神々に祝福されし者達【完結】   作:マイマイ

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新たなアラガミが姿を現す。

そして、アリサの中である変化が訪れようとしていた……。


第2部捕食55 ~ハンニバル~

「――ハンニバル?」

 

 アナグラ内のエントランスロビーにて、第1部隊はツバキに召集されていた。

 そこでカズキ達が聞いたのは……見た事がないアラガミの討伐指令だった。

 

「そうだ。第1部隊には、最近目撃されたハンニバルというアラガミを討伐してほしい。

 どのような攻撃方法を持ち、耐性や弱点といった情報もないが……この極東支部の周囲に現れた以上、悠長に構えている暇はない。

 お前達の任務はアラガミの討伐、及び情報収集の為にコアを確実に採取する事だ、わかったな?」

『了解!!』

 

 では頼むぞ、そう言ってツバキはその場を離れ、カズキ達はその場でブリーフィングを開始した。

 

「新型のアラガミですか……」

「どんな攻撃をしてくるのかもわかんなくて、弱点もわからないって……ひでぇなぁ」

「しょうがないよコウタ、なにせ交戦経験が無いんだから。

 とにかく、この中から4人を討伐メンバーにするけど……リンドウさんは何か意見はありますか?」

「ないない、お前に任せておけば万事解決だからな」

「こらリンドウ、あなたも隊長なんだからしっかりしなさい」

「うへぇ、まいったな。我が家はカカア天下か」

「なにバカな事言ってるのよ」

 

 呆れるサクヤだが、リンドウの態度に周りの緊張が解れていく。

 

「……なら、新型はハンニバル討伐メンバーに加えます」

「じゃあ、まずは私とカズキはメンバーなんですね?」

 

 アリサの問いに、カズキは頷きを返し言葉を続ける。

 

「それと……リンドウさんとソーマもメンバーに加えたいんですが」

「……好きにしろ」

「りょーかい、わかったぜ」

「じゃあ、わたし達は待機メンバーね」

「お願いします」

 

 隊長を2人と戦力を集中させてしまうが、相手が未知数のアラガミならば致し方ない。

 

(……ハンニバル、一体どんなアラガミなんだろうか)

 

 未知のアラガミに挑む、その現実がカズキに緊張と不安を与えていく。

 しかし、彼はそれを振り払い……戦場へと赴くために、仲間達と共に神機保管庫へと向かったのだった。

 

 

 

 

「――うぉ、なんだこれ?」

 

 平原エリア内にて、リンドウの驚愕に満ちた声が響く。

 このエリアにて、ハンニバルが目撃されたので、カズキ達は赴いたのだが……そこには、異常な景色が広がっていた。

 

「アラガミ達が……」

 

 地面に転がるのは、アラガミ達の死骸。

 カズキは亡骸に近づき、致命傷になったであろう傷を見やる。

 

(……なんだ、この傷は)

 

 ボルグ・カムランの硬い身体に刻まれた、深く鋭い裂傷。

 何か、凄まじく鋭利な刃物で斬り裂かれたようにバッサリと斬られており、即死級の一撃だというのがわかる。

 それに……裂傷の周りが黒く焦げている、高熱を孕んだ一撃だという事は間違いない。

 

「ひでぇもんだな……」

 

 相手はアラガミ、同情する気など微塵もないが、あまりにも無惨な殺され方をしているので、リンドウはおもわずそう言葉を零す。

 ヴァジュラは頭部を縦に真っ二つに裂かれ、コンゴウに至っては身体の半分以上が粉砕されている始末。

 リンドウでなくとも、そんな言葉が出ても仕方ないと言えよう。

 

『…………』

 

 神機を持ち直すカズキとソーマ。

 

「――――来る」

 

 顔を上げ、エリア中央付近で吹き荒れている竜巻へと視線を向ける。

 

――刹那、竜巻の中から何かが飛び出してきた。

 

 カズキ達の前方に着地したそれは、見た事もないアラガミ。

 どこか人間じみた動きをしながらも、その姿はまるで西洋の竜を思わせる外見。

 

「こいつは……!?」

「散開!!」

 

 カズキが叫び、数瞬遅れて全員が各個に散る。

 

「グゴァァァァッ!!」

 

 雄叫びを上げ、アラガミ――ハンニバルは動きを見せる。

 始めに狙うは――――ソーマ!!

