神々に祝福されし者達【完結】   作:マイマイ

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オオグルマとの因縁を断ち切り、カズキと共にアラガミとして生きることになったアリサ。

不安はない、何故なら自分の隣には大切な人がいるから……。

――今日は、そんな2人のちょっとした日常を垣間見よう。


第2部捕喰66 ~呼び捨てしてください~

――廃墟の街で、獣の咆哮と断末魔が木霊する。

 

 

「カズキ、こっちは任せてください!!」

 

 そう言いながら、三体のヴァジュラと対峙するのは……新型神機使いのアリサ。

 彼女の声に返事は返さず、けれど無言の信頼を寄せながら、カズキは自分に向かってくる二体のセクメトへと狙いを定める。

 先に仕掛けたのはセクメト、カズキの胴を薙ごうと大きく強靭な翼を横殴りに振るう。

 

――彼の姿が消えた。

 

 否、あくまでもセクメト達の視界から消えただけであって、彼が瞬間移動を果たしたわけではない。

 しかしそのスピードは恐ろしく速く……一息でセクメト達の右の翼を斬り飛ばした。

 斬撃を与えると同時に跳躍、神機を銃形態へ変形させると同時にセクメト達の脳天にレーザーを叩き込む。

 

 怯むセクメト達、それを見届ける事無くカズキは再び神機を剣形態へと変形させながら……自身の左腕を重厚な刀身へと変化させる。

 一閃――彼が両腕を動かした時には、二体のセクメトの首は斬り飛ばされ……憐れな獣達は絶命した。

 

「は――――!」

 

 だがカズキの行動はまだ終わらない、地面に着地すると同時に神機を神速の速度で自身の背後へと投擲する。

 風切り音を響かせながら、投げられた神機は――アリサと戦っているヴァジュラの一体の身体を貫通、絶命させる。

 

「――終わりです!!」

 

 彼の援護に感謝しつつ、アリサは両腕でしっかりと神機を持ち渾身の力を込めて横薙ぎに振るった。

 充分な力を込められたその一撃はただ重く、まるでハンマーで殴り飛ばしたかのような衝撃でヴァジュラの顔面を粉砕。

 肉片と血が地面を赤く汚し……断末魔を上げる事無く、最後のアラガミはその生涯に幕を降ろした。

 

「……終わりましたね」

 

 右手で神機を地面に突き刺し、アリサは戦闘が終了し自分もカズキも生き残った事にほっと胸を撫で下ろす。

 

「じゃあ、回収班を呼ぼうか」

「あっ、それくらいなら私がやりますからカズキは休んでいてください」

 

 言うやいなや、アリサは無線を取り出し回収班へと戦闘の終了を告げる。

 

「……回収班は10分後に来るそうです」

「それじゃあ、ゆっくり待たせてもらおうか」

 

 血が付着していない瓦礫に背を預け、カズキは一息つく。

 そんな彼にさりげなく近付きながら……アリサは彼の肩に自分の頭を預け寄りかかった。

 

「えへへ……」

 

 嬉しそうに微笑むアリサに、カズキも笑みを返しながら彼女の頭を優しく撫でてあげた。

 

――今日も世界はアラガミに支配されている。

 

 カズキ達の戦いは、まだ終わりを見せていなかった……。

 

 

 

 

「――あ、アナグラの最強バカップルだ」

「相変わらず可愛いよな……アリサちゃん」

「俺、この間アリサちゃんと一緒の任務だったぜ!」

「なにおう、おれなんか「ドン引きです……」って言われたぜ!」

「いや……全然羨ましくないっての」

 

(……アリサちゃん、凄い人気だ)

 

 周りの神機使い達の会話が否が応でも聞こえてしまう。

 そのどれもが、アリサに関する好意であるのだから、恋人としては微妙な気持ちになる。

 

――しかし、そう思っているのはカズキだけではない。

 

