神々に祝福されし者達【完結】   作:マイマイ

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お待たせしました、番外編第九弾です!!


番外編9 ~戦乙女を支える者達~

――アナグラの訓練場にて、風切り音が響き渡る。

 

 ホログラムのアラガミを美しく倒しているのは、新武装“チャージスピア”を携える少女、ローザ。

 迫る標的、ヴァジュラの攻撃を避けつつ、確実に部位を狙い破壊していく。

 

「……すごいっすね、彼女」

「うん、もう新武装を殆ど使いこなしてる。さすがカズキ君の妹ってところかな」

 

 それを見ながら演習のデータを収集している技術部の男とリッカは、彼女の動きにただただ感嘆の意を見せる。

 新武装であるチャージスピアは、欧州支部でもまだかろうじて運用が開始されたばかりの新しい武装である。

 今までのブレード型とは基本概念も運用方法も違う、よって今の所この極東支部でも手探り状態なのが現状であった。

 

 しかしローザはいまだ安定した運用ができないチャージスピアを、従来のブレード型と同様近くまでの運用を見せ付けてくれている。

 彼女のおかげでチャージスピアの運用実績が向上していると言っても過言ではなく、この演習で得られるデータの価値は大きい。

 これならば数年は掛かるであろう完全な運用も、格段に短い時間で完成まで辿り着けるかもしれない。

 

「でも今の所、ああやって比較的安全に使えるのはローザだけだろうね。“普通”の神機使いが十二分に使いこなすまではまだまだ道のりが長すぎるよ」

「彼女のアラガミ能力……あらゆる神機を扱う能力があるからこそ、まだ完全な運用ができないチャージスピアすら使えるんですよね?」

「初めにあの武装を開発した欧州ですらまだ実戦運用まで至ってないからね、ホント……ローザの能力には恐れ入るよ」

「他の神機使いもあんな能力があればいいんですけどね……」

「ストップ、ローザだって好き好んであの能力を手に入れたわけじゃない。それはカズキ君やアリサも同じだよ?」

「……すみません」

 

 話している間に、ローザはヴァジュラのマントをスピアの突きによって結合破壊を引き起こしていた。

 次で決める、後ろに跳躍しながらローザはスピアをチャージモードに移行させる。

 神機が光り輝き力が溜まっていく、しっかりとアラガミへと照準を合わせ――ローザは一気に力を解き放った。

 

「――射ち貫いて!!」

 

 瞬間、ローザの姿が消え――スピアの切っ先がヴァジュラの頭部を文字通り貫き粉砕していた。

 まさしく必殺の一撃、風穴を開けたヴァジュラのホログラムが消えていく。

 

「――うん。お疲れ様ローザ、演習はこれで終わりだよ」

「お疲れ様でした!」

 

 リッカ達に挨拶をしてから、ローザは自分の神機へと視線を向ける。

 

“いつもローザに付き合ってくれてありがとう、今日も頑張ったね”

 

 心の中で労いの言葉を神機に送るローザ。

 神機はただの戦う道具ではない、自分達と同じ生きている存在だからこそ、ローザは最大限の感謝を送る。

 優しく微笑み、ローザは演習場を後にした。

 

「あ、おーい!」

 

 エントランスロビーへと赴いたローザ、そこで彼女は今から任務に向かおうとしている者達の元へと駆け寄っていく。

 

「んー? あっ、ろーざ!」

「やあ、ローザくん」

 

 ローザの姿を見て、ラウエルはふよふよと漂いながら彼女へと抱きつき、エリックはにこやかな笑みを見せる。

 抱きついてきたラウエルをしっかりと抱き留めながら、ローザはエリックへと問うた。

 

「これから任務なの?」

「ああ、第八ブロックのアラガミ装甲壁が更新されるんだが、他のみんなはちょっと出払っててね。ボクとラウエルが哨戒任務に就く事になったんだ」

「ラウエルもがんばってるんだぞー!」

「うんうん、えらいえらい」

 

 ラウエルの頭を優しく撫でる、すると彼女はにへらっと緩んだ笑みを見せた。

 

