ハイスクールD×Dの規格外   作:れいとん

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ついに最終回です。今まで御付き合いくださった方々、お気に入り登録してくださった方々。
本当にありがとうございます。最後の最後まで駄文でありますが、楽しんでいただければ幸いです。


第四十八話 終幕

「―――なに……あれ……?」

叫んだだけで大地を吹き飛ばし、空を振るわせ、空間を破壊した異質の化け物をリアスは呆然と見上げる。

本能的に恐怖を感じているからだろう。その体は震えている。いや、リアスだけではない。アーシアはむろん、木場やアザゼル。あのサイラオーグやヴァーリですら震えているのだ。

「あれは……っ!」

リアスと同じく呆然と怪物を見上げるアザゼルだが、その怪物の事を知っているかのようだ。

「知っているのか?」

ヴァーリがアザゼルに問いかける。アザゼルは怪物を見上げながら口を開く。

「―――その昔、俺が堕天するよりも遥かに昔。まだ、『神器』なんて物が生み出される前の話しだ。……世界に突然化け物が現れた。それは世界中にいた生命を全て滅ぼす様な勢いで破壊をまき散らしていった。そのあまりの力に、古の神々ですら抵抗することはできなかった。聖書の神が残った神仏と共に何とかその怪物を封印することに成功したんだが。―――それがあれだ。グレートレッドと共に黙示録に記されし存在、『黙示録の皇獣(アポカリプティック・ビースト)666(アンノウン)666(スリーシックス)ってのが、不吉な数字なのは知っているな。獣の数字。それの大元になったバケモノだ。……しかしなるほど、まさか聖槍に自分の意志と共に封印するとはな。道理で封印されたあれが見つからないわけだ。各勢力が血眼になって探していたのが最強の神滅具である聖槍に封じられているなんて、誰も思いもしない。―――だが、なぜいまになって封印が解けた?」

アザゼルの言葉を、その場にいる全員が聞く。しかし、化け物の正体が分かったところで何も対抗策が思いつかない。それ以前に、あれにダメージを与えるというイメージすらわかない。戦闘狂であるヴァーリやサイラオーグすら戦おうという気力が出てこないのだ。アザゼルだって具体的な対抗策が思い浮かばない。あれは聖書の神すら理解できなかった存在だ。アザゼル達程度でどうこうできるようなものではない。

その場にいる殆どの者が諦めかけている中、一人だけまったく違う反応をする者がいた。―――一誠だ。

「―――クッハハ。アッハハハハハハハハハハハハハハハッ!」

いきなり狂いだしたように笑い始める一誠。禁手は解かれていて、いつもと変わらない普通の格好に戻っている。

「ハハハハハハハハッ! そうかそうか、そういうことかっ! (エーテリオン)いる(在る)んだ、お前がいても(存在しても)おかしくねぇよなァ! 聖書の神が封印することしかできなかったみてぇだが、そんなもの当たり前だ! お前を滅ぼせるのはこの世界で俺だけなんだからよォ! アハハハハハハハハハッ!!」

狂おしそうに、愛おしそうに、まるで無邪気な子供のように笑い叫ぶ一誠。聖書の神すら理解できなかった化け物を知っている風な物言い。さらにあれを、この世界でも自分しか滅ぼせないと断言する。そんな一誠を訝しげに見ているアザゼル。周りの者は唖然と一誠を見ており、いつの間にか一誠の隣に降り立ったルフェイだけが一誠を心配そうに見ている。

しかし、一誠はそんな周りを気にもせずに叫ぶ。

「何千何万、どれだけの時をお前は待っていた!? 永遠にも等しい時間をどんな気持ちで過ごしていた!? お前は俺に会えてうれしいかっ!? 俺は嬉しいよ!! お前に会えたことを心の奥底から喜んでいるッ!! なぁ、お前はどうなんだ!? 随分と長い時間、待たせて悪かったな!! ―――『忘却の王』エンドレス(終わり亡き者)!!!」

そう、聖槍から解き放たれた怪物。グレートレッドと共に黙示録に記された獣。過去に古の神々を殆ど滅ぼした化け物。その存在こそ『忘却の王』エンドレス。『無限』であり『夢幻』でもある存在。オーフィスやグレートレッドすら遠く及ばない、一誠と同等かそれ以上の『力』を宿す化け物。

