神々に祝福されし者達【完結】   作:マイマイ

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極東支部のとある一幕。

今日はその物語をお見せしよう……。


第3部捕喰106 ~ローザとエリック~

「し―――っ!!」

 

気合一閃、ローザの放った槍がアラガミの一体を貫き絶命させる。

既にローザの周りにはアラガミの死体の山が出来上がっており、尚もその数は増えていく。

 

「す、すげえ……」

「強すぎだろローザさん……」

 

彼女と共にミッションに来た神機使い達は、ローザの強さに驚くばかり。

そんな中、彼女と共にアラガミと戦う少女が1人。

 

「何してるんですか! 今は戦いの最中なんですよ!?」

「あ、お、おう!!」

 

少女――エリナの怒声を聞き、ようやく動き出す神機使い達。

そんな彼等に内心苛立ちながらも、エリナは次の標的に狙いを定めた……。

 

 

………。

 

 

「――まったくもう、神機使いとしての自覚が足りないんじゃないですか?」

「まあまあ」

 

ラウンジにて先程のミッションの愚痴を放つエリナと、それを宥めるローザ。

 

「大体、ローザ先輩が強いからってみんなアテにし過ぎなんですよ!」

「そうかなあ?」

「そうですよ。さっきのミッションだって殆どローザ先輩が倒したじゃないですか」

「倒したのはローザだけど、みんなだってちゃんと戦ってたでしょ?」

「どうですかね。ローザ先輩の胸やお尻ばっかり見ていたと思いますけど!」

 

乱暴に言い放ち、飲み物を一気に煽るエリナ。

対するローザは、エリナの言葉を聞いてそういえば視線を感じていた事を思い出す。

 

「でもさー、こんなの見ても楽しいの?」

「……ローザ先輩、今の発言は一部の女性に対しての暴言ですよ?」

「えぇー……? だってこんなのあっても邪魔なだけだよ? 肩は凝るし、戦う時には邪魔になるし」

 

そう言いながら、ローザは両手で自分の胸を持ち上げる。

アリサほどではないにしろ、一般女性よりずっと豊かな胸が官能的に変形した。

……それを遠目で見ていた一部の男性達が、前屈みになっていたのは余談である。

 

「ローザ先輩、そういう事はあんまりやらない方が……」

「男の人ってどうしておっきい胸が好きなのかな? お兄ちゃんもおっぱい星人だし」

「……それはカズキさんがどうこうっていうより、アリサさんのが立派なだけだと思いますよ」

 

というか、そうであってほしいとエリナは思った。

――そんな彼女達に、2人の男性が近寄り声を掛けてくる

 

「お疲れ様ローザくん、エリナ」

「あ、お兄ちゃん……と、エミールか」

「フッ、僕に会ったからといってそんなに喜ばなくてもいいぞエリナ」

「気持ち悪いから黙ってくれない?」

「お疲れ様エミールさん、エリックお兄ちゃん!」

 

エリックに向かって無邪気な笑みを見せるローザ、それを見てエリックも優しく微笑む。

……なんだか、2人の間に普通ではない雰囲気を感じ取れた、数歩下がって離れつつエリナはエミールに話しかけた。

 

「ねえエミール、なんだかローザ先輩とお兄ちゃん…変じゃない?」

「むっ? 変とは一体どういう事だ?」

「あー……いいや、アンタに訊いた私が馬鹿だった」

 

どうせこの鈍感エミールではわかるまいと、早々に切り替えエリナは再び2人に視線を向ける。

既に2人は他愛ない話で盛り上がっている、当然ながら浮かべている表情は笑顔に溢れていた。

やはりどこか変だ、変という言い方では語弊があるかもしれないが…エリナにはそう思えた。

 

「それでねエリックお兄ちゃん、お兄ちゃんとお姉ちゃんってばまた人目に憚らずにイチャイチャしててね」

「あはは、彼等は相変わらずなんだね」

「見せられるこっちの身にもなってほしいよ、でも……なんだか羨ましいなとも思うんだ」

「まあその気持ちはわからないでもないかな、ああまでなりたいと思うわけじゃないけど…恋人がほしいって思う時もある」

「えっ、お兄ちゃん恋人がほしいの!?」

 

