神々に祝福されし者達【完結】   作:マイマイ

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ルークを救うために戦場へと赴くフィア達。
幸いにも彼はすぐに見つかり、アナグラへと帰還しようとして……彼等の前にオーディンが姿を現してしまう。

ブラッド達全員で相手をする事になったのだが……。


第3部捕喰150 ~解き放たれる力の断片~

「し―――!」

 

オーディンが動くと同時に、ギルも地を蹴った。

両手で持つスピアに力を込め、槍という長い間合いを生かした突きの一撃を放つ。

避けられる、舌打ちをしつつ続いて薙ぎ払い。

それも避けられる、すかさずギルは突きの連打を放っていった。

だが――オーディンはまるで矢のようなスピアの連撃の悉くを回避していく。

 

(クソったれ………!)

 

速すぎる動きに驚愕しながらも、ギルの攻撃は止まらない。

突き、薙ぎ払い、振り下ろし、あらゆる角度からの攻撃を放つが…オーディンには届かない。

「ぐぁ………っ!?」

そればかりか、オーディンはカウンターでギルの身体に蹴りを叩き込み彼を吹き飛ばしてしまう。

吐血しながら地面を滑り飛んでいくギル、入れ替わるように続いてオーディンに攻撃を仕掛けるのは……ナナ。

 

「やあっ!!」

 

裂帛の気合を込めたハンマーによる一撃。

パワーだけならば先程のギルのものより強力な一撃ながらも、やはりオーディンには届かない。

更に一撃二撃三撃……連続攻撃を仕掛けるも、掠りもしなかった。

そして四撃目を回避すると同時に、今度はオーディンの反撃がナナを襲う。

右の足による回し蹴り、まともに受ければ骨が砕かれるその一撃を、すんでのところで装甲を展開し防御するナナ。

 

「きゃっ!?」

 

だがその一撃は強力であり、タワーシールドの優れた防御力を以てしても防ぎきれず、ナナの身体が滑るように後退していく。

すかさず追撃の為にナナへと迫るオーディン、自身の身体に襲う衝撃に顔をしかめながらも、ナナは迫るオーディンに向けて右横からの一撃をお見舞いした。

「ぐっ………!?」

相手は飛び上がっていた、だから回避できる筈がないと思っていたのに。

なんとオーディンはナナの攻撃が迫っている事に気づいた瞬間、自身の身体を空中で大きく捻りハンマーの一撃を回避してしまう。

それだけでなく、その勢いを利用して左足でナナの右肩を蹴り飛ばすカウンターまで叩き込んでしまった。

激痛と衝撃で何もできず、地面を削りながら吹き飛んでいくナナ。

 

「このやろうっ!!」

 

飛び上がり、チャージクラッシュによる一撃を振り下ろすロミオ。

それを、オーディンは両腕を交差させ受け止めてしまった。

これでは先程と同じ……ではなく、オーディンの身体が大きく吹き飛んだ。

ロミオの一撃によるものではない、彼の一撃を受け止め動きを止めた所を、シエルが真横から【グラビトロン・ブレイク】を撃ち込んだのだ。

「カ………ッ!!?」

僅かに苦悶の声を吐き出すオーディン、それは今の銃撃が効いているなによりの証。

だがそれも当然だ、何故ならシエルが撃ち込んだ場所は、先程彼女が【フルーグル】を撃ち込んだ場所とまったく同じ箇所なのだから。

フルーグルをまともに受けながらも、決定打にならなかったと理解したシエルは、その類稀な射撃能力をフルに活かし、同じ箇所を集中して攻撃する戦法を実行した。

その結果、見事彼女の思惑通りオーディンに確実なダメージを与える事に成功する。

すかさずシエルは更に三発の【グラビトロン・ブレイク】を撃ち込み、駄目押しとばかりにロミオが横薙ぎの一撃を叩き込んだ。

 

「ギ、ガガ………ッ!!?」

(っ、効いた………!)

 

シエルの銃撃、更にロミオ渾身の一撃によってオーディンの左脇腹付近に大きな裂傷が刻まれた。

口から多量の血を吐き出しつつ、右膝を地面に付かせるオーディン。

それは絶対的な隙、そして――それを逃すフィアではない。

(これで………決めてやる!!)

