さて、今回の物語は………。
――アラガミに捕喰された廃墟に、風が吹く
その中で、1人の少女が黙々とアラガミの死体を貪っていた。
彼女の名はラウエル、アラガミでありながら人として生きている彼女ではあるが、やはりアラガミとしての本能には勝てずこうして時折1人で
「…………けぷっ」
コアまで食べ尽くし、満足したのか笑みを浮かべラウエルは立ち上がった。
そして重力に逆らい宙に浮かび、これから日課の散歩をしようとして……彼女は、近くに見知った気配を感じ取る。
そちらへとふわふわと移動して……ラウエルは、その気配の存在を視界に入れ一目散に飛び込んだ。
「アリサーーーーーー!!」
「えっ―――わぶっ」
自分の名を呼ぶ声が聞こえ、アリサはそちらへと振り向いた瞬間――ラウエルに抱きつかれくぐもった声を出してしまう。
顔に抱きつかれてしまったが、どうにか倒れる事を耐えアリサはすぐさまラウエルを引き剥がす。
「……ラウエル、顔に抱きつくのは危険だからやめなさい」
「はーい!」
「……………」
元気に返事をするラウエルを見て、まるでわかっていないと気づきアリサは溜め息を零す。
そんな彼女を余所に、ラウエルは視線を彼女と共に居た者達――ジュリウスとシエルに向けた。
「みんなして何してんのー?」
「ラウエルこそ、何をしていたんだ?」
「ラウエルはごはん食べてた」
「………そう、ですか」
「それで、何してたの?」
「新たな感応種が目撃されたという報告がありましたから、ブラッドの皆さんと私で調査しているんです」
「感応種……」
感応種の事は、ラウエルも知っている。
というよりラウエルは感応種が嫌いだ、あれが放つ特殊な偏食場の中に居ると力が抜けるから。
「感応種って色々居るんだねー、えっと……ウォンチューだっけ?」
「イェン・ツィーですよ、ラウエルさん」
苦笑しながら間違いを訂正するシエル、恥ずかしかったのかラウエルも僅かに頬を赤らめた。
それを微笑ましげに見つめる他のメンバー、既にブラッドの面々もラウエルに対する警戒の色は消えている。
……和やかな空気が場を包んでいく。
だが、それを掻き消す様に―――荒ぶる神が姿を現した。
「っ、こっちにアラガミが来ます!!」
『緊急連絡! 複数のアラガミと……データにない特殊な偏食場パルスを放つアラガミが、皆さんに近づいてきます!!』
最初に響いたのはアリサの声、その一瞬後にオペレーターのヒバリの声が場に響く。
和やかな空気は一瞬で霧散し、全員が戦闘態勢へと移行した瞬間――近くの廃ビルの壁が吹き飛び、“シユウ”が現れる。
数は三体、しかし……アリサが感じ取った存在は見られない。
だがとにかく今は数を減らさなければ、シユウ達がこちらへと向いた瞬間――既に、アリサは動き出していた。
…………。
――それは、まさしく閃光の如し
華奢な少女とは思えぬ初速の速さは、アラガミに反応させる事すら許さない。
一息、それだけでアリサはシユウの一体の懐へと飛び込み、下段からの斬り上げでシユウの右側の両手翼を両断した。
衝撃と激痛がシユウを襲い、その身体が大きく揺らいだ。
それで終わり――絶対的な隙を逃さぬように、一瞬遅れて踏み込んだジュリウスの斬撃が、シユウの首を斬り飛ばし絶命させる。
「次!!」
「うおおおっ!!」
それぞれ残りのシユウに向かっていくアリサとジュリウス。
そこでようやくシユウ達は攻撃の体勢に移るが――あまりにも遅すぎた。
――ズドンッという重い音が、一体のシユウの右肩から響く
瞬間、鮮血を撒き散らしながらそのシユウの右肩が弾け飛んだ。
一体何が起きたのか、そのシユウはそう思っただろう。
何てことはない、瞬時に絶好の射撃場所へと移動したシエルの銃撃が、シユウの右肩を撃ち貫いただけだ。
ブラッドバレッド“グラビトロン・ブレイク”。
飛距離を犠牲にし、一撃の重さと連射力を強化したシエルの新しいブラッドバレッドは、彼女の思惑以上の一撃であった。
そして、ダメ押しとばかりに放たれたアリサの斬撃が、シユウの胸部に横一文字の傷を叩き込んだ。
苦悶の声を上げ、身体を痙攣させながら倒れこむシユウ。
起き上がる気配は無く、残りは一体となり―――そちらも、勝敗を決めていた。
