神々に祝福されし者達【完結】   作:マイマイ

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記念すべき第十弾だというのにこのタイトル……。

そしてまたアリサが暴走して……どうしてこうなった?


番外編10 ~でかけりゃいいってわけじゃない~

「――――うん、うん」

「…………」

 

 緊張した面持ちで、アリサは食事をしているカズキを見やる。

 この食事を作ったのは他でもないアリサ、つまり彼女は愛する夫の為に手料理を用意したというわけだ。

 

 しかしもうわかってはいると思うが、彼女の料理スキルは正直いただけない、はっきり言ってヤバイとかそういうレベルである。

 だが彼女は諦めなかった、努力を忘れてしまったら人間はおしまいですと言わんばかりに、サクヤやカノンと言った料理スキルに優れた者達から教えを乞い、今日はその成果を見せる日。

 

 もぐもぐと自分の作った料理(簡単ということでハンバーグにしてみた)を無言で租借するカズキ。

 何も言ってこないカズキに不安だけが募っていき……けれど、次に発した彼の言葉はアリサの不安を一瞬で消し飛ばした。

 

「……習うより慣れろだね、充分美味しいよ」

「あっ……!」

 

 途端に花のような笑みを浮かべるアリサ。

 美味しいと言ってくれた、それも優しさからくる言葉ではない“美味しい”が。

 それだけで胸が一杯になり、けれど努力家な彼女は次なる目標を抱いた。

 

「この調子で、他の料理もできるように頑張りますね!」

「ありがとうアリサ、そうやって僕の為に努力してくれて嬉しいよ」

「当たり前じゃないですか。だってカズキは世界で一番大切な人なんですから!!」

「…………」

 

 少しだけ恥ずかしそうに頬を赤く染めながらも、アリサは自分に対して無類の愛情を見せてくれる。

 本当に、自分を愛してくれているのだ。

 

“……僕だっていい加減、ちゃんと覚悟を決めないといけないんだ。プロポーズの時みたいに……”

「カズキ、どうかしましたか?」

「……ううん、なんでもないよ」

「そうですか。……あ、そういえばカズキに伝えないといけない事がありまして」

「伝えたい事?」

「はい、実は……“ヴィーナス”という新種のアラガミの討伐をお願いしたいとツバキ教官が仰っていまして」

「ヴィーナス?」

 

 その名は、カズキには覚えがあった。

 アリサの言う通り新種のアラガミであり、まだ正確なデータはないが強力なアラガミであるという事だ。

 

「最近目撃されて、何度か討伐に向かったみたいなんですが……」

「……返り討ちにされたの?」

「いえ、幸いにも死傷者が出たわけじゃないんですが……ヴィーナスと交戦した神機使いは口々に“戦いたくない”と言い出す始末で……」

「???」

 

 それは一体どういう事なのだろう、それほどまでに恐ろしい力を持ったアラガミなのだろうか。

 しかしそんな単純な理由ならばアリサも今のように不可解な表情を浮かべる事は無い、なにか別の理由があるのは明白であった。

 

「でも新種のアラガミをこのままにはしておけないので……私とカズキとローザの3人で任務に行こうかと思っているのですが」

「わかった、ローザにはもう話してあるの?」

「はい、それはもちろん」

「じゃあ偵察部隊がそのヴィーナスってアラガミを見つけ次第、出撃しよう」

「了解しました。……それにしても、どうしてみんな口々に“戦いたくない”だなんて言ったんでしょう?」

「やっぱり恐ろしいからじゃないの?」

「それはそうかもしれませんけど……なんか釈然としませんね」

 

 神機使いが戦いたくないと思うアラガミ、それは一体どんなアラガミなのだろう。

 不安が残るものの、カズキとアリサは気を引き締めなおすのであった。

 

――数日後。

 

 カズキとアリサはローザを連れ、ヴィーナスが目撃されるエリアへと赴いた。

 ……結論から先に言えば、ヴィーナスの姿は割とすぐに見つかった。

 なにせ相手の身体が大きいので目立つのだ、だがアリサとローザはヴィーナスの姿を見た瞬間……何故かカズキの目を手で覆い隠す。

 

「えっ、2人とも、何してるの?」

「えっとですね……カズキはヴィーナスの姿を見てはダメといいますか……」

「はい? いやいや、そんなわけにはいかないでしょ」

 

 倒すべきアラガミが近くに居るというのに、姿を見ないで戦うなど無茶過ぎる。

 しかし依然として2人はカズキの視界を奪ったまま頑なにヴィーナスの姿を見せようとはしない。

 

 ……無論、2人はふざけているわけではないのだ。

 では何故このような行動をとっているのか、それはヴィーナスの格好が男のカズキには見せられないからである。

 下半身は巨大な蜘蛛のような気味の悪い身体であり、至るところから捕喰したであろう他のアラガミの身体の一部が見え隠れしている。

 はっきり言って醜悪な外見だ、だが2人が見せたくないのはそこではなく……上半身の方。

 

“なんで……なんで下半身は化物そのものなのに、上半身は裸の女性なんですか!!”

