「――何で居るんですか?」
「ええっ!?」
「ちょ、ちょっとアリサ……」
エイジス島にて、資源回収及び接触禁忌種のアラガミ討伐に赴いたカズキとアリサ。
2人っきりで任務……と思っていたアリサの思惑は見事に外れ、しかし任務は任務だと気持ちを切り替えエイジス島内部へと先遣隊のジーナと共に向かったのだが……。
「どうしてエリックさんが居るんですか!?」
「いや、どうしてと言われてもね……」
いきなり冒頭であんな暴言を吐かれ、ジーナと同じく先遣隊としてこの島に来ていたエリックは何だが泣きたくなった。
自分はちゃんと任務をこなそうと資源の在庫チェックをしていたというのに、どうしてこんな事を言われなければならないのだろう。
(ちぃ……ジーナさんだけならともかく、これ以上メンバーが増えたらカズキとイチャイチャできないじゃないですか……!)
じゃあ前話のあれは何だったんだよというツッコミは無しの方向で、どうせ彼女に言った所で無駄だから。
「お疲れ様ですエリックさん、アリサの発言は気にしないでもらえると有り難いんですが……」
「そ、そうだね……というかさりげなく傷ついたから、忘れる事にするよ」
「…………災難だったわね」
うなだれるエリックに同情を向けるジーナ、それを見て罪悪感を抱くカズキ。
そんな3人には気づかないまま、アリサは資源が積まれている倉庫へと赴いた。
人が寄り付かないせいか埃っぽく、アリサは僅かに顔をしかめながらもこの倉庫に眠っている資源を見て驚きの表情を浮かべる。
「凄い……これだけのオラクル資源があったなんて」
「元々ここは『エイジス計画』で住人を居住させる目的で建てられたんだ、外部防壁等に使うオラクル資源が大量にあるのも当然だよ」
「……『エイジス計画』ですか」
その単語を聞いて、アリサはあの時の戦いを思いだす。
ソーマの父、ヨハネスとの戦い――その時、カズキは彼に対して誇れる答えを返した。
だから自分も彼のように生きたいと、いつか自分の力で出した答えを探すために歩みを進めている。
――だが、それでもアリサはヨハネスの行動を否定する事はできなかった。
許されざる事をしたとは思っている、だが間違っているかと言われれば……答えを返せない。
少なくとも彼は自分と違って明確な答えを見つけ道を歩んできた、その点だけ考えれば彼は、カズキの後ろについていっているだけの自分よりもずっと正しい道を……。
「アリサ、どうしたの?」
「ぁ、……いえ、なんでもありません」
慌てて笑顔を浮かべカズキの問いかけに応えるアリサ。
それを見て、カズキは小さなため息をつきながら……彼女の頭を少し乱暴に撫でた。
「わわっ!?」
「なんでもないならもう少し表情を誤魔化さないとばれちゃうよ。それに……僕は君の恋人なのだから、力になりたいと常日頃から思っているんだ」
「カズキ……」
「もちろん無理に言えと言っているわけじゃないけど、ね」
「……はい」
やはりカズキには適わないと、アリサはそう思いながらも彼の優しさに胸がいっぱいになった。
見つめあう2人、そうなれば自然と顔を近づけ口付けへと……。
「ところでカズキくん、ちょっと訊きたい事が……」
「…………」
まるで図ったかのようなタイミングで、エリックが倉庫の中へと入ってきた。
幸いにもキスをしようとした場面を見られる事はなく、カズキは慌てて彼女から離れ難を逃れる。
……彼に悪気はない、というよりどこでもイチャつくこの2人が悪いのだが、今のアリサにそんな正論は通用するはずもなく。
「――エリックさん、アラガミの中に置いてきてあげましょうか?」
「なんで!?」
それはもう素晴らしい笑みを浮かべ、アリサは冷たい言葉でエリックに対して死刑判決を告げる。
当然ながらエリックは驚愕しわけがわからないといった表情を浮かべるが、自分が無意識に空気を読まない行動(アリサからすればだが)をとった事に気づいていない。
「アリサ」
彼女の気迫に圧され、涙目になっているエリックに助け舟を出すカズキ。
「だって……」
「だってじゃないよ、というより今回は僕達が悪いさ」
「……エリックさん、命拾いしましたね」
物騒な台詞を残しながら、アリサは倉庫を出てジーナの元へ。
どうやらへそを曲げてしまったようだ、後で機嫌を直してやらねばと思いつつ、カズキはエリックへと問うた。
「それでエリックさん、訊きたい事ってなんですか?」
「え、あ、いや……いいのかい? なんだかわからないけど、アリサくんを怒らしてしまったようだし……」
「あー……いえ、エリックさんは何も悪い事はしていませんから気にしないでください。アリサなら後で僕から言っておきますから」
「そ、そうかい……や、今すぐにどうしても訊きたい事ではないのだけど……最近、エリナがゴッドイーターになると言い出してね……」
