神々に祝福されし者達【完結】   作:マイマイ

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いよいよレイジバースト編にあたる第4部が開始します。
楽しんでいただければ幸いに思います。


第4部 ~未来への軌跡を辿る物語~
第4部捕喰180 ~情報管理局~


『――任務完了です、お疲れ様でした』

「…………」

 

 フランの通信を聞き、フィアは戦闘の緊張を切り大きく息を吐き出した。

 彼の周りに転がるのはアラガミ達の死骸、その全てがコアを抜かれいずれは霧散するだろう。

 今日もフィアは仲間達と共に神機使いとしてアラガミ討伐に励んでいたが……彼の表情は強張っていた。

 彼だけではない、共に任務に赴いたロミオ、ナナ、そしてシエルの3人もまた彼と同じような表情を浮かべている。

 アラガミとの戦いで苦戦したわけでも怪我を負ったわけでもない、ただこの任務が本来の任務とは少々違っているだけ。

 

「ったくさー、本部のやつ等勝手だよな。自分達が極東に来る前に周辺のアラガミを掃討しろとか……何様だよ」

 

 そう、ロミオが愚痴ったようにこの任務は極東からではなく本部――情報管理局の指示によるものだ。

 「螺旋の樹」の調査を極東支部と協力して行うために、本部直轄の組織である情報管理局がこの極東にやってくる。

 本部の組織が極東に介入してくるという事実は、あまり歓迎できる話ではない。

 なのでこの数日、極東内の空気はあまり良いものではなく皆ピリピリとしている。

 そんな中、まだ到着しても居ないというのにこの介入である、ロミオでなくても愚痴りたくなるのは当然であった。

 

「ところでシエルちゃん、その情報管理局って具体的にどんな所なの?」

「主に情報の収集・監視・保全のほか……アラガミ化した神機使いの抹消を行う部門です」

「アラガミ化……」

「本部の中でもかなりの力を持った場所ですし、そこの局長を務めるアイザック・フェルドマン局長は29歳という若さで総責任者の地位につくなど……有名な方ですよ」

「エリートってわけかよ……でもさ、エリート度ならブラッドも負けてないよな?」

「ロミオ先輩、エリート度って何さ……」

「…………」

 

 螺旋の樹の調査は、正直芳しくないのが現状だ。

 しかし情報管理局による介入によりその調査が進むというのならば、フィアとしても極東としても大いに助かる。

 だがそれだけでは済まないだろう、フェンリルという組織は一枚岩ではないし…特に本部直轄の部門は、信用できない。

 不安を抱きながらも、自分達にできる事をするしかないとフィアは言い聞かせ――再びフランからの通信が入った。

 

『ブラッド隊に連絡、任務を終え極東に戻り次第「役員区画」にある会議室に集合せよ、との事です』

「わかったよフラン」

 

 どうやら、情報管理局が到着したらしい。

 フランからの通信を切り、フィアは3人に通信内容を告げる。

 すると案の定と言うべきか、ロミオとナナはあからさまに嫌そうな顔を返してきたのだった。

 

 

 

 

 

「――失礼します」

 

 任務を終え、フィア達ブラッド隊はそのままの足で会議室へと赴いた。

 いつものように何も言わず入ろうとしたフィアだったが、さすがに自重したのか一言口にしながら会議室へと入る。

 そこには既に見慣れない局員とサカキ博士、壁際には腕を組んだまま立っているソーマとカズキの姿が。

 

「やあ、来てくれたか」

 フィア達を見てサカキが声を掛けてくれた。

 

「紹介しよう、状況管理局を統括しているアイザック・フェルドマン局長だよ」

 

 そう言って、サカキは自身の隣に立つ壮年の男を紹介する。

 視線をフェルドマンと呼ばれた長身の男性へと向けるブラッド達。

 彫りの深い顔立ちに厳しい瞳が、否応なく他者に威圧感を与えてくる。

 長身も相まっておもわず視線を逸らしたくなるような迫力がこの男性から感じられる、と……ここでフェルドマンが口を開いた。

 

「君がブラッドの隊長……あのグリード・エグフィードの息子か」

「…………」

「勘違いしないでくれ、あの男の息子だからといってこちらがどうこう思うつもりはない」

 

