神々に祝福されし者達【完結】   作:マイマイ

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うーむ、GE2が出ない現状ではなかなか伏線が張りづらい……。


番外編6-⑧ ~飲み干す悲しみ~8

――火球が地面に着弾し、爆発が起こる。

 

「カズキーーーーーーッ!!!!」

 

 上手く動かせぬ身体を恨みながら、アリサは大声でカズキの名を呼んだ。

 まともに受けてしまった、あれではいくらカズキとて……最悪の未来を想像したアリサであったが、着弾付近から転がって移動するカズキを見ておもわずその場で座り込んでしまう。

 

「はあ……はあ……はあ……」

 

 間一髪、無理矢理身体を動かして情けなく転がりながらも、カズキはどうにか自身の命を繋ぎ止める事に成功した。

 しかし状況が最悪なものである事に変わりはない、依然として身体は鉛のように重く神機をまともに振るうことすらできない。

 まるで無力な子供と同じ、このままでは絶対にこの場から生き残ることは叶わないのは明白。

 自分だけではない、守るべき妻であるアリサの命すら目の前で不動のまま自分を見つめているヘラに奪われてしまう。

 

(どうすればいいんだ……!)

 

 相手が何かをしたのは間違いない、あの声になっていない叫びを聞いた瞬間に身体の変調に襲われたのだ。

 だが今のカズキ達にそれに対する対処法は思いつかない、そもそも原因がわからないというのにどうやって対処すればいいというのか。

 

――アラガミが近づいてくる。

 

 もはや手負いの獲物であるが故か、まるで少しずつ追い詰めるかのようにその歩みは遅い。

 それに怒りや悔しさを抱きながらも、今のカズキには迫るヘラを睨みつける事しかできなかった。

 

(――やられる、のか?)

 

 明確な死という未来、それが限りなく現実味を帯びてくる。

 撃退する事も退避する事もできず、けれどせめてアリサだけは生き残らせようと、カズキは重い身体を何とか動かそうとして。

 

「ガッ……!?」

「えっ!?」

 

 唐突に聞こえた、ヘラのくぐもった悲鳴。

 一体どうしたのかと、カズキもアリサもそちらに視線を向け――目を見開いた。

 

「お兄ちゃん、お姉ちゃん、大丈夫!?」

『ローザ……!?』

 

 場に現れた一人の神機使い、それはカズキの妹であるローザであった。

 右手に開発されたばかりの新武装『チャージスピア』を握り締め、カズキの命を奪おうとしたヘラの身体に一文字の傷を刻んでいる。

 そのままローザは2人の前に立ち、ヘラと対峙した。

 

「どうしてここに……」

「ロシア支部に向かってるって言ったでしょ? その途中でさっき言った変なアラガミの気配がお兄ちゃん達に近づいてるのがわかって、途中でヘリを降りてこっちに来たの」

「……ローザは、なんともないんですか?」

「えっ? アリサお姉ちゃん、それってどういう――」

 

 

「――――――――――――!!!!」

 

 

「ぐっ!?」

「うぁ……!?」

 

 またしても場に響くアラガミの不可思議な雄叫び。

 カズキとアリサはより重くなった身体を支えられずその場で座り込み、ローザもまた混乱しながら自分の身体の変調を思い知った。

 

「なにこれ……身体が……」

「ローザ、どういうわけかわからないけどあのアラガミには特殊な能力が備わってるみたいなんだ。さっきから身体が重くて……神機も使えなくなってる!!」

「……成る程、お兄ちゃん達がこんな程度のアラガミに追い詰められたのはそういうわけか。それにこんな不思議な能力があるなら変な気配を持っていてもおかしくないよね」

 

 身体の変調をしっかりと感じ取っているというのに、ローザの口調に焦りの色はない。

 ヘラがゆっくりとローザに向かっていく、けれどローザの浮かべる表情は……笑みであった。

 

「――悪いけど、ローザは一時期完全なアラガミになってるの。神機使いとしての能力はお兄ちゃん達に敵わないけど……アラガミ能力なら、お兄ちゃん達より上手に使えるのよ!!」