 

「ぐ――――っ!?」

 

 しっかりと足に力を込め、彼は自身を覆える程の巨大なタワーシールドを展開。

 しかし、真竜の鉤爪による一撃はただ凄まじく、防御ごとソーマを弾き飛ばした。

 

「し――!」

「らぁ――っ!!」

 

 大きく踏み込み、アリサは側面から、リンドウは跳躍し上空から刀身を振り下ろす。

 同時攻撃により、ハンニバルはそのままダメージを負った――はず、だったが。

 

「うぉっ!?」

「なっ――」

 

 リンドウの一撃は、左腕の籠手のような部位に容易く弾かれ。

 アリサの一撃は、右腕に発生させた炎の剣によって、受け止められていた。

 両腕を振るい、2人を弾き飛ばすハンニバル。

 すかさず動き、バランスを崩したアリサへと右腕の剣を振り上げて。

 

「でやぁぁぁぁっ!!!」

 

 裂帛の気合いを込めたカズキの斬撃が、ハンニバルの左足に深々と裂傷を負わせる。

 更にカズキは、左足だけで地を蹴り跳躍、銃形態に変形させながらハンニバルの頭を連べ打ちに。

 着地する前に再び神機を剣形態に、掬い上げるような斬撃はハンニバルの頭部を二つに――

 

「っ、ちぃ――!」

 

 二つに分ける事は叶わず、ハンニバルの角を一本斬り裂くだけに終わった。

 

「ゴガ……!?」

 

 ハンニバルがカズキに反撃を行おうとして、突如苦しむような声を上げる。

 

「カズキ、背中にある鱗部分が弱点みたいです!!」

 

 言いながら、アリサは銃撃でハンニバルの背中部分にある丸い鱗を狙い撃つ。

 彼女の考えは正しいのか、銃撃を受けながらハンニバルはくぐもった悲鳴を上げながら動きを止める。

 その隙にソーマとリンドウはハンニバルに接近、ソーマに至ってはチャージクラッシュの準備に入り。

 

「おぉぉぉぉぉっ!!」

 

 巨大な刀身を、全力でハンニバルへと振り下ろした。

 

「ギァァァァァッ!!?」

 

 左腕で防御するハンニバルだったが、チャージクラッシュの一撃はその防御すら貫き、籠手の部位を粉砕する。

 更にリンドウによる追撃が入る、ブラッドサージの刃がハンニバルの顔に横一文字に叩き込まれた。

 

「グルァァァァッ!!」

 

 顔の半分以上を、刀身が食い込んでいるというのに、ハンニバルは尚も健在だった。

 しかしダメージが大きいのは確かだ、このまま攻めれば勝てる。

 カズキがそう判断し、再び神機を構え直した瞬間。

 

「うぉぉぉっ!!?」

「っ」

 

 リンドウが、無理矢理弾き飛ばされ地面を転がる。

 それを気にする暇もなく、カズキ達はハンニバルの変化に気が付いた。

 

「な、に――!?」

 

 ハンニバルの背中にある巨大な鱗が砕かれ、そこから火柱のような炎の翼が現れる。

 

(っ、力が増した!?)

 

 ハンニバルの威圧感が重くなり、カズキのアラガミとしての本能が警鐘を鳴らす。

 

「みんな、離れろ!!」

『っ』

 

 カズキの指示に、全員が全力でハンニバルから距離をとった瞬間。

 

「ギゴァァァァッ!!!」

「うぉぉっ!!?」

「ぐぅぅっ!!?」

「きゃぁぁっ!!?」

「ぐ、っ――!」

 

 ハンニバルの中心に、嵐のような火柱が巻き起こりカズキ達を襲う――!

