神々に祝福されし者達【完結】   作:マイマイ

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運命が動き始める。

カズキの、そしてアリサの運命が……。

もはや引き返せない場所まで、2人へと迫っていた……。


第2部捕食59 ~進む侵食~

「――エイジス島に、アルダノーヴァが再び出現した」

『!?!?』

「…………」

 

 重い口調でそう告げるツバキに、第一部隊の者達の間に驚愕が走る。

 その中で、カズキとソーマだけは……不思議と冷静な思考でその事実を受け入れていた。

 

「そんな……けど、どうして」

「――アラガミなんだから、時間が経てばまた現れたっておかしくねえだろうが」

「ソーマ、けどさ……」

「アレはアラガミだ、なら……ぶっ殺せばいいだけだ」

「…………」

 

 ソーマの口調はあくまで冷たく、そこに躊躇いの色は見受けられない。

 事実、ソーマはアルダノーヴァの事は既にアラガミ以外の何者でもないという認識しか抱いていない。

 父は死んだ、あの時……仲間達と共に自らの意志を貫く為に、罪深き業を背負ったのだ。

 だからソーマは期待など抱かない、もしかしたら父の意志が残っているかもしれないという幻想など、それこそ彼の言葉を借りるなら「クソみたいな逃げ道」でしかなかった。

 

「……メンバーは、4人ですか?」

 

 そんな彼の心中を理解して、カズキは何も言わずにゴッドイーターとしての態度を貫く事に。

 

「うむ……アレが強力なアラガミだというのは理解しているが、最近アラガミ達が活性化していてな、前以上に人員不足になっている。

 悪いが、エイジスに向かうメンバーは4人が限度だ」

「アラガミが活性化? 何かあったのですか?」

「原因はわからんが、アラガミの動きが随分と活発なものになってきていてな。

 先日も、装甲を突破しようとした複数がアラガミを討伐したという報告が入っている。

 サカキ博士……支部長が原因を究明する為に動いているが、まだ詳しい事がわからない以上ここの警備を疎かにするわけにはいかん」

 

 話は以上だ、ツバキの言葉で会議が終わり……カズキ達はすぐさま討伐メンバーを決める為に、次の会話を始める。

 

「…………カズキ」

「ん? ソーマ、どうしたの?」

「……オレを、エイジス島のメンバーにしてくれ」

「…………」

 

 ソーマにしても珍しい、消極的な物言い。

 けれど、まだ彼なりに心の整理をしきれていないのかもしれない。

 

「――僕とソーマ、それとアリサちゃんにサクヤさん。エイジスにはこの4人で行きます」

「…………悪い」

 

 自分の心中を理解してくれたカズキに感謝しつつ、ソーマは身勝手な自身に自己嫌悪を覚えた。

 

「シオはー?」

「ラウエルはー?」

「2人はお留守番だよ、というか君達は第一部隊じゃないでしょ」

 

 それ以前に、ゴッドイーターですらない。

 カズキがそう言うと、予想通り2人は不満げに頬を膨らませた。

 

「なんか、シオとラウエルが第一部隊に居るの、当たり前になってきたよな」

「そうですね。ツバキ教官も完全にスルーしてますし」

 

 前までは、ああいった作戦会議の時、ツバキは部外者であるシオとラウエルに注意していたが、今では諦めたのか見事に何も言わなくなった。

 いい感じに毒されてるのかもしれない、そう思うとコウタとアリサは苦笑を浮かべる。

 

「サクヤ、お前の事だから心配ないとは思うが……気をつけろよ?」

「あらリンドウ、心配してくれるなんてどういう風の吹き回し?」

「そりゃあ、一応奥さんだからな」

「一応、は余計よ」

 

 なんて会話をしつつ、イチャラブタイムに入るリンドウとサクヤ。

 ……説明する必要はないが、ここは部屋の中ではなくエントランスロビー、つまり他の神機使い等が居る場所である。

 

「ソーマ、気をつけろよー?」

「ふん、お前に心配されなくてもわかってる」

「そうだなー、ソーマはすっごく強いもんなー!」

「……まあ、心配してくれるのは感謝してるさ」

「えへへー♪」

 

 優しい表情で、ソーマはシオの頭を撫でる。

 そうしてくれるのが嬉しくて、シオはたまらずソーマの胸に飛び込んだ。

 ……説明する必要はないが、ここはエントランスロビーであり自室ではない。

 

「かずき、ありさ、ラウエルいいこにしてまってるな?」

「ええ、わかってますよ」

「すぐに戻ってくるから、後で一緒に遊ぼうね?」

「うん!!」

 

 カズキ、アリサ、そしてラウエルに至っては「微笑ましい家族」みたいな雰囲気になっている。

 説明する必要はないが(ry

 

「…………」

 

 何なんだろう、このありえないくらいの屈辱感は。

 場所をわきまえず、イチャイチャイチャイチャする仲間達に、コウタは今すぐアラガミバレットを連射したくなった。

 

「あんたらなぁぁぁ……さっさと任務を終わらせて誰も見てない所でやってくれよ!!!」

 