 

 刹那、カズキとアリサはローザの体内に存在するオラクル細胞が急速に変化していくのを感じ取る。

 今この場で進化をしているのだ、ヘラの特殊な能力を無効化するためにローザのオラクル細胞が適応しようと変化している。

 それに気づいたのか、ヘラは先程までのゆっくりとした動作を止め、確実にローザの命を奪おうと地を蹴った。

 

「……残念でした。ちょっと遅かったね」

 

 勝ち誇るようなローザの呟き。

 瞬間――彼女は全力で地を蹴り一息でヘラとの間合いを詰め、その身体にスピアの一撃を叩き込んだ。

 完全なる不意打ちにヘラは対処できず、ローザの一撃はアラガミの頑強な肉体を易々と貫き肉を抉り取っていく。

 

「はあああああ…………はっ!!!」

 

 そのままローザはスピアに力を込めていき、チャージスピアの最大の一撃である『チャージグライド』の体勢に入る。

 ガシャン、という機械音を響かせながらスピアが変形していきそして――ローザは自分の数倍はあろうヘラの身体を力ずくで吹き飛ばしていった。

 もちろん刀身はヘラの身体を貫いたまま、ローザはチャージグライドの破壊力でヘラを数メートル吹き飛ばし……その威力に負け、その身体に尋常ではない大穴を開けた。

 刀身をヘラの身体から抜き、素早く離れるローザ。

 

「終わり」

 

そこから神機を捕喰形態に変形、冷たい瞳でアラガミを見つめつつ……その身体を文字通り“喰らい尽くした”。

 

「ふう……」

 

 アラガミの痕跡が完全に消え、戦いの終わりを告げるように大きく息を吐き出すローザ。

 その後すぐさまカズキ達の元に駆け寄り深い傷を負っているカズキをゆっくり立ち上がらせる。

 

「お兄ちゃん、もう少しの我慢だからね」

「あ、ああ……ありがとう」

「私も手伝います!」

 

 反対側に駆け寄り、ローザと同じようにカズキの身体を支えるアリサ。

 

「……でも、あのアラガミのあの力は一体何だったんだ……?」

「ローザはあれを無効化できたみたいですけど……どうやったんですか?」

「うん、博士みたいに上手く説明はできないけど……あのアラガミがね、ローザ達のオラクル細胞を封じ込める……というか、弱体化? じゃなくて、うーん……」

 

 言葉を選びながら説明しようとするローザだが、やはり口で説明するのは難しいのか明らかに困っている。

 結局よくはわからなかったものの、あのアラガミが自分達のオラクル細胞になんらかの悪影響を与えたのだという事は理解できた。

 

「だからローザはあの場でオラクル細胞を人為的に操作してあのアラガミの能力を中和させたって事?」

「うん、多分…そうだと思う。ごめん……上手く説明できない」

「大丈夫だよ。ローザを見てある程度の対処法は理解できたから、それよりも…最近アラガミ達に統率がとれているのも、あの特殊なアラガミの仕業なのかな?」

「どうなんだろ? ローザはなんとなくだけどそうとは思えないなあ……」

「どうして?」

「えっと……また上手く説明できないけど、何となく違うかなって……」

 

 要領を得ないローザの言葉、しかし彼女は自分達よりもアラガミ能力に優れている。

 何か彼女にしかわからないものを感じ取ったのかもしれない、現にあのアラガミの能力を対処法を独自に見つけたのだから。

 現状ではこれ以上の情報は得られない、とにかく今はロシア支部に戻ろうという結論に達し、3人はその場から離れようとして。

 

――突如として、何の前触れもなく、“人間の少女が空から降ってきた”。

 

「――――」

「え……」

 

 突然の事態に、3人は呆けた表情のまま固まってしまう。

 目の前に現れた灰色の短い髪と瞳を持った人間の少女、否……“ソレ”を人間と呼んでいいのだろうか。

 

 衣服は何も身につけてはおらず、初めて会った時のシオのように身体に布切れを巻いているのみ。

 けれど右手には見覚えのある物体、アラガミを討伐するために必要な神機を握り締めており……その全身は、血のように赤黒い。

 そして何よりも――目の前の存在の背中には本来人間が持っているべきではないモノ、大きな腕のような翼が生えているのは一体どういう事なのか。

 

(シユウの……両手翼?)

