みんなに会えて、僕は幸せでした。
だから……何があろうとも、僕はこの世界を。
そして、大切なあの子を、守ってみせる。
「あ、あ……」
立てない。
先程の一撃があまりにも大きすぎて、意識を失わないだけで精一杯だ。
……なんで、あいつがこんな所に?
アルダノーヴァを黙々と喰らうソイツは、前に見た時よりも成長していた。
人型の身体に、鳥のようにびっしりと覆われた黒い体毛。
三本になった手は、剣のように鋭く大きい。
顔は鳥のように尖り、歯は数百本も生えており、その瞳は赤黒く染まっている。
まさしく悪魔、全ての生きとし生ける者に、災いを齎す存在だ。
「お、や、じ……」
「っ、ソーマ!!」
立ち上がるソーマ、アルダノーヴァが喰われている光景を目にして……。
「っ、テメェェェッ!!」
鬼のような形相で地を蹴り、ソイツに向かっていく。
拙い、ソーマの奴完全に頭に血が昇って………!
「ぐっ、ぶ―――!」
果敢に立ち向かっていっていったソーマだが、ソレはあっさりと攻撃を避け、カウンターでソーマの腹部を殴りつける。
メキメキと、骨が砕ける音が耳に入った。
「――――」
吹き飛ぶソーマ、まだ鼓動は感じるが……起き上がってこない。
ソーマだけではない、他のみんなも……倒れ動かない。
ラウエルは……身体に風穴を開けて、生きているのかすらわからない。
「………何なんだよ」
何なんだよ、お前は。
どうしていつも、僕から全てを奪っていく?
いつも、いつもだ……。
いつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつも………!
「――許さ、ない」
絶対に許さない、心を支配するのは憎しみと怒り。
殺してやる、滅ぼしてやると神機を持つ手に力を込める。
だけど……。
「―――カズキ」
1人の少女が、僕の最後の理性を呼び起こしてくれた。
「……アリサ、ちゃん」
「げほっ……ダメ、です…カズキ、憎しみを身を委ねちゃ……うぅっ」
わき腹を押さえ、僕の前で膝をつくアリサちゃんの身体を支える。
「カズキ、あなたがアラガミと戦う理由……それを忘れたら、あなたは今度こそアラガミになっちゃいます。
――怒りに、身を委ねないで」
「…………」
神機を持つ手に、少しだけ緩めた。
……僕は、何をしているんだろう。
あいつは憎い、僕から全てを奪い、今だってせっかく手に入れた仲間達を奪おうとしている。
でも……だからって、憎しみに囚われてアラガミに堕ちれば、今まで歩んできたものを全て失う事になる、それは許されない。
僕は、己の信念を貫くために人類を救おうとした支部長を殺した。
だから、この命はもう僕1人のものではなく……絶対に死ねない理由がまた一つできたのだ。
「……ありがとう、アリサちゃん」
彼女の頬を優しく撫で、後ろに退がっているように伝える。
「カズキ、私も――」
「もうまともに動くのも辛いでしょ? アリサちゃんはそこで休んでて、もしまだ動けるなら……ラウエル達をお願い」
ラウエルはアラガミだ、人間とは比べものにならない生命力を持っている。
風穴を開けられても、まだ生きていられるはずだ。
「大丈夫。僕は絶対に死なないし、アラガミにもならない。
――必ず勝つから、僕を信じて待っていて」
言って、アリサちゃんの唇に口づけを落とす。
……さあ、最後の戦いだ。
ここで全て終わらせる、僕の因縁も……この戦いの決着も。
誰も死なせずに、必ずこいつを滅ぼす―――!
