神々に祝福されし者達【完結】   作:マイマイ

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死闘は幕を閉じ、一時の平和を手に入れたカズキ達。

さて、今日はアリサの物語を見るとしよう……。


捕喰46 ~アリサのGE日誌3~

 おはようございます、アリサ・イリーニチナ・アミエーラです。

 ふっふっふ……今日は非番なんですよ、私。

 黒いヴァジュラ、ディアウス・ピター達をまとめて倒した影響か、他のアラガミがおとなしくなったために、任務の数も激減しているので非番になったんです。

 

 まあ、今の第一部隊は私とアネットさん以外戦える状態じゃないですから、都合が良いんですけど。

 ちなみに、本来ならカズキはアネットさんの研修なんですが、彼も疲れているし怪我だって治っていないので、ツバキ教官が今日だけ代わってくれたそうなんです。

 ありがとうございますツバキ教官、カズキと1日ずっと過ごせるチャンスをくださって。

 というわけでカズキを探し……あ、いました。

 

「抗神さん、これ……この間のお礼です!」

「えっ……ありがとう」

「…………」

 

 あれー?どうして私という彼女が居るのに、カズキにお菓子なんか渡してるのかなー?

 数人の女性神機使いにちやほやされているカズキを見ると……なんだか無性に腹が立つのは何でですかねー?

 ……小娘共、私のカズキに色目を使うとは、覚悟はできているのだろうな?

 ボコボコのバキバキにしてやろうとしましたが、その前に女性達はカズキから離れていきました。

 ちっ、運が良かったですね本当に。

 

「相変わらず人気者だな、隊長さんはよ」

「タツミさん……そんな、人気者だなんて……」

 

 後ろからタツミさんに肩を掴まれるカズキ。ちょっと、今声を掛けようとしたのに!

 

「謙遜するなって。けどこんなに女の子から人気が高いなら選り取り見取りなんじゃないか?」

 

 うっ、確かにカズキは女性に人気が高いんですよねぇ……。

 優しいし、強いし、博識だし、頼りになるし……だから、私と恋人同士だとわかっているのにアプローチを仕掛けてくる子が後を絶たなかったりするんです。

 

「……好意を持ってくれるのは嬉しいですよ。けど僕はアリサちゃん一筋だしなぁ」

「――――」

「あーわかるわかる、俺もヒバリちゃん一筋だからよ」

 

 ヒバリちゃーんなんて言いながら、タツミさんは行ってしまいました。

 まあ、タツミさんなんてどうでもいいんです。

 

『僕はアリサちゃん一筋だしなぁ』

 

 ……ヤバいです、今の言葉で口元がゆるゆるになりました。

 さっきまでの怒りなんて彼方に消え、私は吸い寄せられるように……カズキに抱きつきました。

 

「……アリサちゃん、おはよう」

 

 突然抱きついた私にも怒らずに、カズキはいつもの柔らかい笑みを浮かべてくれました。

 

「おはようございます!」

「今日は非番だったよね?」

「はい、それであの……今日は1日一緒に」

「そうだね、デートでもしようか?」

「デート……」

 

 えへへ、なんて良い響きなんでしょう……。

 

「どこか行きたい場所とかある?」

「そうですね……」

 

 せっかくですから、お出かけもアリですよね。

 ……でも、カズキはこの間暴走をしたばかりで、不安定な状態ですし。

 

「あの……今日は1日、部屋で過ごしたりするのは……ダメですか?」

「部屋で?」

「はい……ゆっくりしたいな、と」

 

 本当は、カズキをゆっくり休ませたいからですけど、そう言ったら絶対に「気にしなくていい」って言いますからね。

 

「わかった、じゃあ今日は1日2人っきりで居ようね」

「はい!!」

 

 やった、今日は1日2人っきりです!!

 ……1日部屋で2人っきりですか、なんか……ちょっとエッチな響きがするのは気のせいでしょうか。

 ま、まあ……カズキとならちょっとくらいは…ごにょごにょ。

 

「じゃあ、部屋に行こうか?」

「部屋に!?」

「う、うん……だって今日は部屋で過ごすって……」

「あ、そ、そうでしたね……」

 

 あぅぅ……変な想像をしていたせいで、カズキにおかしな反応を返しちゃいました……。

 気を取り直して……。

 

「あ、カズキさん。サカキ博士がラボに来るように行ってましたよ」

「あ、うん、わかった」

 

 ってコラァァァァッ!!いきなり出鼻を挫いてんじゃねぇぇぇぇ!!!