「……妹さんが」
「もちろん父は反対しているんだ、ただ……ボクは正直迷っている、どちらがエリナにとって大切な事かわからないんだ」
無論、家族としてなら反対しているに決まっている、エリックにとってエリナは大切な妹であり家族、失いたくないと思うのは当然であった。
しかし、ゴッドイーターとしてアラガミと戦っているからこそわかる事もある、それは――圧倒的なまでの人材不足である。
「ボクは兄として応援してやりたいという気持ちがある、ただね……かといって反対する気持ちがないといえば嘘になるんだ。こんな事を君に言っても迷惑なのはわかってはいるんだけど……同じ妹を持つ兄として、アドバイスが欲しいというか」
後輩であるはずのカズキに頼ろうとしているなど、情けない話だ。
ただそれでもエリックは自分だけの考えと感情では決めあぐねると思ったからこそ、カズキに問うたのだ。
それを聞いて、カズキは真剣な表情で暫しその場で考える。
――それから、数分が経過した頃、カズキはエリックに自分なりの答えを返した。
「――正直、僕も明確な答えを返すことは出来ません。エリックさんには申し訳ないんですが……」
「そんな事はないさ、ボクの方こそ君を困らせるような事を言ってしまっている。すまない」
「いえ、僕にも妹が居ますからエリックさんの気持ちはよくわかるつもりですよ。……そうですね、僕もきっとどっちつかずな態度しか出せないと思います」
「…………そう、か。いや、それは当たり前だね」
「でも、僕はきっと反対はしないと思いますね」
「えっ……?」
その言葉は、エリックにとって予想外のものであった。
反対はしない、家族である妹に死ぬかもしれない道を歩ませるというのだろうか……。
「エリナちゃんが自分の目と心で決めた事です、誰かに強制されたわけでもこうならなきゃいけないという強迫観念に囚われているわけでもない、自分がこうなりたいと決めた道なら僕は反対はしませんよ」
賛成もしませんけどね、そう言ってカズキは笑う。
「――こんな時代だからこそ後悔しないで生きて欲しい、もちろん死と隣り合わせの戦いに巻き込みたくないという気持ちはあります。失ってしまった事を考えれば……僕の答えは間違っているのかもしれません。
でも、この考えも僕が自分自身の意思で見つけた答えですからそれを変えるつもりなんて毛頭ありません、だけどこれはあくまでも僕の答えであってエリックさんの答えじゃありませんから」
「…………」
「エリックさんはエリックさんが辿り着いた答えを信じればいいと思います、他の誰でもない……エリックさん本人が辿り着いた答えなら、きっと後悔なんて生まれない筈だから」
「…………そう、だね。そうかもしれないね」
本当に、目の前の彼はまだ19の青年なのだろうかと、エリックは疑いたくなった。
この歳で明確な道と答えと考えを持ち、それに迷いを見せる事無く前を見据えて進んでいる。
自分にはとてもできないと、エリックは彼と自分の器の大きさの違いを思い知らされた気がした。
「ありがとうカズキくん、ボクもボクだけの答えを見つけられるように頑張るよ。エリナの為にも、ボク自身の為にもね」
「はい、兄としてお互い頑張りましょうね!」
「うん、可愛い妹を守れる立派な兄にならないとね!」
互いに笑みを浮かべ、カズキとエリックは軽く拳をぶつけ合う。
「――あら、男同士の友情って所かしら?」
その光景を、倉庫の外で見ながらジーナはぽつりとそう呟く。
なんとも微笑ましい光景ではないか、ジーナから見ても2人の仲の良さはとても美しく映った。
……しかし、先程から隣で頬を膨らましているアリサを早く何とかしてほしいとも思っているのはここだけの話。
「むぅ……エリックさん、なんだかカズキと仲が良すぎませんか……?」
「何を考えているか知らないけど、貴女の考えているような関係ではないのは確かね」
「まったくもぅ、恋人をほったらかしにして何をしているんですかカズキは……!」
あからさまに拗ねているアリサを見て、ジーナはおもわず苦笑を浮かべてしまう。
まだまだ子供っぽいものだ、こんな調子では恋人より上の関係にはなれないわねとジーナは思ったのだった。
「――カズキ、もっと私に構ってくださいよ!!」
「はいはい、わかってるよ」
「ははは、カズキくんは本当に人気者だね」
「エリックさんも邪魔しないでください!」
「えぇー……?」
(あらあら、青春ね………)
To.Be.Continued...
番外編でのエリックさんの存在感がハンパナイ件について。
いやー、番外編だからこそ他キャラが動かしやすくて楽しいです。
しかしどうもシリアスを混ぜたくなるのは何故でしょう……たまにははっちゃけたいものです。