「貫けーーーっ!!」
ラウエルの額にある第三の目が光る。
そこから放たれるのは黄金に輝く四条のレーザー、それらがシユウに向かっていく。
だが真正面から放たれたからか、シユウはその逞しい両脚を用いてその場から跳躍、迫るレーザーを回避――できなかった。
「グォォッ!!?」
くぐもった悲鳴はシユウから。
確かにシユウは跳躍してラウエルのレーザーを回避しようとした。
だがそのレーザーには強力なホーミング性能を有しており、突如として軌道を変え無防備なシユウの身体を釣瓶打ちにする。
さすがに貫く事はできなかったものの、シユウの身体には四つの穴が開きそこから赤い液体を滴り落としていた。
それで充分だ、ラウエルの目的はアラガミの命を奪う事ではなく――その足を止めることなのだから。
「ジュリウス、いっけー!!」
「任せろ」
ラウエルの言葉に返事を返しつつ、シユウに向かって大きく跳躍するジュリウス。
神機は既に右上段に構えており、込められた力は神機の柄が僅かに悲鳴を上げる程に力強い。
シユウが目の前で神機を振り上げているジュリウスに気づくが、相手が反撃をする前にジュリウスの斬撃がシユウの頭部に叩き込まれた。
噴出す鮮血で顔や衣服が汚れていく事にも構わず、ジュリウスはそのまま力を込め続け――シユウを眼下の地面へと叩きつけ、その命をこの世界から間違いなく消滅させた。
「――――よし」
「まだです! 第二波来ます!!」
シエルの声が響き、彼女の言う通り――新たなアラガミが空から降ってきた。
まず現れたのはシユウ神属感応種である“イェン・ツィー”、既に下僕である“チョウワン”を五体召喚している。
更にコンゴウが二体、そして………見慣れないアラガミが、空を飛んでいた。
「…………あれは」
現れた新種のアラガミは、まるで聖母のように美しい姿のアラガミであった。
頭には恒星のような物体があり、身に纏うローブのような皮膚の裏側には銀河が広がっている。
神秘的だと、戦闘中だというのにそう思わずにはいられないほど……現れた新種のアラガミは、不可思議であった。
――その、中で
「――――あ」
ラウエルだけが、新種のアラガミを見て別の感情を抱いていた。
――美味しそうだと、食べてみたいと思っていた。
「っ、シエルは後方で援護を頼む!!」
「ラウエルも後方で援護して!!」
「了解しました!!」
「…………うん」
どこか自分ではないような声で返事を返しながらも、ラウエルはただただ新種のアラガミを見つめ続ける。
一方、臨戦態勢に入ったアリサは瞬時に自分達が置かれた状況の不利を悟っていた。
“真っ向勝負じゃ勝てない―――!”
敵は多い、しかもその内の半分が感応種だ。
1チームだけで対応できる戦力ではない、だが――援護はおそらく望めないだろう。
「ヒバリさん、申し訳ありませんが近くに別の部隊が居るなら援護要請をお願いします!!」
『了解しました!!』
「――スタングレネード、いきます!!」
ヒバリに通信を送りながら、アリサはバックパックから素早くスタングレネードを取り出し地面に投げつける。
辺り一面が眩い光に包まれ、アラガミからはくぐもった声が聞こえてきた。
……とにかく数を減らすしかない、それも迅速にだ。
スタングレネードの光が収まらない内に、アリサは地を蹴り一番近くに居たチョウワンに狙いを定める。
左上段からの振り下ろしによる一撃、必殺の刃は容易くチョウワンの首を斬り飛ばし絶命させた。
それを見届ける事はせず、アリサはすぐさま別のアラガミへと向かっていく。
同時にジュリウスも動き出しており、彼はいまだスタングレネードの光で動きを止めているコンゴウの元へ。
出し惜しみなどできないと、ジュリウスはブラッドアーツ“ソニックキャリバー”を発動。
コンゴウの一体の懐へと飛び込む前に神機を横一文字に振るい、そこからオラクルで形成された刃が飛んでいく。
その刃はコンゴウの顔面に叩き込まれ、結合破壊を起こしながら鮮血が噴水のように宙を舞った。
続いてジュリウスは二体目のコンゴウにブラッドアーツ“朧月”で巨大化した刃を背中のパイプ状の器官へとめり込ませる。
“まずは戦闘不能に追い込み、戦えるアラガミを減らさなければ………!”