 サカキ博士めぇ……私達の邪魔をするとは良い度胸だな、どうしてくれようか……?

 

「……あの、アリサちゃん。恐い顔になってるよ?」

「元からです!」

「そ、そう……」

 

 不機嫌オーラを全開にしながら、私はカズキと共にサカキ博士の研究室に。

 

「あっ、ありさ、おにみたいだー」

 

 入った瞬間、シオちゃんにそう言われてしまいました。

 鬼って……私、そんな恐い顔してました?

 ちょ、何笑ってるんですかカズキ!

 

「やあやあ、待っていたよ」

 奥から博士で相変わらず読めない笑みを浮かべてやってきました。

 

「……おや、ご機嫌斜めみたいだね」

 

 博士のせいです、なんて言えるわけもなく私は押し黙る。

 

「博士、僕に何か用があるみたいですけど……」

「そうだったそうだった、いや……まあアリサ君が居るのは予想外だったが、むしろ都合が良かったかもね」

『………?』

 

 今のはどういう意味なんでしょうか、カズキと顔を見合わせ首を傾げる。

 そんな私達をよそに、サカキ博士はどこか楽しそうな笑みを口元に浮かべ。

 

 

「カズキ君、君の身体だけどね……もう殆どアラガミと化してるよ。どうやら、この間の暴走でまた進化しちゃったみたいだね」

 大変だねー、なんてちっとも大変そうに聞こえない口調で、そんな事を言ってきた。

 

「…………」

「えっ………?」

 

 カズキの身体が、殆どアラガミになった?

 一瞬、サカキ博士の言っている事がわからなくて、私は呆けてしまったけど。

 

「……そうですか、やっぱり……またアラガミ化が進んだんですね」

 

 カズキは私と違って冷静で、どこか諦めたようにため息をつきました。

 

「ちょ、ちょっと待ってください!! きちんと説明してもらわないと、意味がわかりません!!」

「アリサちゃん……」

「カズキのアラガミ化が進んでるって……一体」

「言葉通りの意味だよ。カズキ君の身体は既に八割方アラガミになってる。

 今じゃ、人間の部分の方が少ないぐらいさ」

 

 あっけらかんとそんな事を言うサカキ博士に、私は一気に頭に血を昇らせた。

 

「何呑気な事を言ってるんですか!! それにカズキも、なんで知ってるのにそんな……」

「慌てても仕方ないからね、いつかは……アラガミ化が進むとは思ってたし」

 

 そう言うカズキの口調には、少しも不安等の弱々しい色はない。

 

「カズキ君が暴走すれば進化を遂げる、最初はそう思っていたんだけど、どうやら違うみたいだ。

 彼が生命の危機に陥ると、体内のオラクル細胞の生存本能と自己学習機能がフルに発揮されて、肉体が一気に強化されるみたいだね。

 だけど、その代わりに余分な部分――すなわち脆弱な人間の部分が失われるようだ。まあ、オラクル細胞が人間の機能を担っているから、こうやって人間と同じように活動できるのだけど」

 

「……あの、もしまた暴走するような事態になったら」

 

 考えたくない、けれど私には知らなければならない。

 カズキと共にいるのならば、彼の事を……。

 

「多分彼は完全にアラガミと化すだろうね」

「…………」

 

 ああ、そんな事訊かなくてもわかっていたのに。

 

「けどそんな悲観しなくても大丈夫さ、命の危機にならなければいいだけだし、今まで通り定期的にアラガミを摂取していれば暴走はしないさ」

「わかりました。……だからアリサちゃんも、あまりそんな顔しないで?」

「…………はい」

 

 本人にそう言われてしまえば、私としては頷く事しかできない。

 ……歯痒い、彼に対して何もできない事が。

 そう思いつつ、私はカズキと一緒に研究室を後にしようとして。

 

「ああ、アリサ君はちょっと残ってくれないかな?」

 サカキ博士に呼び止められてしまった。

 

「じゃあ、僕は先に部屋に行ってるから」

「あ、はい……」

 

 じゃあね、そう言って先にカズキは研究室から出て行きました。

 

「………彼は、強いよ」

「えっ?」

「自分がいつか完全にアラガミになってしまうかもしれない、そして仲間を殺そうとしてしまうかもしれない。 ――そんな恐怖と毎日戦っているんだ、それなのにそれをおくびにも出さないのだから……彼は本当に強い子だよ」

「…………」

 

「でも、最近彼の強さの源が何なのかようやくわかったんだ。

 ――何故、彼があそこまで強く在り続け前を向いて歩いていけるのか。

 それはね……アリサ君、君が彼の傍に居てくれるからだと私は思うんだ」

「私、が……?」

 

 サカキ博士のその言葉は、いまいち意味がよくわからなかった。

 私が居るから、カズキがあんなにも強くなった?