“わあ……これはお兄ちゃんには見せられない、というより見せたくないなあ……”

 

 そう、何故か上半身は人間の女性の身体そのものなのだ、しかも裸の。

 これはさすがに見せたくない、だから2人はカズキの視界を封じたわけで。

 

「とにかくカズキはヴィーナスを見ないでください、あれは私とローザで片付けますから」

「いや、だからそんなの無理だって……」

「お願いお兄ちゃん、ローザ達はお兄ちゃんを変態さんにしたくないの」

「どういう意味それ!?」

 

 わーわーと騒ぐ3人、正直言って戦場で出してる雰囲気じゃない。

 そんな青臭い空気を感じ取ったのか、ヴィーナスがカズキ達に気づいた瞬間――彼の全身に悪寒が走った。

 

「えっ……」

「どうかしました?」

「現在進行形でどうかしてるけどこの際それはいいや、なんか……ものすごい視線を感じるんだけど」

「えっ?」

「はい?」

 

 自然と、アリサとローザの視線が先程からガン無視していたヴィーナスへと向けられる。

 こちらを見ているヴィーナスに、気づかれたと2人は急ぎ身構えようとして。

 

「……………………オトコ」

 

 そんな呟きを、常人を遥かに超える聴力で拾い取った。

 

「えっ?」

「今、なんて……」

「オトコ…………オトコオォォォォォォォォッ!!!」

『ファッ!!?』

 

 突如として、ヴィーナスがドスドスと地面を走りながらこちらへと向かってきた。

 従来のアラガミのように捕喰対象を見つけたのか、否、そうではないとアリサは何故か直感で理解する。

 ヴィーナスの視線の先には、未だ目隠しをされ先程の絶叫により軽く混乱しているカズキが。

 

“こいつ……カズキを狙ってる!!”

 

 しかも食糧的な意味ではない、それはヴィーナスの血走った目を見れば不思議とよくわかった。

 

「人の旦那に手を出すとは……死にたいみたいですね!!!」

「お姉ちゃん!?」

 

 ヴィーナスへと向かっていくアリサ、すると彼女の気迫を感じ取ったのか暴走機関車のように走っていたヴィーナスが止まる。

 対峙する2人、なんだかいつもの神機使いとアラガミの雰囲気ではなかった。

 そう、例えるなら……男に飢えた女とそれを止めようとしている女性のような、なんかそんな感じ。

 

「これ以上私のカズキに近づかないでください、神機の錆びにしますよ?」

「…………」

 

 口元に恐ろしく邪悪な笑みを浮かべて威嚇するアリサ、直接それを見ていないというのにカズキとローザは身体を震わせた。

 だがしかしヴィーナスは意に介した様子もなく、視線をアリサの胸元へと向けてから……勝ち誇ったように歪んだ笑みを見せた。

 

「なっ!? まさか、胸の大きさが勝ったからって優越感ですか!?」

「えっ、胸の大きさ……?」

「お兄ちゃん、ちょっと耳塞いでて」

「…………」

 

 自らの両手を胸へと持っていき、まるで見せ付けるかのように寄せて上げるヴィーナス。

 たわわに実った胸が弾むように揺れ、その姿はアラガミでなければ様々な男を魅了する程の官能さがあった。

 わなわなとアリサの身体が震える、あろうことか捕喰欲求を満たすためだけのアラガミに胸の事で馬鹿にされた、その怒りは計り知れない。

 内心胸の大きさと形なら誰にも負けないと密かに思っていただけに、この挑発はアリサにとって屈辱以外の何物でもなく。

 

「ふ、ふふふ……ただ大きいからってなんですか、乳はただ大きければいいものじゃない!!!」

「……ねえローザ、さっきからアリサは一体何をしているの?」

「聞かない方がいいと思うよ、色々な意味で」

「テメーは私を怒らせました……アラガミは消毒だーーーーーーーっ!!!」

 

 完全に頭に血が昇ってしまったアリサが、ヴィーナスへと向かっていく。

 その光景を、ローザはカズキの目を手で覆いながら見守る事しかできなかったとか……。

 

 

 

 

「――――で、結局ヴィーナスはアリサ1人で倒しちゃったみたいだけど、最後まで姿を見せてくれなったのはなんで?」

「禁則事項です」

「お姉ちゃんそれは色々な人に怒られるからやめた方がいいよ、それとお兄ちゃんは今後一切ヴィーナス討伐任務に出ちゃダメだから」

「…………なんでさ?」

 

 

 

 

To.Be.Continued...




さーて、いよいよ次で番外編は一度終わりを迎えます。

次の話は最初から決まっているのですが…実際に書こうと思うと気恥ずかしいなあ。
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