神々に祝福されし者達【完結】   作:マイマイ

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フライアに対する疑惑を抱きながらも、フィアはゴッドイーターとしての責務を果たしていく。
だが……分岐はすぐそこまで迫っていた……。


第3部捕喰147 ~逃亡者~

「――どうやったらオレに彼女ができると思う?」

「……いきなりどうしたの?」

 

アナグラにある、抗神夫妻の部屋。

そこで久しぶりの休暇を満喫していた抗神カズキに、彼の親友であり第一部隊隊長であるコウタが尋ねてきた。

親友の来訪を歓迎しつつカズキは用件を聞くと……上記の問いかけをされたのだから、キョトンとしてしまうのは当然と言えるだろう。

しかしコウタの表情は真面目なものであり、決してふざけているわけではないらしい。

 

「はいラウエル、ママ特製のプリン(アラガミ入り)ですよー♪」

「わーい♪」

ちなみに、カズキの妻である抗神アリサは最近娘になったラウエルを相変わらず溺愛していたがそれはさておき。

 

「実はさ、前に実家に戻ったとき…母さんに「いい加減彼女くらい作ったら?」って真顔で言われて……」

「…………」

 

どうやらかなり深刻な悩みだったようだ、実の母親に言われてしまうというのはなかなかにキツイ。

とは言ったものの、カズキは困ってしまう。

彼女を作りたい気持ちはわかったが、そう簡単な話ではない。

お互い好き合っているのは当然としても、好みというものだってある。

 

「ところでさ、なんで僕に相談するの?」

「だってお前、結婚した後でも女の子にすげえ人気じゃん」

「いや、そんな事あるわけ……」

「お前の隠しプロマイド、高値で取引されてるし」

「まだ売られてるの!?」

「ちなみに、一番の上客はアリサらしい」

「マジで!?」

 

あんまりな事実にカズキは頭を抱えたくなった、というか抱えた。

どうして自分の夫の隠しプロマイドを妻であるアリサが買うのだろうか…理解不能である。

と、カズキが珍しく大きなツッコミを放ったせいか、団欒中のラウエル達が会話に入ってきた。

 

「パパ、どうかしたの?」

「あ、いや、なんでもないよ……」

「そういえばコウタ、一体何の用なんですか? たいした用じゃないのなら帰っていただけます?」

「お前相変わらず厳しいよな……」

 

予想通りなアリサの態度にほんのちょっぴりダメージを受けつつ、コウタは先程の悩みをアリサ達にも話した。

無論、隠しプロマイドの話題はしなかったのであしからず。

 

「興味ないですね」

「ですよねー……」

 これまた予想通り過ぎる回答である、もはや清々しさすら感じられた。

 

「コウタ、彼女さんがほしいのー?」

「え、あ、まあオレだって男だしさ……やっぱ、なあ?」

「でもコウタって、彼氏というよりもいいお友達の方がしっくりくるんですよねー」

「あー……それは確かに」

「ええっ!?」

 

まさかの言葉にショックを受けるコウタ。

しかもアリサはともかくとして、カズキまで同意するような反応に二重ショック。

……しかし、アリサの言葉は決して間違いではないのが実情であった。

 

コウタ自身は気づいていないものの、彼はアナグラでなかなかに女性の人気が高い。

持ち前の明るさはムードメーカーとして魅力的だし、第一部隊の隊長という立場とそれに釣り合う実力。

人気が出ないわけではない、が……それでも彼に告白しようという女性は現れない。

何故か? それはアリサが言ったように…周りの女性にとってコウタは「頼りになる先輩」「良いお友達」という認識だからである。

コウタが悪いわけではない、ただちょっとばかり女運に恵まれない星の下に生まれてきてしまっただけだ。

 

「ちくしょー……オレに春は来ないのか……?」

「大丈夫です。来世がありますから」

「来世って何だよ!? 現世では望みないの!?」

「…………」

「否定してくださいお願いだから!!!」

 

崩れ去るコウタ、さすがに言い過ぎたとアリサが慌ててフォローに入る。

このような光景も既に見慣れたものだ、というか3年前からまったく変わらない。

そんな中――ラウエルから驚愕の言葉が放たれる。

 

「そんなに彼女さんが欲しいなら、ラウエルがなってあげようか?」

 

『ファッ!!?』

「………ラウエル?」

「な、ななななななな何を言ってるのラウエル! 人生棒に振っちゃうわよ!?」

「どういう意味だよそれ!?」

「アリサもコウタも落ち着いて。……急にどうしたの?」

 

物凄い形相でラウエルに迫るアリサと、ポカンとしているコウタを宥めつつ、カズキはラウエルに問うた。

 

「だってラウエル、コウタの事好きだしコウタだってラウエルの事嫌いじゃないでしょ?

