神々に祝福されし者達【完結】   作:マイマイ

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死闘は、まだ繰り広げられている。

果たして彼等は生き残れるのか、そしてフィアは………。


第3部捕喰111 ~激闘の世界で~(後編)

――どれだけの時間が経ったのか

 

廃寺エリアは噎せ返るような血の臭いが充満し、アラガミの断末魔が絶え間なく響いている。

その中で――フィアを除くブラッド達はいまだ死闘を繰り広げていた。

 

「くっ――キリがねえぞ!!」

「ですが数は確実に減っています、もう一息です!!」

「わ、わかってるけどさ……」

 

――状況は、変わらず最悪だった

 

確かにアラガミの数は減り続け、シエルが言ったようにもう一息かもしれない。

だがこちらの体力は既に限界を超えている、それぞれバックパックに収納していたアイテムは全て使い果たしていた。

このような状況下でいまだ誰一人として犠牲になっていない時点で奇跡に近いのだ、それをいつまで続ける事ができるのか……。

 

「諦めるな! 俺達は必ず生きて帰るんだ!!」

「ジュリウス……」

「わかってる!!」

 

ジュリウスの声で僅かに戦意を取り戻したブラッド達だが、それだけで乗り切れる程現実は甘いものではない。

無論それはジュリウス本人もわかっている、それでもそう言わずにはいられなかった。

……覚悟を決めなくてはならない、このまま戦い続ければ間違いなく瓦解する。

全滅、そんな言葉がジュリウスの脳裏に浮かび――更に、追い討ちをかけるかのような事態が発生した。

 

「っ、なっ―――!?」

「そ、そんな……!?」

 

突然、ブラッド達の前に降り立ってくる二体のアラガミ。

その正体に全員が戦慄を覚え、僅かに戻った戦意を根こそぎ奪うには充分過ぎるものがあった。

何故なら、目の前に現れたアラガミは――二体のヴァルキリーであったのだから。

 

「………コイツは、あの時の!」

「あっ! 片方のヴァルキリー……前にフィアに斬られたヤツだ!!」

 

そう、一体の白いヴァルキリーはかつてフィアと戦い右肩を大きく斬り抉られたヴァルキリーの変異種であった。

あの時の傷はまだ残っており、能面のような顔にはどこか怒りと憎しみが見え隠れしているように見える。

 

(この状況では………!)

 

間違いなく全滅すると、ジュリウスは当たり前のように理解する。

ヴァルキリーというアラガミは接触禁忌種以上の力を持ったアラガミだ、しかもそれが二体。

更にこちらの体力は既に限界を向かえている、万全の状態でも厳しいというのにこれでは……万が一にも勝ち目は無い。

……誰かを犠牲にしなくては、この状況からの脱出は見込めない。

 

「ギル、隙をついてみんなを連れて逃げろ!!」

「な、何言ってやがる!?」

「ヴァルキリーまで現れた以上、もはやこちらに勝ち目はない!! 俺が殿を勤める、だから隙を見つけて離脱するんだ!!」

「そ、そんなの駄目だよ隊長!!」

「そうだよジュリウス、そんなの俺達認めないからな!!」

「だがこのままでは全滅する! お前達だってそれがわからないわけではないだろう!?」

「………それ、は」

 

ジュリウスの言葉に、誰もが反論を返す事ができなかった。

ここでこれ以上戦っても無駄だ、誰かを犠牲にして撤退しなければ全滅する。

それは理解できる、理解せざるおえないが……だからといって、認めるわけにもいかないのは道理であった。

全員で生きて帰ると誓った、誰かを犠牲にして生き残るなんて真似は認められない。

たとえそれが愚かな考えであったとしても、大切な仲間として今まで歩んできたブラッド達はその誓いを破る事などできなかった。

 

――しかし、現実は非情でしかない

 

アラガミ達が襲い掛かってくる。

ひとまず後退しようと、ブラッド達も動こうとして。

 

「ナナ!!」

「え――――」

 

その隙を逃さぬとばかりに、通常種のヴァルキリーがナナへと迫る。

ジュリウスの声に反応できたナナであったが、驚愕からかヴァルキリーの攻撃に反応が遅れてしまった。

それでも生存本能を全開で働かせ、全神経を回避に専念する。

風切り音が響き、ヴァルキリーの槍がナナの胴を貫こうとして……間一髪、ナナは回避した。

しかし薄皮一枚とはいかず、左脇腹に決して浅くない裂傷を刻む事になってしまい、激痛と疲労からナナはその場で倒れこんでしまう。

 

