神々に祝福されし者達【完結】   作:マイマイ

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ゴッドイーター、抗神カズキとフィア・エグフィードの物語は続く。

さて、今回の物語は………。


第3部捕喰146 ~疑惑~

――それは、ある日の事であった。

 

「隊長さーん、いらっしゃいますかー?」

「? 開いてるから、どうぞ」

 

非番のフィアは、特にする事がなかったので部屋で寛いでいた。

だがボーっとしているというのも嫌だと思った矢先、訪問者が現れる。

とりあえず部屋へと入る事を許可し、訪問者を招き入れるフィア。

入ってきたのは……サツキであった。

 

「すみませんね。突然お邪魔してしまって」

「別に大丈夫、でも珍しいね。サツキが1人で来るなんて」

「ええ。ちょっと……お尋ねしたい事がありまして」

 

そう言いながら、近くのベッドに腰掛けるサツキ。

 

「ユノがですね。黒蛛病患者としてフライアに収容されたアスナちゃんに会いに行ったんですよ」

「アスナって……前にサテライト居住区でユノに絵本を読んでもらってた?」

「そうです。それで話を戻しますが、会いに行ったら……あのラケル博士って人が、どうしてもアスナちゃんに会わせてくれなかったんですよ」

「………ラケルが?」

 

だが、それ自体は決しておかしな話ではないはずだ。

感染の危険性を考えれば、面会させてはならないと思うのは当然なのだから。

しかし……どうやらそうではないと、次にサツキが放った言葉でフィアは理解する。

 

「それだけならまだ納得できるんですけど、慰問はおろかメールの使用も禁止されているらしいんですよ。

 つまり外部からの接触が全くできないんです、これっておかしいと思いません?」

「………確かに、妙だ」

 

メールでのやりとりすら禁止するなど、感染予防にしては行き過ぎている。

サツキもそう思ったからこそ、この話をしているのだろう。

 

「それで相談なんですけど、今のフライアに居る方で信用が置ける方っていらっしゃいません?」

「……ジュリウスは?」

「真っ先に連絡したんですけど、向こうが出てくれなんです」

「…………」

 

グレムは論外だ、選択肢の内に入るわけがない。

では誰が居る?暫しフィアは考え……ある少女の存在を頭に浮かばせた。

 

「―――フランは?」

「フラン? 確かフライアでオペレーターをしていましたね?」

「うん、フランだったら口は堅いしオペレーター以外の雑務もこなしているからフライアの実情にも詳しいと思う」

「ほーほー……では、そのフラン某さんに訊いてみるとしましょうか!」

 

立ち上がるサツキ。

……まさか、彼女に迷惑が掛かるような事をしでかすのではないだろうか。

そんなフィアの心中を察したのか、サツキは苦笑を浮かべつつ口を開く。

 

「大丈夫です、ちょっと「取材」をするだけでフランさんに迷惑が掛かるような事はしませんから」

「………なら、いいけど」

「信用ないですね。本当に大丈夫ですよ」

 

言うやいなや、サツキは「お邪魔しました」と言いながら部屋を出て行った。

1人になり、とりあえずベッドに腰を降ろしながら…フィアは先程のサツキの話を思い返す。

 

(何故会わせないだけでなく、外部との接触の一切を禁止するんだ……?)

 

サテライト居住区でも確かに接触を禁止するような事はあった、だが一切ではなかった。

フライア…というよりラケルがユノに行った行動は行き過ぎている、一体何を考えているのか……。

とはいえ現状では何もわからない以上、考えても仕方ないだろう。

そう思ったフィアは一度思考を切り替えて、改めて今日は何をして過ごそうかと考えた矢先。

 

「――お邪魔しまーす!!!」

ノックもせずに、勢いよくナナが部屋に入ってきた。

 

「ナナ、どうしたの?」

「フィア、今時間ある?」

「あるけど……って、ナナ?」

 