―――世界とは安定を求める。聖書の神には魔王、無限の龍神には夢幻の真龍。常に対となるものが存在することで世界はバランスを保つ。もし、そんな世界に突出したバケモノが現れたらどうなるか? 簡単だ。それと同等の存在、対となるものを生み出すのだ。その末に誕生したのが兵藤一誠(エーテリオン)だ。一誠(エーテリオン)が存在するからエンドレスが存在するわけではない。エンドレスが存在していたからこそ一誠(エーテリオン)存在(誕生)したのだ。存在も、記憶も、概念も。世界中のありとあらゆるものを忘却させる事ができる規格外の存在に対抗できる存在として生み出された一誠(エーテリオン)もまた、規格外であるのは必然と言えよう。

エンドレスは『無限(オーフィス)』や『夢幻(グレートレッド)』を忘却することが可能だ。そしてオーフィスとグレートレッドはエンドレスに勝つ(滅ぼす)ことができない。エンドレスを滅ぼすことが可能な一誠(エーテリオン)が『無限(オーフィス)』や『夢幻(グレートレッド)』に勝つことができるのは当然の事と言える。

「兵藤、お前は『あれ』が何なのか知っているのか……?」

アザゼルが呆然と一誠に問いかける。普通に考えれば、一誠があれを知っているはずがない。なぜなら、あれが現れたのは一誠が生まれる遥か昔の事だからだ。いや、存在自体はオーフィスから聞いていたかもしれない。しかし、だ。聖書の神すら封印することしかできず、最後の最後まで何なのか解らなかったあれが何なのか知っているというのは、いくら一誠でもありえない。しかも666(アンノウン)という名前ではなく、別の名前で呼んだ。『忘却の王』と、『終わり亡き者(エンドレス)』と、まるでそれこそが怪物の本当の名前であるように。一誠は知っている。あれが何なのか、どういった存在なのかを、この世界で唯一知っている。知っていて当然なのだ(・・・・・・・・・・)

一誠は笑い声をピタリと止めると、顔に笑顔を張りつかせながらエンドレスに熱い視線を向ける。そしてそのまま、まるで淡々と物語を読み聞かせるように語り始める。

「―――あれは『業』にして『罪』。絶対の断罪者であり破壊者。『無限』にして『夢幻』。究極の『無』にして絶対の『破壊』。エデンの園に居たアダムとイブは知恵の実を食べたことにより『原罪』を与えられた。―――あれは『人類』が犯してきた『業』そのもの。『ヒト』という存在が犯してきた『罪』の形。それを清算させるために生み出された世界の修正力。この世界の『悪意』と『記憶』それが具現化した集合体。『人類』が犯した『業』と『罪』を裁くための執行者。―――いや、この世界には神や魔王が存在するんだから『人類』だけとは言えねぇか……」

最後はそう自嘲気味に呟く一誠。

周りの者は結局エンドレスがどういった存在なのか理解できなかった。しかし、一誠は気にしない。アザゼル達がエンドレスを理解できようができまいが関係ないからだ。『兵藤一誠(エーテリオン)』が存在して、『終わり亡き者(エンドレス)』が存在する。それが今の一誠にとって何よりも重要な事だ。

『グアァァァァァァァァアアアァァァァァッッ!!』

エンドレスが腕を振り上げる。それを見て、一誠以外の全員が直感する。あれはマズイと。

エンドレスは振り上げた腕を横薙ぎに振るう。そして、音もなく冥界の首都リリス、その優に半分が消え去った。建物も舗装された道路も、その下に存在した大地も全てが消え去ったのだ。底が見えないほどの大穴が姿を見せる。幸いにもリアス達は無事だった。一誠がエンドレスの攻撃を防いだのだ。

しかし、リアス達はそのことに感謝することができなかった。エンドレスの余りにも出鱈目な力を目の前で見せつけられ、恐怖という感情しか浮かんでこなかったのだ。ヴァーリやサイラオーグ、アザゼルですら恐怖で顔を染め、その体を震わせている。エンドレスの攻撃を防いだ一誠は嬉しそうに笑う。

「ハッハハハハハハハッ! 流石だなぁエンドレス、『忘却の王』よ! 俺とオマエ、どちらが生き残るかを賭けて殺し合おうじゃねぇか!!」

そう言って、エンドレスの方へ飛び出そうとする一誠。そんな一誠の腕を掴んで止める存在がいた。

「一誠……さま……」

恐怖で体を震わせながらも、不安と心配を織り交ぜた様な表情で一誠を引き留めるルフェイ。そんなルフェイを見て、一誠は静かに片手を伸ばす。ルフェイは伸びてきた手を見て、思わず目を瞑ってしまう。しかし―――。

