神々に祝福されし者達【完結】   作:マイマイ

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最後の戦いの幕が開く。
滅びるのは世界か、それとも狂いし神々達か……。


第4部捕喰214 ~最後の死闘~(前編)

 光が奔る。

 終焉の大地に、舞い散る閃光とぶつかり合う剣戟。

 螺旋の樹全体を揺らしかねないその衝撃の中、二体の神が凌ぎを削っている。

 

「はあああああっ!!」

「ハハハッ!!」

 

 裂帛の気合を込めた斬撃を放つカズキ。

 その一撃を前にしても、アンノウンは歓喜の雄叫びを上げ、その一撃を“両腕”で弾いてしまった。

 ……もはや、両者の間に割って入る者などこの世には存在しない。

 最強の神機使いとアラガミとの死闘は、誰も介入できない神々の戦いと化していた。

 

「ジャアッ!!」

 

 後退しつつ、アンノウンが叫ぶ。

 彼女の声に呼応するかのように十二の尾がうねりを上げ、それらが一斉にカズキへと襲い掛かった。

 まるで矢のように迫るそれを、カズキは神機を構え直しながら迎え撃つ。

 

 その一発一発はまさしく必殺、当たればそれで終わりである死の一撃を。

 カズキは手に持つ神機で、悉くを弾き、いなし、蹂躙していく。

 

「――はっ!!」

 

 十本目の尾を弾くと同時に、カズキは反撃に移ろうと地を蹴った。

 それを許すまじと残り二本の尾が彼を襲うが、それには構わずアンノウンへと向かう。

 無傷で勝つ事など不可能、余力を残す事など叶わない。

 それを理解しているからこそ、カズキは己の危機すら反撃のチャンスの糧にする。

 

 彼の心臓を穿とうと迫る二本の尾。

 それを間合いを詰めながら避けようとして――左脇腹と右足に裂傷を刻む事を許してしまう。

 痛みが襲い掛かるが猛りだけでそれを無視し、彼はアンノウンへと反撃を叩き込む。

 

 上段からの振り下ろし。

 左手で弾かれる、続いて返す刀で横薙ぎの一撃。

 跳躍され避けられる、だがその行動は彼にとって次なるチャンスへと繋がった。

 

「うおおあっ!!」

 

 叫び、カズキは左手を上空に跳躍したアンノウンに向けて突きのように振り上げた。

 瞬間――彼の腕が変形、スサノオの尾剣となって悪魔へと迫る。

 

「っ、チィ……!」

 

 焦りを含んだ舌打ちを放つアンノウン。

 強引に身体を捻り、その攻撃を回避しようと試みる。

 

 結果、アンノウンの頭部を狙った彼の一撃は目論見を外れしかし。

 十二本あった尾の内三本を、根元付近から斬り飛ばす事には成功した。

 鮮血を撒き散らしながら、地面に落ちる漆黒の輝きを放つ尾。

 それを見て、アンノウンは着地してからカズキに対し歓喜と怒りを織り交ぜた表情を見せた。

 

「せっかく生やしたのにもう斬られちゃった、けどやっぱり強いねー」

「はぁ――はぁ――は――」

 

 呼吸を整え、身構えるカズキ。

 ……今の彼に、アンノウンのような余裕は見られない。

 

 否、アンノウンとて決して余裕があるわけではなかった。

 互いに全力を出し、相手の命を奪う事だけを考え戦っている。

 そこに余裕など挟む事はできず、しかし追い詰められ始めているのはカズキの方であった。

 

「は――はぁ――」

「息が乱れてるよ? もう少し、踊れるよね?」

 

 問いかけると同時に、アンノウンは自身を形成しているレトロオラクル細胞を躍動させる。

 蠢く全身の細胞は、すぐさまカズキによって斬り飛ばされた三本の尾を再生させ、元通りに戻してしまった。

 その光景に歯噛みしつつ、カズキは一片の油断も抱かないまま思考を巡らせる。

 アンノウンに勝利する方法、その結果を手繰り寄せる方程式を必死に探す。

 