 もうやだ、この人達。

 藤木コウタ15歳、またしても彼は世の中の理不尽さを味わって、大人になった。

 ちなみに、このバカップル部隊に感化されたのか、タツミがいつもよりも二割増くらいでヒバリに言い寄っていた。

 まあ尤も、ヒバリは「うわ、いつもよりしつこいなぁ……」とウザく思いつつも、120%の営業スマイルで軽く玉砕させたのだが。

 哀れタツミ、しかし周りでそれを見ていた者達は「まただよwww」だの、「ワロスwww」だの、同情などこれっぽっちもしていない。

 

 ……彼が報われる日は来るのだろうか。

 いや、きっと無い。

 

 

 

 

「――やっぱり、あの時からそのままなのね」

 

 かつて死闘を演じたエイジスをを見ながら、サクヤはぽつりと呟いた。

 所々破壊された地面や壁、天井に至ってはノヴァが飛び去った際、完全に崩壊している。

 

「…………」

 

 あの時の事を思い出す。

 強行な手段、けれど人類の存続を真に願ったヨハネス。

 そんな彼を殺し、けれど人類を存続させる方法は……まだ見つかっていない。

 何が正しかったのか、そもそも自分達が正しかったとは思っていないが……ここに来ると、否が応でもカズキは考えてしまった。

 

(僕は、僕達は……どんな道を進めば、正しい世界へと行けるんだろう……)

 

 その疑問は、一生を懸けても得られないかもしれない。

 それでも考えねばならないのだ、それがヨハネスを打ち破った自分達に課せられた使命であり、業なのだから。

 

「……どうかしましたか?」

「っ、いや、なんでも――」

 

 アリサに呼ばれ、なんでもないと答えようとカズキは彼女へと視線を向け。

 

「っ、アリサちゃん!」

「ひゃっ!?」

 

 カズキは、彼女の両肩を強く掴み上げた。

 

「あ……」

「ど、どうしたんですか?」

 

 当然ながら、アリサは困惑に満ちた表情を浮かべている。

 慌てて離れ、カズキは謝罪の言葉を口にしつつ……アリサの瞳に視線を向けた。

 

(……気のせい、か?)

 

 いつも通り、彼女の瞳は美しいアクアブルーだ。

 けれど、先程カズキが見た時は……まるで血のように赤く染まっていたように見えた。

 気のせいに決まってる、カズキは自分にそう言い聞かせ………神機を構え直す。

 

「――――来たか」

 

 重い口調で呟きつつ、ソーマもアラガミ――アルダノーヴァの気配を察知する。

 まるで天使のように、ゆっくりと空から降りてくる美しいアラガミ。

 けれどその美しさはあってはならない、人間を喰らう堕天使だ。

 

「…………ソーマ」

「オヤジは死んだ、あの時……俺達が殺した。だから余計な気を回すんじゃねえ」

「……そうだね」

 

 目の前の存在は倒すべきアラガミ、それ以上でもそれ以下でもないのだ。

 改めて己に言い聞かせて……カズキは地を蹴りアルダノーヴァへ向けて駆け出した。

 

「愚カ者共ガ!!」

 

 向かってくる小さき人間を視界に捉え、アルダノーヴァは右腕を振るう。

 光り輝くそれは、まるで鞭のようにしなり、人間……カズキに狙いを定める。

 

(――右!!)

 

 一瞬の内にどの方向から攻撃が来るか予知、全身の筋肉を行使しそのままの速度で攻撃を回避しつつ下段からの斬り上げを放つカズキ。

 風切り音を響かせながら、その一撃はアルダノーヴァの女神の右肩を斬り裂く。

 鮮血が宙を舞う、それに構わずカズキは更なる追撃の為に大きく一歩を踏み出し。

 

「グァァッ!!?」

 

 横一文字に薙ぎ払い、今度は腹部を斬り裂いた。

 一撃を与えてから、カズキは大きく跳躍して距離を離す。

 瞬間、女神とその背後に浮かぶ男神にアリサとサクヤの銃撃の嵐が降り注いだ。

 

「グ、グ……オォォォォッ!!」

 

 頭部の輪っかを自身の前に浮かばせる女神。

 

「っ、ソーマ!!」

 

 この攻撃は、周囲を焼き尽くす重く強力なレーザー砲。

 それを理解したカズキは、まずソーマに声を掛ける。

 防御ができないサクヤの前に立ち、守ってもらおうと思ったのだ。

 しかし、ソーマはカズキが声を出すよりも速く行動を移し、サクヤの前へ。

 それを見届けてから、カズキも防御の体勢に入り。

 

「っ、アリサちゃん!?」

 

 1人、アラガミに向かうアリサの姿が見えた。

 防御の体勢に入ってしまっている、一度解除してからでは間に合わない。

 やられる、カズキは神機を捨てて彼女の元に向かおうとして。

 

「ギィィッ!!?」

「えっ――?」

 

 耳をつんざくような悲鳴を、その耳に入れた。

 

「やぁ――――!」

「ギャァァァッ!!」

 

 またも悲鳴がエイジスに響く。

 だがそれはアラガミ――アルダノーヴァから放たれている。

 

 何故か?理由は簡単だ。

 レーザー砲を放とうとした女神だったが、その前に重く鋭い斬撃を二度受けて攻撃を中断、それが一度目の悲鳴。

 更に二撃、一度目の時間とあわせて二秒弱。

 たったそれだけの短い時間の間に、四撃もの斬撃を受けたのだ。

 そして、そんなアルダノーヴァに攻撃を仕掛けたのは、当然ながらアリサである。

 

(速い――――!)