「ナナ!!」

「ギルはナナを連れて逃げろ、他の者も続け!!」

「ジュリウス………!」

 

もはや一刻の猶予も無い、そう判断したジュリウスは一方的に言い放ちながらアラガミの群れへと向かっていく。

自分1人では決して勝つ事ができない、自らの意志で死にに行くような愚かな選択。

それでも仲間を、部下を守るためにジュリウスは迷いを捨てて突貫する。

 

(………フィア、後は頼む………)

 

今は眠っているであろうフィアに、心の中で己の後を託すジュリウス。

そして、彼は命を懸けて仲間を助けようとアラガミ達へと向かっていき。

 

――それを止めるように、何かが姿を現した

 

「っ!!?」

 

おもわず足を止めてしまうジュリウス。

アラガミ達も、第三者の登場によってか足を止めた。

 

――その隙を、現れた第三者は見逃さない

 

「―――――」

 

第三者は無言のまま地を蹴り、足を止めたヴァルキリーの一体に右手に持っていた剣形態の神機を上段から振り下ろす。

完全で完璧な奇襲、しかしヴァルキリーは圧倒的不利な状況でありながらもその異常とも言える反射神経で回避行動をとった。

結果、斬撃はヴァルキリーの身体を僅かに掠めるだけに終わり――けれど、第三者の攻撃はまだ終わりじゃない。

響く風切り音、それをヴァルキリーが理解した時には既に遅く…自身の肉体に、別の神機の刀身が深々と突き刺さった光景を目にした。

鮮血が舞い、地面を赤く穢しながらもヴァルキリーは無理矢理その場を離れ何を逃れる。

しかし致命傷には間違いなく、目に見えてヴァルキリーの様子が変わり反撃をしてくる事はなかった。

その攻防が行われたのは僅か二秒足らず、その間にブラッド達は現れた第三者を見て目を見開き驚愕した。

 

『――――フィア!?』

 

そう、現れた第三者の正体は、アナグラで眠っている筈のフィアであった。

いつも通り、両手に神機を持った彼の姿は……別の意味で驚愕させられる。

息は絶え絶え、身体に巻かれている包帯は彼の血で赤く染まっており、明らかに重傷である事は明白。

それは当然だ、常人ならば即死級の怪我を負っていたのだ、如何にゴッドイーターとしての強靭な肉体があったとしても5日程度で治るほどの傷ではなかった。

……誰もが死に体だとわかる怪我を無視して、フィアは再び戦場に戻ってきてしまったのだ。

 

「は、ぁ、ぅ―――」

 

短く小さな呻き声を漏らしながら、フィアは再び地を蹴った。

向かうはかつて傷を負わせた白いヴァルキリー、現存するアラガミの群れの中で一番の脅威であろう存在を真っ先に消し去ろうと、彼は動いた。

左の剣を横薙ぎに振るう、避けられ逆に相手の槍が彼の喉を貫こうと放たれた。

身体をずらし軌道から逸れながら、右の剣を振るった。

避けられる、後退する白いヴァルキリーに肉薄しようと間合いを詰めようとして――後ろに跳躍して自ら相手との距離を離す。

刹那、彼が向かおうとしていた軌道上に撃ち込まれる雷球、後ろに控えていたヴァジュラによるものだ。

 

「ぁ、あ…ぅ………」

 

あと一秒遅かったら直撃していた、回避できた事に安堵しながら…フィアの視界が真白に染まる。

………既に、死に体である彼に余力など残されていないのは当たり前の事であった。

こうして辛うじて動けているのも、彼の異常なまでの「仲間を守る」という想いがあるからだ。

しかしそんな誤魔化しがいつまでも続くほど、彼のダメージは小さくない。

 

「ぅ、あ、あ…ぃ………」

 

息をするのも辛い。

身体はとっくの昔に動く事を放棄したがっている。

だが止まらない、仲間を守るためと彼は必死に己自身に言い聞かせストライキを認めない。

 

――たとえここで死ぬとしても、仲間だけは決して死なせない

 

異常で異端な決意を抱いたフィアは、自らの死すら皆を守る原動力に変えていく。

その決意は決して覆るものではなく、何より彼自身覆すつもりなど毛頭無かった。

それは当たり前だ、それが自分の生きる意味なのだから。

 