 ……だが見つかるのは、“このままでは勝てない”という結論だけ。

 細胞とアラガミ能力を最大限まで活用しても尚、今のアンノウンには届かないと“直感”で感じ取ってしまっている。

 それだけの強さを相手は有していると、先程の攻防でカズキは理解してしまっていた。

 

――けれど、勝たねばならない。

 

 生きて帰って、再び愛する者と平和な未来を目指して戦い続けなくてはならないのだ。

 刺し違えてでも、という選択は選べない。

 そんな自己犠牲は、彼が愛する妻や娘が認めないからだ。

 そして彼自身も、その生き方を望んでいた。

 

「――生への執着、明日への希望、それを掴もうとする大きな意志、その全てを持っているからこそカズキと戦うのは楽しいんだ」

「………………」

「でもそれも終わり。カズキはワタシには勝てないし、あの子達は特異点を救えない。終末捕喰を止められないってカズキならわかるでしょ?」

「――――あの子達は勝つさ。ジュリウスという友達を救うために今まで頑張ってきたんだ、どんな絶望も逆境も跳ね除けてきたんだ」

 

 信じるように、カズキは力強く言い返す。

 それが気に入らないのか、アンノウンの表情が僅かに歪む。

 

「この世界は終わらない、終わらせない。

 お前を倒しみんなの元へと向かいジュリウスを助ける、未来は――まだ決まったわけじゃないんだ」

 

 それは、どこか自分自身に言い聞かせるような言葉だった。

 このまま戦っても勝てない、勝つ方法が見つからない状況では今の挑発ともとれる言葉は悪手でしかない。

 それでもカズキは言い返した、言い返さなければ結果が出る前に心で負けてしまうと思ったからだ。

 

 

「――――なら、もっと沢山踊らないと。ワタシには届かないよ?」

 

 

 空気が変わる。

 冷たく言い放ちながら、アンノウンは十二の尾を複雑に動かし始めた。

 ――それを見て、カズキは静かに身構え直す。

 次に放たれる攻撃はまさしく嵐の如し、今までとは比にならぬ破壊力を持つ攻撃だと認識した。

 

 背筋に、死神の気配を感じ取る。

 すぐ傍まで迫っているリアルな死の恐怖に、心が折れそうになる。

 自身を鼓舞するだけではその恐怖は拭えず、同時に“終わり”も免れない。

 

「さあ――生き延びてごらんよ、カズキ!!」

 

 それが、開始の合図。

 アンノウンの言葉と共に、十二の尾が一斉にカズキへと向かって伸び始めた。

 伸縮自在な漆黒の尾は、その一本一本が鉄塊を容易く貫き砕く破壊力と衝撃を秘めている。

 神速の速度を以て彼を穿とうと迫る尾を、カズキはその場から動かずに対処するという選択を選ぶ。

 

 迫る漆黒の尾を神機で弾き、いなし、対処しきれないものは回避する。

 ――だが、無意味。

 一度軌道を変えた尾も、凄まじい追尾能力で再びカズキの命を狙おうと迫ってくる。

 

 このままでは埒が明かない、そう思ったカズキの視界に更なる絶望が映った。

 胸の前で両手を翳すアンノウン、その中心で赤黒い光を放つ球体が生成されていく。

 それがなんであるかなど考えなくても判る、あれはアンノウン――正確にはマガツキュウビが扱う“殺生石”と呼ばれるものだ。

 あれが展開されれば動けなくなる、そればかりか別の場所で戦っているフィア達にも影響を及ぼしかねない。

 

「く、そ――――!」

 

 尾の対処など、している場合ではない。

 瞬時にカズキは意識をアンノウンだけに向け、神機を右上段に構えながら“光の剣”を発動させる準備に入る。

 あれは絶対に止める、止めなくてはこちらの負けは確実だ。

 前回はレトロオラクル細胞によって強引に相殺させたが、今回もそれができるのか判らない以上このまま“殺生石”を展開させるわけにはいかない。

 

「っ…………!」

 

 神機の刀身が白い光に包まれ始めた瞬間、カズキの全身に激痛が走る。

 今の彼は無防備な姿を曝け出しており、その隙を逃さず十二の尾が一斉に彼の身体を貫いた。

 意識が断絶しそうになる、耐え切れず吐血するが彼は構わず“光の剣”を展開して。

 

