神々に祝福されし者達【完結】   作:マイマイ

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物語に、ある変化が訪れる。

そして再び、あの悪魔が語り手達の前に現れた………。


第3部捕喰107 ~血の暴走~

―――お母さん、お母さん!!!

 

思い出してしまう、あの時の記憶。

思い出そうとしても、頭が痛くなって上手く思い出せないけど……最近は、ある記憶だけが頭に浮かぶ。

血溜まりの中で倒れ、虚ろな目で私を見るお母さん。

それを見て泣きじゃくる幼い私、誰が見てもお母さんの状態は手遅れで……。

何の力も無い、子供の私では何もできなくて。

 

―――お母さん、死なないで!!

 

―――お母さん、お母さん、お母さん!!!

 

叫ぶ事しかできなくて。

泣く事しかできなくて。

私は…どうして何も―――

 

「――――ナナ?」

「―――――」

 

フィアの声で、私は現実に戻った。

周りを見渡すと、怪訝な表情で私を見つめるブラッドのみんなが居る。

あ…そうだ、今から廃寺エリアでアラガミ討伐のミッションだった……。

 

「どうしたんだよ、ナナ」

「う、ううん……なんでもない」

「ナナさん、ラケル先生から無理をするなと言われていましたし……」

「大丈夫だよシエルちゃん、ちゃんと戦えるから!」

「ですが……」

「よせ、シエル。ナナが戦えるというなら彼女を信じよう」

 

ジュリウス隊長が割って入ってくれたお陰で、シエルちゃんはそれ以上何も言ってはこなかった。

ダメだなあ私……みんなに心配かけるだなんてらしくない。

いつも元気で能天気、それが私らしいのに……本当に、らしくない。

 

「ではいくぞ、各員準備はいいな?」

「OKOK、でもナナ……ホントに大丈夫なのか?」

「もー、ロミオ先輩ってば心配性なんだから」

「そりゃ仲間なんだから心配するだろ、マジで拙くなったら言えよ?」

「………うん、ありがとロミオ先輩」

 

ああ本当に、今日の私ってばらしくない。

……でも、最近断片的ではあるけどお母さんとの事を思い出してる。

ラケル先生が言うには、「血の力の覚醒」に伴って記憶が蘇りつつあるって言ってたけど……。

あんまり、思い出したくない記憶も混じってるから、複雑だ。

さっきだって、血溜まりの中で倒れてるお母さんの姿が浮かんで―――

 

「ナナ」

「っ、あ……どうしたの?」

「………今は、戦う事だけに集中して。でないと死ぬよ?」

「あ、うん……ごめんね、フィア」

 

少し強い口調で私に注意するフィア、でも当たり前だ。

いつアラガミが襲い掛かってくるかわからないのに、今の私はあまりにも無防備すぎる。

 

「―――来る」

「えっ―――っ」

「来たみたいだな……!」

 

廃墟から、のそのそと現れるオウガテイルの群れ。

更にシユウやサリエル、それにクアドリガやコンゴウまで現れた。

 

「……偵察隊の報告より、多いですね」

「現れた以上、一体残らず倒すだけだ」

「だな。……ロミオ、遅れんなよ?」

「誰に言ってんだよ、ギル」

「よし、各自散開しつつ戦うんだ!!」

 

ジュリウス隊長の指示が飛び、同時にみんながアラガミとの戦いを始める。

……とにかく今は戦いに集中しないと、私は自分にそう言い聞かせながらみんなの後に続いた。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

――戦いは、程なくして終わった

 

いつも通り、ブラッド達は誰一人として欠ける事無く勝利し、後はいつも通り帰還するだけ。

そう、それで終わりの筈だったのだが………。

 

「っ、なんで……」

 

最初に異変に気がついたのは、フィア。

その後にジュリウスが気づき、その時には――新たなアラガミ達がブラッド達の前に現れた。

 

「これは……!?」

「偵察隊、いくらなんでも虚偽の報告過ぎないか!?」

「言ってる場合じゃねえみてえだぞ、どんどん集まってきやがる………!」

(どういう事だ……?)