ぎゅぅ。

一誠はルフェイを静かに、そして力強く抱きしめる。

「―――すまねぇ、不安にさせちまったか? 大丈夫だ、落ち着いた」

「あ、だ、大丈夫です。私の方こそ、すみません」

一誠に抱きしめられながらそう言われ、顔を真っ赤にしながらもそう言い返すルフェイ。

一誠はそのままルフェイをしばらくの間抱きしめる。ルフェイの声、服の上からでも感じ取れる鼓動、呼吸、匂い、温もり。ルフェイの存在、その全てを噛みしめる様に抱きしめる一誠。

一誠は静かにルフェイから離れる。

「さてと―――」

一誠は空間を歪ませると、そこから一本の杖を取りだす。

一誠の身長の程の長さがある長大な杖。先端が杭のようにとがっており、左右が鳥の翼を何枚も重ねた様な形をしている。その中心に至宝があり、その中には端が花弁の様な十字架、それにクロスする形の剣。さらにそれを掴む赤い龍が描かれていた。

「―――まさか、こいつが必要になる日が来るなんてな。これも必然か?」

一誠は苦笑しながら杖を掴む。傍目から見ても強力な力を宿していると判る。

一誠はそれを両手で掴むと、地面に突き立てる勢いでかまえる。

そして変化が現れた―――。

『グオオオオォォォォォォォ……』

エンドレスの上空の空間が渦巻くように捻じれ、エンドレスをそのまま飲み込んでいった。

『時空の杖』。RAVEの世界において、エンドレスを呼び出すためにリーシャ・バレンタインが創りだした杖。世界と世界を繋ぐ鍵。

これはそれを元に、一誠が独自に創りだした物のひとつだ。しかもエーテリオンを使用できる一誠が創った杖は、リーシャが創ったオリジナルに勝るとも劣らない性能をしている。

「……倒したのか……?」

呆然とアザゼルが呟く。出鱈目な力を見せたエンドレスが簡単にこの場か消え去ったのだ。他の者も呆然と一誠を見ている。

「いや、倒したわけじゃない。俺はただ飛ばしただけだ」

どこにとは聞けなかった。一誠がそう呟いたあと、酷く清んだ瞳で空を見上げていたのだ。何かを訊こうと、話しかけようという気になれなかったのだ。

「―――さて、ちゃっちゃと倒してきますか」

一誠は誰にともなくそう呟く。

一誠はルフェイの方を向くと、口を開く。

「ルフェイ、あれを倒しに行ってくるな」

「―――っ! はい、いってらっしゃい……き、気をつけ……気を付けてくださいね……」

ルフェイは涙を流し、言葉に詰まりながらもそう言う。そんなルフェイを見て、一誠は苦笑する。

「泣くなよ。俺が強いことは知ってんだろ?」

「はい。そ、それでも、やっぱり心配なんです」

ルフェイは子供のように泣きじゃくりながらそう言う。一誠は苦笑したままルフェイの頭を撫でる。

「ハハハ。俺みたいなのを心配してくれるなんてルフェイは優しいな。―――そうだ」

一誠はルフェイに時空の杖を差し出す。一誠に促され、戸惑いながらも杖を受け取るルフェイ。

「それは『時空の杖』って名前でな。昔俺が創ったんだ。お守り代わりにルフェイにやるよ」

一誠がそう言うと、ルフェイは受け取るのを拒否する。

「受け取れません! だ、だってこれが無いとあの化け物とどう戦うんですか!!」

一目見ただけで分かる、この杖が強力な物であると。持てる切り札、その全てを使わなければエンドレスを倒せないと判断するルフェイ。それなのに強力な武器であるこの杖を受け取るなんて事はできない。