「―――!」
アルダノーヴァを食し、身体を不気味に肥大化させていくアラガミであったが、殺気を感じ振り返る。
「おおぉぉぉぉっ!!!」
見ると、こちらへと向かってくる青年が1人。
「――キャァァァァァッ!!!」
邪魔者と思ったのか、それとも殺すべき相手だと思ったのか、アラガミは奇声を上げ跳び上がる。
――ぶつかり合うカズキの刀身とアラガミの右腕。
「ぐぁっ!!」
「!!?」
耳を塞ぎたくなる程の音が鳴り響き、ぶつかり合った衝撃で両者共に後退する。
しかし、生身で攻撃したからか、アラガミの右腕の爪が一本砕かれていた。
「―――アァァァァッ!!!」
怒りからか、叫ぶアラガミ。
「耳障りなんだよ、お前の声は!!」
それに叫びで返し、銃撃を撃ち込んでいくカズキ。
しかし、アラガミは瞬足の足でその全てを縫うように動き回避して、カズキの身体を蹴り飛ばした。
「ぐぁ……!」
矢のように吹き飛び地面を転がっていくカズキ、どうにか起き上がり。
「ぐがっ!!」
間合いを詰められたアラガミに、顎を蹴り上げられた。
「――――」
頭が揺れる。
しかし、カズキは足にしっかりと力を入れて。
「―――ぬあっ!!」
「っ!!?!」
アラガミの頭部に、頭突きをお見舞いしてやった。
「っ、いってぇ……なぁっ!!」
頭が揺れながらも、下から掬い上げるような剣戟を振るう。
隙を突けたのか、カズキの刀身はアラガミの右腕を斬りつけた。
(固い―――!)
まともに斬った、しかしまだアラガミの腕は健在だ。
もう一度剣を振るうが、今度は回避されてしまい間合いが広がる。
「ぐっ……ぅ、はぁ…はぁ……」
頭からは頭突きによる出血、更にヨハネスとの戦いのダメージでカズキの身体は限界に近い。
おもわず膝をついてしまい、アラガミはすかさず踏み込んでカズキに拳を叩き込んでいく。
「ぐっ、が、ぶぅ……!?」
顔に二発、腹部に三発。
「ギィィィアァァァァァァッ!!!」
「がぶっ……うおおお………!」
嵐のような拳と蹴りの連打。
更に腕や脚に付いた爪が、剣のようにカズキの身体を傷つけていく。
「ぐ、ぁ……」
身体が上手く動いてくれない、失血も多く意識だって薄まっていき明確な“死”がカズキの脳裏に浮かぶ。
(ま、だ…だ……!)
死ねない、明確な死が浮かぼうとも今ここで死ぬわけにはいかないのだ。
必ず生きて帰ると愛すべき少女に誓った、自らの道を進む為に踏みにじった人が居た。
死ねばその全てを無駄に終わらせてしまう、そんな事は許されない。
「キャァァァァァッ!!」
「ぐ……こい、つ……!(拙い、アバラが…折れ……!)」
激痛と衝撃が意識を容赦なく刈り取っていき、遂にカズキのアバラが折れる。
転がっていく身体を制御できないまま、カズキは壁へと叩きつけられてしまった……。
―――壁に叩きつけられて、血反吐を吐く。
「……うっ……」
もう無理だ、どんなに踏ん張っても起き上がれず、意識を保っていられない。
――ヤツが、近づいてくる。
「あ、あ………」
起き上がれない。
戦えない。
このまま……僕は、死…ぬ……?
ふざけるな、そん…な未来…なんか…絶対、に……。
「―――――、ぁ」
立ち上がろうとして、また倒れる。
起き上がれない。
起き上がれない。
起き上がれない。
そんな事は許されない、絶対に認められない、立て僕の身体、こんな所で死ねないと誓った、ならさっさと立ってアイツを倒さないと―――!
「やあぁぁぁぁっ!!!」
「なっ―――」
ヤツに振るわれる赤い刀身。
僕を守るように、傷だらけのアリサちゃんがヤツに向かっていった。
「がふ―――っ!!?」
だがヤツはそんなアリサちゃんを嘲笑うかのように、刀身を右手で掴み残った左手で腹部を殴る。
「げほっ、ごほっ……ううっ……」
腹部を押さえながらうずくまり、胃液を吐き出すアリサちゃん。
ヤツは再び僕に向かおうとして……アリサちゃんに掴まれた。
「行かせ、ない……カズキは、殺され、ない……!」
「…………」
右腕で、アリサちゃんの顔を殴る。
それでも――彼女は掴んだ手を放さない。
「絶対、に…殺させない、この人、は………私、の……全て……がふっ!?」
何度殴られても、何度蹴られても。
アリサちゃんは、僕を守るためにヤツの身体を放そうとはしなかった。
「――――」
お前は、また見捨てるのか?