「だったらローザも手伝うよ!」

「えっ、いいのかい?」

「うん、演習も終わったし今日は他の任務もないから大丈夫!」

「わーい!」

「……ならお願いするよ。けどあまり無理はしないでくれたまえよ?」

「大丈夫大丈夫、ローザは頑丈なんだから!」

「…………そういう意味で言ったわけではないのだけれどね」

 

 ローザはすぐ無理をする、何度か共に任務をこなしてきたエリックはそれをよく知っていた。

 彼の妹らしいと言えばそれまでかもしれないが、かといって無理をさせてしまえば元も子もない。

 ただでさえ彼女はこの極東支部のみんなの為に何にでも一生懸命になっているのだ、その負担は計り知れない。

 

(同じ“妹”だからか、どうしても気になってしまうんだよな……)

「ねえエリックお兄ちゃん、最近エリナちゃんと会えてないんだけど元気?」

「えっ……あ、ああ……いつも通り元気だよ」

「また一緒に遊びたいから、伝えておいてくれる?」

「もちろんさ。……ありがとうローザくん、妹の相手をしてくれて助かるよ」

「だってエリナちゃんは大切な友達だもん!」

「ローザ、ラウエルはー?」

「もちろんラウエルだって大切な友達だよ!」

「えへへー」

 

 じゃれ合うローザとラウエルに、エリックは自然と優しい笑みを浮かべていた。

 本当にこの子は強い、自分の境遇に嘆く事なく今を懸命に自分らしく生きている。

 ……いつか妹のエリナもゴッドイーターになるだろう、悩んだエリックであったが…結局彼は妹の目指そうとしている道を応援する事に決めた。

 

 だがきっと大丈夫だという確信めいたものが彼にはあった、その根拠は目の前に居る彼女達の存在だ。

 ローザという大切な友達、彼女が居ればエリナも自分のようにこの生と死が渦巻いている世界の中でも生きていられる。

 ゴッドイーターとして、戦えぬ者達を守護者となってくれる。エリックはそう信じていた。

 

(だからこそ、ボク達はそんな彼女達を守れるように強くならないといけないんだ)

 

 いつか自分と同じ道を歩む事になる妹の為に、そんな妹を友として支えてくれる強く気高い戦乙女の少女の為に。

 今日もエリックは華麗に戦い、ゴッドイーターの道を歩み続けていくのだ。

 

――そうこうしている内に、アラガミ装甲壁付近まで辿り着いていた3人。

 

 これから任務だ、いつアラガミが来ても対処できるようにしなければと、エリックは自然と神機を持つ手に力を込め。

 

「――――」

「? ローザくん、どうかしたのかい?」

 

 急に立ち止まり、表情を険しくしたローザの姿に気がついた。

 エリックとラウエルも立ち止まり、彼女へと視線を向ける。

 しかし彼女からの反応はなく、一体どうしたのかと思った瞬間。

 

「……なにこれ、今まで感じたことがない偏食場……新種のアラガミなの?」

「ローザくん、一体どうしたんだ?」

「ローザー?」

「いけない……このままじゃ装甲壁に向かっちゃう!!」

 

 そんな呟きを零した瞬間、ローザは突如として進行方向を変え駆け出してしまう。

 

「ローザ!?」

「ローザくん、どうしたんだ!?」

 

 2人の声にもローザは反応を返さない、そうしている内に彼女の姿はどんどん小さくなっていった。

 何があったのかはわからない、しかしこのまま彼女を1人にしておくわけにはいかないと理解したエリックは、ラウエルへと指示を出してから彼女の後を追った。

 

「ラウエルくん、とりあえず君はアナグラの方に支援要請を送っておいてくれ。通信機の使い方はわかるね!?」

「お、おー……わかった!」

「頼むよ!!」

 

 全速力で駆け出す、だが既にローザの姿は見当たらない。

 

(彼女が走った先には確か第八ゲートがあった筈……とにかくそっちに向かってみよう!!)

