ハイスクールD×Dの規格外   作:れいとん

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第三十話

その日の放課後

「皆、集まってくれたわね」

オカ研の部室でリアスがそう言いながら確認をとる。それを確認するとなにやら記憶メディアらしきものを取りだした

「若手悪魔の試合を記録したものよ。私たちとシトリー眷属のものもあるわ」

今日はオカ研のメンバー+αで他の若手悪魔の試合をチェックすることになっている。巨大なモニターが用意あされる。アザゼルが巨大モニターの前に立って言う

「おまえら意外にも若手悪魔たちはゲームをした。大王バアル家と魔王アスモデウスのグラシャラボラス家、大公アガレス家と魔王ベルゼブブのアスタロト家、それぞれがおまえらの対決後に試合をした。それを記録した映像だ。ライバルの試合だから、よーく見ておくようにな」

『はい』

アザゼルの言葉に全員が真剣にうなずいていた。俺個人としてはサイラオーグに興味がある

「まずはサイラオーグ―――バアル家とグラシャラボラス家の試合よ」

さっそくか。

記録映像が開始され、数時間が経過する。グレモリー眷属の顔つきは真剣そのものになり、視線は険しいものになっている。そこに映っていたのは―――圧倒的なまでの『力』だ。あのヤンキー悪魔とサイラオーグの一騎打ち。一方的にヤンキーが追い込まれていた。眷属同士の戦いはすでに終わっている。どちらもソコソコに強い者ばかりを眷属に持っていた。だが、問題なのは『王』同士の戦いだ。

最後の最後で駒をすべてなくしたヤンキーがサイラオーグに挑発した。サシで勝負しろ、と。サイラオーグはそれに躊躇うことなく乗った。

ヤンキーが繰り出すあらゆる攻撃がサイラオーグにはじき返される。まともにヒットしても何事もなかったようにサイラオーグはヤンキーに反撃していた。

自分の攻撃が通じないことで、ヤンキーはしだいに焦り、冷静さを欠いていた。

そこへサイラオーグの拳が放り込まれる。

幾重にも張り巡らされた防御術式を紙のごとく打ち破り、サイラオーグの一撃がヤンキーの腹部に打ちこまれていく。

その一撃は映像越しでも辺り一帯の空気を震わせる程度の威力があると見て取れる

サイラオーグは打拳と蹴りしか使ってなかった、これが若手悪魔ナンバーワンか。リアス達とは比べられることもないほど強いだろう。だが、それでも魔王には程遠い。

「……凶児と呼ばれ、忌み嫌われたグラシャラボラスの新しい次期当主候補がまるで相手になっていない。ここまでのものか、サイラオーグ・バアル」

木場は目を細め厳しい表情でそう言った。こいつはグレモリー眷属のエースだ。こいつなりに思うことがあるのだろう。サイラオーグのスピードも相当なものだ。若手悪魔の中では規格外な存在だ。下手したら木場ですら追いきれないかもしれない

見ればギャスパーがブルブル震えながら腕につかまっていた。この程度でビビるなよ、ギャスパー……。

「リアスとサイラオーグ、おまえらは『王』なのにタイマン張りすぎだ。基本、『王』ってのは動かなくても駒を進軍させて敵を撃破していきゃいいんだからよ。ゲームでは『王』が取られたら終わりなんだぞ。バアル家の血筋は血気盛んなのかね」

アザゼルが嘆息しながらそう言う。リアスは恥ずかしそうに顔を赤くしていた

「あのグシャラボラスの悪魔はどのくらい強いんだ?」

ゼノヴィアの問いにリアスが答える

「今回の六家限定にしなければ決して弱くはないわ。といっても、前次期当主が事故で亡くなっているから、彼は代理ということで参加しているわけだけれど……」

姫島が続く。

「若手同士の対決前にゲーム運営委員会がだしたランキング内では一位はバアル、二位がアガレス、三位がグレモリー、四位がアスタロト、五位がシトリー、六位がグラシャラボラスでしたわ。『王』と眷属を含みで平均で比べた強さランクです。それぞれ、一度手合わせして、一部結果が覆ってしましましたけれど」

