神々に祝福されし者達【完結】   作:マイマイ

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―――運命の出会いというものは存在する

カズキとその少女の出会いは必然であり……この世界にとって、希望となるものであった。


捕喰8 ~アリサ~

――雨宮ツバキによって集められたカズキ達第1部隊。

 一体何が始まるんだろうな、コウタの話を聞きながら待っていると……ツバキが1人の少女を連れてこちらにやってきた。

 

「お前達、今から新しい仲間を紹介するぞ」

 

 そう告げるツバキ、すると彼女の後ろに居た少女が一歩前に出て、自己紹介を始めた。

 

「本日付けでこちらに配属になりました、アリサ・イリニーチナ・アミエーラと申します」

「…………」

 

 肩より少し下辺りで切り揃えられた白銀の髪、アクアブルーの瞳。

 頭には帽子を被り、へそが露出した学生服風の赤い服を着た美少女だ。

 

「女の子ならいつでも大歓迎だよ」

 

 無論、そんな美少女を前にしてコウタが黙っているわけもなく、そんな事を口走ると……。

 

「……よくそんな浮ついた考えで、今まで生き残れてきましたね」

 

 アリサという少女は、コウタに心底侮蔑したような表情を向けながら、そう言葉を返した。

 その冷たい瞳を受け、おもわず顔を引きつらせるコウタ。

 

「彼女は実戦こそ少ないが、演習では優秀な成績を残している。追い抜かれないように気を引き締めるんだな」

「………了解です」

「アリサ、お前は暫くリンドウの下に付け。それと――カズキ」

「はい」

「お前はこちらではアリサよりも先輩の新型だ、しっかりと面倒を見てやるんだぞ?」

 

 ツバキの言葉に、カズキはこくりと頷きを返す。

 

「よろしい。ではリンドウ、書類の引き継ぎがあるから、私と一緒に来い。

 それと、早速だがアリサにはこれからリンドウとカズキが行くミッションに出撃してもらうぞ?」

「了解しました」

「よし。じゃあ新入り、わりぃがミッションの受注しておいてくれ。

 俺もこっちの事が終わったらすぐに戻る、だからここで待機だ」

 

 そう言って、リンドウはツバキと共にエレベーターへと向かっていった。

 それを見送った後、視線を戻すと……コウタがアリサにナンパしていた。

 いや、そう言うと若干語弊があるが、コウタなりに親睦を深めようとしているようだ。

 しかし、アリサはそんなコウタを完全に無視し、カズキの元へ。

 

「……あなたが、この極東支部唯一の新型ですね?」

「うん……抗神カズキっていうんだ、よろしくねアリサちゃん」

 

 自己紹介をしつつ、握手するために右手を差し出すカズキ。

 それにアリサも応え握手を交わすが……何故か憮然とした表情を向けられてしまう。

 

「あの……ちゃん付けしないでもらえます?」

「あっ、ごめん……」

「……まあ、この人よりは真面目そうでよかったですけど、足は引っ張らないでくださいよ?」

 

 コウタに向かって暴言を吐きつつ、アリサはその場から離れる。

 

「………こぇぇー、けど可愛いよなあの子」

 

 さすがコウタ、初対面で貶されてもあまり気にした様子はない。

 

「けど、ちょっと高飛車な子ね。大丈夫かしら?」

 

 サクヤも、アリサの態度に苦笑を漏らす。

 悪気があるようには見えないのだが、どうも新型故にエリート意識が強いようだ。

 

「まあ、あの子の事はカズキに任せるとして……」

「えっ?」

 

 サクヤの言葉に、おもわず視線をそちらに向けるカズキ。

 

「随分あの子の事、ずっと見てたじゃない? ――もしかして、一目惚れでもしたのかしら?」

「ええっ、マジかよカズキ!?」

「あっ、いや……そういうわけじゃないよ。ただ……」

「ただ?」

「…………」

 

 確かに、サクヤの言う通りアリサをジッと見つめていたのは認める。

 しかし、カズキはそんな理由で見ていたのではなく……。

 

「――ローザに、どことなく似てるから」

 

「えっ……」

「……そういえば、髪とか瞳の色とか、そっくりだよな?」

 

 サクヤは一度キョトンとするが、カズキの家族が写った写真を見た事があるコウタは、その言葉に反応を返す。

 ……そう、似ているのだ。

 あのアリサという少女が、カズキの義妹のローザに。

 

「ローザって……」

「カズキの義理の妹さんですよ。……前に、アラガミに殺されちゃったみたいですけど」

「あっ……」

「気にしないでくださいサクヤさん、もう八年も前の事ですから。

 ――だから、雰囲気が似ているからつい視線を向けただけで、別にそういう理由で見ていたわけじゃないんです」

「……ごめんなさい、無神経な事を言って」

「ですから、気にしなくても大丈夫ですよ」

 

 それじゃあ、ミッションの準備をしないといけないんで。そう言ってカズキはその場から離れる。

 

