「流石に体が凝る。停止世界で動くのは存外疲れるな」
ダンジョンのどこかで、絶対悪は目覚める。この絶対悪は本当の絶対悪ではない。ただ体を借りただけの絶対悪にすぎない。だが、侮るなかれ。確かに本物の絶対悪よりは弱い。本物の様にすべての悪は背負えない。
それでも、下手な勇気や叡智など踏み潰すことができるのだから。
「封印されてやってから少なくとも千年は経ったか」
醜悪な3つの龍の顔。その背中に背負う悪。拝火教の一柱であり、人類を根絶しかねない試練の具現化『人類最終試練』。名はアジ=ダカーハ。
「このままここにいても我が存在意味は果たせるのだろうか?」
「否、ならば我が存在意味を果たす為に行動を開始しよう」
今、悪が動き出す。
× × ×
これはむかーしむかしのそのまた昔のお話。
人類は平和に暮らしていました。
誰もがこの平和は無くならないと感じていました。
しかしそれは間違いだったのです。醜悪な顔を3つ持った悪い龍が現れたのです。悪い龍は、人を殺し、国を壊し、残虐非道を尽くしました。
勿論そんな事を人類が許すはずがありません。
人類は武を持ってその龍を倒そうとしました。
しかしその龍は圧倒的な力を持ち、人類の武を打倒しました。
これでは敵わないと思った人類は叡智を持って倒そうとしました。
しかしその龍は人類の叡智を上回る叡智で叩きのめしました。
人類は絶望しました。
そんな時に神が現れました。
「あれは人類に倒せるものではない。私がやろう」と言いました。
しかし、その龍は神を倒しました。
今度こそ人類は絶望しました。
それから10年後。
1人の勇者が現れました。
勇者はこう言いました。
「人類の武も叡智も叩きのめされた。ならば、あとは勇気を試すしかない!」と。
それこそが龍を倒すのに一番大事なものでした。
そして、龍は勇者の前に現れこう言いました。
「来るがいい英傑!そして踏み超えろ!我が屍の上こそ正義である!」
こうして龍と勇者は戦いました。結果は勇者の負けでした。
しかし勇者は成されるがまま倒されたわけではありません。龍に封印を施したのです。
しかし、龍は怒りました。
「我が試練のを乗り越えるのではなく先延ばしにするというのか!」と。
龍は太陽のような光を地球に撃ち放ち大きな穴を作りました。
そのあとに、龍の血を垂らしました。やがて、それはモンスターになりました。
こうして人類は敗北し、龍は大きな傷跡を残し封印されました。
これを見ていた神は反省しました。
「なぜ私たちは手伝わなかったのか」と。
神の一部は地上に降りてきて人類の手助けをしました。
人類に龍の残したモンスターに対抗できるように強くなることができる力を授けました。
人類はそれを駆使してモンスターを龍の作った穴に閉じ込めることができました。
めでたし、めでたし。
× × ×
パタン。
僕は、唯一英雄が負けたおとぎ話「悪の龍」を閉じた。
「神様」
「ん、どうしたんだい?ベルくん」
「これって結局人類はどうやっても悪の龍を倒せなかったのに、本当にめでたいのでしょうか?」
「…それはわからないよ。結局子供達は悪龍に負けて、モンスターを閉じ込めただけだからね」
僕がいつもこの話を読んで本当にめでたかったのかなって思う。人類は自分の力じゃ何もできなかったのに。
「そんなことよりベルくん。そろそろダンジョンに行かないで大丈夫かい?」
「あぁ、そうだった!約束があるんだった!神様行ってきます!」
ドタドタドタ。
静かになった廃協会で神は静かにつぶやく。
「絶対悪アジ=ダカーハ…か」
そのつぶやきは風にさらわれていった。