「あ、カズキさんよ」

「相変わらずカッコいいなあ……」

「優しいし、気遣ってくれるし……ああいう人が恋人だと、女の子としては最高よね」

 

(…………むぅ)

 

 そんな女性神機使いの会話が聞こえ、アリサは僅かに頬を膨らませ機嫌を悪くする。

 こんな嫉妬など見苦しいとはわかっているが、まだまだ精神的に幼いアリサは嫉妬心を上手く受け流す事ができていない。

 

(我慢我慢……むしろそれだけ人気なカズキの恋人として、誇りに思わないと)

 

 ポジティブシンキングよアリサと自分自身に言い聞かせながら、アリサは内側で嫉妬心と戦っていた。

 今日もアナグラ内は平和である。

 

「かずきー!!!!」

「おっ……!?」

 

 背後に衝撃と、元気いっぱいな少女の声。

 振り返らなくてもわかる、カズキはそのまま少女の名を呼んだ。

 

「ただいま、ラウエル」

「おかえりかずきー、ありさもおかえりー!」

「ラウエルちゃん、ただいま」

 

 にぱっと微笑むラウエルに、カズキとアリサも自然と笑顔になる。

 

「あそぼーあそぼー!!」

「はいはい」

「ラウエルちゃんは、何をして遊びたいですか?」

「んー…………『よるのいとなみ』がしたい!!」

『ぶっ……!?』

 

 屈託のない笑顔でとんでもない事を口走るラウエルに、2人はおもわず吹き出し……周りの者達には驚愕が走る。

 

「ま、まさか……もうあの2人はそこまで!?」

「そんな……アリサちゃん、もう大人の階段を昇ってしまったのか!?」

「み、認めん……認めんぞぉっ!!!」

 

(…………どん引きです)

 

 割と本気の殺意を込めた視線を、好き勝手な事をほざいている男達に向けるアリサ。

 当然ながらショックを受けている者も居るが……中には、どこか恍惚な表情を浮かべている者もいた。

 

「……ラウエル、誰からそんな言葉を習ったの? あと、それは遊びじゃないから」

「あそびじゃないのかー……『よるのいとなみ』はこうたからおそわった」

「…………コウタ」

「仕置きですね、それもキッツイやつを」

 

 あははーと能天気に笑っているコウタの顔を思い浮かべながら、カズキとアリサは冷たい笑みを浮かべている。

 口は災いの元である、その後……コウタが2人によって折檻されたのは言うまでもないが、どうでもいいので割愛する。

 

「かずきー、ありさー、『よるのいとなみ』って何なんだー?」

「……ラウエルは、まだ知らなくていい言葉だよ」

「そうです、もう少し大人になったら教えてあげますから」

「????」

 

 

 

 

「――まったく、コウタのせいでラウエルちゃんが変な子に育ったらどうするんですか!!」

「あはは……」

 

 場所は変わって、カズキの部屋。

 しっかりとコウタに制裁を加えてから、2人はいつも通りカズキの部屋で2人っきりの時間を楽しんでいた。

 何故アリサの部屋に行かないのかというと……それは察してほしい。

 

「アリサちゃん、なんだかラウエルのお母さんみたいだね」

「まだそんな歳じゃありませんよ、失礼ですね」

 

 僅かに頬を膨らませるアリサ、しかし表情を見る限り怒っているわけではない。

 だからカズキも、「ごめんごめん」と笑いながら謝罪の言葉を返す。

 

「…………」

「? アリサちゃん、どうかした?」

「いえ……そのですね、ちょっとカズキに訊きたい事がありまして」

「訊きたい事?」

 

 首を傾げるカズキに、アリサは不満げな表情を浮かべながら。

 

「カズキ、また私の事を『アリサちゃん』って呼んでますよ?」

 

 その表情の通り、自らの不満を打ち明けた。

 

「…………え?」

 

 呆けるカズキ、別に彼女の言葉の意味が判らなかったわけではない。

 ただ……彼にとってアリサを『アリサちゃん』と呼ぶのは当たり前すぎたので、どうしてそんな事を訊かれるのかあまり理解できていなかった。

 