「しかし、このサイラオーグ・バアルだけは抜きんでている―――というわけだな。部長」

ゼノヴィアの言葉にリアスは頷く

「ええ、彼は怪物よ。『ゲームに本格参戦すれば短期間で上がってくるのでは?』と言われているわ。逆を言えば彼を倒せば、私たちの名は一気に上がる」

すくなくとも今のリアス達ではバアル眷属はともかく、サイラオーグ自身を倒すことはほぼ不可能と言っていいだろう

「………たぶん、ライザーより強い」

小猫が呟く。ライザー?………………。ああ、あの焼き鳥野郎か。

「両者がやってみないとわからないけれど、私の贔屓目で見てもサイラオーグのほうが強い気がするわ」

正式ゲーム参加前の悪魔の中では破格の存在だな

「ま、グラフを見せてやるよ。各勢力に配られているものだ」

アザゼルが術を発動して、宙に立体映像的なグラフを展開させる。

そこにはリアスやソーナ、サイラオーグなど、六名の若手悪魔の顔が出現し、その下に各パラメータみたいなものが動き出して、上へ伸びていく。

ご丁寧にグラフは日本語だった。グラフはパワー、テクニック、サポート、ウィザード。とゲームのタイプ別になっている。最後の一か所に『キング』と表示されている。たぶん『王』としての資質だろう。リアス、ソーナ、アガレスがそこそこ高めだが、ソーナのほうが現時点ではリアスより高めだ。そしてサイラオーグはかなり高めだ。あのヤンキー悪魔が一番低い。

リアスのパラメータはウィザード―――魔力が一番伸びて、パワーもそこそこ伸びた。あとのテクニック、サポートは真ん中よりもちょい上の平均的な位置だ。

そして―――サイラオーグ

サポートとウィザードは若手の中で一番低い。が、そのぶんパワーが桁外れだ。

ぐんぐんとグラフは伸びていき、部室の天井まで達した。極端すぎるがパワーが凄まじいということだ。

サイラオーグを抜かす五名の中で一番パワーの高いヤンキー悪魔の数倍はあるだろう

「ゼファールドとのタイマンでもサイラオーグは本気を出しやしなかった」

パワーだけ見れば最上級悪魔と比べても謙遜がないだろう

「やはり、この方も天才なのでしょうか?」

アーシアがそう訊くとアザゼルは首を横に振り否定する

「いいか?サイラオーグはバアル家始まって以来才能が無かった純血悪魔だ。バアル家に伝わる特色のひとつ、滅びの力を得られなかった。滅びの力を強く手に入れたのは従兄弟のグレモリー兄妹だったのさ」

―――へぇ。バアル家出身であるヴェネラナの子であるサーゼクスとリアスに色濃く受け継がれ、本来の血筋であるサイラオーグに伝わらなかったのは、とんだ皮肉だな

「だが、若手悪魔最強なのだろう?」

「家の才能を引き継ぐ純血悪魔が本来しないものをしてな、天才どもを追い抜いたのさ」

「本来しないもの?」

ゼノヴィアがそう訊き返すとアザゼルは真剣な面持ちで言う

「―――凄まじいまでの修行だよ。サイラオーグは、尋常じゃない修練の果てに力を得た稀有な純血悪魔だ。あいつには己の体しかなかった。それを愚直までに鍛え上げたのさ」

リアスは才能に恵まれ、サイラオーグは才能に恵まれなかった。才能はリアスのほうがあるのにサイラオーグのほうが強いのは皮肉かな

アザゼルは続ける、語りかけるように

「奴は生まれたときから何度も何度も勝負の度に打倒され、敗北し続けた。華やかに彩られた上級悪魔、純血種のなかで、泥臭いまでに血まみれの世界を歩んでいる野郎なんだよ」

だからこそ、あいつは自身の力に自身があるのだろう

「才能の無い者が次期当主に選出される。それがどれほどの偉業か。―――敗北の屈辱と勝利の喜び、地の底と天上の差を知っている者は例がいなく本物だ。ま、サイラオーグの場合、それ以外にも強さの秘密はあるんだがな」