 

 

 

 

「――――いた!!」

 

 一方、ローザは第八ゲートを抜け、外へと飛び出していた。

 彼女が何故外へと出たのか、それは……彼女の眼前に存在するアラガミを見れば自ずと理解できる。

 

 彼女はアラガミ能力を用いてこの極東支部、今まさに更新しようとしている第八アラガミ装甲壁へと向かってきているアラガミを察知、突破される前に倒してしまおうと一目散に外へと出たのだ。

 幸いにもアラガミはローザを感知していない、奇襲を仕掛けるには充分だと思いつつローザはチャージスピアの柄を強く握り締めた。

 

(けどあのアラガミ……たぶんデータベースにないアラガミだ)

 

 感知した偏食場はローザの知らないものであった、そしてアラガミの姿も初めて見る形であった。

 前に『ノルン』のデータベースで閲覧したワニという生物をそのまま大型化させたような姿、そして背中にはタービンのようなものが備わり時折回転している。

 びっしりと張り巡らされた鱗は見るからに強固そうであり、身体の大きさからするとパワータイプのアラガミのようだ。

 

“多分移動スピードは遅い、でも新種だからまずは遠距離のバレットで弱点を探る……!”

 

 神機を銃形態へと変形、すかさず銃口を新種アラガミへと向け撃ち放つ。

 

「まずは……火属性!!」

 

 六発の火属性が込められた弾丸が、吸い込まれるように新種アラガミへ全弾命中。

 しかし、新型アラガミは僅かに呻き声をあげるものの殆どダメージが通っていないように見える。

 

「じゃあ次は……!」

「ガアァァァァアァァッ!!」

 

 ローザが次の攻撃をする前に、新種アラガミが彼女に向かって大口を開けながら突進攻撃を仕掛けてきた。

 ドスドスとその巨体に似合わず速いスピードで接近してくるが、距離もあるので充分回避できるレベルだ。

 冷静に相手の動きを見ながら真横に回避するローザ、すぐさま反撃に移ろうとして――新型アラガミが突如として方向転換、ローザの眼前に相手の大口が迫る。

 

「っ、きゃ……!?」

 

 間一髪、驚愕しながらも反応したローザは転がるように横へと移動したおかげで、アラガミの攻撃を回避する事に成功。

 すぐさま起き上がり相手との距離を把握しつつ、ローザは内心驚愕していた。

 

“あの巨大な尻尾でブレーキをかけて、死角からの攻撃……遅い機動性をあれでカバーしてるんだ”

 

 ならば……と、ローザは神機を剣形態へと変形させ、スピアのチャージを開始した。

 

“あの尻尾を破壊すれば機動力が更に落ちる筈……チャージスピアなら、貫ける!!”

 

 一撃による貫通力や突破力ならば、チャージスピアは従来のブレード型よりも優れている。

 チャージをしつつ、ローザの双眼はただ新種アラガミの巨大な尾へと向けられ……彼女は、必殺の一撃を繰り出した。

 

「――――射ち貫いて!!!」

 

 臨界を突破していたスピアのパワーを一気に開放、凄まじい推進力でローザは新種アラガミの尾目掛けて吶喊した。

 そのスピードはただ速く、相手に対処する間も与えず――彼女の槍が、アラガミの尾に風穴を開けながら貫いた。

 

「ギャアアァァアァァァアアッ!!!」

“手ごたえあり……!”

 

 素早く槍を尾から抜き取りつつアラガミから離れるローザ。

 と――ここでアラガミは背中のタービンを激しく回転させ始めた。

 

“何か来る……? これは…………雷だ!!”

 

 タービンの周囲から発生する電気エネルギーを感じ取り、ローザは急ぎ神機を銃形態へと移行させる。

 チャージによる一撃は間に合わない、なのでどうにか銃撃であの攻撃を止めさせようとローザはタービンに向けて連射した。

 放ったのは氷属性のバレット、全弾命中し……新種アラガミの口から先程とは違う確かな苦悶の声が聞こえてきた。

 

“弱点は氷だ……!”