――そう、思っているというのに

 

「フィア、止まって!!」

「フィアさん、止まってください!!!」

「――――――」

 

背後から聞こえる、涙声で自分の名を呼ぶシエルとナナの言葉を聞いた瞬間。

彼は、どうしてかはわからないが……先程までの決意を消し去り、立ち止まってしまった。

 

「……………どう、して」

 

自分で自分の行動が理解できない。

死んでも構わないと思った、だからこそ死に体で再び戦場へと戻ってきたのだ。

皆を守り、生き残らせる、それだけを考えて命を懸けて戦うと己に誓った。

その決意は覆らない、覆らない…筈だというのに何故。

 

――どうして、自分は止まってしまったのだろう

 

瞬間、彼の身体は糸の切れた人形のように崩れ落ちる。

既に限界を超えていた肉体の酷使が、ここに来て一気に彼へと襲い掛かったのだ。

一度崩れてしまえばもうどんなに踏ん張っても起き上がることはできず、しかし今の彼には自分自身の行動による混乱により正常な思考は働かない。

このような状況で立ち止まるなど愚行でしかないのに、何故自分はこうして無様に倒れているのか。

 

「フィアさん!!」

「フィア!!」

 

倒れたフィアの身体を、シエルとナナが急いで駆け寄り抱き上げる。

すぐさま離脱しようとするが………アラガミ達に囲まれてしまっているため、それも叶わない。

 

「………ここまでか」

「っ、やはりここは俺が………!」

 

今度こそジュリウスが動きを見せる。

囲まれている以上、一点を集中して突破するしかない。

幸いにもヴァルキリー達との距離は離れている、フィアの奇襲が相手の進撃を一時的に抑えてくれた。

色々とフィアには言いたい事があったが、今は全員を救う事だけを考えろとジュリウスは己に言い聞かせた瞬間。

 

 

「―――全員、目を瞑れ!!!」

 

 

突如として戦場に、青年の声が響き渡り。

刹那、周囲を真白に染め上げるほどの凄まじい閃光が発生した。

咄嗟に目を瞑る事に成功したブラッド達は難を逃れたが、獲物を狙う事に集中していたアラガミ達は、一体残らず閃光の餌食となり動きを止め。

 

――それが、圧倒的なまでの悪手へと変化した

 

「―――っ、うおおおおおおおおおおっ!!!」

 

駆け抜ける嵐。

“彼”を表現するとしたら、上記の言葉が一番明確かもしれない。

閃光が消えるよりも早く、裂帛の気合を込めた雄叫びが放たれ――まず数体のアラガミが一刀の元に切り伏せられた。

おそらく自分の状況も理解できずに絶命したのだろう、命を奪われた数体のアラガミ達から悲鳴が放たれる事はなかった。

 

「全員を目を開けて、声のする方へと走れーーーーーーっ!!!!」

「っ、みんな聞こえたな!? 走るんだ!!!」

 

突如起こった出来事を考えるよりも先に、ジュリウスは全員に指示を出した。

それと同時に指示に従うブラッド達が見たものは――凄まじいという表現では追いつかないほどの、激闘であった。

 

――自分達を囲っていたアラガミの数が、秒単位で減少していく

 

それを行っているのは1人の青年、右手に神機を持ち左手を異形の――アラガミの腕に変化させている青年。

最強のゴッドイーターと謳われる、抗神カズキであった。

右手に持つ神機でアラガミを切り伏せ、ディアウス・ピターに変形させた左腕でアラガミを掴み、握り潰し、薙ぎ払う。

その姿はまさしく鬼神、最強の名に相応しい圧倒的なまでの攻撃であった。

それだけではなく、彼の近くでは第一部隊隊長のコウタに副隊長のローザが、銃撃で彼が仕留められなかったアラガミを確実に駆逐している。

 

「みんな、生きてるよな!?」

「大丈夫だよコウタお兄ちゃん、とにかく今はアラガミを倒す事だけを考えよう!」

「わかってる。カズキ、お前はとにかくダメージを与える事だけに集中してくれ! 倒しきれなかったヤツはオレ達が絶対に仕留める!!」

「了解!!」

 