まさかの兄の発言に、エリナは思考を再び切り替え会話に参加する。

急に迫ってきた妹に驚きつつ、エリックは言葉を返す。

 

「ま、まあ僕だって男だからね……素敵な女性との出会いを夢見る事だってあるさ」

「ちなみにボクは、騎士としてアラガミと戦うことだけを考えているから……」

「エミール、アンタの話は聞いてない」

「……………」

 

恋人がほしい、エリックの放った言葉を頭の中で反復させるローザ。

何度も何度も反復させて……なんとなく、本当になんとなくではあるのだが。

 

―――面白くないと、思った

 

「???」

「……ローザ先輩、どうかしたんですか?」

「えっ、あー……うーん、どうかしたかもしれない」

「はい?」

「ううん、なんでもない。ちょっと……休むよ」

「体調が悪いのかい? もしよかったら医務室まで運ぼうか?」

「大丈夫だよエリックお兄……」

 

そこまで言いかけ、ローザは何故か口を閉ざしてしまった。

彼女の様子に首を傾げる一同、一体どうしたというのだろうか。

 

(うーん………?)

「ローザ先輩、本当にどうしたんですか?」

「大丈夫大丈夫、じゃあね」

 

ひらひらと手を振りながら、ローザはその場から離れ自室へ向かう。

そして真っ直ぐ自分の部屋へと戻り、ベッドに突っ伏した。

 

「………どうしたのかなー?」

 

自分で自分がわからない。

どうしてさっき、自分は面白くないなどと思ったのか。

それに……少しだけ、ほんの少しだけだけど胸の辺りがモヤモヤした。

 

 

 

―――数日後

 

 

 

「あ………」

 

モヤモヤとしたものは、未だ消えてくれていない中、いつも通りミッションを終えエントランスロビーへと戻ってきたローザ。

そんな彼女が目にした光景は……数人の女性職員と楽しげに談笑している、エリックの姿。

 

「…………」

 

今までだって、何度も同じ光景を目にしてきた。

エリックはその容姿と性格から、女性の人気が高い。

だからああいった光景は別段珍しい事でもない、のだが……。

ローザはエリックに声を掛ける事無く、その場を後にした。

 

(何でだろう……前はあんな状態でも、普通に声を掛けられたのに……)

 

でも今は、声を掛けたいとは思わなかった。

不可解な自分の感情に戸惑いを見せるローザ、しかしいくら考えてもこの正体を掴む事ができない。

困った、これではエリックとのミッションにも支障を来してしまうかもしれないと思ったローザは、カズキ達の部屋へと向かった。

インターホンを鳴らす、すると数秒してからアリサの声が聞こえてきた。

 

「ローザ?」

「うん、お姉ちゃん…今1人?」

「そうですよ、今開けますね」

 

そう言って扉が開き、アリサがローザの前に姿を現した。

 

「どうしたの?」

「えっと……その……今、時間いいかな?」

「別に構わないけど…とりあえず入って?」

 

お邪魔します、そう言ってローザは部屋へと入る。

すぐさまアリサは2人分の紅茶を用意し、カップをローザの前へと差し出した。

 

「ありがとう、お姉ちゃん」

「それでローザ、用件は?」

「あのね……なんか最近、変なんだ」

「? 変って、何が変なの?」

「……………」

 

ローザは、ここ数日の自分の中に宿る不可解な感情をアリサに説明した。

するとアリサは僅かに驚いた表情を浮かべ、ローザはそれを見て首を傾げる。

 

「お姉ちゃん、この変な気持ちの正体…わかるの?」

「…………そっか、そうなんだ」

「お姉ちゃん?」

「……わかるけど、教えてあげない」

「ええっ!?」

 