「杖が無くとも、エンドレスくらい楽勝だ。それともルフェイは俺のことが信じられないか?」

「違います。違いますけどぉ……」

首を横に振るいながらそう言うルフェイ。一誠はルフェイの涙を拭き取りながら言う。

「それじゃ、その杖はルフェイに預けておくことにする。俺はエンドレスを倒したら必ず戻ってきて、その杖をルフェイから受け取る。な?」

一誠に優しくそう言われ、ルフェイは無言でコクリと頷く。それを確認した一誠は、ルフェイの頭を撫でると、周囲を見渡す。

「―――リアス、いろいろすまなかったな。お前と過ごした時間は楽しかった。朱乃、せっかく家族がいるんだ、もう少し仲良くしてやれよ。ああ見えてバラキエルは弱いところがあるからな。アーシア、すまなかったな。お前が作ってくれたご飯、美味かった。木場、お前は強い。焦らずゆっくりと研磨していけば魔王クラスにだってなれるだろう。修行することを怠るな。ゼノヴィア、お前はもう少し技量を磨け。せっかくの聖剣なんだから使いこなせないと宝の持ち腐れだぞ。小猫、力は所詮力だ。恐れずに前へ進めばどんな力だって扱える。ギャスパー、お前は立派な男だよ。現に神滅具所有者を撃退したんだからな。どんな状況でも諦めることをするな。イリナ、お前の明るさは良いことだと思う。ただ、もう少し盲信的なのはどうにかした方が良いと思うぞ。アザゼル、迷惑をかけた。お前には世話になったな。ヴァーリ、『覇龍』を独自に昇華させたのは見事だ。あの出力なら神仏にだって届くだろう。あとはそれを持たせられるスタミナを身に付けることだ」

一誠はひとりひとりの目を見ながらそう言う。最後に後ろを向くと、ルフェイの目を見ながら真正面に言う。

「―――ルフェイ。俺―――兵藤一誠はルフェイ・ペンドラゴンを愛している。―――お前のことが好きだ」

一誠がそう言うと、ルフェイはまた涙を流し始める。

「わ、私……る、ルフェイ・ペンドラゴンも、兵藤一誠のことを―――」

ルフェイはそこから先を言うことができなかった。一誠が人差し指で唇を止めたからだ。

「返事は帰ってから聞くよ。―――行ってきます」

「―――はい! 行ってらっしゃい!!」

ルフェイは涙を零しながらであるが、笑顔で一誠を送りだすことができた。

 

 

『ククク。まさか相棒が告白するはな』

上空をものすごい速度で飛ぶ一誠にそう話しかけるドライグ。

「なんだよ、俺がルフェイに告白するのがおかしいのか?」

少しばかり不貞腐れたようにそう言う一誠。

『いや、別に。俺は嬉しく思うよ。相棒が心から守りたいと思う者ができて』

「―――ああ」

『ならば、返事を訊くためにもあの化け物を退治しなければな』

「俺は鬼退治をする桃太郎か?」

『―――バケモノを退治するのは何時だって人間だ。そうだろう?』

「そうだな。―――なら、さっさと倒して帰るとするか!」

『その意気だ、相棒!』

一誠とドライグはエンドレスを飛ばした場所―――次元の狭間へと突入する。

 

 

広大な次元の狭間。世界と世界の壁の様な所であり、『無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)』オーフィスと

真なる赤龍神帝(アポカリュプス・ドラゴン)』グレートレッドが生まれた所でもある。そんな次元の狭間に異質の化け物が存在していた。『忘却の王』エンドレスだ。

エンドレスが咆哮し、腕を振るうだけで辺りが消し飛んでいく。どうやら次元の狭間を忘却させようとしているらしい。実際にそれだけの力がエンドレスには存在するのだ。

『グアアアァァァァアアァァァァッッ!!』

ただの方向で神仏すら簡単に消し飛ばすほどの衝撃が発生する。まさしく規格外のバケモノ。

ドガァァァァァアンッ!