親友の声に視線を向けずに応え、カズキは更に踏み込んでいく。

自身の身体や服、神機がアラガミの血で真っ赤に染まるが気にした様子もなく、ただひたすらに神機や左腕を振るっていきアラガミ達を倒していった。

その隙に、ブラッド達は囲まれていた場所からの退避に成功、それを確認してからコウタはバックパックからスタングレネードを取り出す。

 

「カズキ!!」

「っ、いいよコウタ!!」

 

その場でカズキが大きく跳躍するのと、コウタがスタングレネードを投げたのは同時であった。

地面に当たると同時に先程のような閃光が辺りを包み、残ったアラガミ達の動きを再び硬直させた。

動きを止めたアラガミ達を、コウタとローザは逃す事無く銃撃を叩き込んでいき。

一方のカズキは、少し離れた場所でスタングレネードによって動きを止めたヴァルキリー達へと狙いを定めていた。

 

「うおおおおっ!!!」

 

左腕を人間の腕に戻しながら、両手で神機の柄を握り締め振り上げるカズキ。

そして、通常種のヴァルキリーへと向かって渾身の一撃を叩き込む―――!

 

「っ!!? っ……っ」

 

カズキの一撃は、見事通常種のヴァルキリーを捉えた。

上段から放たれた振り下ろしによる一撃は、強固なアラガミの肉体を易々と切り裂き……左右2つに分け絶命させた。

それを見届ける事無く、カズキは着地と同時に動き、今度は白いヴァルキリーへと神機を横薙ぎに振るった。

だがその一撃は虚しく空を切り、白いヴァルキリーはわき目も振らずにその場から逃げ去っていく。

追いかける…事はせず、カズキは残りのアラガミを倒そうと振り返ったが……既に他のアラガミはコウタ達によって生命活動を停止させられていた。

 

――静寂が、戦いの終わりを告げる

 

「……ジュリウス、フィア以外で動けなくなった子は居る?」

「いえ、大丈夫です!」

「よし、じゃあすぐにアナグラに戻ろう。コウタとローザは周囲の警戒をお願い」

「わかってる」

「わかったよ、お兄ちゃん」

 

カズキの指示に頷きを返し、周囲への警戒を始めるコウタとローザ。

同様に彼も周囲を警戒しながら、心の中で安堵の溜め息を吐き出した。

 

「………死ぬかと、思った」

「なんとか、生き延びる事ができたか……」

 

今にも腰を抜かしそうなロミオと、疲弊したような息を吐き出すギル。

ジュリウスもまた、自分達が1人も欠ける事無く生き延びたという現実を認め、座り込みそうになっている自分を支える。

……だが、ナナは自分達が支えているフィアの姿を見て、戦慄していた。

 

(おかしいよ……戦える身体じゃないのに、どうしてここに来たの……?)

 

前から、彼の行動にはどこか疑問を抱いてはいた。

しかし今回のは明らかに常軌を逸している、普通の人間ができる行動ではない。

……恐いと、ナナはフィアに対してはっきりとした恐怖心を抱いてしまう。

一方、シエルはナナと同じくフィアの行動に戦慄しながらも……彼女と違い、恐怖心を抱くという事は無かった。

 

――あの地獄を見てしまったから、わかってしまう

 

――感応現象によって、断片的にとはいえ彼の記憶を理解してしまったから

 

でもだからこそ、わからなかった。

あの記憶は一体何なのか、何故フィアの記憶の中にあのような地獄が存在しているのか。

できる事なら問いただしたい、彼の事情など知らぬとばかりに自白させたい。

けれどそんな事シエルにはできなかった、なまじあの地獄を見てしまったから…できる筈が無かった。

 

 

 

――激闘が、終わりを告げた

 

 

 

この一件を経て、ブラッド達はまたも絆を深める事ができた。

しかし新たな謎が浮上し、けれどそれが解かれる事はなかった。

戦いで疲弊した身体と心を癒すため、戦士達は己の帰るべき場所へと戻っていく。

 

 

「…………きゅー」

 

 

幼く、無垢な瞳に見守られながら―――

 

 

 

 

 

 

To.Be.Continued...




はい、原作におけるナナエピソード完結……なんですけど、ナナが全然目立ってない?
……わかっています、わかっていますのでそういったツッコミはなしの方向でお願いします。オリジナル色が強すぎました、反省してます。

次回からは暫く平和…であろう話をする予定です、次回辺りで今回の事の補完もしたいですからね。
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