神々に祝福されし者達【完結】   作:マイマイ

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ゴッドイーターであるカズキの戦いは続く。

絶望の世界の中、彼は仲間達と共に今を乗り越えていく……。


捕喰6 ~コウタとコンゴウ~

「カズキ」

「はい、なんでしょうかツバキ教官」

 

 声を掛けられたのでそちらに振り向き、カズキは上官であり新人の教官である雨宮ツバキに視線を向ける。

 長い黒い髪に、胸元が大きく開かれた露出の多い軍服が特徴的な彼女は、あのリンドウの姉であるが……飄々とした軽い雰囲気のリンドウとは違い、常に威圧的で厳しい性格をしている。

 故に、彼女を苦手としている者は多く、コウタも彼女が苦手らしい。

 

「今日は、鎮魂の廃寺でコウタと共にコンゴウ討伐に行ってもらう。

 お前は、確か前にタツミとカノンと一緒にコンゴウと戦ったのだな?」

「はい」

「そうか。ならば今回はお前がコウタを引っ張っていけ、経験がある者が指揮を執るのは当然だ。

 だが努々油断するなよ? いくら一度戦ったとはいえ、コンゴウは小型アラガミとは比べものにならないくらい手強い相手だ」

「了解しました。ツバキ教官」

「うむ、ならば良い。では頼むぞ? ミッションの受注はヒバリから依頼しろ」

 

 そう告げて、カズキから離れていくツバキ。

 早速、カズキは受付に向かいオペレーターの竹田ヒバリに声を掛けた。

 

「ヒバリちゃん、コンゴウ討伐のミッションを発注したいんだけど……」

「はい。……コウタさんと行くミッションですね? 受注完了しました」

「ん……ありがとう」

 

 さて、次はコウタを呼びに行かないと。そう思いカズキはコウタの部屋に向かう。

 

「コウタ、いる?」

 

 ノックして声を掛ける、すると中から「いるぞー」という返事が聞こえた。

 なので入ってみたのだが……コウタはベッドに寝そべり、だらしない格好でカズキに視線を向けてくる。

 

「……コウタ、もうすぐミッションだよ。ツバキ教官に言われなかった?」

「あー、そうだった」

 

 本当にわかっているのだろうか、尚もだらしない格好のままのコウタに、カズキはおもわず苦笑を浮かべる。

 

「よしっ、そんじゃ行くとするか!!」

「うん」

 

 コウタと共に部屋を出て、まずは神機を取りに行く。

 そして、廃寺に行こうとエレベーターへと赴いた所で。

 

「あっ、カズキさん。これから任務ですか?」

 

 カズキに話しかける1人の少女、台場カノン。

 神機を持っているので、おそらく任務から戻ってきたのだろう。

 

「カノン先輩、お疲れ様です」

「は、はい。ありがとうございます」

 

 頭を下げるカノン、相変わらず先輩なのに腰が低い人だ。

 

「頑張ってくださいね、あの……無理したらダメですからね? えっと……その、が、頑張ってください……」

「はあ……ありがとうございます」

 

 言う事がないなら無理して言わなきゃいいのに、そう思いつつも素直にカノンの言葉に頷きを返す。

 ……どうでもいいが、先程からコウタをガン無視してるのは、わざとなのだろうか?

 カノンと別れ、車に乗り込み廃寺へと走らせる。

 ちなみに、運転はコウタが行っている。15歳なのに運転できるとは、凄いものだ。

 

「そういえばカズキ、お前サクヤさんと仲良いのか?」

「……どうだろう、悪くはないと思うよ。

 ミッションでは結構一緒に居るし、この間は食事もしたし……」

「マジか!? なんでオレを誘わなかったんだよ!!」

「だって、僕が言う前にバガラリーを見るって部屋に行ったのはコウタじゃないか……」

「くぉぉ〜、そこは追いかけるのが親友だろうがー!!」

「…………」

 

 車を運転しながら器用に表情を変えるコウタに、カズキはある意味驚いていた。

 というか、どうして自分が責められないといけないのだろう。

 

「コウタって、サクヤさんが好きなの?」

「いや……美人だし、優しいし、戦うお姉さんって感じがするし……たまんないと思わないか?」

「………?」

 

 さっぱり意味がわからない、そういった意志を込めカズキは首を傾げると……コウタは大袈裟にため息をついた。

 