そんなバケモノ、エンドレスに攻撃を加える者が現れた。―――一誠だ。一誠はエーテリオンを足に籠め、そのままエンドレスの顔面に蹴りを放ったのだ。

「悪いな、エンドレス! 個人的な用事で速く帰りてぇんだ、とっととお前を滅ぼしてやるよ!!」

一誠がそう叫ぶが、エンドレスにダメージを与えることはできていなかった。

「―――っち! やっぱこの程度じゃダメージは与えられないか」

舌打ちしながらそう言う一誠。そんな一誠にドライグから警告が発せられる。

『相棒! 後ろだ!』

ドライグの声に反応して一誠が振り返ると、そこには目の前に高速で迫っているエンドレスの手の平があった。

「―――オラァ!!」

回避は不可能と判断した一誠は拳にエーテリオンを籠めると、迫ってくる手の平を殴る。

エンドレスの手と一誠の拳がぶつかった瞬間、ものすごい衝撃が生まれる。

「―――っ!?」

拮抗は一瞬だった。簡単に力負けした一誠はそのまま地面へと吹き飛ばされる。まるで人が蠅を叩き落とす様な感じで一誠を吹き飛ばすエンドレス。

一誠は大地を砕きながら着地する。

「やっぱり強いな。流石は『忘却の王』か……っ!」

全力ではないとは言え、かなりの力を籠めた一誠の拳を簡単に押し返したのだ。純粋な力ではエンドレスに勝てないとみるべきだろう。

『まさか、ここまで相棒が一方的に吹き飛ばされるとはな。とんでもないバケモノだ』

「……ッハ。俺の方が強ぇよ」

ドライグが呆れながらそう言い、一誠は強がりを見せる。実際に勝てないほどではない。やりようによっては勝てる。

怪我は負っていないが、殴った方の腕が痺れている。近接戦ではなく遠距離で戦うべきだろう。

「お前を跡形もなく消滅させてもらおうか!!」

右腕にエーテリオンを即座に溜め、一歩踏み出すのと同時に腕を突き出しそれを放つ。

ズグワアアアァァァァァァァァァッッ!

エンドレスと次元の狭間の万華鏡の様な空が爆風で見えなくなる。普通の相手でなくてもこれで終わるだろう。しかし―――。

ドガァァアンッ!

何時の間にか一誠の目の前に現れたエンドレスが腕を振り下ろす。そしてそのまま、一誠を地面に押し付ける様に叩き潰す。

「―――がァッ!!?」

致命傷にこそならなかったが、激痛のあまりにうめき声を出す一誠。

「こんの……クソガァッ!!」

一誠はエーテリオンで構成した巨大な槍を掴みながらエンドレスへと突っ込む。

 

 

「オーフィス、頼むぞ!」

アザゼルはグレートレッドと共に降り立ったオーフィスへとそう言う。

オーフィスはコクリと頷くと、両手を前に突きだす。そして、そこに円形の鏡の様な物が現れる。アザゼルはそれに用意していた特殊な魔法陣をかざす。

「よし、これでミカエル達にも様子が伝わるはずだ」

次第に鏡の様なものに何かが映り始める。―――そこには一誠が映っていた。

「頼むぜ、兵藤。俺たちじゃどうすることもできねぇ」

アザゼルは悔しそうにしながらもそう言う。

「一誠さま……」

ルフェイは杖を両手で抱え込むように握ると、心配そうな表情でそれを見る。しかし、不安は一切なかった。約束してくれたのだ、帰ってくると。それならば、ルフェイ自身は信じて待つだけだ。

全員が一誠を映し出したそれに注目する。―――そこには、『無限』や『夢幻』ですら恐怖するほどの『バケモノ』が殺し合いをしていた。

 

 

一誠が極大の槍を振るう。エンドレスはそれを無雑作に掴むと、握りつぶす。エンドレスが反対の手で一誠を殴り飛ばそうとする。それを一誠は空中で横回転し、その勢いのままエーテリオンの槍を手の甲に突きさすことで回避する。一誠は槍を突きさした勢いのまま、エンドレスの顔面に蹴りを放つ。エンドレスの周りに大量の魔力弾の様な物が現れる。嫌な予感がした一誠は、エンドレスから離れる。そして、それが放たれる。数えるのがバカらしくなるほどの弾が一誠に向かってくる。少なくとも数億、数十億では到底足りない数だ。弾幕などという生ぬるいものではない。もはや、壁だ。大量の『点』ではなく『面』が断続的に襲ってくるのだ。もうひとつ理由があるが、オーフィスやグレートレッドでも防ぎきることは不可能だ。弾による壁が一誠を襲う。避け、または槍で弾きながら防いでいく。一誠に当たらなかった弾が地面に当たると、その部分が消失していく。一誠が槍をエーテリオンで構成している様に、エンドレスも弾を『忘却』の力で構成しているのだ。この弾に当たったモノは『忘却』の力に晒され消失する。バアル家の滅びの魔力に近い物がある。だが、こちらの方が規模も強さも凶悪さも桁違いだ。これに触れて消失しないのはエーテリオンくらいだ。このままでは防ぎきれないと判断したのだろう。一誠は、瞬間的にエーテリオンを周りにまき散らすことで弾幕を吹き飛ばす。さらに、一誠の周りに数百のエーテリオンの槍が出現する。それを前方に放つと同時に、一誠は突っ込む。前方に放った槍が障害となる弾の壁に穴を抉じ開けていく。そして、一誠は壁を抜けた所で―――囲まれた。上下左右前後、三百六十度全体を『忘却』の弾によって囲まれていたのだ。そして、その弾が弾ける。圧倒的なまでの『忘却』の力が一誠を襲う。エーテリオンを全身に纏い、なんとかその場から抜けだす一誠。そんな一誠にエンドレスは追撃を仕掛ける。口の所に集めた力を、まるでドラゴンのブレスの様に放つ。弾幕から抜けだした一誠は少しばかり反応が送れ、その圧倒的なまでの『忘却』の力による砲撃を回避できない。一誠はなんとか防いだものの無傷とはいかなかった。落下しながら体勢を立て直そうとする一誠にエンドレスはその巨大な腕を叩きつける。

ドガァァァァァァァァァァァァンッッ!