守りたいから、助けたいから強くなったんじゃないのか?
もう二度と失いたくない、この世で一番大切なあの子のために……生きたいと願った事はなかったのか?
優しくて、強くて、恥ずかしがり屋で、しっかりしてるけど子供っぽくて。
何より愛おしいあの子を、守りたいんじゃないのか?
「―――ぅ、あ、ぁ」
守りたいなら、動いてみせろ。
この肉体の全てを出し切れ、後の事など考えるな。
この世界を守る事よりも、生き残る事よりも。
――アリサちゃんを守る事が、何より大事なのだから。
「オ、オォォ―――」
体内のオラクル細胞に呼びかける。
(頼む、意志があるなら僕の願いを……誓いを果たす力を貸してくれ!! あの子は僕の全てなんだ、守る力を……助ける力を!!!)
その為なら、この命を捧げても構わない、そう告げて――僕の身体に変化が訪れる。
体内のオラクル細胞が暴れまわり、肉体を強靭にしていく度に……人としての機能が失っていくのが感じられた。
それがどうした、そんな事関係ない。
元より覚悟の上、アレを滅ぼさなければどうせ死ぬ。
だったら――僕は人である事を捨ててやる。
「グ、ア、アァァ――」
―――失せろ!!
お前はここで消えるべきなんだ、僕と一緒に!!
――それは、有り得ない光景だった。
「――アァァァァァッ!!!」
「………えっ?」
意識が朦朧とする中、アリサはその光景を目にする。
「カズ、キ……?」
自分が掴んでいたアラガミが、壁にめり込んでいく。
一体誰がそんな事を?それを理解するより早く――アリサの横を何かが通り過ぎた。
その正体は抗神カズキ、アリサが愛する世界で一番大切な存在。
だが――今の彼は、既に人間ではなかった。
「オオオォォォォッ!!!」
「――――」
アリサの思考が停止する。
カズキの身体はドス黒く変色し、神機は持たぬまま素手であのアラガミと対峙していた。
否、素手ではなく複雑に捻れ曲がった剣のような爪。
それで相手を斬り裂き、肉を抉り、骨を砕き、血を啜る。
「あ、あ………」
その場に座り込み、この世の終わりのような絶望的な表情を浮かべ、アリサは涙を流す。
――恐れていた未来が、現実のものになってしまった。
カズキの完全なアラガミ化、人間を捨て……完全なる怪物に堕ちてしまった。
たとえこの戦いの結末がどうなろうと、もうアリサが愛した彼は戻ってこない。
「カズキ…カズキ……」
もはやアリサには、涙を流す事しかできなかった。
「カァァァァァッ!!!」
「オオオォォォォッ!!」
互いに奇声を上げながら、掴み合い互いの肉を喰らっていく。
もはや戦いではなく、壮絶な食い合いだ。
どちらが先に喰われるか、ある意味で自然の摂理に基づいた状況。
――アラガミの蹴りが、カズキの身体に深々と突き刺さる。
「ガアァァァッ!!!」
それには構わず、カズキはそのまま突き刺さっている脚を掴み……素手で引き千切った。
「ギィィッ!!?」
強靭な脚を容易く千切られ、アラガミからは驚愕と激痛からの悲鳴が上がる。
血がポンプのように流れる中、カズキは更に右腕を握り潰す。
「ギャアァァァァッ!!!!?」
続いては左腕を噛み千切り……もはや、このアラガミに戦う力は残されていなかった。
噛み千切った左腕をペッと吐き出し、カズキは右手で拳を作る。
理性を失った獣の瞳、しかし……不思議と人としての輝きを失ってはおらず。
「―――終わりだ」
くぐもった声のまま、確かに彼は人間の言葉を放ち。
その拳を、アラガミへと叩きつけ。
今度こそこの戦い、そして全ての決着が着いたのだった―――
「……うっ……いてて」
