―――守ることができた。
青年は仲間達、そして最愛の少女と力を合わせ……新たな幸せを手に入れたのだ。
「――やー!!」
「…………?」
背後から少女の悲鳴のような声が聞こえ、カズキはおもわず振り返り。
「お兄ちゃん、助けて!!」
「ぐふっ……!?」
その瞬間、カズキの腹部に衝撃と鈍痛が襲い掛かった。
咳き込み、一体何事かと視線を下に向ければ……そこに居たのは、カズキの最愛の恋人であるアリサ……ではなく、彼女にそっくりな少女。
「……ローザ、どうしたの?」
カズキの義理の妹である、ローザであった。
涙目で自分を見上げている彼女に、一体何があったのか問いかけようとして。
「ああカズキ君、そのまま彼女を取り押さえてくれたまえ」
彼の前に、サカキ博士とツバキ教官が駆け寄ってきた。
それを見て、カズキはなにがあったのか理解して軽く溜め息を吐き出す。
「ローザ、ダメだよ。ちゃんとサカキ博士の検査を受けないと」
「だって……博士、ローザにセクハラしてくるんだもん」
「…………えっ?」
「それはとんでもない誤解だよカズキ君、だから殺意を込めた視線を向けてくるのはよしてくれないか?」
冷たい視線を向けられ、博士の表情が引きつり冷や汗が滲み始める。
「カズキ、博士はそんな事は………………しないと信じている」
「ツ、ツバキ君。どうしてはっきりと否定してくれないんだい!?」
「冗談です。とにかく何かおかしな事をしているわけではないとお前でもわかっているはずだ、“また”ローザが検査を嫌がって逃げただけだ」
また、の部分を強調しながらローザを睨むツバキ。
その視線を感じ、ローザはカズキの後ろに隠れてしまう。
「はぁ……ローザ、いい子だからちゃんと博士達のいうことをきかないとダメだよ」
「うー……はーい……」
しぶしぶといった表情を浮かべるローザであったが、おとなしくサカキ博士達と共にラボラトリへと戻っていく。
それを見て苦笑しながらも……カズキの表情は優しいものであった。
■
――あれから、もう半月が過ぎた。
ローザの精神世界から見事生還したカズキとアリサは、仲間達の手によって無事アナグラへと保護。そして……ローザもまた、人間の姿に戻ってカズキ達と共に保護された。
サカキ博士の調査によると、彼女の身体は完全にアラガミのものになっているが、カズキ達との感応現象とコアの接触によって独自の進化を遂げたのか身体の構造は人間のものと変わらないものに変化していた。
つまり彼女はシオと同等の存在となり―――人として生きる可能性を得たのと同じである。
無論まだ楽観視はできないし、これからも定期的に検査や調査も必要となるだろう。
しかし彼女はアラガミではなく人間としての生を謳歌できる道を得ることができるようになり、それを知った時――カズキは勿論アリサや他の仲間達もまるで自分の事のように喜んだのは言うまでもない。
「――カズキ、なんか博士と教官が困った顔をしてたけど……またローザが脱走したの?」
エントランスロビーに赴いたカズキに、寛いでいたコウタが話しかけてきた。
「あはは、まあね……」
「……まあ、姉上から逃げたくなるのはわかるわな」
「俺は、博士からも逃げたいと思うがな」
好き勝手な事を言うリンドウとソーマ、しかし誰もそれに否定の意を示す事はできない。
「だけど……本当によかったわね、カズキ」
「はい。……これもみんなのおかげです、本当にありがとう」
仲間達に向かって頭を下げるカズキ、それに対し全員が優しい笑みを浮かべる。
「よせやい、これもお前が諦めずに最後まで頑張ったからだ。生きることから逃げずに立ち向かったから、な」
「テメエはそうやって最後まで足掻いてる方がお似合いだ、それがこの結果に繋がった。ただそれだけだ」
「そーそー、みんなカズキが頑張ったからだって!!」
「そうね。それと……あなたの大切な人も、ね」
「――はい」
「そういえば、アリサは?」
「……シオとラウエルと一緒に、ミッションだ」
食事とも言うがな、呟くように告げるソーマに全員が「ああ……」と呟いた。
「あいつ、もう自重しなくなったよな」
「しょうがないわよ。でもアラガミって美味しいの?」
「……上手く説明はできません」
「お兄ちゃーん!!」