「……あいつ、口ではああ言ってるけど……まだ後悔してるんですよ。

 自分が神機使いなら、きっと両親や妹を助けられたって」

「…………」

 

 去っていくカズキの背中を見つめるコウタとサクヤ。

 その背中は、心なしか物悲しそうに見えていた……。

 

 

 

 

 

 

――旧市街地エリア。

 

 

 今回は、ここでシユウというアラガミの討伐ミッションだ。

 シユウというアラガミはアラガミの中では珍しい人型であり、背中に巨大な両腕羽を生やした素早いアラガミだ。

 その逞しい両腕羽を生かした滑空攻撃や、掌にある穴から巨大なエネルギー弾を放つなど、近遠共に隙が少ない。

 今回、カズキは初めてシユウと戦う。

 若干の緊張を胸に抱きつつ、カズキはアリサと共にリンドウの到着を待った。

 

「よぉ、待たせたな」

 

 程なくして、愛用のチェーンソー状のロングタイプの神機――ブラッドサージを担いだリンドウが、現れた。

 相変わらずの軽い調子に、ほんの少しだけ緊張が解れる。

 

「今日は新型2人との共同任務か……まあ、足を引っ張らないようにするから安心してくれ」

「何言ってるんですかリンドウさん……」

 

 自分、いや自分達より遥かに強く経験も多いリンドウが、足を引っ張るわけがない。

 これは彼なりの冗談で、まだまだ一人前ではない自分達をリラックスさせる為の言葉だとわかり、つい苦笑する。

 ――だが、彼の冗談を聞いたアリサは暴言に近い言葉を彼に向かって放った。

 

「――旧型は、旧型なりの仕事をしていただければいいと思います」

「なっ……」

 

 その言葉には、「旧型なんだからあまりでしゃばらない方がいい」という意味が込められている。

 いくらなんでも、その言い方はあまりにも失礼であり、また傲慢さに溢れたものだ。

 おもわず注意しようと思ったカズキだったが。

 

「ははっ、まあ気楽にやらせてもらうさ」

 リンドウはまったく気にした様子もなく笑い、何気なくアリサの肩に手を置き。

 

「キャア!!」

 瞬間、アリサは本気の悲鳴を上げリンドウから飛び退いた。

 

「………あーあ、随分と嫌われたもんだな」

 

 その反応にさすがに驚くリンドウだが、すぐさまいつもの調子に戻り呟きを漏らす。

 

「あ、いえ……大丈夫です、すみません……」

 

 何故かアリサも不思議そうな表情を浮かべつつ、取り繕う。

 

「緊張してるみたいだな……。そうだアリサ、そういう時は空を見ろ。

 そして動物に似た雲を探すんだ、そうすれば落ち着くぞ。

 それを見つけたら俺達の所に合流しろ、それまでは動くなよ?」

 

 そう言うやいなや、リンドウはカズキを連れて旧市街地に向けて歩を進める。

 

「ちょ、なんで私がそんな事を――」

「いいから探せ、これは命令だぞ」

 

 アリサに視線を向けずにそう言い放つリンドウ。

 すると「なんで私が……」という文句が後ろから聞こえてきたが、どうやら言われた通りに探しているようだ。

 アリサを一瞥してから、カズキも戦場に降り立ち、リンドウと共に旧市街地を歩く。

 

「……あの子な、ちょっとワケありらしい」

 そんな中、リンドウはぽつりと口を開いた。

 

「えっ?」

「さっき言ったように成績は優秀なんだが、精神が不安定らしくてな……まあ、こんな時代だからまともな人間の方が少ないもんさ。

 だからよ、今みたいな発言も……許してやってくんねえか?」

「…………」

「お前、俺の為に怒ろうとしただろ? お前さんは顔に出るタイプだからすぐにわかる。

 けどよ、あの子は定期的に主治医にメンタルケアを受けるくらいなんだ、だから……ちょっとは大目に見てやってくれ」

「…………はい」

 

 別に、自分に対してならいくら言われようとも構わない、先程の「足を引っ張るな」発言だって、別段気にしてはいない。

 だが……。

 

「……妹に似てるから、つい感情的になってるのかもしれません」

「んん?」

「彼女……似てるんですよ、死んだ妹に……」

 

 言いながら、カズキはリンドウにロケットペンダントを見せる。

 

「……こいつは、確かに似てるな」

「ローザが生きてたら、ちょうどアリサちゃんくらいの年齢だから、余計にそう思ってしまうのかもしれません」

「…………」

 

 その言葉に、リンドウも返答に困ってしまう。

 自分にもツバキという姉がいる、だが彼には……家族と呼べるような存在はいないのだ。

 アラガミによって殺され、孤独になった彼に……妹に似たアリサの登場は、感情的になってしまう要因になるのは仕方のない事かもしれない。

 

「でも、彼女はローザじゃない。それはわかってますから安心してください」

 