 恋人同士って、好きな男女がなるものなんだよね?」

「コウタァァァァァァァァァッ!!! 私達のかわいいかわいいラウエルに何を吹き込んだああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

「し、知らないから! オレは何もしてないから!!」

「このロリコンがあああ……テメーは私を怒らせた………!」

「ま、まてまてまて!! ホントに何も知らないから! だから命だけはお助けをーーーーーーっ!!!」

「アリサ、落ち着いてお願いだから」

 

鬼も、いやアラガミも逃げ出す程の恐ろしい形相と殺気を放ちつつ、コウタを睨みつけるアリサを制するカズキ。

とうのコウタは当然ながら震え上がり、すっかり腰を抜かしてしまっていた。

情けないと言うなかれ、それだけ今のアリサが恐ろしいという事なのだから。

 

「ラウエル、恋人同士っていうのは普通の好き合っている男女がなるものじゃないんだ」

「? じゃあ恋人同士の好きはどう違うの?」

「うーん……」

 

困った、こういった質問は明確な答えが無い。

とはいえ愛娘の疑問はきちんと答えてあげたいと思う親心が、カズキを悩ませる。

 

「とにかくラウエル、ママはコウタだけは絶対に許しません!」

「おい!! オレにだって選ぶ権利が……」

「はあ!? じゃあコウタはこんなにもかわいいラウエルじゃ不満だって言うんですか!?」

「やべえコイツかなりめんどくさくなってる!!」

「…………」

 

もう2人は放っておこう、そう思ったカズキはツッコミを放棄する事にした。

ラウエルの視線が「ねえどうして?」と訴えている、しかしやはり明確な答えは出せない。

さて困ったとカズキはどうやってこの問題を解決しようかと悩んでいると――チャイムが鳴った。

来訪者が現れたようだ、それに対して少しだけ感謝しつつ、カズキは入口の扉を開く。

 

「あ、ごめんカズキ」

「フィア、どうしたの?」

来訪者はフィアであった、カズキがすぐに中へと招き入れようとしたが、その前にフィアがコウタへと声を掛ける。

 

「コウタ、もうすぐミッションの時間だよ?」

「えっ? あー……そうだったそうだった、わざわざ迎えに来てくれたのか。サンキュー」

「待ってくださいコウタ、まだ話は終わってませんよ!!」

「はいはい、わかったわかった」

「むぎゅ……」

 

がーっとコウタに迫ろうとするアリサを抱きしめるカズキ。

そして右手で彼女の髪を梳かすように暫く撫でると……「ほにゃー」という情けない声が聞こえてきた。

コウタ達に視線を向けるカズキ、その目が「今の内に」と告げていたので、コウタはフィアを連れて部屋を後にした。

 

「……コウタ、アリサと喧嘩してたの?」

「危うく殺されかけました」

「え?」

「なんでもない。それよか悪かったな、オレからミッションを誘ったのにわざわざ迎えに来てくれてさ」

「ううん。僕も助かるよ、“ヴァリアントサイズ”の実戦データにはちょうどいい」

 

あれから訓練を続け、整備班との調整を繰り返していたフィア。

少しずつ、けれど確実に前へと進んでいき…漸く先日、サカキ博士から実戦での使用の許可を得る事ができた。

では早速ブラッド達とミッションに挑もう…と思ったフィアだったのだが、生憎と他のブラッド達は別の任務を受け持つ事になってしまったのだ。

それを知ったコウタがフィアだけを第一部隊と共に行うミッションに連れていく事を提案し、今に到る。

 

「あ、来た来た」

「悪い、待たせた!」

「大丈夫だよ、では行こうか」

 