神機の柄を握り潰さんとばかりの力で握りしめ、一気にオーディンとの間合いを詰めるフィア。

そして――彼の上段から放たれた渾身の斬撃は、オーディンの身体を左肩から右脇腹までバッサリと斬り裂いて。

 

 

――同時に、フィアの腹部にオーディンの右足が突き刺さった。

 

 

「が、ぶ………っ!!!?」

吐血する。

腹部から全身に伝わる衝撃と痛みで、今にも意識が飛びそうになった。

だが、今のフィアにとってその痛みすら無視せざるおえない光景が…目の前に広がっている。

 

「が、ぎ………っ」

「――キャーーーーーーーーーーーッ!!!」

 

夢を、見ているのだろうか。

シエルの銃撃、ロミオの斬撃。

そしてフィアの渾身の一撃をまともに受けて尚。

 

――尚、オーディンの命は尽きてはいなかった。

 

「う、ぐ……がふっ!!」

「フィア!!」

「フィアさん!!」

 

再び吐血したフィアの元へと駆け寄り、倒れそうになる彼の身体を支えるシエルとナナ。

視線を彼へと向け――2人は戦慄した。

……先程オーディンに蹴られた腹部が、完全に貫かれている。

そこからは耐えず血が流れ続けており、一刻も早く治療を行わなければ…彼の命が危ない。

それを悟った2人は、一度彼をこの戦域から離脱させようとして。

 

「――後ろを見せれば、ぐっ…やられるだけだ」

他ならぬフィアに、止められてしまった。

 

「フィアさん!?」

「フィア、でも……」

「わかる筈だ。こいつは……ここに居る誰か1人でも欠ければ、勝てなくなる」

「だ、だけどその傷で戦ったりしたら………!」

「そうです。気持ちはわかりますが一度後退を――」

 

「――ここで逃げれば、もう僕は強くなれない」

 

『――――』

その言葉で。

フィアをここから後退させようとした2人の手が、ピクリとも動かなくなった。

 

「アレは今僕達が越えなければならない壁なんだ、それなのにここで僕が逃げてしまえば……これから先の戦いを、生き残る事なんかできない」

 

それだけは、決して許されない。

フィアには既に、託された想いというのが存在している。

ブラッドを頼むと告げ、自分だけができる戦いへと身を投じたジュリウス。

まだ子供で、未熟な自分を隊長として支えようとしてくれる仲間達。

そして――かつて幼き自分が、ある少女と交わした約束。

その全てを背負っている今、たとえ自分の命が尽きる事になろうとも逃げる事などできないのだ。

 

「だから僕は……僕達は絶対に負けられない。みんなの全てを出し切って……あいつを倒さないといけないんだ!!」

「………フィアさん」

「フィア……」

 

強い決意の光、それを感じ取りシエルとナナは己の矮小さを思い知った。

なんと情けない事か、自分よりも年下である彼がこれほどまでの覚悟を背負って戦っているというのに。

自分自身が情けなくて恥ずかしくて……だから、2人はフィアから離れ武器を持った。

逃げるわけにはいかない、彼を支えるという誓いを果たし切るまで――決して逃げる事などできないのだから。

 

「……そうだなフィア、俺達で勝たないとな……」

「負けられない……負けてたまるかよ………!」

「ギル……ロミオ……」

 

自分の想いを、願いを汲み取る仲間達が傍に居てくれる。

その事実はフィアに際限なく力を与え、死に体である彼に戦う意志を呼び戻してくれた。

……だが、それでも自分達の不利は変わらない。

たとえ想いがあったとしても、目の前の相手――オーディンは正真正銘の化物だ。

個々の能力では決して勝てない、このまま戦えば…自分達は全滅する。

しかし自分の身を犠牲にして……などという選択は、もうフィアには選べなかった。

命が惜しいわけではない、この身は力なき者達のために使う…その誓いを忘れたわけでもない。

 

(僕の命は僕が勝手に使っていいわけじゃないんだ……)

 

それを理解したから、彼はもう自分自身を蔑ろにはしない。

ではどうする?かといって何か策が思いつかなければ結果は同じだ。

(斬撃も銃撃も、あいつには届かない……限界はもう越えてしまっている……)

自分の神機に視線を向けるフィア。

ギルにとって大切な人、ケイトが使っていた神機――【アビークレイグ】の刀身が鈍い光沢を放つ。

この神機はただの武器じゃない、今は亡きケイトの意志と想いが込められている。

自分の戦える力を、ただただ平和を望む人達の為に使いたいという、尊く美しい願いが。

そんな神機を使う以上、その想いと願いを叶えなければ。

 

「――ギイイイイイイイイイッ!!!」

「っ」

「来るぞ!!」

 

考えている暇はない、オーディンが再びフィア達に迫ってきている。

(限界を超えたその先に……いかないといけないんだ………!)