「私達ってお付き合いをして結構長いじゃないですか、あと一年もしない内に私も16歳になります。そうすればカズキと結婚することだってできるんですよ?」

「…………あー、うん」

 

 結婚、その単語を聞いてカズキの頬が僅かに赤らむ。

 

「けどカズキは私をまだ『アリサちゃん』って呼んでます。この間は『アリサ』と呼び捨てにしてくれたのに……」

「えっと……別にそれくらい」

「よくありません! そりゃあ私とカズキは歳が離れていますけど、『アリサちゃん』って呼ばれるとなんだか子供扱いされているような気がするんです」

「…………」

 

 そういう風に気にしている時点で子供なのでは……喉元までそんな言葉が出掛かって、カズキは慌てて呑み込んだ。

 そんな事を言えば間違いなく怒られる、彼女は子供扱いされる事が嫌いなのだから。

 

「というわけで、もうちゃん付けは禁止です!」

「えぇー……?」

「はい。じゃあ練習してください、私の事を『アリサ』と呼ぶ練習!」

 

 ずいっと身を乗り出し、カズキを逃がさないようにするアリサ。

 これにはカズキも困り顔、しかし前述の通りアリサが「ちゃんと言えるまで逃がしません」とばかりに迫っているので、逃げたり誤魔化したりする事はできなそうだ。

 ……仕方ない、数秒間葛藤してから……カズキは早くも自分が折れる選択肢を選んだ。

 別にアリサを『アリサちゃん』と呼びたいわけではない、ただ最初の頃からそう呼んでいたから定着してしまっただけでそれ以外の呼び方が嫌だと言うわけではない。

 

「あー……うん、えっと……」

「…………」

(なんでそんなワクワクしたような表情を向けるの……?)

 

 変な期待を向けられているような気がして、なんだか恥ずかしくなってきた。

 一度深呼吸をして、自分を落ち着かせるように言い聞かせてから……カズキは口を開いた。

 

「あ……アリ、サ……?」

「ぎこちないにもほどがありますよ、ただ“ちゃん”を取ればいいだけじゃありませんか?」

「いや、そうなんだけどね……なんか気恥ずかしくなって」

「なんで恥ずかしがるんですか。……なんだかこっちまで恥ずかしくなってきますよ」

「あっ……ご、ごめん」

 

 いや落ち着け、ただ恋人の名前を呼び捨てにするだけじゃないか。

 もう一度深呼吸、正直こんな事ぐらいで緊張しすぎだと思うが気にしてはいけない。

 

「…………アリ、サ?」

「もう一度」

「アリサ……」

「……もう一度です」

「アリサ」

 

「―――――」

「えっ、なんで視線を逸らすの?」

「いえ……思った以上に威力が大きかったので」

「???」

(これは……なかなかですね)

 

 呼び捨てにしてもらえた、それだけでなんだかカズキとの距離が縮まったような気がして、今度はアリサの頬が赤く染まる番であった。

 

「うん……アリサ」

「……はい、カズキ」

 

 アリサ、カズキと互いに互いの名前を呼び合う2人。

 たったそれだけでも幸せな気持ちになれる、心が暖かくなれた。

 

「それでは……改めて宜しくお願いしますね、カズキ」

「こちらこそ、アリサ」

 

――2人の絆が、また深くなった。

 

 この世界の中でも、2人は互いを大切にしこれからも逞しく生きていく。

 

 

――だが。

 

 

「――ググ、ウゥ…………ウォォォォォォォッ!!!!」

 

 選択の時は、すぐそこまで迫っている。

 カズキにとって、悠久の時があっても答えが出せぬ選択の時が―――

 

 

 

 

To.Be.Continued...




投稿が遅くなってしまい申し訳ありません。

次回はいよいよこの物語最後の戦いです、相手は……言わなくてもわかりますよね?
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