 

 重く鋭く、それでいて的確なアリサの斬撃に、カズキはおもわず動きを止め驚愕する。

 今までの彼女の比ではない強さだ、バースト状態だったとてあそこまでの攻撃は見た事がなかった。

 しかし――驚愕してるのは、なにもカズキだけではない。

 当の本人、アリサもまた自分の動きに驚いていた。

 

(身体が軽い……どうしたんだろう)

 

 まるで身体が羽根のように軽く、二手どころか三手速く動く事ができる。

 アラガミの動きも見切れており、的確な反撃を容易く行えるのは一体何故なのか。

 鬼神の如き所業により、女神が地面に膝を突く。

 

「――――っっっ」

 

 我に返り、カズキは大きく踏み込む。

 アリサもまた、渾身の一撃を繰り出すために、神機を大きく振り上げて。

 

「これで――」

「――終わりだ!!」

 

 2人の刀身が交差し、女神の身体を文字通り打ち砕いた。

 男神の身体が地面に落ち、それに続くように女神もその身体を地面に沈ませた。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 倒した、それを自覚した瞬間……アリサの身体がぐらりと崩れる。

 

「アリサちゃん!!」

 

 慌ててアリサを抱きかかえるカズキ。

 

「ぁ……すみません、カズキ」

「気にしないで、それより……いつの間にそんな強くなったの?」

「……わかりません、ただ今日は身体が妙に軽くて」

「…………」

 

 違和感。

 目の前の彼女が、どこかいつもと違うようにカズキは思えた。

 内側から発せられる力、それが……ゴッドイーターとしてではなく、どちらかといえば自分よりの……。

 

「おい」

「っ、あ……なに?」

「コア、摘出したぞ」

「ぁ……うん」

 

 コアを摘出した以上、アルダノーヴァは近い内に霧散する。

 尤も、大気中に散布されたオラクル細胞が、再びアルダノーヴァを生み出してしまうが。

 

「わたしの出番は無かったわね、本当……みんな強くなったわよ」

「戻るぞ」

 

 緊張の糸を少しだけ緩め、カズキ達はその場を後にする。

 

「――――」

「? アリサちゃん?」

 

 皆が戻ろうとする中、アリサが急に立ち止まり……カズキは彼女へと振り返る。

 

「――――」

 

 彼女の手から、神機がするりと零れ落ちた。

 

「アリサ……?」

「おい、なんか様子が」

「っ」

 

――アリサの瞳が、赤く染まった。

 

 それに気づき、カズキはアリサへと近づき彼女の両肩を掴む。

 

「アリサちゃん!!」

 

 この状況は拙い、アラガミとしての本能が訴えている。

 今の彼女は彼女ではない、このままにしておけば戻れなく……。

 

「…………カズキ?」

「っ、アリサちゃん……」

 

 キョトンと、自分を見つめてくるアリサに、カズキはおもわずその場に座り込んでしまうほど脱力してしまった。

 

「おい、お前今……」

「はい? どうかしましたか?」

「アリサ……?」

 

 ソーマもサクヤも、先程のアリサの瞳を見てしまった。

 見てしまったからこそ、再びアクアブルーに戻った彼女に、困惑を隠せない。

 

「……なんでもないよアリサちゃん、それよりラウエルが待ってるから帰ろう?」

「あ、はい、そうですね」

「おい、カズキ――」

「戻ったら、アリサちゃんに精密検査を受けさせる」

 

 彼女に聞こえないように、カズキはソーマにそう告げる。

 

(……まさか、けど……だとしたら一体どうしてこんな……)

 

 ある予想が、カズキの中で着実に確信へと変わっていく。

 そんなわけがない、否定する度に否定する事ができなくなる。

 どうか、何事もありませんように。

 祈るように自分に言い聞かせながら、カズキは仲間と共にエイジスを後にした……。

 

 

 

 

「――素晴らしい、素晴らしいよアリサ……キミはこんなにも強いじゃないか」

 

 誰もいなくなったエイジスに、男の不気味な声が木霊する。

 

「最高だ……君こそ最強のゴッドイーターであり、私の最高傑作だよ…アリサ」

 

 ただただ恍惚な表情を浮かべる男は、アリサの名前を呟きつつも……自分の障害である青年の事を考えていた。

 

「抗神カズキ……アリサは私のものだ、貴様には渡さん…絶対に…絶対に渡さん………!」

 

――だが、男は知らない。

 

 既に彼女が、男の思っているような存在ではない事に。

 

 

――“覚醒”まで、あと少し。

 

 

 

 

To Be Continued...

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