共にミッションへと赴くローザとエリックと合流し、フィア達は車で旧市街地エリアへと向かう。

その道中、フィアが持つサイズをローザは興味津々といった様子で眺めていた。

 

「やっぱり今までの刀身パーツとは違うね、ちょっと禍々しい感じ」

「鎌ってそういうイメージが多いからね、仕方ないのかも」

「でもカッコいいよなー、サイズ見てオレも刀身パーツ使いたいと思ったし!」

「そうだね、実はボクも使ってみたいと思ったよ」

「へぇ、コウタお兄ちゃんはともかくとして、エリックまで結構子供っぽい事言うんだ」

「オレはともかくって……」

 

そんなやりとりをしていると――旧市街地エリアへと到着する。

今回の討伐対象はオウガテイル三体と、ザイゴート二体だ。

正直フィア達の戦力を考えればあまりにも簡単な任務である、しかし今回の目的はあくまでもサイズの実戦データを得る事だ。

いきなりの実戦で中型や大型を相手にすれば、最悪サイズが破損してしまう危険性がある以上、この程度のミッションが一番良い。

 

「さて……じゃあオレとエリックさんは後衛、ローザは遊撃でフィアは前衛……これでいいか?」

「うん。とりあえずできるだけ僕1人でやらせてくれる?」

「わかったよ、でも無理だけはしたら駄目だからね?」

「ありがとうエリック、じゃあ――いくよ」

 

車を降り、ヴァリアントサイズを展開させるフィア。

黒い刃が姿を現し、大型の鎌はまるで死神を思わせる。

小柄な身体で巨大な鎌を持ちながら、瓦礫の街を歩いていくフィアと仲間達。

息を殺しつつ、警戒を怠らないようにしながら――フィア達は、壁を捕喰している二体のオウガテイルの姿を見つけた。

 

「ザイゴートは……居ないな」

「まずは数を減らす………!」

頼むぞ、とフィアは己が持つ神機へと一言告げてから――オウガテイルに向かって一気に距離を詰めた。

 

「ギ……?」

「ふ―――っ!!」

 

地を蹴る音を拾い、オウガテイルがフィアに気づくがもう襲い。

一撃で仕留めようと、オウガテイルの首を狙ってぶんっとサイズを横薙ぎに振るうフィア。

踏み込みは充分、力だって文句なしに入れる事ができた一撃……だったが。

 

「っ」

サイズの一撃はオウガテイルの首を跳ねる事はできず、僅かに額を切り裂いただけであった。

僅かに鮮血が舞うものの、致命傷には程遠い。

(思ったより敵との間合いを離し過ぎたか……)

問題点を瞬時に解き、次は外さないと構え直すフィアに、オウガテイルが迫る。

 

「おっと、させないよ」

「よっと!」

そうはさせないと、フィアに迫るオウガテイル達に銃撃を叩き込むエリックとコウタ。

しかしその威力はわざと落とされており、命中し足止めはしたもののオウガテイル達にダメージはない。

 

だがそれでいいのだ、先程も言ったが今回の任務はあくまでサイズの実戦データを得るのが目的なのだから。

オウガテイル達が怯んでいる隙に、フィアは一度後方へと跳躍し距離を離す。

そして――ヴァリアントサイズの“特殊能力”を発動させた。

 

「――ラウンドファング!!」

 

瞬間、サイズの刃が変形し大きく伸びた(・・・)

それだけではなく、伸びた刀身には複数の刃が形成されており、フィアはそれを横薙ぎに振るい放つ。

先程間合いを離したので、フィアとオウガテイル達はおよそ五メートル離れている。

勿論、それだけ離れていれば刀身パーツによる斬撃は当たらない――従来ならば。

しかし【神機フレーム制御装置】という装置を組み込んだヴァリアントサイズならば、これだけの距離をゼロにする事も可能である。

事実、伸びたサイズの刃はオウガテイル達の横腹を纏めて貫通し、壁に叩きつけてしまった。

血を吐き出し苦悶の声を上げるオウガテイル達、フィアはそのまま両腕に力を込めオウガテイルごとサイズを垂直に振り上げて。

 

「――バーティカルファング!!」

 