 よく言う、おもわずそんな言葉がフィアの口から出そうになってしまった。

 確かにこのフェルドマンからはそのような感情を向けられていない、だが……周りの局員からはあからさまな警戒と嫌悪の感情を向けられている。

 それに気付いたのか、他のブラッド達の表情が強張っていき場の空気が重苦しいものになっていったので、フィアはフェルドマンに話を進めるように促した。

 

「では早速本題に入ろう、我々情報管理局は「螺旋の樹」を「聖域」に認定する事に予定している」

「聖域……?」

「フェンリルが人類の共有財産として認定し、管理する領域の事だ。

 聖域として認定する事によりフェンリル本部の潤沢な人的・物的リソースによる安全かつ安定した研究・調査体制を敷く事が可能となる」

「………それはつまり、あの「螺旋の樹」を極東から接収し本部が独占する…という意味か?」

 

 そう口を挟んだのは、ソーマであった。

 彼はフェルドマンを睨むように見つめながらそう問いかけ、けれどフェルドマンは意に介した様子もなく言葉を返した。

 

「そう思いたいのならばそう思えばいい、だが素人が迂闊に手を出してはいけないという事ぐらいは理解できるだろう?

 この数年で極東近辺では見過ごせない案件が幾つも起こっている、本部としてもこれ以上好き勝手にされるわけにはいかないという事だ」

「なんだと……?」

 

 食って掛かろうとするソーマを、隣に立つカズキが制する。

 おもわず睨むようにカズキへと視線を向けるソーマであったが、彼の目を見ておとなしく引き下がる事にした。

 

「ソーマ博士、我々だけではあの「螺旋の樹」を調査するのにも限界がある、だからこそ情報管理局と協力して早急な調査を行わなければならないんだ」

「………ブラッド隊には、是非我々の任務に協力してほしい。――見てくれ」

 

 そう言って、フェルドマンは後方に展開されているモニターへと視線を向けさせる。

 そこに映るのは「螺旋の樹」、全員の視線がモニターに向けられているのを確認してから、彼は言葉を続けた。

 

「あれの調査をするには特殊な制御装置を展開させなければならない、その際に有人型神機兵を用いるのだが……君達にはその護衛を頼みたい」

「……調査の際に、ジュリウスに対する影響は無いの?」

「ジュリウス元大尉の事は聞き及んでいる、寧ろ彼への干渉は一切認められないしこちらも現状では干渉するつもりはない。

 彼によって「螺旋の樹」の中で行われている終末捕喰は均衡を保っている、不必要な干渉はその均衡を崩しかねないからな」

「………それなら僕からは何も言う事はない、そちらの指示に従って協力させてもらう」

 

「よろしい。――では、リヴィ」

「はい」

 

 リヴィと呼ばれた少女が、フェルドマンの前に出てブラッド達と対峙する。

 薄桃がかった銀の髪を三つ編みにし、藍色のワンピースと紅のフードで身を包んだ褐色の肌を持つ少女は……何故か一瞬ロミオへと視線を向けた。

 しかしそれに気付いたのはフィアのみであり、当のロミオはそれに気付かない。

 

「今後はリヴィ・コレット特務少尉の指示に従うように、以上だ」

「――了解。失礼する」

 

 言うやいなや、反転し会議室を出て行こうとするフィア。

 何か言いたげなブラッド達であったが、隊長である彼が退出しようとしているので慌ててその後を追った。

 そしてカズキとソーマ、サカキも退出し会議室に情報管理局の者達しか居なくなった後。

 

「――リヴィ、“彼”か?」

「……………はい、間違いありません。やっと……会えました」

 

 淡々とした口調の中に含まれる、確かな喜びの声。

 よく見るとリヴィの口元には僅かに笑みが浮かんでおり、それに気付いたフェルドマンは何も言わず…けれど同様に口元に笑みを浮かべた。

 だがそれも一瞬の事、すぐに思考を切り替え考えるのは……フィアの事であった。

 

(グリード・エグフィードの息子であり彼の実験体の1人、おそらく体内にアラガミを巣くわせていると思うが……隔離した方がいいのではないか?)

 

 フェルドマンは、秘密裏にグリードが行っていた非人道的な実験の内容を知っている。

 その内容から推測し、彼はフィア・エグフィードの中に眠る“アラガミ”の存在を察知していた。

 人類の敵であるアラガミをその身に宿した者が、本部直轄のエリート部隊である“ブラッド”の隊長を務めるなど、問題ではないのだろうか?