 

 そう、それはまさしくシユウの両手翼であった。

 人間の身体に生えるあまりにもアンバランスな存在は、少女の異常さを物語っている。

 しかし突如ゴキゴキという音を響かせ、初めから存在しなかったかのように背中の両手翼が消えていく。

 唖然とする3人、すると少女の灰色の瞳が初めてカズキ達を捉え。

 

―――お前達、ウマソウダナ。

 

 くぐもった声でそう言って、口元に冒涜的なまでの恐ろしさとおぞましさを感じさせる歪んだ笑みを、浮かべた。

 

「お姉ちゃん、お兄ちゃんを連れてここから離れてええぇぇぇぇぇぇっ!!!」

 

 叫ぶように告げ、ローザは一瞬で正体不明の少女へと吶喊する。

 右手にはしっかりと神機を握り締め、加減など微塵も感じさせない必殺の突きを放ち……甲高い音が、辺りに響いた。

 

「……お前から、食われるか?」

「くっ!?」

 

 ローザの渾身の一撃は、少女が持つ神機によって呆気なく防がれた。

 しかも片手で、端から見ると添えているかのような力加減で完全に防いでいた。

 

「あっ……!」

「――イタダキマス」

 

 左手でスピアの刀身を掴み、力ずくでローザを自分へと引き寄せる少女。

 そして、愉悦の表情のまま口を開き、彼女の頭部を喰らおうと――

 

「あああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

「…………」

 

 喰らおうとして、叫びながら吶喊してきたアリサの蹴りを受け、少女は僅かに後退する。

 すかさず踏み込み上段からの斬撃を放つアリサ、相手はまだ身構える準備を終えていない。

 

「――――」

「……強いな、お前も」

(全然効いてない!?)

 

 だが、彼女の斬撃は少女の神機によって防がれてしまう。

 ゴッドイーターとしてだけではなく、アラガミ化を果たしているアリサの筋力は常人のそれを遥かに上回っている。

 彼女が本気で蹴りを放てば、鋼鉄すら粉砕するほどの破壊力を秘めているというのに、まともにそれを受けた少女にダメージは無かった。

 異端、と呼ぶにはあまりにも常軌を逸している、人間にもアラガミにも見えない少女にアリサは恐怖感を覚えた。

 

「だけど勝てない、残念だ……誰もボクを楽しませられない、食糧にしかならない」

「何を……」

「でもお前達は美味そうだ、だから――ボクは嬉しい」

「っ!?」

 

 少女がそう告げた瞬間、アリサは腹部に衝撃と激痛を感じ取る。

 視線を下に向ける、すると……少女の左腕が自分の腹部を貫いているのがわかり……口からポンプのように吐血した。

 

「お、お姉ちゃん!!!」

「――――」

「……うん、美味いな」

 

 左腕を抜き取り、付着した血を丁寧に舐め取る少女。

 アリサはそのまま地面に崩れ落ち、少女は神機を捨て右手で倒れたアリサの髪を乱暴に掴み上げる。

 

「このっ!!」

「邪魔だ、お前は後で喰ってやるから」

 

 アリサを助けようと向かってきたローザを、左手で殴り飛ばす。

 

「ぐ、ぁ……」

「今日はご馳走が食べられる、運が良かった」

 

 嬉しそうに呟き、少女は口を開く。

 人の姿をしておきながら人を喰らう事に何の躊躇いもなく、事実少女はアリサ達を食糧としか見ていない。

 

「イタダキ――――んん?」

 

 少女の動きが止まる、アリサから視線を外し……向けた先には、自分を射殺すばかりの勢いで睨みつけているカズキの姿があった。

 大怪我を負っていたので少女はカズキの事を後回しにしていたのだが、彼の尋常ではない雰囲気に圧され気がつくとアリサを放し意識を彼へと向ける。

 

