第二十話
「冥界に帰る?」
「ええ、夏休みだから皆を連れて冥界に帰るの。毎年恒例なのよ♪」
例によって俺の家で寛いでいるオカルト研究部の面々。夏休みが始まってからこいつら全員が家に泊まっている。
「それで?なんで俺に伝えるんだ?」
「貴方も一緒に冥界に行くからよ」
当然でしょ?って顔をするリアス
「勝手に決めてんじゃねぇよ」
俺はダルそうに言う
「一誠ったら、夏になってからずっとだらけてばかりじゃない」
こいつらが家に泊まるようになってから家の事を何一つしなくてよくなったからな
「俺はお前らと違って学校とかねぇんだから、だらけててもいいじゃねぇか」
「だめよ。私達の年齢は適度に動かなきゃ!」
めんどくせぇなぁ
「お兄様に貴方を冥界に誘うように言われているの」
サーゼクスが元凶か。――――今度会ったときに一発ぶん殴っておこう
「お母様もね、貴方に会いたいらしいのよ」
リアスの母親が?俺に?
「なんで?」
「お兄様や私、それとお父様から貴方の話しを聞いて、会ってみたくなったらしいわ」
「…………はぁ。わかったよ。行きゃいいんだろ。行けば」
まったくもって面倒くさい
「そういうわけでもうすぐ皆で冥界に行くわ。長期旅行の準備をしておいてちょうだいね」
めんどくせぇ、全部サーゼクスに用意させるか
「そういえばアーシアとゼノヴィアは初めてだったかしら?」
「は、はい!生きているのに冥府に行くなんて緊張します!し、死んだつもりで行きたいと思います。」
アーシア、死んだつもりじゃなくていいからな?
「うん。冥界―――地獄には前々から興味があったんだ。でも、私は天国に行くため、主につかえていたわけなのだけれど……。悪魔になった以上は天国に行けるはずもなく……。天罰として地獄に送った者たちと同じ世界に足を踏み入れるとは、皮肉を感じるよ。ふふふ、地獄か。悪魔になった元信者にはお似合いだね」
こんなことで落ち込むなよ。ゼノヴィア
「一誠は冥界に行ったことあるの?」
リアスが俺に聞いてくる
「数回だけな」
初めて冥界に訪れたのは、十年前だ。最近は行っていない。
「八月二十日過ぎまで残りの夏休みをあちらで過ごします。こちらに帰ってくるのは八月の終わりになりそうね。修業やそれら諸々の行事を冥界で行うから、そのつもりで」
リアスは俺達にスケジュールを申しつける。――――俺も久々に体動かすか
「私の実家にはプールや温泉もあるから楽しみにしていてね」
――――温泉
「楽しみだ」
俺がぽつりと呟くと驚いた顔をするリアス達
「興味があるの?」
「あるな。温泉、結構好きだし」
俺が答えるとガッカリするリアス達(木場、ゼノヴィア、搭乗、ギャスパーを除く)
「い、一誠さんも好きな物ってあるんですね」
段ボールに引きこもっているギャスパーが俺に話しかけてくる。珍しい
「俺だって人間だからな。なんならお前らも(木場、ギャスパー)一緒に入るか?」
「「「だめよ!!/です!!」」」
リアス達に駄目だしされる
「遠慮しときます。僕には修行がありますし」
「ぼ、僕もいいです。……ひ、引きこもりなんで、インドア派だし、お家でネットしながらかわいい服を着られればいいんで……」
冥界に行ったら温泉巡りとかもいいかもしれん……。いや、絶対にしよう。どうせ費用は全てサーゼクスが持つだろうし。――――それはそうと
「帰れ、不法侵入者」
「おいおい、着いてそうそう帰れはないだろう」
なんだってこいつらは俺ん家に集まってくるのだろうか
「ど、どこから、入ってきたの?」
リアスが目をパチクリさせながらアザゼルに訊く
「うん?普通に玄関からだぜ?」
平然とアザゼルは答える
