神々に祝福されし者達【完結】   作:マイマイ

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消耗しながらも、キュウビを打ち倒す事ができたフィア達。
しかし、突如として謎の人型アラガミが現れ、危機に陥ってしまう。

そんな中、カズキが戦いの場に現れ、人型アラガミと戦闘を開始した………。


第4部導入編捕喰176 ~怪物達の攻防~

――2人の怪物が、ぶつかり合う。

 

 その度に大地は裂け、大気は震え、衝撃が突風となって辺りに吹き荒れる。

 爆音と共に聞こえるのは鋼がぶつかり合うような甲高い音と、幼い少女の狂気に満ちた笑い声。

 

「くひっ、きひひひ……あはははははっ!!!」

「…………」

「カズキ、カズキ、カズキィィィィィィィッ!!!」

 

 振るわれる拳と蹴りは、一撃一撃が必殺の領域。

 か細い見た目からは考えられない破壊力を孕んだそれは、神機の刀身で弾いても尚衝撃が全身に襲い掛かるほど。

 並の神機使いならば最初の一撃で終わり、その身に風穴を開けられ命を奪われるだろう。

 しかし――少女が相手をしている青年は並などという領域をとっくに凌駕し、“怪物”と呼んでも尚届かない力を持つ。

 既に百手近い攻撃を繰り出しているというのに、青年――抗神カズキはその悉くを弾き、いなし、防いでいた。

 

「ひひ…ひひひひひ………!」

 

 それが狂いし少女には愉しく、同時に嬉しかった。

 自分の全力を事も無げに防ぐカズキの力に、強さに、少女は溺れ没頭していく。

 もっとだ、もっともっともっともっと……彼の力を見てみたい。

 その願いを叶える為に、少女の攻撃はより激しく、速くなっていった。

 

「…………」

 

 一方、少女を見ているカズキの瞳はただ冷たく、無機質なものであった。

 その冷たさたるや、見るだけで心が凍りつくほどだ。

 事実、カズキは目の前の少女に対し何の感情も抱いていない。

 仲間や妻を傷つけられた怒りも、憎しみも、何もない。

 ただ“滅する”という感情だけで戦っている、幸か不幸か少女はそれに気づいていないようだが。

 

「……相変わらずデタラメな強さだな、カズキのヤツは」

 

 フィア達の治療をしながらカズキの戦いを見ているリンドウの口から、若干の呆れが含まれた呟きが零れた。

 彼の戦いを見るのは数年振りだが、どうやら前よりも更に強くなっているようだ。

 まさしくデタラメという表現しか思いつかない、最初から彼がメンバーに入っていれば今のような状況にはならなかったのではないかと思ってしまう。

 

「――カズキが後方に居てくれてよかったですね、全開の状態じゃないといくらあの人でもアレの相手は厳しいかと思います」

 

 リンドウの心中を読んだかのように、アリサは言った。

 ……アレは強い、動きに無駄が見られるが全開の自分でも仕留められるかどうか。

 なのでカズキが力を温存していたのは本当に良かったと、アリサは思う。

 おそらくカズキは出撃前からアレの存在を完全ではないにしろ感知していたのだろう、何故彼が当初キュウビの討伐メンバーに加わらなかったのかがようやくわかった。

 

「…………」

「? フィアさん、どうしたんですか?」

 

 どこか思い詰めたような表情でカズキ達の戦いを見るフィアに気づき、アリサは彼に声を掛けた。

 

「……カズキは強いね、本当に」

「…………」

「あれだけの強さがあれば、きっと沢山の人が守れるだろうね」

 

 それが羨ましくて、眩しくて……同時に、自分との力の差を思い知らされる。

 守りたい人達がここには居る、でも今の自分ではきっと守りたい人達を守る事はできない。

 カズキを見ていると否が応でも思い知らされる、もっと強くならなければ自分はまた大切な人達を喪うと……。

 

「っ、ぎぃ………っ!!?」

「…………」

 

 汚らしい悲鳴と共に、少女がカズキの斬撃を受け吹き飛ばされる。

 右肩から血を流し、よく見ると少女の身体の至る所には斬撃による裂傷が刻まれていた。

 対するカズキにはダメージらしいダメージは見当たらない、僅かに息を乱しているだけであり…少女との実力差は明白であった。

 

「……アンノウンと比べてあきらかにお粗末だ、雰囲気だけ似せただけの紛い物だな」

「ひひ…カズキ、強い、カズキ…食べる」

「――これ以上お前なんかの相手をするつもりはない、消えろ」

 

 ここで初めて、カズキは少女に向けて感情を込めた瞳を向けた。

 その感情は――憤怒一色、凄まじい怒りの形相に少女は初めて怯えの表情を見せる。

 ……逃げなければ、今すぐここから逃げなければ殺される。

 獣としての本能が訴えるが、少女は愚かにもそれを無視してカズキへと向かっていき。

 

「っ、ご――………っ!!?」

 まず一撃、懐に踏み込んできたカズキの膝蹴りを腹部に叩き込まれる。

 

「ぎっ……!?」

 続いて二撃目、瞬時に後ろに回り込まれ後頭部に肘鉄が突き刺さり。

 

「ぎゃ……ぎぃぃぃぃぃっ!!?」

 三撃目に肘鉄を叩き付けた勢いそのままに回り蹴りを顔面に叩きつけられ――カズキは、左腕をスサノオの尾剣に変え情け容赦なく少女の顔面を貫いた。

 

