ハイスクールD×Dの規格外   作:れいとん

36 / 55
放課後のラグナロク
第三十五話


放課後の部室。

俺たちはここでお茶をしていた。アーシアが初めての修学旅行でそのことを嬉しそうに話している。

ちなみにアザゼルはここにいない。あんなんでも一応一つの勢力のトップなのだ。この前の『禍の団』襲撃の件で奔走している。

「そう言えば二年生は修学旅行の時期だったわね」

リアスは紅茶を飲みながらそう言った

「リアスお姉さまと朱乃さんは去年どこに行ったんですか?」

アーシアの質問に姫島が答える

「私たちも京都ですわよ。部長と一緒に金閣寺、銀閣寺と名所を回ったものですわ」

リアスがうなずきながら続ける

「そうね。けれど、以外に三泊四日でも行ける場所は限られてしまうわ。あなたたちも高望みせず、詳細な時間設定を先に決めてから行動したほうがいいわよ?日程に見学内容と食事の時間をキチンといれておかないと痛い目に遭うわね。バスや地下鉄での移動が主になるでしょうけれど、案外移動も時間がかかってしまうものだわ」

「移動の時間まできちんと把握しておかなかったのがいけませんでしたわね。部長ったらこれも見るあれも見るとやっていたら、最後に訪れる予定だった二条城に行く時間がなくなってしまい、駅のホームで悔しそうに地団駄踏んでいましたわ」

姫島が小さく笑って言うと、リアスは頬を赤らめた。容易に想像できるな

「もう、それは言わない約束でしょう?私もはしゃぎすぎたわ。日本好きの私としては憧れの京都だったから、必要以上に街並みやお土産屋さんに目が行ってしまったの」

思い出を楽しそうに語るリアス。よっぽど京都が楽しかったのだろう。しっかし……

「修学旅行で訪れるまで京都に行ったことなかったのか?魔法陣で移動すればすぐじゃねぇか」

俺がそう言うと、リアスは人差し指を左右に振るう。まるでわかってないわねと言いたげだ。……うぜぇ。

「わかってないわね、一誠。修学旅行で初めて京都に行くからいいのよ?それに移動を魔法陣でするなんて、そんな野暮なことはしないわ。憧れの古都だからこそ、自分の足で回って、空気を肌で感じたかったの」

リアスの目が爛々と輝いている。こいつ、こういうことになると夢中になるよなぁ。サーゼクスは子供のころからの夢とやらに関することになると同じになる。いや、サーゼクスだけじゃない。どのような存在であれ、多かれ少なかれこういったことがある。アザゼルだったら神器に関することなどだ。――自分にとって楽しいことか……。俺だと……戦い?いや、そんなことはねぇな。いつも一方的に終わってしまう。だから楽しんだことなんて記憶にない。……あれは楽しかったか……。そう考えるとやはり戦いか?

俺が自分の考えに没頭しているとリアスの声に意識を取り戻す

「旅行もいいけれど、そろそろ学園祭の出し物についても話し合わないといけないわ」

「学園祭も近かったですね。うちの学校って、体育祭、修学旅行、学園祭は間が短く、連続でおこないますからね。そう考えると僕たち二年生は結構大変ですね」

この学校はお祭り好きなのだろうか?

リアスは姫島からプリントを受け取って、テーブルの上に置いた。どうやら、オカルト研究部の出し物をそれに書いてソーナに提出するみたいだ

「だからこそ、いまのうちに学園祭について相談して、準備しておかないと。先に決めてしまえば、あなたたちが旅行に行っている間に三年生と一年生で準備できるものね。今年はメンバーが多くて助かるわ」

「学園祭楽しみです」

アーシアが楽しそうに言う。アーシアはこういうイベントが大好きだ。

「うん。私もハイスクールでの催しは楽しいぞ。体育祭も最高だった」

ゼノヴィアは表情を変えないものの、その瞳は輝いている。こいつ、ただでさえ身体能力が高いのに加減というものを知らない。そのせいで、体育祭で運動部の連中をぶっちぎりで追い抜いて各種競技で一位を乱獲していたらしい

「私もこういうの初めてだから楽しみだわ~。良い時期に転入したよね、私!これもミカエルさまのお導きだわ!」

イリナは天に祈るポーズでそう言う。教会トリオは学園祭を心底楽しみにしているようだ

そのときリアス達の携帯が同時に鳴る

リアスは息を整えたあと、真剣な声音で言う

「―――行きましょう」

 