「……気配すら感じませんでした」
木場がそう言葉を漏らす。いくら『禁手』に至っているとはいえ、今のこいつじゃアザゼルには遠く及ばない
「そりゃ修行不足だ。俺は普通に来ただけだ。一誠なんか玄関にたどり着く前から気づいていたぞ?」
その言葉を聞いて驚くリアス達
「それよりも冥界に帰るんだろう? なら、俺も行くぜ。俺はお前らの『先生』だからな」
この暇人は神器の研究ばっかりしている。その研究成果を使いギャスパ―と木場に神器を使いこなさせるために、特例として教師になったらしい
「冥界でのスケジュールはリアスの里帰りと、現当主に眷属悪魔の紹介。例の新鋭若手悪魔達の会合、それとあっちでお前らの修業だ。俺は主に修業に付き合う訳だがな。お前らがグレモリー家にいる間、俺はサーゼクス達と会合か、ったく、面倒くさいもんだ」
本気でめんどくさそうな顔をするアザゼル。こんなんだが部下からの信頼は厚いんだよなぁ
「ではアザゼル―――先生はあちらまで同行するのね? 行きの予約をこちらでしておいていいのかしら?」
「手間かけさせて悪いな、頼む。しかし、悪魔のルートで冥界入りするのは初めてだ。楽しみだぜ。いつもは堕天使側のルートだからな」
俺は転移で勝手に行っていたけどな
俺は今リアスの先導に従い、駅に来ていた。この町の地下には昔から悪魔が作った施設がある
リアスはエレベーターに乗り
「じゃあ、まずは一誠とアーシアとゼノヴィア来てちょうだい。先に降りるわ」
アーシアは怪訝な顔をしながらエレベーターの中に入る
「それじゃ先に下に行っているわね。祐斗たちはあとからアザゼルと一緒に来てちょうだいね」
「はい、部長」
エレベーターの扉が閉まる
リアスはスカートのポッケからカードを取り出し電子パネルに向ける。
ピッ
カードに反応して電子音が鳴る。直後エレベーターは降下し始める
下に降りている事に驚いているアーシア。ゼノヴィアはあまり驚いておらず首を傾げているだけだ。
リアスはアーシアが驚いているのを見てクスクスと小さく笑った
「この駅の地下にね、秘密の階層があるの」
「全然知りませんでした……」
アーシアが呆然と呟く
「それはそうよ。悪魔専用のルートだもの。普通の人間は一生たどり着けないわ。こんな風にこの町には悪魔専用の領域が結構隠れているのよ?」
『へー』とアーシアとゼノヴィアが感心している
下ること約一分。エレベーターが停止する
リアスに促され俺は外にでる。そこにはだだっ広い人工的な空間が広がっていた。
多少違うが人間界にある駅のホームとそんなに変わらない。線路もある。やはり駅のようだ
少しして木場やアザゼルが下りてきて合流する
「全員そろったところで、三番ホームまで歩くわよ」
俺達はリアスの先導に従い歩き始める
<木場視点>
リィィィィィィン。
指摘が鳴らされ、列車は動き出す
部長は列車の一番前の車両に座っている。眷属である僕たちは中央からうしろの車両にいる
僕の隣に朱乃さん。前にアーシアさんとゼノヴィア。そしてギャスパ―くんが、段ボールに入りながら座っている。一誠さんとアザゼル先生はそれぞれ席を一つ占領して寝ている
「どのくらいで着くんだ?」
ゼノヴィアが朱乃さんに訊く
「一時間ほどで着きますわ。この列車は次元の壁を正式な方法で通過して冥界にたどり着けるようになっていますから」
「そうなのか。私は魔法陣でジャンプして冥界に入るものだと思っていたぞ」
「通常はそれでもいいのですけれど、アーシアちゃんたち新眷属の悪魔は正式なルートで一度入国しないと違法入国として罰せられるのです。だから、アーシアちゃんたちはちゃんと正式な入国手続きを済ませないといけませんわ」