一体一体のアラガミの命を奪っていてはやられてしまう、だからこそジュリウスは深く攻める事はせずダメージを与える事を優先させていた。
そう、彼の行動は正しく間違いではない……が。
「っ、が……――!!?」
「ジュリウスさん!?」
まるで巨大な鉄球が勢いよく叩き込まれたかのような衝撃がジュリウスの身体を襲い、彼は近くの壁に叩きつけられてしまう。
背中を強打し一瞬ではあるが呼吸ができなくなるジュリウス、更にその際に右手に持っていた神機が離れてしまった。
イェン・ツィーの翼による殴打をまともに受けてしまったようだ、どうにか立ち上がるジュリウスだがその動きは精彩を欠く。
――そして、更に状況は悪化する
「は………!?」
「なっ―――!?」
驚愕が、ラウエルを除く全員に襲い掛かる。
それはそうだろう、何故なら――
――何故なら、ダメージを与えたコンゴウ達が、何事もなかったかのように立ち上がったのだから
「これは、一体……」
『あの感応種が、他のアラガミのバイタルを回復させているようです!!』
「回復って……ヒバリさん、どういう事ですか!?」
『あの新種の感応種は、どうやら皆さんで言うところの回復弾に該当する回復行動を行えるようです!!』
「な、に………!?」
冗談ではないと、ジュリウスは痛みに耐えながら舌打ちを放つ。
結合破壊こそ元に戻らないようだが、バイタルを回復させるなど悪い冗談だ。
しかし現実は変わず、寧ろアリサ達の不利が露見した結果に終わる。
「ヒバリさん、他の部隊は!?」
『そ、それが……他の部隊も皆アラガミと戦闘中で、そちらに向かえる余力は残されていないんです』
「くっ………!」
絶望的だ、このままでは自分達は確実に全滅する。
そんな最悪の未来が、ジュリウスの脳裏に過った。
だからといって諦めるわけにはいかない、こんな所で死ぬわけにはいかないのだ。
「えっ―――そんな!?」
「シエルさん……?」
「シエル、どうした!?」
突然驚愕に満ちた声を上げるシエルに、アリサもジュリウスも視線を彼女に向ける。
するとシエルは――その場に居た全員を更なる絶望へと突き落とす事実を、口にした。
「………何か、来ます」
「えっ……?」
「強い力を持った何かが、凄いスピードでこちらに近づいてきます!!」
「何だと……!?」
『っ、え……これって、何……?』
「ヒバリさん、こっちに何か向かってきているってシエルさんが……」
「っ、来るぞ―――!」
混乱する戦場だが、アラガミ達は呑気に待ってはくれない。
コンゴウが、イェン・ツィーが、チョウワンが、一斉にアリサ達に向かっていく。
それを真っ向から迎え撃とうと、アリサ達は身構えて―――
瞬間、空から光が溢れていき。
アラガミ達に向かって、雨のようなレーザーが降り注いだ。
『―――――』
おもわず、全員がその場で呆けてしまう。
いきなりの奇襲にさすがのアラガミ達も対処できず、そのレーザーの雨をまともに浴びてしまった。
結果、コンゴウ二体は尻尾と背中の器官を結合破壊、イェン・ツィーは結合破壊こそ起こさなかったものの苦しげな呻き声を放ち、チョウワンに至っては全滅。
新種の感応種は空を飛んでいたおかげか、他のアラガミに比べてさしたるダメージは負っていない。
一体何が起きているのか、状況を把握できないアリサ達の前に――第三者が現れた。
…………。
現れたのは――年端もいかぬ、小柄な少女であった。
背中辺りまで無造作に伸びた金糸の髪、纏う服は服というより布切れと表現した方が正しいと思えるほどボロボロだ。
まるでシオと最初に出会った頃と同じだとアリサは思いながら――少女の姿が、かつて見た存在と同じだと気づき驚愕する。
「あなたは………!?」
「アリサさん、知っているのですか!?」
「は、はい……間違いありません!!」
あの時より僅かに成長しているが、見間違うはずが無かった。
当たり前だ、だって――彼女の身体には人間に備わっていないはずの、金色の体毛に覆われた耳と
間違いない、この少女はあの時ネモス・ディアナで出会った―――
「…………きゅー」
To.Be.Continued...
作中でジュリウスが複数のブラッドアーツを使用している件について説明を。
この作品ではゲームと違って複数のブラッドアーツを同時に扱えるという設定を組み込んでいます、かなり強いかもしれませんけどその方が攻撃のバリエーションが増えるのでご了承ください。
ブラッドアーツ【グラビトロン・ブレイク】
スナイパータイプのブラッドバレッド、フルーグルと比べ大幅に飛距離が劣る代わりに消費OPと連射力が強化されているバレッド。
現状ではフルーグルは一発しか放てないため、今回のような乱戦にも対応できるようにシエルが作成した、因みに名前を付けたのはロミオであり本人曰く「カッコいい名前を付けた」と自信満々に言われたらしい。
他のメンバーからは微妙そうな反応であったが、他ならぬシエルが気に入ったので結局この名前になったそうだ。