキを髣髴とさせる!!」
「おーおー……モテモテだねえフィアは」
(……ケイトに似てるからか、なんだか微妙な気持ちになるな)
(本当にここは激戦区の極東支部なんだろうか……)
打ちひしがれている男達を冷めた目で見つめつつ、ジュリウスはそう思ったのだった―――
To.Be.Continued...
ちょっとした日常なので短いです。
次回は………?