圧倒的な破壊と衝撃をまき散らして、一誠は地面へと叩きつけられた。

「―――っ! ガハ! ゲホッ!」

何とか立ち上がるも、口からは大量の血を吐きだす。

「クソ、出鱈目だな。……俺と敵対した奴もこんな心境だったのか?」

荒くなっている呼吸を唱えながらそう呟く一誠。深い傷は無いが、全身から少なくない量の血が流れている。

『―――ッ!? 相棒!!』

ドライグからの切羽詰まった叫び声。一誠が慌てて周囲を見渡すと、そこには目の前に迫る『忘却』の弾がひとつ。

それを避けようとする一誠。しかし―――。

ガクッ!

全身から力が抜けたように、膝をつく一誠。

(―――ッ!? やべぇ、体がうごかねぇ。クソッ! 体さえ動けばこの程度の攻撃なんか余裕で防げるってのに!)

一誠は体に力を入れて動かそうとするが、動かない。

(こんな所で俺は死ぬのか? ……まぁ、別にそれでもいいか。敗北ってのを知ることができたし、最後にこれだけの戦いができたんだ。俺が死のうが誰も―――)

《一誠さま……》

一誠の頭の中に一人の少女の声が響く。それが聞こえた瞬間、一誠の体は動いていた。

「―――ッ! オラァ!!」

急に立ち上がった一誠は、そのまま弾を弾き飛ばす。一誠は綺麗な金色の髪をしている一人の少女を思い出しながら、自嘲気味に笑う。

「ハッハハ。なに諦めかけてんだ、俺らしくもない。―――ルフェイから返事を聞くまで、俺は死ねないんだよォッ!!」

そう叫び、満身創痍でありながらエンドレスを睨みつける一誠。その瞳には先ほど以上の意思が宿っていた。

『ハハハハッ! どうだ相棒、誰かがお前の事を待っているというのは?』

「かなり気分が良いな。こういったのも悪くない」

ドライグの問に、一誠はゆっくりと息を吐いてからそう答える。

『そうだな。それにお前はルフェイ・ペンドラゴンから告白の返事を聞くためには帰らねばならん』

「ああ、そうだ。生まれて初めて愛の告白なんてしたんだ。返事を聞かねぇと、死んでも死にきれねぇ。―――それに、ルフェイに『行ってきます』って言っちまったからな。」

一誠は左腕に籠手を出現させながらそう言う。

『そうだ。そのためにもお前はあのバケモノを倒さねばならない』

「やってやるさ。楽勝だ、そんなもん。―――往くぞ、ドライグ!」

『おう! それでこそ俺の相棒! 往くぞ、赤龍帝兵藤一誠!!』

一誠の左腕の籠手の宝玉から莫大な量のオーラが放たれる。辺り一帯にものすごい力を放出しながら一誠は唱え始める。

「我、目覚めるは―――力の真理に辿り着きし赤龍帝なり―――」

籠手から力の籠った声が響き渡る。

『世界が終わる! 夢が始まる!』

『無限と夢幻をも降した!』

『我らは辿り着いた、故に新たな答えを求め彷徨う!』

その声からは恨みや妬みなど一切無い。そこに籠められているのは誇りだ。自分たちこそが『赤龍帝』であるという誇り。神や魔王を凌駕すると云われる二天龍、『赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)』ドライグに認められ共に戦ってきたという誇りだ。

「無限の煉獄と永劫の夢を抱いて求道を往く―――我、真なる龍の帝王と成りて―――」

一誠の体を赤いオーラが覆っていく。

「「「「「「汝を紅蓮の業火が燃え盛る覇道の終わりへと誘おう―――ッ!」」」」」」

Juggernaut(ジャガーノート) Over(オーバー) Drive(ドライブ)!!!!!!!!!』

籠手から鎧が発生していき、一誠の体を包み込む。一際大きな発光が終わると、そこには規格外の何かが存在していた。

全体的に鋭利なフォルム、背中から生える羽の部分が透るクリアな赤色の一対の翼。そして何よりも目立つ部分が左腕だ。全てを切り裂きそうなほど鋭そうな巨大な爪になっている。