 

 相手の弱点を理解し、重点的に責めようと再びローザが銃撃を放とうとした瞬間――彼女は敵の反撃を許してしまっていた。

 

「えっ――――きゃあああああああああああっ!!?」

 

 気がついた時にはもう遅い、ローザの身体に襲い掛かるのは新種アラガミが放った雷による強力な一撃。

 天から降り注いだその一撃をまともに受け、ローザはたまらず膝を地につけ動きを止めた。

 

“ま、ずい……!?”

 

 身体が痺れ動かせない、立ち上がろうと懸命に身体を動かそうとするローザであったがダメージが大きく僅かに身体を痙攣させるのみ。

 その時を待っていた、まるでそう言っているかのように、新種アラガミは彼女を喰らおうと大きく口を開き突進してくる。

 

“おにい、ちゃ――”

 

 眼前に迫る死の恐怖、おもわずローザは瞳を閉じてしまい……けれど、彼女の物語はまだ終わらない。

 

「だめーーーーーーーーーーーーっ!!!!」

 

 新種アラガミに降り注ぐ、光輝く幾つものレーザー砲。

 その全てが命中し、たまらずアラガミの進行が止まった。

 

「ソーマ、援護射撃をするから突っ込んでくれ!!」

「ああ、わかってる」

 

 更に新種アラガミに攻撃を仕掛ける存在――エリックとソーマが現れ、ローザの命は辛うじて繋ぎ止められた。

 

「っ……エリックお兄ちゃん、そのアラガミは氷属性のバレットが弱点だよ!!」

「わかった、ラウエルくんはローザくんを安全な場所に移動させてくれ!!」

「うん! ローザ、だいじょうぶかー!?」

 

 ローザの元へと飛び、ラウエルはすぐさま彼女を掴んでその場から離れる。

 それと入れ替わるようにソーマがアラガミへと向かっていき、戦いが再開された……。

 

 

 

 

「…………」

「……ローザくん、どうしてあんな無茶をしたんだ?」

 

 戦いは終わり、どうにか新種アラガミの掃討に成功したローザ達。

 その直後、ローザはエリックに睨まれその場で正座させられてしまっていた。

 

「君のアラガミ探知能力のおかげで装甲壁の被害はゼロだ、でもだからって1人で新種のアラガミと戦おうとするなんて……一体何を考えているんだ!!」

「…………っ」

 

 エリックの怒声を受け、ローザの身体がビクッと震える。

 ラウエルがエリックを止めようとしたが、それをソーマが止め『黙って見てろ』と目で合図を送った。

 

「君にもしもの事があったらカズキくんはどうなる? 残された家族はどうなるんだ?」

「で、でも……」

「君の命は君だけのものじゃない、君だけが頑張ればいいってわけじゃない。いくらアラガミ能力があるからって無敵ってわけじゃないんだ。

 勝手な行動は自分自身だけじゃなく、周りのみんなも危険な目に遭わせるって事なんだぞ!!」

「………………ごめん、なさい」

 

 瞳から涙を流し、謝罪の言葉を述べるローザを見て、エリックは自身が感情的になっていた事に気がつきため息をついた。

 

「すまない、言い過ぎた。けどもう二度とこんな無茶はしないでくれ、いいね?」

「…………うん」

「ならボクからはこれ以上何も言うつもりはないよ、報告はボクがやっておくからもう休むといい」

「……ごめんなさい」

 

 のろのろと立ち上がり、明らかに落ち込んだままローザはアナグラへと戻っていきラウエルもそれに続いた。

 それを見届けながら、エリックはもう一度大きくため息を吐く。

 

「単独行動をしたアイツが悪い、お前が気にする事じゃねえだろ」

「……いや、正直感情的になっていたよ。あの子も妹という事だけで、ね……」

「…………」

「ちっとも華麗じゃないね、今のボクは。これじゃあエリナにも笑われてしまう」

 

 ははは、と力なく笑うエリック。

 それを見てソーマは何も言わず、アナグラへと戻っていくエリックの後を追ったのだった。

 

 

 

 

To.Be.Continued...




エリックさんが主人公になってる件について。

本編ではまるで活躍できなかったので、ここぞとばかりに活躍させた結果がこれだよ!!

あ、ちなみに新種のアラガミの正体はウコンバサラというGE2の敵です。
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