全力で振り下ろし、オウガテイル達を地面に叩きつけてしまった。

それによる衝撃により、オウガテイル達を貫いていた刃が更に突き刺さり、それが決定打となった。

変形を解除する、小さなクレーターができている場所には…既に事切れたオウガテイル二体の骸が存在していた。

 

「ふぅ……」

「すっげえ……」

「これがヴァリアントサイズ……成る程、確かにかなりクセが強そうだ」

 

敵から間合いを離しながらも斬撃を加えられるという利点は、確かに魅力的だ。

だがこれを使いこなすには相当の訓練と技術が必要だと、エリックはすぐさま理解する。

……たとえ自分が第二世代に変わったとしても、使いこなす事はできないだろう、そう思えずにはいられないエリックであった。

一方、見事オウガテイル達を倒したフィアの表情は…不満げであった。

 

(訓練の時よりずっと取り回しが悪い……それに斬撃を出すタイミングとスピードが遅れてる……)

 

1つ1つ不満点を頭の中で思い浮かべつつ、戻った際にリッカ達に報告する内容を纏めていくフィア。

すぐに使いこなす事も調整が上手く行くなどとも思ってはいなかったが……なかなかに難航するかもしれない。

と、今の戦闘音を聞き取ったのか、前方から残りのオウガテイルとザイゴート達がこちらに向かってきている事に気づく。

……とりあえず、現状での改良点は理解できた。

なのでさっさと終わらせる事にしよう、そう思ったフィアはサイズを構え直し、向かってくるザイゴート達に吶喊した―――

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「――よし、終わり終わり」

やや気の抜けたコウタの声と共に、戦闘は終了した。

 

既に捕喰を終え、フィア達の前に転がっていたアラガミ達は霧散している。

サイズの刃を地面に突き刺して放してから、フィアもほっと息を吐いた。

「――まだまだ、こんなものじゃないって思ってる?」

「……うん、こんな程度じゃ足りないよ」

ローザの問いかけにそう答えながら、フィアは静かに拳を握り締める。

 

――そうだ、こんな程度では足りないに決まっている。

 

いずれ戦わなければならない相手、アンノウンには今の自分では勝てない。

だからこそフィアは力を求めている、ヴァリアントサイズのテスターになったのだってそれが理由だ。

新しい力を一刻も早く取り込まなければ、犠牲は増えていくだけ。

それだけではない、自分が弱ければまたしても守りたい人達を守れなくなる。

もっと強く、限界を超えたその先へ向かわなければならない。

その為には今よりもずっと早く歩を進めていかなければ――そこまで考えてから、フィアは頭を振るった。

 

(僕1人じゃ、強くなんかなれないんだ……)

 

それは、決して忘れてはならない大事なこと。

アラガミと戦う武器である神機を整備する整備班や、サポートを行ってくれるオペレーター。

そしてアナグラの仲間達が居るからこそ、どこまでも強くなれるのだ。

自分1人だけではあっという間に限界が訪れる、それを忘れてしまえば……また自分は過ちを繰り返すだけだ。

改めて自分自身にそう言い聞かせ――そんな中、フィアの通信機が鳴り響いた。

 

「………誰?」

『フィア、私、ナナだよ!!』

「ナナ……?」

 

通信先は、同じブラッド隊の1人であるナナであった。

しかしいつもと違い何処か慌てている彼女の声に、フィアは怪訝な表情を浮かべる。

 

「ナナ、どうしたの?」

『た、大変なの! えっとね、私達別の任務が終わった後に救難信号を拾ったんだけど……』

「救難信号? 誰か遭難者が?」

『う、うん……そ、それでね……その遭難者っていうのが――』

 

 

 

 

 

「――お姉様、逃げ出したのですね」

「いいの? 自分の姉なんでしょ?」

「フフフ……もう準備は整いつつあります、とるにたらない話ですよ」

「ふーん……まあ、いいけど」

「さあ……もうすぐよジュリウス、もうすぐあなたは……この世界の“王”になるのです」

 

 

 

 

 

「――遭難者はね、レア博士だったんだ」

「……………え?」

 

 

 

 

To.Be.Continued...




さて次回はあのイベント、でも結構簡略化させる予定です。
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