試合の映像が終わった。

サイラオーグ―――バアル家の勝利だ。

最終的にグラシャラボラスのヤンキーは物陰に隠れ、怯えた様子で『投了』宣言をする。

サイラオーグは縮こまり怯え泣き崩れるヤンキーに何かを感じる様子もなくその場をあとにしていく

ファルビーの血縁者のクセにこの程度か。俺はヤンキー悪魔に失望する。サイラオーグは若手悪魔の中では規格外なまでに強い。だが、言い換えればその程度でしかないということだ。見ればリアス達は映像越しのサイラオーグの迫力に気圧されていた。それもしかたのないことだろう。サイラオーグは勝利への執念が凄い、そこだけは俺も評価しよう

映像が終わり、静まりかえる室内でアザゼルは言う

「先に言っておくがおまえら、ディオドラと戦ったら、その次はサイラオーグだぞ」

「へぇ、それは本当か?」

俺が聞くとアザゼルはうなずく

リアスは怪訝そうにアザゼルに訊く

「少し早いのではなくて?グラシャラボラスのゼファールドと先にやるものだと思っていたわ」

「奴はもうダメだ」

アザゼルの言葉に皆が訝しげな表情になる

「ゼファールドはサイラオーグとの試合で潰れた。サイラオーグとの戦いで心身に恐怖を刻み込まれたんだよ。もう、奴は戦えん。サイラオーグはゼファールドの心―――精神まで断ってしまったのさ。だから、残りのメンバーで戦うことになる。若手同士のゲーム、グラシャラボラス家はここまでだ」

圧倒的な力を見せつけて戦う気を無くさせる。いや、あのヤンキーが弱く勝手に砕けただけか

「おまえらも十分に気をつけておけ。あいつは対戦者の精神も断つほどの気迫で向かってくるぞ。あいつは本気で魔王になろうとしているからな。そこに一切の妥協も躊躇もない」

アザゼルのその言葉を皆が真剣に訊く

リアスは深呼吸をひとつした後、改めて言う

「まずは目先の試合ね。今度戦うアスタロトの映像も研究のためにこのあと見るわよ。―――対戦相手の大公家の次期当主シーグヴァイラ・アガレスを倒したって話しだもの」

「大公が負けたんですか?」

木場が信じられないといった表情をする

「私たちを苦しめたソーナ達は金星、先ほど朱乃が話してたランクで二位のアガレスを打ち破ったアスタロトは大金星という結果ね。くやしいけれど、所詮対決前のランキングはデータから算出した予想にすぎないわ。いざ、ゲームが始まれば何が起こるかわからない。それがレーティングゲーム」

リアスがそう言う

まぁそうだ。レーティングゲームは力が強ければ勝てる様なものじゃない。

「けれど、アガレスが負けるなんてね」

そう言いながらリアスが次の映像を再生させようとしたときだった

パァァァァッ

部屋の片隅で一人分の転移魔法陣が展開した

この紋様は……。

「――アスタロト」

姫島がぼそりと呟いた。そして、一瞬の閃光のあと、部室の片隅に現れたのは爽やかな笑顔を浮かべる優男だった

そいつは開口一番に言う

「ごきげんよう、ディオドラ・アスタロトです。アーシアに会いに来ました」

 

 

部室のテーブルにはリアスとディオドラ、顧問としてアザゼルも座っている

姫島がディオドラにお茶を淹れ、リアスの傍らに待機する

もしディオドラが何か変なことをしたら消し飛ばす。

「リアスさん。単刀直入に言います。『僧侶』のトレードをお願いしたいのです」

トレードとは『王』同士で駒となる眷属を交換できるレーティングゲームのシステムだ。同じ駒同士なら可能でそこに眷属の意思が反映されることはめったにない。

『僧侶』―――つまりアーシアかギャスパーのことだ

「いやん!僕のことですか!?」

ギャスパーが身を守るようにするが、俺がハリセンで頭をはたく

「んなわけねぇだえろ」

しかし、こいつもずいぶんたくましくなったもんだ。以前なら「ヒィィィィッ!ぼ、僕のことですかぁぁ!?」とか悲鳴をあげて段ボールの中に逃げたんじゃないか?こいつはこいつで強くなっているってことか