 とはいえさすがにそこまでの干渉は今後の調査に支障を来しかねない、極東内での彼の評価の高さを考えればだ。

 なのでフェルドマンはこの問題を保留にし、けれど決して監視を目を緩めないように他の局員に指示を出すのであった。

 

 

 

 

 

 

「――ねえロミオ、あのリヴィって子……知り合いなの?」

「んあー?」

 

 場所は変わり、休憩室にてフィアはロミオと共に寛いでいた。

 そんな中、彼は先程の少女――リヴィ・コレットの事を思い出しロミオに問いかける。

 一方のロミオは何故か疲れているらしく、だらしない格好でだらしない返事を返してきた。

 

「ロミオ、どうしたの?」

「んー……なんていうかさ、あのオッサンと対峙して疲れたなあって……」

「オッサン……フェルドマンの事?」

「そうそう、みんなだってあの後それぞれの部屋に帰っていっただろ?」

 

 他のブラッドメンバーも言葉には出さなかったものの、フェルドマン達情報管理局の面々との会話で精神的な疲労を負っているのは間違いないだろう。

 まあそれも無理はないとロミオは思う、周りから威圧的な視線を向けられれば疲れるというものだ。

 それに、これは少し情けない話なので誰にも言えないが……ロミオはあのフェルドマンが恐いなあーっと思ってしまっていたわけで。

 

「それよりなんだっけ? あのリヴィって子と知り合いなのかって言ってたけど……なんでそんな事訊くんだ?」

「あの子が僕達の前に現れた時、一瞬だったけどロミオの方を見ていたから」

「んー………実はさ、オレもあの子をどっかで見た事あるような気がするんだよなあ」

 

 しかし、いまいち思い出す事ができない。

 会ってるとするならばマグノリア・コンパス時代に出会っているであろうが、あそこでの記憶も正直小さい頃なので覚えていないのだ。

 ロミオ自身、あそこではあまり優秀な子ではなかったので厳しく躾けられていたから無意識に記憶に残さないようにしていたのも大きい。

 うんうんと頭を捻るロミオであったが、結局何も思い出す事はできなかった。

 

「――ブラッド隊長」

「あ……」

「うおっ……」

 

 噂をすればなんとやら、音もなく現われたリヴィを見てロミオはおもわず変な声が漏れてしまった。

 そんな彼には構わず、リヴィは自らの用事を済ます為にフィアへと話しかける。

 

「早速だがブラッド隊長、そちらの部隊の戦闘能力がどれほどのものか確認したい。正確な戦力を理解せねばこれからの作戦に支障が出てしまう」

「それは、一緒に任務に出るって事?」

「そういう事だ、ブラッド隊長には必ずメンバーに加わってもらうとして……2人ずつ、任務に同行してもらい個々の戦闘能力を確認したい」

「ん……わかった、じゃあ十五分後にエントランスロビーでいい?」

「了解した。こちらも準備を進めていく」

 

 淡々とした口調でそう言って、リヴィはその場から離れようとして……徐に、ロミオへと視線を向けた。

 少女とは思えぬ迫力を持った黒曜の瞳がロミオを捉えている、その瞳を一身に受けロミオはおもわず顔を引き攣らせた。

 しかも相手は何も言わずにただこちらを見つめてくるばかりなのだ、何を言われるかわからず戦々恐々してしまうのは仕方ないと言えた。

 だが、リヴィは何も言わず黙って踵を返し、今度こそ休憩室から出て行ってしまう。

 

「…………」

「……ロミオ、やっぱりあの子に何かしたんじゃない?」

「やっぱりってなんだよ!! でも……どうもあの子はオレの事を知ってるみたいだなあ」

 

 もしそれが事実なら、かなり失礼な事をしてしまっている。

 早めに思い出してあげないとなあ……そう思うロミオなのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……局長、どうしましょう。ロミオに話しかけようとしたのに……緊張してできなかった」

「そうか……だが大丈夫だ。話せるチャンスはまた来る」

「はい……最大限善処します!!」

 

 

 

 

To.Be.Continued...




注意事項。
うちのリヴィさんはキャラ崩壊しています、まだ片鱗すら見せていませんがキャラ崩壊しています、今更ですがご了承ください。
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