神々に祝福されし者達【完結】   作:マイマイ

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……もう逃げないと誓った。

もう、後ろを向くわけにはいかないと思った。

だから彼は前を向く、かつて自分が守れなかったケイト・ロウリーのために。

そして、自分を支えてくれた仲間達のために………。


第3部捕喰102 ~受け継がれる遺志、そして決着の時~

「ここで諦めるわけには………いかねえんだよおおおおおおおおおっ!!!!」

「…………ギル」

 

彼の咆哮を聞き、フィアは全身に走る痛みを忘れルフス・カリギュラを睨む。

神機は先程吹き飛ばされた際に手から離れ、遠くの地面に刺さってしまっている。

つまり今のフィアは丸腰であり、当然アラガミに対抗できるはずもなかった。

………だが、それでもフィアは“逃げる”という選択肢を選ばない。

仲間が、友達が戦おうとしているのに自分だけが逃げるわけにはいかないから。

もう二度と、“他人を見捨てて逃げる事など許されない”。

しかし先程も言ったように今の彼は丸腰、いくら人間を超えた身体能力を持つゴッドイーターでも神機が無ければアラガミには勝てない。

だから――フィアはルフス・カリギュラへと向かって走っていく。

 

――否、正確には

 

――ルフス・カリギュラの頭部に刺さった神機

 

――ケイトの神機目掛けて、駆け出した

 

「フィアーーーーーーーーッ!!」

「ギル、諦められねえなら……決めてみせろ!!」

 

ジュリウスとハルオミが同時に動く。

ハルオミは銃撃をルフス・カリギュラに叩き込みながら動きを止め、ジュリウスはフィアを守るために駆け抜けていく。

だがフィアは止まらない、彼の視界はケイトの神機にのみに向けられ――大きく跳躍する。

ルフス・カリギュラがフィアの行動を見て、左腕のブレードを展開し彼を切り裂こうとして……ジュリウス渾身の一撃が、それを阻む。

それにより数秒、たった数秒とはいえルフス・カリギュラの動きが完全に止まり。

 

「―――力を貸して、ギルを……みんなを、守る力を貸してくれ!!」

 

フィアはそう告げながら――ケイトの神機を“腕輪がある右手”でしっかりと握りしめた。

 

「な―――」

「―――に!?」

 

誰もが、彼の行動に動きを止めるほどの驚愕を見せる。

だがそれは当然だろう、彼は他者の神機を自分の腕輪に接続しようと試みているのだから。

……神機使いは、自分以外の神機を扱う事ができない。

それは神機による偏食因子やオラクル細胞の違いにより、接続すれば神機自身に神機使いの身体が捕喰されてしまうからだ。

主を失った神機が、いつまでも新たな持ち手を見つけられないのは、上記の理由があるからであり…それを知らぬ神機使いは居ない。

すなわち他者の神機を接続するという行為は、自殺するに等しい事だ―――!

 

「フィア、何をしている!?」

「何やってんだ、すぐに神機を放せ!!」

 

仲間達の必死の声にも、フィアは反応を返さない。

神機による捕喰が始まった……からではない!!

 

「ギルーーーーーーーーーー!!!」

「―――――っ」

 

その瞬間、フィアとギルの視線が合わさる。

彼の手にはケイトの神機がしっかりと握りしめられており、ギルの目には……フィアがケイトにしか見えなかった。

あの時と同じ、自分を守ろうとアラガミに向かっていくその姿は…ただ美しく、ただ頼もしい。

……いつか、自分のケイトのように誰かを守れる者になりたいという願いが浮上していく。

 

(ケイトさん……俺は、俺は………!)

 

刹那、ギルは駆け抜ける。

スピアに全身全霊を込め、裂帛の咆哮を上げながら駆け抜けていく。

……届かなかったあの時とは違う、今度こそこの刃を届かせると自らを奮い立たせ、彼はルフス・カリギュラへと向かっていった。

 

――そして、彼の中で“血の力”が目覚めの時を迎えた

 

「ギ―――ギイィィィィィィァアアァアァァァァッ!!!」

 

それは、怒りからか…それとも自らの命が刈り取られる故の恐怖心からか。

ルフス・カリギュラは聞いた事のない雄叫びを上げ、背中のブースターで空へと飛んでいく。

更に左腕のブレードを展開させ、狙いをギルだけに絞り―――

 

――しかし、ルフス・カリギュラは失念していた

 

――自らが戦っている存在は、彼だけではないのだ

 