問いかけたというのに、ナナはフィアの返答を待たずに彼の右腕を掴み立ち上がらせる。

そしてそのまま引っ張るように彼を部屋から連れ出し、真っ直ぐエレベーターへ。

強引な彼女に苦笑しつつも、抵抗せずにフィアは共にエレベーターへと乗り込んでから、改めて問いかけた。

 

「一体どうしたの?」

「えへへー、ごめんね? でもフィアにとってもこれから行く場所は価値があると思って」

「だから、何処に向かってるの?」

「神機保管庫。正確にはそこにある訓練場だよ!」

「………神機保管庫?」

 

首を傾げるフィア、何故ナナがそこに自分を連れて行こうとするのかがわからないからだ。

そうこうしている間にエレベーターは停まり、すかさずナナはフィアを再び引っ張っていく。

抵抗しても無駄だと悟り、それに暇であったためフィアはそれ以上何も訊く事はせずに黙って彼女についていった。

訓練場前に到着し、ナナはノックもせずに扉を開いた。

フィアもそれに続き、訓練場に入ると……そこには、サカキとリッカを始めとした技術班の姿が。

扉が開いた音に反応して、中に居た全員の視線が2人に集中する。

 

「おやナナ君にフィア君じゃないか、どうしたんだい?」

「僕はナナに無理矢理連れてこられたの」

「リッカさーん、サカキ博士ー、フィアなら適任だと思いましたので連れてきましたー!」

「………?」

 

適任とは一体何なのか。

そう思いながら……ここでフィアは、サカキ達が先程まで見ていた物体に気づく。

それは――神機。

正確には神機のパーツ、だがそれはフィアも見た事がないパーツであった。

 

「………鎌?」

 

フィアの呟く通り、そのパーツの正体は巨大な鎌のようなものだった。

おそらく刀身パーツに分類するものだろう、フィアの視線がそれに向けられる中、リッカがそのパーツの説明をしてくれた。

 

「これは“ヴァリアントサイズ”っていって、新しく開発された刀身パーツなんだ。

 “チャージスピア”と“ブーストハンマー”の稼動データが評価された事で、この新しいパーツの運用データを集めろって本部から指示があったの」

「リッカ君の話した通り、この新しい刀身パーツの運用データを集めなければならなくなったんだ。

 とはいえこれも従来のパーツに比べてかなりクセが強くてね、できれば熟練の神機使いに運用してもらいたいと思っていたんだけど……」

「……だから、ナナは僕をここに連れてきたの?」

 

そう訊ねると、ご明察と言わんばかりの笑顔をフィアに返すナナ。

成る程事情は理解した、それに……今の話を聞いて、フィアはこの新しい刀身パーツを使いたいと思い始めていた。

新しい武装、それはそのまま今後の戦闘の幅が広がると同意だからだ。

……もっと強くならなければならない、誰にも負けないぐらいに強くならなければならないのだ。

そうしなければ誰も守れない、アラガミの脅威から力なき人々を、そして――あの怪物達からも。

 

「――その武装、僕に使わせてくれないかな?」

だからフィアは進言した、新たな力を手に入れるために。

 

「ふむ……私は賛成だが、リッカ君達はどう思う?」

「うーん……私もフィアなら賛成かな。でも無茶したら駄目だからね?」

「わかってるよ。信用ないなあ」

「当たり前だよ、フィアはすぐ無茶するんだから」

 

少しだけ怒ったような口調でそう言いながら、ナナは後ろから軽くフィアを抱きしめた。

そしてそのまま彼の頭を撫でつつ、「本当に無茶したら駄目だからね?」と念を押した。

……その光景を見ていた技術班の男性陣は、フィアに対して羨望の眼差しを向けていたのは言うまでもない。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「――――ふぅ」

 

数日後。

訓練場近くの休憩室で、フィアは汗を拭いつつ飲み物を口に含み水分補給を行っていた。

今日も“ヴァリアントサイズ”の運用データ確保のために、任務をこなしつつ訓練場に赴くフィア。

技術班と連携して微調整を何度も繰り返しながらの運用であるものの、フィア自身は新しい武装には満足していた。

 