全身、特に頭部に走る痛みで顔をしかめながら、リンドウは意識を取り戻し立ち上がる。
「っ、サクヤ!!」
倒れているサクヤに駆け寄るリンドウ、抱きかかえると……サクヤは目を開いた。
「んっ……リン、ドウ……?」
「……はぁ、寿命が縮まったな……」
「いてー……一体何がどうしたんだ?」
コウタも立ち上がり、周りの状況を確認する。
「ラウエル、大丈夫?」
一方、アリサはシオとサカキに囲まれたラウエルの元へ。
ラウエルの身体には風穴が開いており、血がとめどなく流れているが……彼女は浮かび上がり、近くの壁を捕喰し始めた。
〈うぅー……いたいよー〉
「――どうやら、大丈夫みたいだね」
「っ、カズキ!!」
ラウエルの様子にほっとしているカズキに、全員が駆け寄った。
「お前、その身体……!?」
アリサを除く全員が、カズキの変化に目を見開いて驚愕する。
「あはは……完全にアラガミ化したみたい、人間としての意識はあるけど……ね」
苦笑するカズキに、全員が押し黙る。
「さて、とりあえずやるべき事をしよう。ノヴァを破壊しないと――」
そう言って、カズキ達がノヴァへと視線を向けた瞬間。
『なっ―――!?』
ノヴァの身体に、滅ぼしたはずのアラガミが、へばりついていた。
「あいつ、何を――」
「っ、まさか……!」
ある結論に達したカズキ、すぐさま止めようと地を蹴り。
「グググ……ッ」
ノヴァの身体から、触手のようなものが伸び、瞬く間にアラガミを包み込んでいった。
「な、何だよあいつ……何をする気なんだよ!?」
「……自らノヴァに取り込まれて、終末捕喰を起こすつもりだ」
『――――!!?』
場が戦慄する。
だが何故か、カズキの言葉が真実であると誰もが理解してしまった。
「あいつも特異点だったのか!?」
「あ、あの野郎……ぐぁっ!!」
立ち上がり、ノヴァを破壊しようとするソーマだが、骨が折れた身体では動けず悲鳴を上げるのみ。
「すぐにノヴァを破壊しないと!!」
「で、でもあれを破壊するのに時間が……!」
「んな事言ってる場合じゃねえぞ、何としてもぶっ壊すしかねえ!!」
「…………」
駄目だ、間に合わない。
特異点だからなのか、カズキにはもう間に合わないと理解してしまった。
もう時間がない、このまま攻撃したとて終末捕喰は防げない。
「―――――」
だが、たった1つだけ。
たった1つだけだが、方法がないわけではない。
けれど、それを行えば自分の命は……。
「―――仕方、ないよね」
今の自分には、1つの選択しか残されていないのだ。
終末捕喰が起こればそれで終わり、今まで歩んできたもの全てが消えてなくなる。
ならば――自分の選択はこれしかないと、カズキは覚悟を決めて。
―――自らの足で、ノヴァの元へと向かった。
「カズキ!?」
「お前、何を――!?」
背中に聞こえるみんなの声を無視して、僕はノヴァへと貼りついた。
瞬間、ノヴァの身体から先程の触手が僕を絡め取り、内部へと押し込んだ。
「カズキ!!」
〈……みんな、ごめん。もうこれしか方法がないんだ〉
ノヴァの体内に入った瞬間、身体のあらゆる感覚が無くなったけど、どうにかみんなと会話ができるようだ。
「何する気だ!!」
〈……ノヴァを、地球から追い出す〉
「追い出すって……まさか!?」
アリサちゃんは、僕がこれからやる事に気づいたようだ。
〈――ノヴァを月に連れて行く〉
『――――!!?』
〈けど、それには特異点が必要だ。アイツがここで終末捕喰を起こそうとしてるなら、他の特異点が制御を奪うしかない〉
だけど、そんな事シオちゃんにはさせられない。
だから……僕がノヴァの中に入って制御を奪ったのだ。