 

<木場視点>

町にある廃工場。

そこには僕たちグレモリー眷属とイリナさんは訪れていた。

すでに日は落ちていて、空は暗くなりつつある。薄暗い工場内に気配が多数。さらにそれらは殺意と敵意に満ちている。

「―――グレモリー眷属か。嗅ぎつけるのが早い」

暗がりから現れたのは、黒いコートを着た男性だ。男の周囲の暗闇から人型の黒い異形の存在が複数姿を覗かせていた。十じゃきかない数だ。この狭い工場内に人型モンスターが百はいるだろう。

部長が一歩前に出て冷たい声音で訊く。

「『禍の団』―――英雄派ね?ごきげんよう、私はリアス・グレモリー。三大勢力にこの町を任されている上級悪魔よ」

部長のあいさつを聞いて、男は口の端を吊り上げる

「ああ、存じ上げておりますとも。魔王の妹君。我々の目的は貴様たち悪魔を浄化し、町を救うことだからな」

僕たちのことを、ゴミを見る様な目で見てくる。

そう、こいつは『禍の団』の英雄派という派閥の構成員だ。ここのところ、この英雄派が僕たちの町を小規模に襲撃してくる。というよりも、各勢力の重要拠点を英雄派の構成員が襲来する事件が多発している。

最近僕たちはこいつらを迎撃している。相手のほとんどは人間だ……。

男の横から、さらに人影が二つ。異形だけではなく、人間だ。サングラスをした男性と中国の民族衣装的な服を着た男性。今回の襲撃者の三人は全員外国人だ。

変わって異形のほうは、早く言えば戦闘員。英雄派ではあれを兵隊として使っているようだ。それでも、そこ等辺の下級悪魔じゃ相手にできないほど強い。中級悪魔以上の実力が求められるが、幸運なことに僕たちは、実力だけなら中級から上級悪魔並みだ。

僕とゼノヴィアが前衛のツートップで行って、イリナさんが中衛で場合によっては前衛、その場に合わせて臨機応変に戦ってくれる。小猫ちゃんとギャスパ―くんは中衛で、部長と朱乃さん、アーシアさんが後衛だ。

敵は僕たちのフォーメーションを確認すると、黒いコートを着た男性が手から白い炎のようなものを発現させた。

僕はその光景に目を細める。

「―――っ。また神器所有者か」

そう、こいつもだ。

英雄派がけしかけてくる構成員はそのほとんどが神器所有者だ。神が残した『神器プログラム』より授かった異能の力で僕たちに向かってくる。

「困ったものね。ここのところ、神器所有者とばかり戦っているわ」

部長も嘆息していた。しかし、その瞳には決意がみなぎっている。

炎を揺らす男がこちらへ攻撃をしかけた瞬間―――。

ズバッ!

ゼノヴィアがアスカロンでその炎を切り裂き、構成員へ切りかかるが避けられる。けど、その余波で異形のほうは十匹くらいは一気に屠られた。

異形の戦闘員は倒すと宙に消えるように霧散する。

この建物内じゃゼノヴィアはかなり戦い辛い。ここは僕が神器所有者を倒したほうがいいだろう。

「聖剣使いのパワーに気をつけろ!俺たちじゃ一撃でやられる!だが、工場内では派手な攻撃はできん!」

計算済みか。なら、僕が!

ヒュッ!

僕は神速でサングラスの男性に切り込むが―――工場内の影が伸びてきて僕の聖魔剣をのみ込んだ。刹那!

ビュツ!

僕自身の影から聖魔剣の刀身が勢いよく飛び出してきた!僕は体を捻って回避し、後方へ下がる。

「―――っ!影で飲み込んだものを任意の影へ転移できる能力か……。直接攻撃のタイプじゃない。攻撃を受け流すタイプの防御系だね。厄介な部類の神器だ」

僕は目を細めながらそう言う

僕がそのまま距離を取ろうとした瞬間―――。

ビュゥゥゥゥッ!

僕の視界の隅に青く光り輝く何かが映り込んだ。

そちらへ目を向けると―――民族衣装の男が光でできているであろう弓で、同じく光の矢を撃ち出す瞬間だった。

光―――。まずい!光は僕たち悪魔にとって猛毒だ。しかも未知の部分が多い神器からの攻撃。あの光の弓矢にどんな特殊能力が付加されているかもわからない。一撃でも喰らったらマズイ!