「う――うぅぅぅ……わああああああああああああっ!!!!」

「―――――!!!!?」

 

頭部に走る激痛。

一体何が起きたのか、恐怖を知らないアラガミが驚愕を見せる。

 

「――今度は逃がさない、お前は……ここで消えろ!!!」

 

自分の更に上空から響く声、そこへ視線を向けると……。

 

――そこには、かつて自らの肉体を傷つけた人間が

 

――自分に向かって、あの時の同じように武器を振り上げている光景、が

 

「―――はあああああああああっ!!!」

 

振り上げたケイトの神機を、フィアは力任せに振り下ろす。

風を切り裂き、空気を奮わせたその一撃は――ルフス・カリギュラを確かに捉える。

左腕を深々と切り裂く斬撃、鮮血が舞いルフス・カリギュラはその衝撃と痛みでバランスを崩し地面に落ちていく。

 

「ああああああああああああああああっ!!!!」

 

地面に落ちながらも、フィアは更に神機を振り下ろそうと力を込めていく。

それに応えるように、刀身が更に深くルフス・カリギュラの身体へと刺し込まれていった。

そして、地面に勢いよく叩きつけられるルフス・カリギュラ。

その衝撃を利用して、フィアは返す刀で更なる斬撃を加えブレードを完全に破壊。

追撃を仕掛けようとして……彼は自らの意志で後ろへと跳躍し後退した。

何故か?そんな事決まりきっている。

 

「――届けえええええええええええっ!!!」

 

何故なら、最後の一撃を与える存在は、既に決まっていたのだから………。

ギルのスピアが、ルフス・カリギュラの身体へと突き刺さる。

その一撃はまさしく破格、今まで彼が放ったどの一撃よりも重く鋭いものであった。

 

「ギ……カ、ァ………!」

「………消えろおおおおおおおおっ!!!」

 

まるで懇願するようにギルはそう叫び、そして。

ルフス・カリギュラは今度こそ地面に沈み、動かなくなった………。

 

 

…………。

 

 

「……は、ぁ……」

「ふぅ………」

 

ぺたんと、ギルは神機から手を離しながらその場に座り込む。

フィアもまた、安堵したような溜め息を吐きつつ、力を抜いた。

 

――終わった

 

勝ったのだ、自分達は目の前のアラガミに……過去に打ち勝ったのだ。

その事実がギルの中で何度も駆け巡り、嬉しさやら虚しさやらが彼の中で生まれていく。

ジュリウスは死闘の終わりによる緊張が切れ、暫くその場で立ち尽くしていた。

そしてハルオミは……夕暮れの空を見上げ、亡きケイトへの想いを廻らせる。

 

「ギル、お疲れ様」

「………ああ、お前もな」

 

フィアに手を差し出され、それを掴みながら彼は立ち上がる。

そして彼に感謝の言葉を告げようとして…ようやく、彼の行った行動を思い出した。

 

「ちょっと待てフィア、お前……何でケイトさんの神機を使ってるんだ!?」

「ん? ああ、これ?」

 

フィアの右手には、確かにケイトの神機が握りしめられている。

それだけでも驚きだというのに、見た限りでは神機による捕喰が始まっていない。

これは明らかに異常である、先も説明したように他者の神機を接続させれば神機による捕喰が始まるというのに、何故彼には……。

 

「第二世代以降の神機使いは、第一世代とは異なる偏食因子を持っているんだ。

 そのせいかはわからないけど、稀に他者の神機を接続しても捕喰が始まらずにこうやって自らの神機として扱えるんだ」

「な、何だと……!?」

「おいおい……それは、マジで言ってんのか?」

 

フィアに駆け寄りつつ、彼の言葉を聞いたハルオミはおもわずそう問いかけてしまう。

 

「全員がそうと言うわけではないけど、実際にボクはその光景を目にしてるからね。

 ……それに、過去に他人の神機を接続させられた事だってあったし」

「接続…させられた、だと!?」

「おい、フィア。それは一体―――」

「とりあえず、サカキ博士にメディカルチェックをやってもらうよ。いくら過去に成功したからって、今はどんな影響を与えているのかわからないし」

「待てフィア、その前に説明をしてくれ。今の言葉は……どういう意味だ?」

「……別になんてことはないよ。ボクは生まれた時から父親だった存在から、色々と弄くられた。だからボクはもうとっくに人間じゃない、ただそれだけの話だよ」

 