「ったく……お前それでも男かよ、この極東支部には綺麗な女性が沢山居るってのに……。

 てか、お前いつの間にカノンさんと仲良くなったんだよ!?」

「この間、ミッションが一緒だったし……射撃の訓練の時によく話すし、この間はお菓子も貰ったっけ……」

「……お前、随分得な性格してるよな……」

「………そうかな?」

 

 そんなやりとりをしていると――今回の戦場に辿り着き、コウタは車を止める。

 

 

――鎮魂の廃寺

 

 神仏に縋る人々が静かに暮らしていた隠れ里であったが、アラガミにより壊滅的な被害を受け、今では入り組んだ地形に冷たい風と雪が降り注ぐ廃墟となっている。

 縋るべき神に命を奪われた人々の叫びが、風に乗って聞こえてきそうだ。

 時刻は夜、視界が限定される中――カズキを先頭に2人はコンゴウを探すために探索を開始した。

 

「しっかし……さみぃな」

「当たり前だよ……」

 

 半袖にへそ出し、そんな軽装では寒いのも当然だ。

 やれやれと思いつつ――彼は足を止める。

 

「カズキ、どうし――」

「しっ!」

 

 喋ろうとするコウタを制し、カズキは壁に背を預け……ある場所へと視線を向ける。

 そこは神仏が置いてある御堂の中、そこを蹂躙するように――コンゴウが座り込んでいた。

 

「……あれが、コンゴウか」

 

 実物を見るのは初めてなコウタは、口調の中に若干の緊張を走らせる。

 幸いにもコンゴウはこちらに気づいた様子はないが、あのアラガミは聴力に優れている。下手に近づけば気づかれる可能性が高い。

 

「………コウタ、まずはここから銃撃で奇襲してダメージを与えるよ。

 その後は僕が前衛で戦うから、コウタは後方で援護射撃をしてくれる?」

「おぅ、わかった」

「せーのでいくよ?」

 

 互いに頷き合い、そして。

 

『せーの!!』

 

 同時に飛び出し、コンゴウの背中に銃撃を浴びせる―――!

 

「グェァッ!!」

 

 背中に衝撃を受け、コンゴウがようやくカズキ達に気づく。

 すぐさまカズキは銃から剣形態に神機を変形、地を蹴って踏み込み――上段から斬撃を繰り出した。

 放電チェーンソーの刃がコンゴウの頭部に食い込み、鮮血が舞う。

 だが、コンゴウは攻撃を受けながらも丸太のような太い腕でカズキを殴り飛ばそうと振るった。

 

「くっ―――!」

 

 すんでのところで、カズキはコンゴウから刃を抜き取り柄の部分に装着している盾を展開、足に力を入れその一撃をどうにか防ぐ。

 

「カズキ!!」

「―――っ」

 

 背後からの声に反応し、その場で右側に跳躍。

 すると、コンゴウの全身に雷属性の弾丸が降り注ぎ、悲鳴が辺りに響き渡った。

 

「は―――っ!!」

 

 怯むコンゴウに右足で大きく踏み込み、横薙ぎに剣を振るうカズキ。

 遠心力と全身のバネを用いた斬撃は、コンゴウの皮膚を貫通し右腕を斬り落とす。

 

「ギィィヤァァァッ!!」

「―――うるさい」

 

 聞くに耐えない絶叫に舌打ちしつつ、カズキは神機を銃形態に変形。なんとそのまま砲身をコンゴウの口へとねじり込む。

 

「うぇ―――!?」

 

 後ろに居るコウタも、コンゴウですら一瞬彼の行動を理解できず。

 カズキはそのまま、コンゴウの体内に連続で銃撃を撃ち込んだ―――!

 

 一発撃つごとにコンゴウの身体からは血が噴き出し、悲鳴も小さくなっていく。

 そして、銃撃を行うのに必要なオラクル細胞が空になった頃には。

 首から上を完全に無くし、とうの昔に事切れたコンゴウが、地に伏していた……。

 

「…………」

 

 それを冷たく見下ろしながら、カズキは一度剣形態にしてから、捕喰形態に変形させコンゴウに喰らいつく。

 

「――コアの捕喰完了、終わったよコウタ」

「………すげぇ」

 

 カズキの戦い方に、コウタはおもわずそう呟く。

 新型としての柔軟な戦い方もそうだが……何の躊躇いもなくあんな攻撃ができるカズキに、コウタは心底感嘆した。

 

「さあ、ミッションも完了したし戻るとしよう」

「お、おぉ……」

 