思わぬ発言に、素っ頓狂な声を上げるローザ。

そんな彼女にくすくすと笑みを浮かべるアリサに、ローザは不満げな顔で彼女を睨み付けた。

 

「お姉ちゃん、ローザ本気で困ってるんだよ?」

「ごめんごめん、でも……その気持ちは自分自身で気づいた方がいいと思うの。それにもしかしたら私の勘違いかもしれないし」

「勘違い……?」

「そうよ、だから自分だけでもっと考えた方がいいわ。それがきっとローザの為になるから」

「うーん………?」

 

そんな事を言われても、とローザは思ったがそれ以上は何も言わなかった。

言った所でこれ以上アリサは何も教えてくれないだろう、結局何もわからないままローザは部屋を後にする。

……当然ながら、胸のモヤモヤは消えていない。

 

「ローザくん?」

「えっ?」

 

声を掛けられ、ローザは後ろへと振り向く。

そこに居たのは……心配そうに自分を見つめるエリックであった。

 

「エリックお兄……」

 

お兄ちゃんと言いかけ、ローザはおもわず口を紡いだ。

……エリックお兄ちゃんと呼ぶのに、何故か躊躇いが生まれてしまったのだ。

本当に自分はどうしてしまったのだろう、前からエリックお兄ちゃんと呼んでいたのにどうして躊躇いなど生まれるのか。

 

「……ローザくん、最近どこか様子がおかしいけど大丈夫かい?」

「え、あ……うん、大丈夫」

「それならいいが……あまり無理をしてはいけないよ? ローザくんが強い事は知っているけど、だからといって無理はいけない。

 あまり頼りにならないかもしれないが、何か悩み事があるなら僕を頼ってくれ」

「……………」

 

それは、エリックの優しさから出てきた本心の言葉。

自分を心から心配してくれる、支えようとしてくれる。

それが改めて理解できたローザは……自分の中に宿るモヤモヤした何かが、少しだけ消えてくれたような気がした。

 

「………ありがとう」

「どういたしまして。それで本当に大丈夫なんだね?」

「大丈夫だよ。でも……1つだけ、お願いがあるんだけどいいかな?」

「お願い? ああ、勿論いいけど…なんだい?」

「………エリックって、呼んでもいいかな?」

「えっ?」

「あのね。そろそろローザも大人にならないといけないというか…いつまでもお兄ちゃんなんて子供っていうか……」

 

何より、呼び捨ての方が仲が良さそうに見えるじゃないか。

そんな言葉が喉元まで出かかったが、ローザは慌ててそれを飲み込んだ。

ローザの言葉に当初はキョトンとしていたエリックであったが、やがていつものように優しい微笑みを見せ。

 

「そんな事がお願いだなんて……ローザくんは可愛いね」

「うぅ……」

 

そう言ってくすくすと笑ったので、ローザは顔を僅かに赤らめた。

 

「それと、ローザの事も“ローザ”って呼び捨てにして?」

「わかったよ、ローザ」

「………うん、よし」

 

すんなりと呼び捨てにされ多少驚いたものの、ローザは口元に笑みを浮かべた。

……何故かはわからないけど、呼び捨てで呼ばれたのが嬉しいと思った。

そもそもどうして自分はエリックに呼び捨てで呼ぶようにお願いしたのだろう、彼女の中に新たな疑問が浮かぶ。

しかし、まあいいかと自己完結させてローザは考える事をやめた。

 

「よーし、それじゃあこれからミッションに行くよエリック!」

「ああ、了解だローザ」

 

互いに笑みを浮かべ合い、2人はエントランスロビーへと向かう。

……僅かに縮まった距離感を、大切にしながら。

 

 

 

 

 

To.Be.Continued...




エリックさんを贔屓にしたい衝動で考えた、後悔はしていない。

ゲームでは早々に退場してしまったエリックさんですが、個人的に好きなキャラクターなんです。(ネタ的な意味ではなく純粋に)

それに準レギュラーなのに最近出番が少なかったという理由も……。

次回からはまた物語が進みます、次は彼女を中心とした話になるでしょう。
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