 その一撃は少女の顔に風穴を開け、常人ならば当然即死だが…アラガミである少女はまだ生きていた。

 貫かれなかった口からは聴くに堪えない断末魔の叫びが放たれ続け、それも秒単位で小さくなっていく。

 それでもカズキは一片の情も躊躇いも少女には向けたりしない。

 当たり前だ、目の前の存在は人間でもこちらの味方でもない、ただの倒すべき怪物。

 そこに向ける情など皆無で当然、だが……先程から聴こえるこの断末魔は耳障りだ。

 

「あー…カズキィィ、カズキィィィィィィ………!」

「――さよならだ」

 

 右手に持つ神機を、上段から振り下ろす。

 繰り出される斬撃は、迷う事無く少女の身体をバッサリと切り裂いて。

 

――少女の身体が、()()してしまった。

 

「おおっ? いきなり消えやがったぞ?」

「……コアが無いから、存在を保てなくなって霧散したんだと思う」

「ほぅー……不思議な生物だな」

「アラガミに対しては今更な言葉だな、リンドウ」

 

 

 

 

 

 

 

「――で、やっぱお前はさっき戦ったアレの存在を前もって感知できてたから、最初後方支援に回ったのか?」

「ええ、完全にというわけではないんですけど……第六感のようなものが働きまして」

「カズキ、あーん」

「はい、あーん。……でも間に合ってよかったです、キュウビだけでも強敵だったのにあんな怪物まで出てくるなんて」

「何言ってんだ。お前さん楽勝だったじゃねえか」

「カズキ、あーん」

「はい、あーん。そうでもなかったですよ、あの時は力を温存していたからでして、キュウビと戦っていたら危なかったかもしれません」

「カズキ、あーん」

「はい、あーん」

 

「………おいアリサ、少しは自重するって事はできねえのか?」

 

 場所は変わり、アナグラの医務室。

 傷を癒しながら、カズキ達は先程の戦いについて話し合っている中……ソーマのツッコミが木霊した。

 その表情は疲れと呆れが同居しているものだった、とはいえそれも致し方ないというものだ。

 

「自重って何を自重しろというんですか? カズキ、あーん」

「はいはい、あーん」

「それを自重しろって言ってんだ!!」

 

 先程から、アリサは食事をカズキから「あーん」してもらって食べさせてもらっている。

 まあ彼女の場合まだ両腕が復元していないので仕方ないのかもしれないが、だからといって周りに人がいるというのに甘ったるい空気を出してほしくないと思うのは当然の事なわけで。

 

「いいじゃねえか、夫婦は仲睦まじくねえとな。あー……俺もサクヤに会いたくなっちまった」

「リンドウ、テメーまで……」

「どうせソーマはシオちゃんが今サテライト居住区に遊びに行っててアナグラに居ないから、機嫌が悪いだけですもんねー?」

「…………」

(否定しないんだ……)

 

 彼も大分素直になったようだ、なんだかちょっと嬉しいと思うカズキなのであった。

 

「そういえば、フィアさんの姿が見えませんが……」

「あいつは訓練所に向かったぞ、ったく……焦らなくてもあんなに強いくせに無茶するぜ」

「…………」

 

 やはり、フィアはカズキとよく似ているとアリサは再認識した。

 彼は傷つくことを恐れている、身体の痛みではなく……心の痛みを。

 自分の身体がいくら傷つこうとも構わない、でも……心が傷つくのは耐えられない。

 そして彼は仲間を、他者を大切にし過ぎるのだ。

 だから守りたいと願い、その為にどこまでも強くなろうともがき苦しむ。

 支える者が居なければあっという間に壊れてしまう、フィア・エグフィードという少年はそんな子だ。

 

 

――とはいえ、そんな彼を支えようとしてくれる存在は、すぐ傍に居るのだが。

 

 

「…………」

 

 フィアは逃げたかった。

 現在、彼は訓練所…ではなく、自室に正座している。

 そして、そんな彼を見下ろすように視線を向ける2人の少女、シエルとナナが居た。

 

「……フィア、キュウビを倒したばかりなのに訓練しようとするとか……バカなの?」

「ナナさんの言う通りですね、戦いで疲労が蓄積してる状態で訓練しても逆効果です、それがわからないのですか?」

「うっ………」

 

 ずけずけと、情け容赦ない2人の言葉がフィアの心に突き刺さる。

 しかし反論できない、しようと思っても倍になって返ってくるのは明白だったので、フィアはおとなしくするしかなかった。

 

「フィアはなんでもかんでも1人で解決しようとするから駄目なんだよ、フィアだけが強くなっても意味無いんだよ?」

「…………」

「それとも、部下であり仲間である私達などどうでもいいと?」

「そういうわけじゃ……」

「でしたら、共に歩み共に支え、そして共に強くなる選択をしてください。――あなたは少し、優しすぎるのですから」

「………うん、ごめん」

 

 本当に容赦の無い叱りだ、ちょっとだけショックを受けつつも……フィアは嬉しかった。

 自分を心から心配し叱ってくれる人達が居る、それが本当に幸福で尊いものだと知ったから。

 

「とりあえず……ごはん食べようか?」

「そうですね、フィアさんもいいですか?」

「うん、勿論!」

 

 立ち上がり、3人はフィアの部屋を後にする。

 そのままラウンジへと向かい、ムツミ特製の料理に舌鼓を打ちながら、暫しの平和を楽しむのであった………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――あーあ、まさかあんなにあっさりと倒されるなんて思わなかった。

 

―――まあしょうがないか、空っぽの傀儡じゃ満足な力なんか出せっこないし。

 

―――少しの間は、おとなしくしておこうかな。

 

 

 

―――その時まで、後もう少し。

 

―――カズキ、ついでにフィア、また……楽しもうね?

 

 

 

 

 

 

To.Be.Continued...




とりあえずここまで。
次回は少し遅れそうです、GE2RBをやり直してストーリーを再確認してきますので。
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