 間一髪、カズキは防御に間に合うが……アリサ達3人は直撃を受け、壁に叩きつけられてしまった。

 

「ぐ、みんな……!」

 

 防御した上でも、カズキが受けたダメージは大きい。

 つまり、まともに受けたアリサ達へのダメージは甚大だ。

 身体を焦がし、倒れたまま動かない3人、そこへ……ハンニバルがゆっくりと近づいていく。

 

「く、この、ぉ……! みんなに、近づくなぁぁぁぁっ!!!」

 

 体内のオラクル細胞を変動させるカズキ、左腕をディアウス・ピターの腕に変形させる。

 

「がぁぁぁぁっ!!!」

 

 雄叫びに近い絶叫を上げ、カズキは地を蹴りハンニバルに肉薄して。

 

「ゲガァッ!!?」

 

 左腕で、ハンニバルの巨体を無理矢理地面に沈める。

 更に、彼は大きく口を開き傷口が大きいハンニバルの頭を喰らい、肉を引き千切った!!

 

「グァァッ!!?」

 

 カズキを睨むように視線を向けるハンニバル、その間にも彼は喰らったアラガミの肉を咀嚼し体内へ。

 

「――――っ」

 

 鼓動が脈打つ。

 今まで味わった事がないオラクル細胞を摂取し、カズキの肉体が再び進化を遂げる。

 

「うぉぉぉぉぉっ!!」

 

 カズキの瞳が金色に変わり、ゴッドイーターすら超えた腕力で神機を振るい……ハンニバルの右腕を斬り飛ばす。

 更に踏み込み、今度は左腕の爪で背中から右足にかけて深々と裂傷を負わせた。

 

「グ、ッ、ァァァァッ!!!」

 

 ハンニバルはもはや虫の息、しかしそれでも残った左腕で先程の炎の剣を生み出し横一文字に振るう。

 

「っ、ぐ……!」

 

 それを、カズキは咄嗟に左腕で受け止める。

 だが、凄まじい熱量を孕むそれは確実にカズキの左腕を焼いていき、肉に食い込んでいった。

 

「し――!」

 

 反撃をしようと動くカズキより早く、ハンニバルの頭部に神機の刀身が深々と突き刺さる。

 

「アリサちゃん!!」

「カズキ、お願いします!!」

 

 全身を痛々しく焼きながら、アリサはカズキにそう叫ぶ。

 

「っ、だぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 彼女の作ったチャンスを無駄にはしない、その重いを乗せた一撃は……ハンニバルの背中を斬り裂いて。

 

「ギャアァァァァァァッ!!!」

 

 断末魔の雄叫びを上げ、そのアラガミは地面へと倒れ込む。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 肩で大きく息をしながら、カズキはゆっくりと左腕を元に戻す。

 ハンニバルは動かない。もう一度それを確認した後――ようやく彼は戦いが終わった事を自覚して、その場に座り込んだ。

 

「く、はぁ……はぁ……」

 

 自身の神機をハンニバルの死骸から抜き取り、アリサも彼と同様に座り込む。

 

「……よぉ、お疲れさん」

「リンドウさん……」

 

 片手を上げ、こちらにやってくるリンドウ、ソーマも同じように戻ってきた。

 

「はは……ボロボロですね」

「ったく、一張羅を新調しないとな……」

 

 焼けただれ穴だらけになった自分の衣服を眺めながら、リンドウは大きくため息をついた。

 ソーマを見ると、彼の服もリンドウと同じような惨状になっている。

 

(アリサちゃんは……よかった、2人ほど酷くはないみたいだ)

 

 贔屓というなかれ、カズキは恋人としてどうしてもアリサを考えてしまうのである。

 尤も、アリサの露出が多い衣服に穴が開くと色々と困る、というのも理由の1つなのだが。

 

「……まだ、動けないか?」

「あ、大丈夫だよ」

「少し休んでろ、コアはオレが取っておくから」

 

「……ごめん、ソーマ」

 

 感謝の言葉に、ソーマはフン、と返しながら神機を捕食形態へと変形。

 そのままハンニバルの死骸を喰らわせ、コアを抜き取った。

 

「……レアモノだな、まあ当然か」

「しっかしつええな……正直、カズキがいなきゃもうちょっと苦戦してたかもしんねえや」

「…………」

 

 確かに強かった、このハンニバルというアラガミは接触禁忌種に指定されてもおかしくないかもしれない。

 

(……攻撃方法がわかっただけじゃ、まだ対抗策は不足だな)

 

 強固な肉体による高い防御力、範囲の広い攻撃など、何よりこのアラガミの情報が少なすぎる今では、正直まともに対抗できるのは第1部隊だけだ。

 それは決して自惚れではなく、またこの考えはリンドウやソーマも同意である。

 