 それは違う、カズキは初めから……。

 

「人は1人では生きていけない、言い方は悪いけど誰かに縋らなければ己を維持できないんだ。

 だから彼は君に縋った、アラガミ化への恐怖を軽減させる為にね」

「……本当に言い方が悪いですね」

 

 言っている事は正しいかもしれませんけど、無性に腹が立ちました。

 

「すまない。けれど彼と君の間には打算的なものとは違う、確かな絆で結ばれているというのもわかるよ。

 互いを愛し、支え、導いていく。絆の強さが君達を強くしているのだろうね」

「絆の、強さ……」

 

 カズキと私の間に結ばれている、絆。

 目には見えないけど、確かに存在するそれによって、私は昔よりもずっと強くなれた。

 両親を殺した個体と同じ種類のアラガミと戦えたのも、カズキとの絆があったからこそ。

 彼が居るから頑張れる、彼が居たからここまで来れた。

 ……この絆を、決して無くすわけにはいかない。

 

「――私、今より強くなります。この絆で……彼を支えてみせます」

「うんうん。まあアリサ君ならば大丈夫さ、彼を支えられるのは……君だけだからね」

 

 そう告げるサカキ博士に、私は力強く頷きを返す。

 

「なーなー、ありさー」

「ん? シオちゃん、どうしたの?」

「――ささえるって、なんだー?」

「…………」

 

 私達の会話を訊いていたのか、どこか真剣そうな表情でシオちゃんは訊いてきました。

 ……“支える”ってなに、か。

 正直、私には真の意味を理解しているとは思えない。

 けど……彼の傍に居て、わかった事だってちゃんとある。

 

「支えるっていうのはね……大好きな人を、どんな事があっても傍にいて助けたり守ったりすること、かな?」

 

 自信はないから、少し尻すぼみになってしまった。

 けれどシオちゃんは、私の言った言葉を懸命に考えてくれます。

 そして、何かを閃いたのか顔を上げてにぱっと可憐な笑みを浮かべて。

 

「じゃあ、シオがありさを“ささえる”ぞー!!」

 無邪気な声で、そんな事を言ってきました。

 

「シオちゃん……」

「ありさだけじゃないよ、こうたもりんどーも、さくやもかずきも……そーまだって、シオがまもってやるからなー!!」

「…………」

 

 多分、支えるという意味をよく理解していないと思います。

 けど……シオちゃんが私達を大切にしているという事だけ、よくわかりました。

 

「……ありがとう、シオちゃん」

「えへへー♪」

 

 私に頭を撫でられ、嬉しそうに笑うシオちゃん。

 ……シオちゃんはアラガミだけど、誰よりも優しい心を持っているのかもしれませんね。

 

「うんうん、美しい絆を見るというのはなかなかにいいものだね。

 ――ところで話は変わるけど、アリサ君に渡さなければならないものがあるんだ」

 

 そう言って、サカキ博士は私に紙袋を渡してきました。

 

「これは?」

「これはリッカ君とサクヤ君からのプレゼントだそうだよ、会う機会があるから渡しておいてくれと頼まれてね。

 中身は服だそうだが……これを着れば間違いなくカズキ君が喜ぶと言っていたよ」

「カズキが……」

 

 つまり、リッカさんとサクヤさんが私達の為にわざわざ用意してくれたという事ですね。

 これはすぐに着なければ、そしてカズキに……その、褒めてもらわないと。

 そうと決まれば、善は急げとばかりに私は研究室を飛び出しました。

 ……ですが、この時点でちゃんと中身を見るべきでした。

 

 

―――それから、数十分後。

 

 

「………………アリサちゃん?」

「…………」

 

 リッカさん&サクヤさんが用意してくれた服を着て、私はカズキの部屋へと行きました。

 そうしたら……物凄くキョトンとした顔を向けられてしまいました。

 ですが、カズキに非があるわけではないのです。

 ただ、私の格好が……。

 

「――なんで、メイド服着てるの?」

 

 そうなんです、今私は……メイド服に身を包んでいます。

 正確には、「メイドドロップス」とかいうカフェテリアの制服なんですけど、意味合いは変わんないですね。

 清潔感溢れる白を基調としたこの格好、可愛らしいんですけど……最高に恥ずかしいです。

 おまけに胸元にはネームプレートとか、凝りすぎでしょ!!