「――――残念、ちょっと遅かったかな」

「が――ぐ、うおおおおおっ!!」

 

 臨界まで輝きを見せる“光の剣”を振り下ろす。

 その一瞬早く、アンノウンは“殺生石”を掌サイズまで瞬時に圧縮させ。

 ぽーんと、無造作にそれをカズキに向かって投げ放った。

 

 キャッチボールのような手軽さで投げられた“殺生石”が、“光の剣”に呑み込まれる。

 ――それで、終わり。

 必殺の一撃を放ったカズキの視界が、自身の“光の剣”とは異なる光。

 

 黒い極光に包まれると同時に、凄まじい衝撃と熱が彼を呑み込んでしまった――――

 

 

 

 

 二柱の荒ぶる神がぶつかり合う。

 1つは絶え間なく動き、倒すべき相手にあらゆる角度、上下左右から縦横無尽に全力の攻撃を繰り返すフィア。

 その動き、繰り出される斬撃の激しさはまるで雷の如し。

 全力を維持したままの猛撃は、どんな強固な存在でも太刀打ちできないであろう。

 

――だが、それでも相手には届かない。

 

 対するグリードは、その場から動かずフィアの猛攻を手に持つ二メートルは優に超える戦斧で完璧に凌いでしまっていた。

 繰り出される攻撃を弾き、防ぎ、反撃で彼の身体を両断しようとする。

 それをどうにか防ぎ、または回避するフィアもまた怪物であるが――当然、無傷というわけではない。

 攻撃し、離脱しつつ追撃をしながら反撃を受ける度に、フィアの身体は崩壊の一途を辿っている。

 先程から全力で動き回っているのだ、如何にフィアが神機使いとして高い能力を持っているとしても長くは保たない。

 

「フィア、あの不思議な力は使わないのかい?」

 

 涼しげに自分の攻撃を防ぐグリードに、腹が立つ。

 あの力――ブラッドレイジの事を言っているのだろう。

 ……使えるわけがない。

 確かに余力を残して勝てる相手ではないと、フィアはこの状況を顧みて理解している。

 それでも使えない、あれは諸刃の剣であり絶対的な勝利の方程式が完成しなければ使用したところで待っているのは敗北のみだ。

 

 故に全力を出しつつも、奥の手は使えないという状況に陥っている。

 だが、このまま攻め続けているだけでは先に壊れるのは自分だというのも理解していた。

 それでも彼は止まらない、否、止まれない。

 

 グリードは遊んでいる、反撃のみに留めているのはこちらの攻撃を受けきれる自信と戯れに興じる遊び心があるからだ。

 それもまた腹が立つが、彼が攻撃に転じれば防ぎきれない。

 そうなれば自分は敗北し殺され、そして……自分の後ろでいつでも援護できるように構えているシエルまで瞬殺される。

 だからフィアはたとえこのままでは負けるとわかっていても、体内のエネルギー全てを使い切るつもりで攻撃のみに集中していた。

 けれどそれもいつまで保つか、刻一刻と壊れ始めている肉体にもどかしさを感じつつも、勝利するイメージを浮かべようとするが片鱗すら見えてこない。

 

 恐ろしく強くなっている、前に圧倒した状況とは真逆だ。

 今のグリードの細胞は極限までレベルアップしている、同じアラガミ故にフィアにはわかってしまっていた。

 やはりブラッドレイジを使うしかないのか――勝てる可能性は低いと判りつつも、フィアは一か八かの賭けに出ようとして。

 

“待って、フィア”

 

 自分を律するマリアの声が、脳裏に響いた――――

 

 

 

 

 ――見ている事しかできない。

 目の前で展開される死闘を、シエルはただ見ている事しかできなかった。

 

 フィアが繰り出す攻撃の重さと速度、それを防ぐグリードの反応速度と堅牢さ。

 その全てがシエルの戦闘能力を大きく超えてしまっており、援護などできないと聡明な彼女は瞬時に理解する。

 彼女の高い狙撃能力を持っていたとしても、フィアには影響を出さずにグリードだけを撃ち貫くという“奇跡”は叶わない。

 だから彼女はただこうして神機を銃形態のまま、己の無力さを痛感しつつ立ち尽くしている事しかできなかった。

 