「―――『大破壊の赤龍帝(ジャガーノート・オーバー・ドライブ)』、これが俺の導き出した『答え』だ」

一誠がそう小さく呟く。

『グアアアァァァァァァァアアアアァァァァァァッッ!!』

エンドレスが叫び、『忘却』の力による弾幕の壁を放ってくる。

「―――無駄だ」

一誠が背中に生えている翼を一度だけ軽く羽ばたかせる。そして、それだけで弾幕の壁はひとつ残らず吹き飛ばされる。

一誠はまるで、エンドレスの足に線を引くように指を横に振るう。

ズシャァァァァァァァッ!!

たったそれだけで空間ごと足は切断され、エンドレスは倒れる。

一誠はエンドレスの真上まで移動すると、そのままエンドレスを見下す。

「正直、使いたくなかった。これはかなりリスクが高いからな。オマエみたいな出鱈目なのが相手だとそれなりに力をださなければならない。―――だが、この程度なら問題ないようだ」

一誠は通常の大きさのエーテリオンの槍を手元に創りだす。

「―――増大しろ」

『Accele Full Booster!!!!!』

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!!!!!!!!!!!!』

一誠は槍を倍化していく。槍の大きさに変化はないが、目に見えて籠められた力が増大している。

―――これが『大破壊の赤龍帝』の能力。倍化していくモノの力はもちろん、その能力や力の特性までも倍化していく。例えば消滅の魔力だとしたら、魔力の力と消滅の力。この両方を倍化していくのだ。

先ほどのはそれの応用。『魔導精霊力(エーテリオン)』は時間や空間に多大な影響を与える。その特性を利用して空間ごとエンドレスの足を切り裂いたのだ。やろうと思えば、生物に流れる時間を倍化して一瞬で老化させることも可能だ。

「これで終わりだ、『終わり亡き者(エンドレス)』。お前は俺が戦ってきたどの存在よりも強かった。俺は生涯お前との戦いを忘れない。―――ありがとう」

最後のその言葉には、万感の思いが込められていた。

一誠は槍を投擲する。それはエンドレスを貫き、次元の狭間の広範囲に破壊の嵐を巻き起こす。

「―――帰るか」

一誠はそう踵を返す様に反転すると、鎧を解除する。これでようやく帰れる、ルフェイの元へと戻れると気分を高揚させる一誠。しかし―――。

『ゆるさぬ……』

突然の声。一誠が反射的に振り返ると、エンドレスの巨大な手に掴まれる。体の殆どが消し飛んでいたが、エンドレスはまだ生きていたのだ。

『ゆるさぬ……ゆるさぬ……』

「―――っぅ! このくたばりぞこないがッ!」

一誠は何とか脱出しようともがこうとするが、満身創痍の体では動くこともままならない。

『忌々しきその力を宿し者……貴様だけでも……』

エンドレスの残った体が光を放ちながら膨張を始める。

「―――なっ!? てめぇ、まさかッ!!?」

そこで初めて一誠の表情が焦りをおびる。

『貴様も道連れだ……』

「ルフェ――――」

ズグワアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッ!!!

エンドレスの体が弾け、巨大な爆発が巻き起こる。

RAVEの世界において、世界の十分の一を吹き飛ばした大爆発。―――『大破壊(オーバードライブ)

 

 

その衝撃は冥界全土に及んでいた。空間の割れ目からいくつの光帯が溢れ出し、その光が地面に当たった瞬間大爆発をまき散らしていったのだ。幸いにも人のいる様な所で爆発は起きなかったが、冥界全体を爆発の振動と爆風によるかなりの規模の揺れが襲う。

「―――っ!? 一体何が起こった」

振動により倒壊した建物の瓦礫に押しつぶされそうなったが、アザゼルはそう叫ぶ。

一誠を映していた鏡の様な物は、今は何も映さない。

「オーフィス! どうして映らなくなった!?」

アザゼルがオーフィスに叫びながら訊く。

「我とグレートレッド、一誠の居場所が分からない。ドライグ、気配を感じない」

オーフィスは静かにそう応える。オーフィスとグレートレッドがドライグの気配を頼りに映像を映し出していたのだ。気配を感じないということはつまり―――。

「一誠さまが……死んだ……?」

呆然とそう呟くルフェイ。

「嘘ですよね……?」

ルフェイが信じられないようにオーフィスの方を見るが、オーフィスは首を横に振るうだけだ。

「―――っ」

ショックのあまり、ルフェイは一誠に託された杖を抱きしめたまま気絶する。―――こうして規格外の化け物同士による殺し合いは終結した。

 