 明るい口調でそう告げるカズキ、だからリンドウもそれ以上は何も言わなかった。

 ――程なくして、アリサがこちらへとやってくるのが見えた。

 それに手を振りながら――カズキは何気なく崩壊した教会へと視線を向け。

 

「っ、アリサちゃん!!」

 

 叫びながら地を蹴り、アリサの元に走る。

 教会の屋根の上に立つ、巨大な人型の生物――シユウが、上空からアリサを捕喰しようと迫り。

 

「きゃっ!!」

「がっ、ぅ―――!?」

 

 アリサの悲鳴と、カズキの呻き声が同時に響いた。

 

「新入り!?」

「なっ――!?」

「ぐっ、ぁ……」

 

 カズキの身体に生まれる、三条の爪痕。

 シユウの両腕羽に付いた爪により傷つき、鮮血が舞った。

 顔をしかめながらもカズキは足に力を入れ、右手で持った神機を横に振るう。

 新しくリッカに作ってもらったショートタイプの刀身パーツ――冷却ナイフがシユウの左の翼に食い込む。

 

「グゥゥゥ……!」

 

 呻き声を鳴らしながら、シユウは右の翼でカズキを吹き飛ばそうとし。

 

「そうはさせねえよ!!」

 

 その翼を、リンドウによって斬り飛ばされてしまった。

 その隙にカズキは剣をシユウの翼から抜き取り後ろに跳躍、着地する前に銃形態へと変形させ相手の頭目掛けて弾丸を連射。

 

「オラァッ!!」

 

 弾丸を受け怯んだシユウの足元に踏み込み、裂帛の気合いと共にリンドウの斬撃が繰り出される。

 

「グァァァッ!!?」

 その一撃はシユウの右脚に深々と突き刺さるが……決定打にはなり得ない。

 

「やあっ!!」

 

 そんな中、シユウの背後に迫ったのは――アリサ。

 跳躍し、赤い刀身――アヴェンジャーがシユウの頭部を捉えた。

 

「ぐっ………!」

 

 再び神機を剣形態へ、しかし先程の一撃で激痛が走る。

 それを無理矢理噛み消して地を蹴り、怯むシユウに向かう。

 

「アリサちゃん、どいて!!」

「っ」

 

 声を聞き、慌ててシユウから離れるアリサ。

 刹那、カズキは跳び上がり……刀身をシユウの頭に突き刺す―――!

 

「グ、ガ………」

 

 人間ならばこれで終わりだ、しかしアラガミであるシユウは頭を刺したところで死にはしない。

 だから、カズキは両足をシユウの身体に乗せ剣を持ち替える。

 

「ぬっ―――あああぁぁぁっ!!!」

 

 そして、それを力任せに下へと刺し降ろした!!

 頭部は二つに裂け、斬撃はシユウの身体半分まで届き……。

 カズキが剣を抜くと同時に、シユウの身体は塵にまみれた地面に倒れ込んだ……。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 肩を大きく動かしながら、神機を捕喰状態に変形させようとするカズキ。

 

「ちょっと待て新入り、お前はちょっと休んでろ」

 

 しかしリンドウに肩を叩かれ、代わりに彼がシユウのコアを回収した。

 

「――――、ぁ」

 

 これでミッションは終わりだ、そう思った瞬間……カズキはその場に座り込んでしまう。

 

「おい、大丈夫か?」

「は、あ……大丈夫、です」

 

 傷は決して浅くない、出血も止まらないが……ゴッドイーターの身体なら死にはしないだろう。

 

「減点だな。アラガミに気づいたまでは良かったが、身体を張らずに装甲を展開すりゃあ怪我はしなかった。

 ちょっとは強くなったが、まだまだ甘いぜ新入り」

「はは……すみません」

 

 手厳しい、だがその通りなので頷く事しかできない。

 ――ふと、アリサと目が合った。

 

「……アリサちゃん、大丈夫だった」

「………ええ、大丈夫です」

 

 ばつが悪そうに顔を逸らすアリサ。どうやらあまり素直な性格ではないようだ。

 痛みに耐えつつ、立ち上がる。

 

「それじゃあ、そろそろ帰りましょうか?」

「だな。だが新入り、今後は無理するんじゃねえぞ?」

 

 わかっています、そう返しつつカズキは歩き出す。

 ズキズキと痛む身体を抑えながら歩いていると、カズキは後ろからアリサに話しかけられた。

 

「あ、あの……」

「………?」

「……一応、お礼は言っておきます。ですが、別に次は助けなくてもいいですから」

「…………」

 

 それだけを言うと、さっさと先に進むアリサ。

 ……どうやら、遠回しなお礼を言われたようだ。 

 なんとも素直じゃないお礼だ、おもわず苦笑して……痛みで顔をしかめた。

 

「……こりゃまた、仲良くなれそうじゃねえの?」

「どう、ですかね」

 

 まあ、少しずつ仲良くなっていければいいだろう。

 ……そして、妹の姿に重ねるのもやめなくては。

 

 

 

 

To.Be.Continued...

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