 ……今こうしている間にも、彼は壊れかけている。

 まるで閃光のような速度で駆け抜けながら、二刀の神機を全力で振るっているのだ。

 壊れない道理などなく、それが判っていながらもシエルは何も出来ないと再認識するだけ。

 

 役に立てないのが悔しい。

 何もできないのがもどかしい。

 ナナ達に託された、フィアを頼むと言われているのにこの様はなんだ?

 自分に彼を託してくれた皆は、ラケルと戦っているというのに――自分は今何をしている?

 

 世界の命運がこの戦いで決まる、ならばこうして棒立ちになっている場合ではない。

 射撃では援護できない、ならば接近戦で戦えばいい。

 

 ――けれど、それはできなかった。

 シエルの近接戦闘スキルでは、あの間に割って入る事など叶わない。

 介入した所で、フィアの邪魔となりたちまちグリードによって彼ごと一刀で両断される未来しか見えなかった。

 

――どうすれば彼の力になるのか、シエルの知識を総動員しても答えが見つからない。

 

 それでも、ここで手を拱いていた所で状況が変わるわけでもない。

 一か八か、賭けにすらならない無謀な行動でもなんでもいい、動かなくては。

 神機を剣形態へと変形させ、シエルは両足に全力の力を込め爆撃めいた速度で両者の間へと割って入ろうとして。

 

“――待ってシエル、今は耐えるの”

 

 直接、神経に訴えるような少女の声が聞こえた。

 

「――――」

 

 一秒後の爆発に備えていた両足が、止まる。

 それほどまでに今の声はシエルにとって、聞き逃せないものであった。

 誰か、などという疑問は浮かばない。

 この声の主が誰であるかなど、シエルはよく知っているからだ。

 

 既にこの世には居らず、けれどフィアの中でずっと残り続けている地獄の中で生き続けた尊き魂を持った少女。

 ……マリア・ドレイク。

 複数回の感応現象を通して聞き覚える事になった彼女の声が、はっきりとシエルに語りかけてきた。

 

“必ず貴女の力が必要になる、だから今は耐えてこの戦いを見守っていて”

「……ですが、このままではフィアさんが」

 

 何故彼女の声が自分に聞こえるのか、などという問いなど今の状況では無意味だ。

 だからシエルは当たり前のように何処から聞こえているのかわからない彼女の声に耳を傾け、問いかける。

 

“フィアだけじゃ勝てない、でも闇雲に戦っても意味がない。――その時を待って、刹那の瞬間すら見逃さないように待ち続けて”

 

 祈るようなマリアの懇願。

 ……正直、これ以上傍観を続けていては本当に手遅れになりかねない。

 既にフィアの速度は下り坂に差し掛かっている、終わりが近いのは明らかだ。

 彼の猛攻が途切れた瞬間、グリードはすぐさま攻めに転じるだろう。

 だからシエルはその言葉に頷きは返せない、けれど。

 

“――――ケイトも“その時”を待ってる。私達全員の力を合わせないとアレには勝てない、だから……お願いシエル”

 

 彼女の、強い決意に満ちたその言葉を聞いて。

 シエルは、再び神機を銃形態へと可変させ必殺の一撃を放つ準備に入った。

 

“シエル……ありがとう”

 

 感謝の言葉に頷きを返しつつ、シエルは一発目と三発目に“フルーグル”を装填して。

 二発目に、フルーグルとは違うブラッドバレッドを装填する。

 込める弾はその三発のみ、この三発だけで勝敗が決まるからだ。

 

「っ、ぐ……!」

「フィアさん……!」

 

 彼の呻き声と共に、シエルは前方を見つめる。

 崩れ落ち地面に座り込むフィア、それを冷たく見下ろすグリード。

 離脱する体力すら失われたのか、グリードを見上げる彼はその場から動こうとしない。

 

「っ…………!」

 