 いつもの柔らかい微笑、だが……顔に血が付着したままなので、少し不気味だ。

 

――こうして、ミッションを終えた2人は車で廃寺を後にする。

 

「あちゃー……さっきので銃身パーツが壊れちゃったな……」

「そりゃああんな使い方したら壊れるって……」

 

 アラガミの口に直接銃身を入れて撃ったのだ、この破損は至極当然の事である。

 

「帰ったらリッカちゃんに頼んで新しい銃身パーツ、作って貰おうかな……」

「えっ、カズキって整備班のあの子とも仲良いのか?」

「うん、僕は色々なパーツでアラガミと戦うから、よくリッカちゃんに相談したりしてるうちに……」

「……お前、本当に得な性格してるな……」

「そうかな……?」

 

 首を傾げると、何故かコウタに睨まれた。

 

「………あっ、そういえば今日は家に帰れる日だったな」

「コウタは、外部居住区に実家があるんだっけ?」

「ああ、母さんと妹が居てさ。母さんは心配性で、帰る度に「大丈夫?」なんて言ってくるんだよ、気持ちはわかるけどちょっと親バカだよな?」

「…………」

 

 放つ言葉とは裏腹に、コウタの口調には嬉しさが滲み出ている。

 ……それが、少しだけ羨ましいとカズキは思ってしまった。

 

「……妹さんのお母さんの事、大事にしてるんだね」

「あったり前だろ、カズキは兄妹とか居ないのか?」

「―――――」

 

 おもわず、息を呑んだ。

 コウタに悪気はない、家族の話題になったのだから彼の問いはある意味当然とも言えるだろう。

 だが、それでもその問いはカズキの胸に鈍い痛みを走らせた。

 

「………カズキ?」

 

 急に黙ってしまったカズキに、コウタは不思議そうな顔で彼に視線を向ける。

 

「―――うん。僕にも……妹がいたよ」

「へぇ、お前にも妹が――」

 

 そこまで言いかけ、コウタは気づく。

 妹が、“いた”?

 

「カズキ……」

「………うん。僕には……もう家族が居ないんだ」

 

 コウタの表情を見ながら、カズキは言葉を続ける。

 

「八年前に、アラガミに殺されたんだ。母さんも、父さんも……妹だったローザも。

 僕1人を残して、アラガミに捕喰されたんだ」

「あ、ごめんオレ……」

「気にしなくて良いよコウタ、むしろ家族を大事にしてる事がわかって僕も嬉しかった。

 ――コウタが、優しくて良い人だってわかって、よかった」

「カズキ……」

「……僕の妹、再婚した新しい父さんの子供でさ、僕より4つ年下だったんだ。

 白銀の長い髪と、アクアブルーの瞳が綺麗な女の子だった、あっ、ローザはロシアの生まれなんだよ」

 

 言いながら、カズキは首に掛けているロケットペンダントを開き、コウタに見せる。

 そこには――彼の部屋にあるのと同じ、幼いカズキと一組の夫婦。そしてカズキに抱きついている白銀の髪の少女が写っている写真が入っていた。

 

「……綺麗な子だな。将来絶対美人になってたよ」

「うん、僕もそう思う。って、これじゃあシスコンだね」

 

 あははと笑うカズキに、コウタは何故か真剣な表情を彼に向けた。

 

「――カズキ、オレもっと母さんと妹を大事にする。絶対に」

「コウタ……」

「オレ、お前の家族の事が知れてよかったと思う。だから……ありがとう」

「…………うん」

 

 ああ、やはり彼は優しい人だ。

 知る意味などない自分の過去を聞いてくれただけでなく、それを無意味なものにしなかったのだから。

 

「――よーし、これからもジャンジャンアラガミを倒して、みんなを安心させるぞー!!」

「おー」

 

 2人して手を上げる、そうしてる間にアナグラへと到着した。

 

「カズキ、さっさと報告書提出して何か食いに行こうぜ!!」

「そうだね、僕も少しお腹がすいたから」

「よっしゃ、そうと決まれば善は急げだ!!」

「ははっ……」

 

 元気すぎるコウタに苦笑を浮かべつつ、カズキも後に続く。

 

――その後、カズキはコウタと共に残りの1日を過ごした

 

 だが、コウタがはまっているバガラリーというアニメを延々見せられ精神的にまいってしまったのはまた別の話。

 

 

 

 

To.Be.Continued...

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