 

アラガミは群れで行動する事は無い、自分以外の存在は基本的に捕喰対象だからである。

だというのに、何故次々と自分達の元へと集まってくるのか……思考を巡らせながら、ジュリウスは襲い掛かってきたオウガテイルを一刀の元に切り裂いた。

その後も次々とアラガミを倒していくブラッド達だが、まるで無限に湧き出ているかのような錯覚に陥るほど、アラガミの数は減ってくれない。

更にオウガテイルのような小型だけではなく、ヴァジュラやテスカトリポカのような大型アラガミまで姿を見せてきた。

 

「いけません。このままでは………!」

「くっ………!」

「あ、あ………」

 

倒しても倒しても、アラガミは現れ続ける。

囲まれたブラッド達、その状況を見て……ナナの脳裏に、失われた記憶が蘇っていく。

 

―――ナナ、逃げて!!

 

―――お母さん、お母さん!!

 

自分を守りながらアラガミと戦う母、だがたった一人でアラガミの群れに太刀打ちできる筈もなかった。

やがて消耗した母に、アラガミの無慈悲な牙が突き立てられて………。

 

「あ、あ、あ………」

「ナナ!? おい、どうしたんだよ!?」

 

突然座り込んでしまったナナに気づき、ロミオが駆け寄り声を掛ける。

だがナナからの反応はなく、彼女の身体は凍えているかのように大きく震えていた。

そして――オペレーターのヒバリから、この状況が更に悪化するような通信が入る。

 

『緊急連絡! 複数のアラガミがそちらに向かっています、第一部隊に支援を要請しましたが……』

「チィ―――! 総員、すぐさま撤退行動に移れ!!」

 

このままでは全滅する、そう判断したジュリウスは全員に撤退指示を出した。

 

「バラバラに逃げても構わん、どうにか極東支部に戻るんだ!!」

「しかし隊長、この状況では………!」

「……ボクが殿になるから、ジュリウス達はナナを連れて逃げるんだ」

「フィアさん、それは危険です! 殿なら私が………!」

「ロミオ、ナナはお前が連れていけ!!」

「わ、わかった!!」

「………逃げ、る?」

 

―――ナナ、あなただけでも逃げ、て。

 

―――な、なんでアラガミが集まってくるんだ!?

 

―――う、うわあああああああああ!!!

 

―――くそおおおおおおおおおおっ!!!

 

ナナの脳裏に、浮かぶ光景。

それは、愛する母が最期に放った言葉。

そして――自分を助けに来てくれた、名も知らぬ神機使い達の断末魔の叫び。

ずっと泣き続ける自分に反応するかのように、次々とアラガミが現れていく。

 

「私の、私の……せい?」

 

母が死んだ時も、自分を助けに来てくれた神機使いが現れた時も、アラガミはどこからか急に集まってきた。

それは……自分の「血の力」のせいだと、ナナは理解してしまう。

つまり、母達が死んだのは自分の……。

 

「ああ……あああ………あああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!?」

「っ、ナナ!?」

 

頭を両手で押さえながら、悲痛の叫びを上げるナナ。

それと同時に――彼女の身体から異常な程の偏食場パルスが発生していくのを、ジュリウス達は感じ取った。

 

『さ、更にアラガミが集まってきます!!』

「ま、まさか……血の力が暴走しているのか!?」

「ナナ、しっかりしろって!!」

 

ナナに呼びかけつつ、彼女をおぶさるロミオ。

とにかく今はここから脱出するしかない、そう考えた彼は一目散に離脱を開始する。

彼の迅速な行動に続くように、ギルとシエルが2人の退路を作っていく。

 

『こちら第一部隊! 退路ルートを確保した、今から座標を送るから移動してくれ!!』

「助かった! すぐに向かう!!」

「ギガアアアァァァァァァァッ!!!」

「っ」

 

逃げるブラッド達に、そうはさせぬとばかりに立ち塞がるアラガミ達。

テスカトリポカがミサイルを、ヴァジュラが電撃をそれぞれ放つ。

 

「ジュリウス!!」

「フィア!!」

 

それに対し、フィアとジュリウスが互いを呼びながら同時に動く。

フィアはテスカトリポカを、ジュリウスはヴァジュラの正面へと向かい、それぞれ放たれた攻撃を装甲で受け止める。

衝撃に顔をしかめつつ防ぎきり、同時に2人は攻撃に打って出た。

両足に充分な力を込めてから跳躍し、二刀の刀身を上段から振り下ろしテスカトリポカのミサイルポッドを一撃で破壊するフィア。

更に返す刀でテスカトリポカの胴体を薙ぎつつ着地、左の剣――アビークレイグからブラッドアーツ“朧月”を発動。

強化された刀身でテスカトリポカの胴体に横一文字の裂傷を刻み、続いて右の剣――クロガネで“ライオットスイング”を発動させ、追撃の一撃を叩き込み……アラガミを沈黙させた。

 

一方、ジュリウスも素早く勝負を決めるために一気にヴァジュラとの間合いを詰めていた。

先手はヴァジュラから、右脚による豪腕でジュリウスを叩き潰そうとしたが……ヴァジュラが脚を地面に叩きつけた時には、既にジュリウスの姿はそこにはなかった。

彼はヴァジュラの一撃が繰り出される前に上空へ跳躍を済ませており、先の一撃で隙を見せた相手へと神機を振り上げ……叩きつけるように振り下ろす!!