……で、ディオドラが欲しい『僧侶』はアーシアのことだろう。ディオドラが『僧侶』といった瞬間から、アーシアは俺の手を強く握ってきた。―――『嫌だ』っていう主張だろう

「僕が望むのリアスさんの眷属は―――『僧侶』アーシア・アルジェント」

ディオドラはそう言い放ち、アーシアの方に視線を向ける。その笑みは爽やかなものだ

「こちらが用意するのは―――」

自分の眷属が乗っているであろうカタログらしきものを出そうとしたディオドラへリアスは間髪入れずに言う

「だと思ったわ。けれど、ゴメンなさい。その下僕カタログみたいなものを見る前に言っておいた方がいいと思ったから先に言うわ。私はトレードをする気はないの。それはあなたの『僧侶』と釣り合わないとかそういうことではなくて、単純にアーシアを手放したくないから。―――私の大事な眷属悪魔だもの」

リアスはそう言い切った。元々比べる気もトレードする気も無いのだろう。

「それは能力?それとも彼女自身が魅力だから?」

ディオドラは淡々とリアスに訊いてくる。諦めの悪い男だ

「両方よ。私は、彼女を妹のように思っているわ」

「―――部長さんっ!」

アーシアは手を口元にやり、瞳を潤ませていた。リアスが『妹』と言ってくれたのが心底嬉しかったのだろう

「一緒に生活している仲だもの。情が深くなって、手放したくないって理由はダメなのかしら?私は十分だと思うのだけれど。それに求婚したい女性をトレードで手に入れようというのもどうなのかしらね。そういう風に私を介してアーシアを手に入れようとするのは解せないわ、ディオドラ。あなた、求婚の意味を理解しているのかしら?」

リアスは迫力のある笑顔で言いかえす。最大限最慮しての言動だったが、キレているのは傍から見ても一目了然だ

ディオドラは笑みを浮かべたままだ。それが不気味さを醸し出している

「―――わかりました。今日はこれで帰ります。けれど、僕は諦めません」

ディオドラは立ち上がり当惑しているアーシアに近づく。そして、アーシアの前へ立つと、その場で跪き、手を取ろうとした

「アーシア。僕はキミを愛しているよ。だいじょうぶ、運命は僕たちを裏切らない。この世のすべてが僕たちの間を否定しても僕はそれを乗り越えてみせるよ」

そう抜かして、アーシアの手の甲にキスをしようとする

ガシ!

俺がディオドラの手を掴み立ち上がらせる

「さっさと失せろ勘違い野郎。アーシアはおまえのことが嫌いだってよ」

俺が手を掴みながらそういう。するとディオドラは爽やかな笑みを浮かべながら言う

「離してくれないか?薄汚いドラゴン―――それも人間に触れられるのはちょっとね」

―――へぇ。それがおまえの本性か。俺に対して暴言を吐いたんだ。死ぬ覚悟はできてんだろぉなァ!

俺がこいつを首を掴みへし折ろうとした瞬間―――。

バチッ!

アーシアのビンタがディオドラの頬に炸裂した。アーシアは俺に抱きつき叫ぶように言った

「そんなことを言わないでください!」

……まさか、アーシアがビンタをかますとは思わなかった。しかたねぇ、こいつを殺すのは勘弁してやろう

「なるほど。わかったよ。―――では、こうしようかな。次のゲーム、僕はリアスさん達に勝つ。そのあと赤龍帝と決闘しよう。それに勝ったら、アーシアは僕の愛に答えて欲し―――」

「お前如きがリアス達に勝てるわけねぇだろう」

こいつが言いきる前に俺がそういう。本当なら俺が直接こいつを殺してぇところなんだけど勘弁してやるか。見たところこいつはリアスはおろか、ソーナにすら負けそうな程のザコだ

俺とディオドラが睨みあう

そのとき、アザゼルのケータイが鳴った。いくつかの応援のあと、アザゼルはリアス達に告げる

「リアス、ディオドラ、ちょうどいい。ゲームの日取りが決まったぞ。―――五日後だ」

その日はそれで終わり、ディオドラは帰っていった。もしディオドラがリアス達に勝ったら、俺が直接ぶっ殺してやろう。俺はあいつの処刑方法を考え、今日一日を終えた

 

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