「……とにかくまずは帰ろうぜ、色々考えるのは後にしようや?」

 

 言って、リンドウはカズキの肩をポンポンと叩いた。

 

「……そうですね」

 

 リンドウの気遣いに感謝しつつ、カズキは頷きを返す。

 

「…………」

「アリサちゃん、どうかした?」

「いえ……なんでもないです」

 

 一度ハンニバルの死骸を見てから、アリサは慌ててカズキの元へ。

 

――そして、誰もがようやく緊張の糸を切った瞬間。

 

「――――」

 

 カズキは突如として立ち止まり、後ろを振り向いた瞬間。

 

「アリサちゃん!!」

「えっ――あぐぅっ!!?」

 

 コアを抜き取ったはずのハンニバルが、アリサの身体を吹き飛ばした。

 咄嗟に神機を構えて威力を軽減したものの、数メートル転がりアリサは意識を失ってしまう。

 

「っ――この野郎ォォォッ!!」

 

 怒りに満ち溢れた形相で、カズキは神機の一撃でハンニバルを斬り裂きながら壁に叩きつけた。

 

「バカな……確かにコアは取り除いたぞ……!」

 

 もう一度確認するが間違いない、ハンニバルのコアは確かに手に入れた。

 だというのに、ハンニバルは動きアリサに攻撃を加えたなど、ありえるはずが――

 

「カズキ、ソーマ、とにかくここは撤退すんぞ!!」

「っ、了解!!」

 

 ここで、塵になるまで切り刻んでやりたいと思ったカズキだったが、リンドウの言葉に従い急ぎアリサの元へ。

 気を失っているが、直撃は免れたようだ、これならば命に別状はないだろう。

 

「――次に会ったら必ず殺す」

 

 ぽつりと、憎しみを込めた言葉をハンニバルに向けて放った後。

 カズキはアリサを抱きかかえ、全力でその場を離脱した――

 

 

 

 

――浮遊感が、身体を包む。

 

 随分と不安定で、けれど決して深いではない感覚。

 私――アリサ・イリーニチナ・アミエーラが目を開くと……そこは、現実味などまるで認識できない場所だった。

 アクアブルーの海のような中で、私は漂っていました。

 

 ……前にも、同じような経験したから、驚きは少ない。

 でもここがこの間と同じ、すなわち私の意識の中だとしたら……多分、あの子も居るはず。

 

「――ローザ、居ますか?」

 

 恋人であるカズキの義妹の名を呼ぶ。

 私の中には、ローザの意識が眠っている。

 ヴァルキリーというアラガミ、その正体がカズキの義妹であるローザで、前に彼女の肉体の一部が私の神機に組み込まれた。

 更に、カズキと感応現象を起こした際に、彼の意識の中にある彼女とも結合。

 その為、私はこの中ではローザと会話ができる……そう思ったのですが、返事は返ってこない。

 おかしいですね、的が外れてしまったのでしょうか……そう思った瞬間。

 

―――お姉、ちゃん。

 

 どこか、遠くでそんな声が聞こえた気がした。

 

「ローザ……?」

 

 しかし、彼女の気配がない。

 おかしい、まだ数回しか話した事はないがあの子はラウエルのように無邪気な子だ。

 てっきり私は。

 

「お姉ちゃん、久しぶりだね!」

 

 みたいな登場をするかと思ったのに、一向に現れないのはどうして――

 

―――お姉、ちゃん……止めて。

 

「えっ……?」

 

 またも聞こえたローザの声、でも……今なんて。

 

―――ローザを…止めて、ローザを……殺して。

 

「っ、何を……!?」

 

―――もう、これ以上…抑え、られない。もう…ローザじゃなくなっちゃう。

 

 それは、苦しみを必死に耐えるような余裕のない声でした。

 一体どういう事なのか、ローザは一体何を言っているのか、まるで理解できません。

 

―――お願い、お姉ちゃん。

 

「っ、ローザ!!」

 

 彼女のその言葉を最後に、私の意識が薄れていく。

 一体彼女はどうしたというのか、あの言葉の意味は何なのか。

 疑問は尽きず、また解ける事もないまま……。

 私は再び意識を失い、この夢の世界を後にしたのだった……。

 

 

 

 

To Be Continued...

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