光の矢が放たれる。しかも、それは空中で軌道を変えて僕たちに迫ってくる!撃ちだしたあとでも軌道変更可能な能力か、やっかいな。

バチッ!バチンッ!

僕の後方からも光が何発か飛び出していく。

相手側からとこちらから放たれた光の一撃が宙でぶつかり、弾けて消えた。

「光なら任せてちょうだいな!」

振り返ればイリナさんが手に光を生み出していた。転生天使のイリナさんは光力を使える。光の槍を放って、相手の神器の攻撃を相殺したのだろう。

バキバキッ!ビュッ!

何かが凍る音、そして空を切る音もする。

朱乃さんが氷の槍を魔力で作りだし、光使いへと放り投げたのだ。しかし、影が伸びてきて槍を吸い込み、その氷が部長の影から出てくる。だが、部長はなんなくそれを避ける。

例の影使いが仲間の周りに影の壁のような物を作り出し、そこから光の矢や炎が襲い掛かってくる。

「やっ!」

僕とゼノヴィアがそのすべてを叩き潰す。

「ギャスパ―くん!データは?」

僕は相手から目を外さずに後方にいるギャスパ―くんへ話しかける

後方で機械をずっといじっていたギャスパ―くんが答える。

「は、はいぃぃぃっ!で、出ました!そ、そちらの方が炎攻撃系神器『白炎の双手』!そっちが防御、カウンター系神器『闇夜の大盾』!さ、最後にあちらが光攻撃系神器『青光矢』ですぅっ!」

ギャスパ―くんはアザゼル先生が開発した機械で相手の神器を調べていたんだ。先生の神器スキャンマシンは最近大いに役立っている。神器所有者戦でとても有効だ。

「まだおわんねぇのかよ」

僕たちがこれからどうしようと考えていると聞きなれた声が聞こえる。

「一誠さん!」

僕はその声の主を確認して驚きの声を上げる。

「一誠!あなた部室で待っていたんじゃないの?」

部長がそう訊き返す。一誠さんは『禍の団』が襲ってきてもザコに興味はないとか言って今まで迎撃に出たことは一度もなかった。なのにどうして?

「さっきまでドライグと話していたんだけどな、未知の部分が多い神器所有者が多いらしいから少しは楽しめるかと思ってな」

そう言っておもしろそうに影の壁を見る一誠さん

「赤龍帝!」

そう影使いが叫ぶ。

「なんだ、俺のこと知ってんのか?」

「当たり前だ!神滅具をその身に宿す人間のクセに悪魔に与する裏切り者め!」

一誠さんを憎悪の目で見る影使い。

「ああ、なんだ。神器を宿していた所為で碌な人生を送れなかったって奴だろ?おまえら」

一誠さんは嘲笑い、そう言う

「貴様に何がわかる!」

「ああ゛?しるかんよ、んなこと。てめぇらの人生なんか知ったこっちゃねぇしな。それよりてめぇら、俺を楽しませてくれよ?」

そう言って魔力でできた槍をものすごい速さで投擲する一誠さん。それは影の壁を破って、炎使いを串刺しにする

「なっ!?」

あとの二人は驚愕の表情で一誠さんを見ている。

「許容量を超えた一撃だと吸い込めないようだな?」

そう言ってもう一度槍を投擲する一誠さん。影使いと光使いは慌てて転がるように避ける。

ドゴォォォォォンッ!

一誠さんが投げた槍は廃工場の壁を吹き飛ばし遥か、空の彼方へと消えた。

「この程度の攻撃は反応できるのか」

いつの間にか光使いの真横まで移動していた一誠さんは少しだけ感心したようにそう言う。

「まぁただの神器所有者にしちゃぁ、ソコソコできるほうか?」

ドゴォッ!

一誠さんがそう言いながら光使いを踏みつぶした音だ。

「さて、後はてめぇだけだがどうする?」

影使いの前まで行き、槍をかまえながら一誠さんはそう言う。その瞬間―――

ビュッ!

いきなり一誠さんの影から光の矢が出てきて、一誠さんを狙ったのだ。

一誠さんはそれを頭を軽くずらすだけで避け、その影の中に攻撃をする

ドオォォンッ!