サイズ――大鎌に分類される武器の特性状、間合いや運用方法は今までの刀身パーツとはまるで違う。

その為当初はまともに振るう事もできず、また相手との間合いを読み間違える事も多々あり、それに関しては現在も解消したとは言えない。

持ち方一つでも感じる重量感は違い、ブレードタイプと同様の持ち方をするとサイズに身体を持っていかれてしまう。

それにより斬撃を繰り出した直後に転倒する事もあり、おかげで彼の身体には打撲や擦り傷が数多く刻まれていた。

 

しかし難点ばかりではない、ブレードタイプとは違う間合いという事は同時に変則的な攻撃ができるという事だ。

それに「神機フレーム制御装置」という特殊な装置を組み込む事により複数の刃を形成し、更に今までとは比べものにならないリーチの長さでの斬撃を可能としている。

囲まれた時や複数のアラガミを同時に攻撃できるという利点は、上記の難点を補って余りある程に魅力的な機能だ。

だからこそフィアは一日でも早く使いこなそうと、任務が終わってから間髪入れずに訓練場へと赴き“ヴァリアントサイズ”の運用を行っていた。

だが当然そんな事をすれば彼の身体には疲労が溜まる、しかし新しい武装を試しているという興奮があるのか、彼はその疲労に気づいていない。

なので彼は休憩をすぐさま終わらせ、再び訓練場へと向かおうとして。

 

「――フィアさん、無理はいけませんよ」

そんな彼を、心配そうに見つめながら現れたシエルが、呼び止めた。

 

「シエル……」

「お気持ちはわかりますが、通常通り任務をこなしながら新武装の運用テストを行うのは負担が大き過ぎます。

 やめろと言うわけではありませんが、今日はここまでした方がいいのでは?」

「でも……」

「……いえ、訂正します。今日は休んでください」

「…………」

 

強い口調で言われ、おもわず押し黙ってしまうフィア。

どうもシエルに言われると、おとなしくなってしまう自分に内心苦笑してしまう。

何も言わない彼に安堵の表情を浮かべつつ、シエルは近くに置いてあったタオルを手に取り、拭い切れていない彼の汗を拭いてあげた。

 

「自分でできるよ?」

「全然拭けていないじゃないですか、これでは風邪を引いてしまいます」

 

ゆっくりと優しくフィアの汗を拭っていくシエル。

見ると服の中も満足に拭けていない事に気づき、少し躊躇いつつも…服の中も拭いてあげる事にした。

 

「くすぐったいよ」

「が、我慢してください……」

 

異性の身体を拭くという行為に少しだけ気恥ずかしさを覚えつつも、シエルは手を動かしていく。

しかし服を着たままでは拭き辛い、なのでシエルはフィアに服を脱ぐように告げた。

もう抵抗しても無駄だと悟ったのか、おとなしく服を脱ぎ上半身裸の状態になるフィア。

今更ながらに彼に服を脱ぐように言った自分に驚きつつも、気にするなと自分に言い聞かせシエルは改めて彼の身体を拭こうとして……固まった。

 

(……これは、この傷は……)

 

華奢な彼の身体に刻まれた戦いの傷。

だがそれはゴッドイーターならば誰しもが負っているであろう傷だ、驚いたのはそこではなく。

明らかに戦いとは違う傷が、幾重にも刻まれていたからだ。

瞬時にシエルはこの傷の原因があの悪魔――グリードの行いによるものだと理解する。

同時に抱くのはグリードに対する怒り、それだけは際限なく彼女の中で大きくなっていった。

 

「……シエル、どうかしたの?」

「っ、い、いえ……なんでもありません」

 

……絶対に、守らなければ。

彼はずっと傷ついて生きてきた、だからこそ絶対に幸せになってほしい。

そしてできれば……彼の幸せの中に、自分も含まれていれば――

 

(―――っっっ、わ、私は何を……)

 

顔を紅潮させ、シエルは再び固まってしまった。

一体自分は何を考えているのか、これではまるで……。

再び浮かんだ考えを払う、どうもこの間のナナとのやりとりから様子がおかしくなってしまった。

 

 

―――フィアの事、貰ってもいいんだね?