「お前から喰ってほしいのか?」

「…………」

「――強いなお前、この2人よりずっと」

 

 そこで、少女の言葉は途切れた。

 

「!!?」

 

 腹部に衝撃、カズキによって膝蹴りを叩き込まれたと少女が理解した時には、既に彼によって後頭部に肘鉄を叩き込まれ更に回し蹴りによって吹き飛ばされていた。

 

「カ、カズキ……」

「お、お兄ちゃん……」

「――絶対に許さないぞ、お前は!!」

 

 上半身から血を流し地面を赤く汚しながらも、カズキの闘志は微塵も衰えず少女に向かって身構えている。

 地面に倒れていた少女が起き上がる、口からは血を流していたが表情に苦悶の色は微塵も見られない。

 ただ……カズキを見て驚いたような顔になっていた。

 

「……お前、この力は」

「貴様は一体何者だ、どうして人間でありながらこんな事を……」

「人間? 違うよ、ボクは人間じゃない。ただこの姿だと食糧が自分からやってくるから都合がいいだけ、お前も……人間じゃないだろ?」

「…………」

「さっきの女の蹴りも痛かったけど、お前の蹴りの方がずっと痛かった。……嬉しい、な」

 

 少女の姿が消える、一瞬でカズキの懐に入り込みアリサと同じように身体を貫こうと右腕を突き出す。

 だがカズキは左手を動かし少女の腕を掴み上げ、引き寄せると同時にその身体へ渾身の蹴りを射ち込んだ。

 再び吹き飛んでいく少女、それを追いかけカズキは右足による蹴り上げで少女を上空へ。

 

 跳躍と同時に左腕のオラクル細胞を変形させつつ、少女の真上に移動。

 スサノオの剣状の尻尾に変形させた左腕を振り下ろし――少女の姿が消えると同時に、真上から衝撃が走りカズキは勢いよく地面に叩きつけられた。

 

「ぐっ……」

「……同じ能力、ボクと同じ力を持つのか」

 

 そう言いながら降りてきた少女の背中には、初めてこの場に現れた時と同じように背中にシユウ種の両手翼が生えていた。

 

「やっと会えた……やっとだ、ボクと同じ存在……ボクのモノにしないと。絶対に」

「何を……」

「お前は……君はボクのモノだ、誰にも、誰にも渡したくない……誰にも渡さない!!!」

 

 うわ言のように呟きながら、少女が再びカズキに向かっていく。

 身構えるカズキ、そんな彼の視界の隅に何かが飛んでくる光景を捉えた。

 半ば無意識の内に右手を伸ばし飛んできたそれを掴むカズキ、それはローザが投げた彼の神機だった。

 

「お兄ちゃん、こいつをここで倒さないとダメな気がする! お願い!!!」

「っ、わかってる!!!」

 

 躊躇いは、確かにある。

 見た目は自分達と同じ人間、そいつに対して神機を振るう事に些かの抵抗があるのは仕方ない事だと言える。

 だが躊躇う事は間違いだ、目の前の存在は“今ここで絶対に倒しておかなければいけない存在だと本能が訴えかけているのだから”。

 

 鬼神の如し気迫を全身から溢れさせ、カズキは残り全ての力を神機を込めていく。

 ギシギシと神機の柄が悲鳴を上げ、今にもひしゃげてしまいそうな程の力が込められ、カズキの視線は向かってくる少女だけを捉える。

 体内のオラクル細胞を無理矢理活性化させバースト化、今の彼が行える最大の一撃が今まさに繰り出されようとしていた。

 

「お前は……ボクのモノだ!!!」

「――僕は、お前のモノにはならない!!!」

 

 仕掛けたのは同時、少女の拳とカズキの神機がぶつかり合い――

 

――彼の斬撃が、少女の右腕を肩ごと斬り飛ばした。

 

 

 

 

To.Be.Continued...




次回はロシア編は終わりになります、長かった……。

次は……リクエストにあったスパイラルフェイト編になりますかね?
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