 

『禍の団』の旧魔王派による冥界襲撃から半月後。

悪魔、天使、堕天使の三大勢力と北欧、ギリシャは次元の狭間で行方不明となった一誠の捜索をした。しかし、これといって何かを見つけることはできなかった。さらに、最後の大爆発の影響で冥界全土に少なくない被害がでた。幸いなことに人的被害は少なかったが、破壊された町の復興やそれの協力があり、それが終わるまで一誠の捜索は打ち止めとなった。

さらに兵藤一誠というバケモノが消えたことから、この世界の覇権を狙って動くものが増えた。

一誠がエンドレスという最大最悪のバケモノを倒したというのに、平和とは程遠い。

 

 

とある町のとある公園。

その公園のベンチに腰を降ろすひとりの女性がいた。―――ルフェイだ。

「―――ふぅ。お買い物はこれぐらいで良いかな?」

ルフェイは腰の隣に降ろした買い物袋を見て、そう言う。

「ん~。気持ちいいなぁ」

ルフェイはぐっと腕を伸ばすと、軽く体を伸ばす。

「……一誠さま。貴方が行方不明になって半月も経ちました。きっと一誠さまの事だから、どこかで生きているんだと思います。一誠さま、私が思っている以上に月日が過ぎるのは速いです。私、まだ返事をしていないんですよ? このままだとお婆ちゃんになってしまいます」

ルフェイは青空を見上げながらそう呟く。最後の方は頬を膨らませて不満気だ。

「―――はは、それは大変だな。でも、ルフェイならお婆ちゃんになってもかわいいと思うけど?」

そうルフェイに話しかける男性がいた。

「そんなこと言われても嬉しくありません! もう少し乙女心を知るべきだと思います!」

ルフェイは、瞳の端に涙を溜めながらそう言う。

「それはすまない。今までそんなものを知る機会が無かったからな。もしかして嫌われたか?」

「嫌いです、大っ嫌いです! あれから半月ですよ。女の子を待たせるなんて、男性として最低です!」

ルフェイは溢れ出る涙を止められず、ボロボロと流しながらそう言う。

「確かにそうだ。惚れた女性を待たせるなんて最低だな」

「そうです! 最低です! 理解したのなら少しは反省してください!」

涙を流し、唇を震わせるルフェイ

「ははは、思った以上に重体でさ。ここの町に戻ってくる直前まで体が動かなかったんだ」

「それでもお便りのひとつくらいは送ってくれても良かったじゃないですか!」

ルフェイは目の前に立つ男性をしっかりとぼやける視界に納める。

「確かにそうだな、それは俺の落ち度だ。すまなかった」

「絶対に許してあげません! 貴方なんか大っ嫌い!」

ルフェイがそう怒鳴ると、目の前の男性は肩をすくめる。

「それが告白に対する返事か? 俺の初めての告白がここまで強烈に拒否されるなんて傷付くなぁ」

「……好きです、好きに決まってます! 私、ルフェイ・ペンドラゴンは貴方の事を愛しています。そんな解りきった事を聞かないでください!」

ルフェイは静かに立ち上がる。目の前の男性は苦笑している。

「今日はルフェイに怒られてばっかりだな、悪かった。―――ただいま、ルフェイ」

「一誠さま!!」

ルフェイは涙を流しながら一誠に抱きつく。抱きついてきたルフェイを優しく受け止める一誠。

「―――おかえりなさい」

涙を流しながら、笑顔でそう言うルフェイ。そしてどちらかともなくキスをする。

 

 

―――人生とは旅をすること。

 

―――旅をするとは生きるということ。

 

―――それは時に辛く、困難でもある。

 

―――しかし、支え助け合える存在がいるからこそ歩きだせる。

 

―――いつまでも……ずっと……。

 

―――時には喜び、時には怒り、時には笑い、時には泣き、そして時には恋をする。

 

―――これはそんな普通の少年の物語。

 

―――一誠の旅は終わらない。




そんなわけで最終回でした。ラスボスはみんな大好きエンドレスさんです。

ここまで長かった。ヘルキャット編でアザゼルのセリフとしてラスボスの伏線をはったり、どうやってエンドレスを出そうかと無い頭捻ったり。本当に長かったです。

本編はこれで終了ですが、後日談を投稿する予定なので、これが最終話ではないです。

それでは、長い間ありがとうございました!
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