刀身は容易くヴァジュラの頭部へと突き刺さり粉砕、結合破壊を起こしつつも尚止まらず……アラガミの頭部を、左右へと切り裂いてしまった。

崩れ落ちるヴァジュラの身体、しかしこれで脅威が過ぎ去ったわけではない。

2人は尚も周りからやってくるアラガミ達へと視線を向け、どうにかナナを守りつつ極東支部への撤退ルートへと向かおうとして―――

 

 

――“悪魔”に、出会ってしまった

 

 

「――呼ばれたから来てみたけど、ふーん……カズキとはまた違った力があるんだ」

「――――――」

 

突如として、場に似合わない呑気な声が響く。

おもわず立ち止まり、ブラッド達は自分達の正面に表れた存在に視線を向けた。

姿形は人間の女性、成熟した肉体を持った灰色の髪と瞳を持った女性だ。

だが……女性の後ろに生えている、血よりも赤黒い九本の尻尾のような物体が、目の前の存在を人間ではないと示していた。

 

「な、んだ……!?」

「人……? いえ、これは……」

 

突然の事態に、全員が正常な思考を取り戻せない。

その間にも、アラガミ達はブラッド達へと迫っていたが……。

 

「邪魔」

 

冷たく女性が言い放ったと同時に、周囲にいたアラガミ達から断末魔の叫びが響き渡った。

一体何が、そう思ったブラッド達は再びその瞳に驚愕の色を宿す。

 

――周囲のアラガミ達が、絶命していた

 

身体に風穴を開け、たった一撃でその命を奪われていたのだ。

それだけでも驚愕するというのに、これをやってのけたのが……目の前の女性であったのだから、驚愕するのは無理からぬ事であった。

ポタポタと、女性の尻尾からアラガミの血が滴り落ちる。

それを右手で掬い、ペロリと舐め取る女性の姿はただ恐ろしく、アラガミとは違った恐怖感を全員に与えた。

 

「……ふむ、みんな結構美味しそうだね。誰からいただこうかなー?」

「な、何を……?」

「うーんと…えーと……」

 

吟味するように、1人1人ブラッド達に視線を送っていく女性。

異常すぎる状況の中で、目の前の存在を一刻も早くこの世から消滅しようと思った存在が1人居た。

彼――フィアは目の前の存在を人間と認識する事はできず、絶殺の意思を抱き神機を持つ手に力を込めて駆け出した。

 

「―――危ないなあ」

「っ」

「フィアさん!?」

 

上段から放った右の剣によるフィアの一撃は、容易く女性の尻尾によって弾かれてしまう。

すかさず別の尻尾がフィア目掛けて突き出される。

左の剣で弾き、一度後ろに大きく跳躍して距離を離し、着地と同時に再び踏み込んだ。

続いて左の剣による横薙ぎ、風切り音を響かせながら放たれたそれを女性は三本の尻尾によって絡め取るように防ぐ。

だがフィアは一瞬の躊躇いも見せる事無く、右の剣で“ライオットスイング”による強化された一撃を―――

 

 

「―――お前、人間だったけど今は違うみたいね」

「―――――」

 

右の剣も、三本の尻尾によって防がれてしまいそして。

 

「決めた。お前から―――イタダキマス」

 

ぞぶり。

そんな音を、フィアは自分の腹部から聞いた。

一体何が起きたのか、理解できないまま彼は己の身体に起きた喪失感の正体を探そうと視線を下に向けて。

 

 

――女性の尾が、自分の腹部を貫いている光景を、目にした

 

 

 

 

 

 

To.Be.Continued...




ちょっとわかりづらいと思ったので補足説明。
今回現れた女性は第3部導入編で出てきた灰少女です。
女性、という表現をしたのは導入編から半年以上経っている第3部なのであの時より見た目が成長ので、少女から女性に表現を変えました。
……九本の尻尾、これで女性の正体は完全にわかってしまったでしょうね、ははは。
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