「心配ないわ、貴方たちは私の下僕ですもの。向こうは人間界とだいぶ違うわ。いろいろと観光名所もあるから一誠も誘って皆で行きましょ」
「部長!」
部長が僕たちに近づいてくる。今更だけど部長は一誠さんに気があるみたいだ。部長だけじゃない、アーシアさんは無論、朱乃さんまで一誠さんに好意を寄せている。
部長は愛おしそうに一誠さんの顔を撫でる
「今度こそ………ッ!!!」
その瞳には決意が宿っていた。
「リアス。私は貴女に負けないわよ」
「わ、私もお二人には負けません!!」
「朱乃、アーシア。私は貴方たちに負ける気はしないわ!」
三人が火花を散らしている。正直恐い
朱乃さんが眠っている一誠さんの手を自分の胸に持っていく
部長から紅い魔力が迸る。それに答えるように朱乃さんも魔力を迸らせる。アーシアさんは涙眼だ
「朱乃!!貴女は昔から人の好きなものを―――」
「リアス姫。下僕とのコミュニケーションもよろしいですが、例の手続きはよろしいですかな?」
部長の怒りの声を遮り、第三者がひょっこりと現れた。初老の男性。この列車の車掌さんだ。
「ご、ごめんなさい……」
「ホッホッホッ。あの小さな姫が男女の話とは。長生きはするものですな」
男性の楽しそうな笑い声に部長は顔を真っ赤にしていた。
「初めまして、姫の新たな眷属の悪魔の皆さん。私はグレモリー専用列車の車掌をしているレイナルドと申します。以後、お見知りおきを」
レイナルドさんは丁寧に挨拶する。それにアーシアさんとゼノヴィアは慌てて立ち上がり一礼する
「アーシア・アルジェントです!『僧侶』です! よろしくお願いします!
「ゼノヴィアです。『騎士』、今後もどうぞお願いします」
挨拶もそこそこにレイナルドさんは機械を使い二人の入国審査を終わらせる
「あとはアザゼルだけね。一誠は審査をしなくていいらしいから」
二人は相変わらず寝ている
「堕天使の総督さまは平和ですな」
レイナルドさんは一誠さんをの方を見る
「レイナルド!こっちの男性が赤龍帝の……」
「兵藤一誠様ですね。お懐かしい」
レイナルドさんが部長の言葉を遮る
「知っているの?」
「はい。十年前でしょうか。このお方がまだ少年だったころ、サーゼクス様の命によりこのお方の入国審査をしたのでございます」
その言葉に僕たちは驚く。十年前、サーゼクス様たちが一誠さんに会ったのも十年前。どうやって一誠さんはサーゼクス様たちと会ったのだろうか
「……俺たちがどうやって一誠と会ったのか気になるか?」
「アザゼル!貴方起きていたの!?」
いつの間に起きたのだろうか?
「あんだけ魔力を発しておいてよく言うぜ」
アザゼル先生は呆れるように言う
部長たちは顔を赤らめる
「でも一誠は寝ているわよ」
そう一誠さんはまだ寝ている。先生でも起きたのだから一誠さんが起きてもいいはずだ
「もうちょい観察するクセを身につけた方がいいぜ?こいつは寝る前に結界を張ったんだよ。俺でも破れないような強力なやつをな……」
そういわれて僕は一誠さんを見る。確かに小さい結界が一誠さんに張り付くように展開されている
「わかったか?お前ら程度の力じゃ破れないからこいつは未だに寝てんだよ。」
「それより、アザゼル!貴方と一誠が会った時の話しを聞かせてちょうだい」
確かに気になる。一誠さんは僕達に興味を示していないせいなのか、自分から会話をしない
「そんなに気になるか?別に隠すほどの事じゃねえし、話してやるよ」
そうしてアザゼル先生は語りだす。十年前に一誠さんと出会った時の事を・・・
覇龍の呪文と変身後の名前を決めました。かなり中二臭いです(笑)
そのうち出すと思います。