僕たちの後方上のほうから爆発音。どうやら上のほうにもう一人潜んでいたらしい。

「逃げ脚だけは速いようだ」

一誠さんの目の前にいた影使いが消えていた。おそらく、さっきの仲間の不意打ちの際に転移か何かで逃げたようだ。

 

 

「お疲れ様です、一誠さん」

アーシアが俺に近づいてくる。

異形の戦闘員は神器所有者を叩きのめした瞬間霧散した。

「まったく、ずいぶん派手にやったわね」

リアスが腰に手を当てながら俺にそう言ってくる。

「そうか?死なない程度には手加減したぞ」

「見つけたぞ。虫の息だが死んではいない」

そう言って気を失ったボロボロの男を運んでくるゼノヴィア。その男を冥界への移送用魔法陣に放り込む。

「冥界への移送も終わり。まあ、今回も良い情報を得られそうにないでしょうね」

リアスはため息をつく。

どうやら、連中は負けた瞬間から、英雄派に身を置いていた時の記憶が消去されるようにしているらしい。そのおかげで連中から有益な情報が取り出せないのだ。

「それにしても、何か変よね」

イリナがあごに手をやり、考え込むようにそう呟く

「何がだ?」

「だって、私たちと英雄派が戦ったのって一度や二度ではないでしょう?それこそ、本気で私たちを倒したいのなら、最初の二、三回ぐらいで戦術家はプランを立ててくると思うの。それで四度目辺りで決戦をしかけてくるでしょう。でも、四度目、五度目でもそれは変わらなかった。ずいぶん注意深いなーと感じたけれど……。なんていうかな、彼らのボス的な存在が何かの実験をしているんじゃないかしら?」

「実験?私たちの?」

姫島の問いにイリナは首を捻った。

「どちらかというと、彼ら―――神器所有者の実験をしているような気がするの。……私の勘だから、ハッキリした意見は言えないんだけれど……。この町以外にも他の勢力のところへ神器所有者を送り込んでいるのだから、強力な能力を持つ者が多いところにわざとしかけているんじゃないかしら」

イリナの意見に全員が黙り込む。確かにその通りだろう。俺とアザゼル達の見解ではその考えあってはいる。連中の目的はおそらく―――。

「……劇的な変化」

小猫がぼそりと呟いたところでリアス達の表情が強張る。

「確かにそう考えれば納得がいくわね」

リアスが頭に手を当て、ため息をつきながらそう言う

「……赤龍帝、雷光を操る者、聖魔剣、聖剣デュランダルとアスカロン、時間を停止するヴァンパイア、仙術使いの猫股、しかも優秀な回復要員までいる……。相手からしてみれば、私たちの力はイレギュラーで強力に感じるでしょうね。勝つ勝たない以前に、私たちと戦うことは人間からしてみたら、尋常じゃない戦闘体験だわ」

つまり、相手からしたらこいつらは経験値稼ぎのレア敵ってことになる。禁手に至る一押しなんて人それぞれだ。何が原因で禁手するかわかったもんじゃない。

「やり方としては強引で、雑とも言えますね」

木場の言葉にイリナも続く

「何十人、何百人死んでも、一人が禁手に至ればいいって感じよね。……いえ、戦闘で仲間がやられていくのも劇的な変化に繋がるかもしれないわ……。どちらにしても最低な発想よ……」

リアスは肩をすくめる。

「わからないことだらけね。後日アザゼルに問いましょう。私たちだけでもこれだけの意見が出るのだから、あちらも何かしらの施行は感じ取っていると思うし」

リアスがそう言って帰宅用の魔法陣を展開し、俺たちはオカ研の部室へと戻る。

部室に戻り、皆が一息つき、帰り支度をするなかで、姫島が鼻歌を歌っている。

「あら、朱乃。随分、ご機嫌ね。S的な楽しみができたの?」

リアスの問いに姫島は満面の笑みで答えた。

「いえ、そうではなくて、うふふ。明日ですもの。自然と笑みがこぼれてしまいますわ。デート。明日一誠くんは私の彼氏ですわ」

そう、ディオドラの一件が終わり、人間界に戻ってすぐのときに、姫島に誘われたのだ。アザゼルに頼まれていたこともあり、俺は了解したのだが……。

姫島の言葉に空気が一瞬で変わり、リアス達からの殺意が一斉に俺へと向いたのだ。

 




更新が遅くなって申し訳ないです。
一度書いたのをミスして保存できず、リアルが忙しいこともあり、遅くなりました。誠に申し訳ございません。

前に言っていたなのはは一話目を書き終わり、今二話目を執筆中です。sts編を書き終わったら投稿しようと思いますので、楽しみしてくださっている方はしばらくお待ちください
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告