 飛び出したい衝動を必死に抑える。

 これでは先に彼が死ぬ、それを理解しては飛び出したくもなった。

 けれどできない、そんな事をすればどの道こちらの敗北は決定する。

 

 マリアは言ったのだ、ケイトも――フィアの持つニーヴェルン・クレイグの中に存在する彼女も、この戦いを勝利に導く為に耐えていると。

 死して尚、フィアを何度も救いこの瞬間でも力になろうとしてくれているマリアとケイト。

 2人の想いを無駄にするわけにはいかない、だからシエルはただひたすらに“その時”を待ち続ける――

 

「ここまでか……まあ、楽しめたよフィア」

「はぁ――は――ぁ――」

「……思えば、つまらない人間風情だった頃の私はひどく遠回りな道を歩んできたみたいだね。

 初めから自分自身が真なる神になればよかったんだ、君や有象無象の実験体に時間を割く必要など無かった」

「…………有象無象、だと?」

 

 まるで今まで命を落としてきた罪無き子供達を軽視するようなその言葉に、フィアは反応を示す。

 否、グリードにとって彼の実験によって命を失った者達は全てとるに足らない存在なのだろう。

 命を軽視するその言葉と態度に、フィアは改めてグリードに対する怒りを募らせていく。

 

「けれどあれはあれで悪くない人生だった、絶対に助かる筈などないのに生にしがみつく者達の姿は……惨めで滑稽で、同時に美しかったからね」

「っ、どこまで……どこまでお前は他者を踏み躙れば気が済むんだ!!」

「それは君とて同じだろう? 生きたいという自身の願いの為に、多くの命を喰らってきたじゃないか? そう、君が愛したマリア・ドレイクすら」

「――――」

「恥じる必要はないよフィア、君は生物として当たり前の願いの元に行動しただけだ。君を咎められる者など何処にもいない。

 それにね、君は私にとって最高傑作であり最も真なる神に近かった子だ。そこらに居る何の力もない、実験台にしかならない子供達と同類になってほしくなかったんだ」

 

 …………それが、引き金となった。

 グリードはここで過ちを犯した、その結果として自分の命が失われるほどの過ちを。

 

 その言葉を聞いた瞬間、フィアの脳裏に浮かぶのは……幼少期に見た地獄の光景。

 死にたくないと唸り、助けてと懇願し、それでも助かる事など決してなかった罪無き子供達。

 そんな哀れな子供達を、自分は死にたくない一心で喰らい続けた。

 

 ……ああそうだとも、グリードの言う通り自分は沢山の人間の命を踏み躙ってきた。

 助からなければならない命を喰らい、蹂躙してきた咎は未来永劫消える事はない。

 そんな都合の良い考えは、絶対に許されない。

 だから戦い続けた果てに死のうと思った、それが正しい事だと信じて今まで生きてきた。

 所詮自分は罪を背負った大罪人、否、人の皮を被った化け物なのだからと自分に言い聞かせ続けてきた。

 

――でも、それが間違いだと言ってくれた人達が居た。

 

 生きていてほしいと、幸せになってほしいと涙ながらに訴え、堕ちた自分を横っ面を引っ叩いて引き戻してくれた。

 罪は消えない、でもだからといって安易に死を選ぶ事は正しい道ではない。

 それを、フィアはグリードの言葉を聞いて再認識して――勝利の方程式を完成させた。

 

「父親として最後の慈悲を与えてあげるよ。苦しまないように殺してあげよう、最高傑作である君にはそれなりの愛着があるからね」

 

 戦斧を振り上げるグリード。

 一秒後に迫る死、それを前にしてもフィアは何もしなかった。

 ただ真っ直ぐにグリードを見つめ、けれどその瞳に映るのは先程のような怒りと憎しみではなく――彼に対する憐れみを見せながら。

 

「――そんなだから、お前は足元を掬われるんだ」

 

 ぽつりと、呟きを零し。

 彼は今度こそ父であったモノと決別し、その先に進む結末を掴み取った……。

 

 

 

 

To.Be.Continued...




最後の方は文字数が多いですが、ご了承ください。
もう少し……です、終わりまで。
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