 

 

思い出すのは、前にナナから言われた言葉。

その言葉を聞いてから、シエルは自分自身の不調に気がついた。

だが何故自分がその言葉を聞いて不調になったのか、わからない。

でも不思議と、フィアと会話するとその不調はいくらか和らいでくれるのだ。

早くなんとかしなければ、このままでは任務にも支障を来してしまう。

 

「――ありがとうシエル、もう大丈夫」

「あ……は、はい」

「……僕が言える事じゃないかもしれないけど、シエルもあまり無茶をしないでね?」

「…………」

 

心配してくれた、彼が。

ただそれだけ、それだけなのに……シエルの心は軽くなってくれた。

だが相変わらずその原因がわからず、シエルは再び困惑してしまったのであった―――

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「――隊長さん、ちょーっといいですか?」

「サツキ……?」

 

更に数日後、エントランスロビーでフィアはサツキに呼び止められた。

 

「どうしたの?」

「こないだの話の事で、お時間貰えます?」

「…………」

 

頷きを返し、フィアとサツキは隅へと移動する。

 

「おかげさまで取材が捗りましたよー、ありがとうございます」

「別にいいよ。……それより、どうだったの?」

「ちょっとした……というより、結構すごいスクープを手に入れたかもしれません」

「…………」

 

フィアの中で、何かに対する不安が増した。

そして、次のサツキの言葉で――その不安は更に大きくなった。

 

「取材した結果――フライアで患者の治療が行われていない可能性がある事がわかりました」

「………その根拠は?」

「まず医薬品の納入記録、何一つとして納入された記録がないんです。

 それから医師及び看護師の雇用状況なんですけど、全員が本部または他の支部に転属。つまり……」

「フライアには、医者がいない?」

「正確には2人居ますよ、姉妹の博士がね。まあ尤も医者と言ってもいいのかわかりませんけど」

「………どういう事?」

 

それは、あまりにもおかしい話であった。

サツキの話を纏めると、黒蛛病患者を受け入れる意味がまるでない。

医者や看護師を転属させただけでなく、薬を納入していないなど……これでは。

 

「政治的なパフォーマンスにしても大掛かりですし、目的が理解できないんですよねー」

「……ユノには、言ったの?」

「いいえ、隊長さんにだけですよ。ああそれとあの子には言わないでくださいね?

 絶対に突っ走るのが目に見えていますから、これは2人だけの秘密という事で」

 

もちろん、そう言って頷きを返すフィア。

そんな彼に満足そうに微笑みを浮かべつつ、「それでは」と告げてサツキは去ろうとして……再びフィアに声を掛ける。

 

「すみません忘れてました、この情報をくれたフランさんなんですけど」

「フランがどうかしたの?」

「フライアがきな臭いし本人の希望もあってサカキ博士が極東支部に連れてきたみたいなんです。

 後で会ってきてください、フランさん貴方に会いたがってましたから」

「わかった、すぐに行くよ」

 

お願いしますね、そう言って今度こそサツキは言ってしまった。

その場に残されたフィアは、早速フランに会いに行くためにサカキの研究室へと向けて足を動かしつつ……先程の話について考える。

 

(……ジュリウス、一体フライアで何をしているんだ?)

 

彼を疑うつもりはない、無論他の者もだ。

だが今の話を聞いて……確かな疑惑が、フィアの中で生まれてしまった………。

 

 

 

 

To.Be.Continued...




ヴァリアントサイズ登場!!
せっかくの新武装なのと私個人が気に入ったので先に登場させてしまいました。
さて次回からは本格的なシリアス……また読んでくださると嬉しいです。
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