 

 当然ながら、これはあの2人が用意した服の一部です。

 ……他にも、セーラー服とか紐にしか見えない水着とか、まともな服が一着もなかったのには殺意が芽生えましたね。

 あの2人は私に何をさせたいんですか!!

 とはいえ、「喜んでくれるかも」と思って着た私も、人の事をとやかく言えませんが。

 

「………どん引きしました?」

「いや……吃驚したけど、可愛くていいんじゃないかな?」

 

 とは言うものの、カズキは私から視線を逸らしてしまいます。

 やっぱり、どん引きしてます!?

 

「カズキ、正直に言ってください!! どん引きしてるんですよね?」

 

 たまらず私はカズキの傍に駆け寄り、彼の顔を覗き込む。

 

「ちょ、アリサちゃん……」

「? 顔が赤いですけど、どうしました?」

 

 もしかして風邪?

 そう思い、カズキのおでこに手を伸ばす。

 

「わっ!?」

「……風邪じゃ、ないみたいですね」

 

 だとしたら、どうしてこんな真っ赤に……。

 

「〜〜〜〜っ、ああもうっ!!!」

「えっ―――ひゃん!!」

 

 両腕を掴まれた、そう思った時には――私はベッドに押し倒されてしまいました。

 って、ええぇぇぇっ!?

 

「ちょ、カズキ!?」

「……しょうがないじゃないか、アリサちゃんが……こんな格好してるんだから」

 

 メイド服効果!!?

 い、意外です……カズキって、こういうの好きだったんですね。

 

「ただでさえ、普段のアリサちゃんの服装は刺激的なのに……こんな可愛い姿を見せられたら、僕だって男なんだから……」

 

―――襲うよ?

 

 言葉ではなく、瞳がそう訴えてきました。

 

「………い、いいですよ?」

「えっ……」

「だ、だから……その、襲ってもいいといいますか……わ、私だって興味があるといいますか……」

 

 自分でも、何を言っているのかよくわからなくなりました。

 けど、カズキともっと深くまで繋がりたい、この絆を……大事にしたいと、そう思った。

 するとカズキは……何故か苦笑い。

 

「まいったな……女の子は度胸があって凄いや」

「えっ?」

「ごめんね、今はまだ……僕の方にそんな度胸はないんだよ。

 だから今は……これで我慢してね」

 

 カズキの口が近づいてくる。

 それをもちろん拒むような事はせず、私は自分から唇を重ねました。

 

「ん……ふっ、ぴちゅ……はっ…ん、ちゅ」

 

 すぐに重ねるだけで我慢できなくて、舌を絡ませ合い……ゾクゾクと背筋が震え上がります。

 私、キスだけで気持ちよくなってる……どん引きです。

 でも、こんなキスをされたら……もう、逆らえないよ。

 

「ぷはっ…ん、ぴちゃ…ふぅ、あっ……」

 

 もっと、とせがむように私はついばむようなキスを繰り返す。

 ああダメだ、もう私はこの人の事以外考えられなくなる……。

 

「ストップ」

「ふぇ……やぁ、もっと……」

「ダーメ、まだ僕達にはそれ以上は早いよ」

「むぅ………はーい」

 

 残念だけど、カズキにそう言われてしまえば仕方ない。

 彼が望んでいない事をするわけにはいきませんからね。

 ……でも、カズキってば意外と意気地なしですよね、私は襲っていいって言ってるのに。

 それとも……襲えない理由があるとか?

 

「――そんなわけ、ないか」

「どうしたの?」

「あ、いえ、なんでもないですよー」

 

 一瞬違和感を覚えたけれど、私は気にする事なくその後はカズキと2人っきりで過ごす事にしました。

 何でもない1日、けれど彼との絆を深める大切な日。

 その一瞬一瞬を無駄にしないように、ゆっくりと彼と共に過ごしていかなくては。

 

 ……メイド服のままでというのは、些かシュールではありますけど。

 

 

 

 

To Be Continued...

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