尤も、アイツも今必死で抵抗を続けてる、早くしないと……手遅れになってしまうだろう。
「何でだよ……何でお前はいつもそうやって自分を犠牲にするんだ!!」
〈……ごめんねコウタ、みんなも……ごめん。
だけど、もうこれしか地球での終末捕喰を防ぐ方法は無いんだ〉
僕だって、こんな選択はしたくなかった。
でも、生き残る席は限られていて、尚且つその席を作るのにこの方法しかないのなら……選ぶしかない。
後悔しない選択は、できるだけしたいから。
「――――嫌、です」
〈………アリサちゃん〉
「嫌です……戻ってきて……私の所に、戻ってきてください……」
大粒の涙を流し、懇願するようにそう告げる彼女を見て、僕はすぐさま彼女を抱きしめたい衝動に駆られた。
だがそれは叶わない、もう……ノヴァから出る事はできず、許されない。
〈……ごめんね、アリサちゃん〉
「私、いらない……カズキがいない世界なんていらない!! 私にとって、この世界よりカズキが大事なんです!!」
〈でも、これしか方法はないんだ〉
「何であなたなんですか!? どうしてカズキが、犠牲にならないといけないんですか!?」
〈犠牲じゃない、僕はみんなを助ける為の選択を選んだだけだ!!〉
「それが犠牲なんです!! どうして……ううっ……どうして、カズキが……ひくっ、私は……私には、カズキが必要なのに……」
とうとうその場に倒れ、大声で泣き出してしまった。
「全員で生きて帰ろうって……言ったじゃないですか。
私と、ずっと一緒に居てくれるって言ったじゃないですか!!」
〈…………〉
「ぐすっ、私は……カズキが居てくれるなら、こんな世界……ひっく、いらないのに……」
〈……アリサちゃん〉
ああ、どうしてこの子はこんなにも愛おしい事を言ってくれるのだろう。
こんな僕を、勝手なことばかりして悲しませている僕を、愛してくれている。
――だからこそ、守りたいのだ。
〈……僕は、君を守りたい。君と歩んだこの世界を守りたいんだ。
ここで全てを失ってしまったら、僕と君が今まで育んできた思い出や絆も無くなる、そんなのは嫌だ。
――だから、僕はたとえ何があっても君が生きるこの世界を、救いたい〉
勝手で、傲慢な僕の願い。
残される痛みなどわかっているのに、僕は自分が受けた痛みを彼女に与えようとしている。
それでも――それでも僕は、彼女に生きていてほしかった。
生きてさえいれば、きっと彼女は幸せを手にするから。
―――もう、限界だ。
〈――もう、行かないと〉
「カズキ!!」
「行くな、行くんじゃねえ!!」
〈……ありがとう、みんな〉
「…………」
乱暴に涙を拭い、アリサちゃんは顔を上げる。
目は真っ赤に染まり、見ていて痛々しい。
だがそれでも、彼女は最後の最後で……強かった。
「――ありがとう、カズキ」
〈……ありがとう、アリサちゃん〉
交わす言葉は、ただそれだけ。
そのまま、僕はノヴァを動かし始める。
幸いにも、ノヴァは自分の思った通りに動いてくれた。
〈ガァァァァァッ!!!〉
ヤツが悲鳴を上げる。
〈お前は、僕と一緒に消えるんだ。永遠に!!〉
ヤツに叫び、無理矢理地球から脱出しようと浮かび上がっていく。
ブチブチとエイジスに貼り付いていた触手を引き千切り、ぐんぐん高度を上げていき……あっという間に成層圏まで到達した。
〈―――さよなら、みんな。バイバイ……アリサちゃん〉
どうか、これからもみんなが無事に生きていられますように。
ささやかで、小さな願いを込めながら。
僕は、月へと向かって飛び立っていった……。
To Be Continued...