神機を強く握りしめる、その瞬間――フィアの鼓動が、どくりという音を響かせる。

「えっ―――」

その音はフィアだけでなく、近くに居た皆にも聞こえ。

 

「――お前なんかに、負けてたまるか!!!」

初めて聞くフィアの激昂の声。

それと同時に放たれた、彼の斬撃がオーディンに触れた瞬間。

「ギギギッ!? ギャアアアアアアアアアアアアッ!!!」

オーディンの身体から鮮血が舞い、胸に横一文字の傷が刻まれていた。

 

「なっ―――!?」

「えっ!?」

「なんだ……これ……!?」

 

だがブラッド達は、オーディンに傷を与えたという事実よりも。

フィアの背中から突如として現れた、黒く鈍い光沢を放つ“翼”のようなものに、目を奪われていた。

歪で複雑に絡み合ったような羽根、それがフィアの背中に生えている。

しかしそれは鳥などの生物が持つ羽根ではなく、膨大な質量を圧縮されたオラクル細胞の塊であった。

それが耐えず噴き出しており、風のように周囲に吹き荒れていた。

 

「フィアさん、それは……」

「――みんな、いくぞ!!」

『…………』

 

一体フィアの身に何が起きたのか、それはわからない。

だが今はそれを悠長に考えている暇はないと、ブラッド達は己に言い聞かせ戦闘態勢へ。

一方、圧倒的有利であったオーディンは、先程のような勢いは無く…完全にフィアを恐がっていた。

獣の本能か、今の彼が自分を打倒する存在だと認識したのだろう。

故に――オーディンは全速力でその場から跳躍、離脱を図った。

 

「逃がしません!!」

 

しかし、それがオーディンにとっての最大のミスとなる。

本能に従った結果の逃走、それにより数秒であったがブラッド達に対し隙を作ってしまった。

そしてその数秒が、他ならぬ自身の命を奪う結果に繋がっていく。

 

「ギィ………ッ!!?」

全力の逃走、通常ならばそのスピードで追撃など許さなかっただろう。

しかしオーディンは失念していた、先程の戦いでシエルやロミオ、そしてフィアから決して小さくないダメージを負っていた事を。

それにより今のオーディンには先程のような加速を得る事はできず、結果――背中にシエルの【グラビトロン・ブレイク】の一撃を受けてしまった。

 

「逃がさねえぞ………!」

ぐらりとバランスを崩すオーディンに、ギルが迫る。

繰り出されるは高速の突き、先程以上の凄まじい嵐のような連続攻撃だ。

その一撃一撃がオーディンの身体に刻まれていき、ギルは一度大きく身体を振りかぶって――チャージグライドによる必殺の一撃を叩き込む!!

 

「――よーし、タイミングバッチリ!!!」

ギルの必殺の一撃で吹き飛んでいくオーディン。

その先には――ブーストを終えたナナの姿があった。

「―――1つ!!」

吹き飛んできたオーディンの背中に、一撃。

「2つ、3つ、4つ!!!」

続けざまに二撃、三撃、四撃……連続でオーディンの身体にハンマーを叩き込んでいく。

その度にオーディンの身体はひしゃげ、潰れ、口からといわず様々な場所から赤黒い液体を吐き出していく。

「―――7つ!!!」

下段からの振り上げによる一撃で、オーディンを上空に吹き飛ばすナナ。

そこには既に――チャージクラッシュの準備を終えたロミオが、飛び上がっており。

 

「うおおおおおおおおおおおっ!!!」

自分に向かって吹き飛んできたオーディンに、その一撃を振り下ろす!!!

刀身がオーディンの右肩を捉え――見事、右腕を斬り飛ばした。

「――フィア、後は任せた!!」

神機を振り下ろした体勢のまま、ロミオは地上に向かってそう叫び。

名を呼ばれたフィアは、落ちてくるオーディンにしっかりと狙いを定め。

 

「―――終わりだ!!!」

自身が放てる全身全霊の一撃を、オーディンへと叩き込んで。

 

 

――その一撃により、オーディンの身体は左右2つへと別れ。

 

戦いの終わりを告げるように、フィアの背中にあった羽根も、一瞬眩い光を放ってから――消え失せた。

 

 

 

 

To.Be.Continued...




フィアのあの現象、ゲームやってる人なら何なのかわかる…かもしれませんね。
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