「うおっ………!?」
背後に衝撃を感じ、カズキは後ろへと視線を向ける。
「えへへー……」
そこには予想通り、満面の笑みを浮かべたローザの姿が。
「ローザ、また」
「もう博士の検査は終わったもん、でもツバキさんって本当に恐い顔で怒るよね!!」
「ははは、ローザは正直者だなあ」
「ちょっとリンドウ、教官が聞いたら怒るだけじゃすまないわよ?」
「さあお兄ちゃん、遊ぼうよ!」
ぐいぐいとカズキの腕を引っ張るローザ、無邪気な笑顔は歳不相応に見える。
しかし仕方ない、ローザの見た目はアリサと同じ……というより、一卵性双生児以上にそっくりだ。
この間なんか、アリサの服を着ていたから第一部隊の誰もがローザをアリサと間違えたくらいなのだから相当である。
……話を戻そう。ローザの見た目は確かにアリサと同じと言っても過言ではないのだが、精神年齢は人間の頃とあまり変わらない……つまり、小さな少女そのものなのだ。
無邪気で無垢、初めはカズキも混乱したが今ではすっかり慣れてしまった。
だが――男の神機使いの一部は、今のローザを見て危ない趣味に目覚めそうになっているとかいないとか。
「世の中には同じ顔が3人いるっていうけど……本当にアリサとローザってそっくりだよな」
「でもね、アリサお姉ちゃんの方がおっぱい大きいんだよ」
少しだけ不満そうに言いながら、ローザは両手で自分の胸を掴み上げる。
……正直、彼女の胸囲もアリサ程ではないが同世代の女性と比べれば充分に大きい。
ついついコウタの視線が、寄せ上げられたローザの胸へと行ってしまう。
「――――コウタ?」
視線に気づき、カズキは絶対零度の視線をコウタに向ける。
その恐ろしさたるや、アラガミ数十匹に囲まれる以上の恐怖を感じ取れるほどだ。
それを受けたコウタはもちろん、直接被害を受けていない周りの者すら震え上がってしまう。
そして誰もがこう思った――このシスコンめ、と。
「カーズキ♪」
「おっ……?」
聞きなれた少女の声と、背中に襲い掛かる軽く柔らかい衝撃。
自然と口元に笑みを浮かべながら、カズキは最愛の少女を迎え入れた。
「おかえり、アリサ」
「はい、ただいま戻りました!!」
見つめ合い、優しく笑みを浮かべ合いながら……自然と口付けを交わす2人。
もちろんここはエントランスロビー、周りに人がいる……というより、目の前には第一部隊の面々が。
しかし彼等は別に反応を返したりはしない、何故ならもう日常茶飯事的な光景だからだ。
「むっ……ローザが目の前に居るのに、いちゃいちゃしないでよ!!」
だがブラコンであるローザには相当不満な光景だったらしく、頬を膨らませながらわざとらしく2人の間に割って入る。
「ローザ、ブラコンも大概にしてくださいよ!!」
「アリサお姉ちゃんこそ、もう少しTPOを弁えてほしいものね!」
「なんですって!?」
「なにさ!!」
「ちょ、ちょっと2人とも……」
睨みあう2人を宥めようと、カズキは仲裁に入るが……。
「カズキは黙っててください!!」
「お兄ちゃんは黙ってて!!」
まったくの同時に、2人の少女に怒鳴られおとなしくなってしまった。
「やれやれ……」
「けどなんだかんだいって仲良いよな、アリサとローザって」
「ソーマ、こういうの『修羅場』っていうんだよなー?」
「……シオ、お前どこでそんなくだらねえ事覚えやがった?」
一気に騒がしくなるエントランスロビー。
ある者はその中心に居る者達を呆れながら眺め、またある者は微笑ましく見つめている。
――この世界は、あまりにも残酷であまりにも非情な現実ばかりだ。
しかし、そんな世界の中でも確かな幸せは存在するし、逞しく生きている人間達も居る。
ささやかで小さな幸せを守るため、戦う者達―――神々を喰らうもの『ゴッドイーター』。
彼等はこれからも人類を守る為に戦い続け、その中で確かな幸せを噛み締めながら生きていく。
たとえどんな絶望が待っていたとしても、彼等は決して歩みを止めたりしない。
――彼等の物語は、まだまだ続いていく。
「カズキ!」
「お兄ちゃん!!」
「――――愛しています!」
「――――大好きだよ!!」
物語は、まだ終わらない――――
Second.Stage.Fin...Next.To.New.Stage...?