あっけらかんと、まるで世間話をするかのようにフィアは言った。

しかしその内容は、あまりにも普通ではなく3人が驚愕の表情を見せたのは言うまでもない。

 

「………聞きたいなら話すよ、ジュリウス」

「……………」

「話してほしいなら、ちゃんと話す」

「………………いや、今はいい」

「ジュリウス!?」

「おいおい、いいのか?」

「ええ………」

 

嘘だ、本心を言えば今この場で話してほしい。

自分が人間ではないというのは一体どういう意味なのか、実の父親から何をされたのか、包み隠さず話してほしいというのがジュリウスの本心であった。

しかし、少なくとも今はフィアから訊き出す事はジュリウスにはできなかった。

……話すと言った彼の顔が、どこか脅えの色を見せていたから。

推測の域も出ない話だが、少なくとも彼の放った言葉と反応を見れば、おいそれと話していい内容ではないという事ぐらいジュリウスにだってわかる。

彼は話すと自分から言っておきながら、本心ではきっと知られたくはないのだろう。

だから訊かない、少なくとも今は。

何より、先程の戦闘により彼は大きく負傷してしまっている、まずは治療を優先させなければならない。

 

「戻ろう。ダメージも大きく皆危険な状態だ」

「………そうだな、それがいい」

「……………ああ」

 

ギルはまだ少し納得していないようだったが、ジュリウスの内心を見透かしそれ以上は何も言わなかった。

そんな彼等に、フィアはなんともいえない表情を浮かべ……小さく「ありがとう」と呟いた。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

「―――これは、また凄いものだね」

「やっぱり、わかる?」

「わかるとも。しかし……君もとは思わなかった」

 

サカキ博士の研究室にて、フィアのメディカルチェックの内容を見たサカキは驚愕していた。

しかし対するフィアは、それが当たり前の反応だと言わんばかりの落ち着きを見せている。

 

「……この事実を知っている者は?」

「多分ラケルも知ってるよ、フライアでブラッドのメディカルチェックを行っているのはラケルだから」

「ふーむ……しかし解せないね、だとするなら何故彼女は君をそのままにしておくんだい?」

「さあ。興味ないし……ボクはラケルが好きじゃないからどうでもいい」

 

淡々と、けれど冷たい口調でフィアは言う。

好きじゃないと彼は言ったが、明らかにラケル博士を嫌っている口調であった。

 

「君の仲間は、君の身体の秘密を知っているのかい?」

「ジュリウスとギルとハルオミには、今日のミッションで少し話したよ。全部じゃないけど」

「……グリード・エグフィード、君のお父さんの事は私も多少とはいえ知っているよ。本部でアラガミ研究ができるほどに優秀な科学者だったからね」

「でも、最期は惨めで無様で呆気ない最期だったけどね」

「……………」

「生きていなくて良かったと思うよ。だって……今も生きてたら、化物しか生まなかっただろうし」

「………君は化物ではない、れっきとした人間だよフィア君」

「博士は優しいね、科学者っていうのはみんな変わり者だと思ってたけど……博士は少し違うんだ」

「変わり者、という点に関しては否定できないね」

「大丈夫だよ博士、ボクはここが好きになったから何かしようだなんて思わない。それにボクは約束したんだ」

「約束?」

「そう、最後の約束」

 

そう言ってフィアは、何かを思い出しているのか虚空を見つめ出した。

その瞳のなんと無機質なことか、いいようのない恐怖を覚えサカキは喉を鳴らしてしまう。

 

「――この命は誰かのために、この力は他者のためだけに。

 その誓いは破れないんだ、だってそれがボクの生きる目的であり全てだから」

 

だから、まだ死ねないと彼は言う。

それに対して、サカキは何も言う事ができなかった。

……そんな生き方は間違っている、模範的な反論すら浮かばない。

だって、そう告げる彼があまりにも―――

 

 

 

――あまりにも、人間には見えなかったから

 

 

 

 

 

 

To.Be.Continued...




補足説明でーす。

今回フィアが普通にケイトの神機を使っていました、まあこれによって殆どの人がフィアの中に何があるのかを理解したと思います。

まあそれはおいといて……今後、ケイトの神機はフィアが使っていこうと思います。

ですが正式な名前は無いです、何故ならゲームでケイトの神機を造る事ができないから名前が決まっていないためです(私の勘違いかもしれませんので、造れるなら教えてくれるとありがたいです)

ならオリジナルで…とも思ったのですが、もしかしたら今後のアップロードでケイトの神機が造れるかもしれないので、とりあえず名前は無しにします。
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