魔法少女リリカルなのはINNOCENT ブレイブバトル   作:blueocean

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DUEL12 剣士の戦い

「あれが黒崎の………」

 

黒装束の袴と自身の背丈ほどあるのでは無いかと思わせる長刀。長刀と言ったが刀と言うよりは大剣に近い。

 

『今日は2連戦もあるのね……』

「焔、油断しないでくれ。相手はさっきとは違って手強いんだ」

『分かってるわよ、雰囲気がさっきとは大違い』

 

分かっている様で安心した。焔は事前にバトルすると言っておかないとやる気が無いことが多い。俺にとっても相手が強いかどうか関係なく、剣の腕を上げる為には同じく剣を扱う相手と戦うのが良いはずだ。

 

「………よし!!」

 

地上ステージで空中戦は無しと、少々特殊なステージで戦う。場所は城内の一室で襖と畳が敷き詰められた日本の白の様な一室で、室内での狭いステージでの戦闘となる。

 

『これじゃあ私は出番無いかな………狭いステージじゃ、ただの的にしかならないだろうし』

 

とつまらなそうにユリは言うが、元々黒崎との勝負にブラックサレナを使う気は無かった。

 

「準備は良いか?」

「………ああ!!」

 

黒崎の声に抜刀の構えをとって答える。黒崎は頷いて刀を前に構える。

互いに動かずに見据え、静止する。時が止まっている様な感覚の中、先に動いたのは黒崎だった。

 

「はっ!!」

 

無駄な動きの無い、真っ直ぐ振り下ろした。

 

「………」

 

俺は冷静に見極める。無駄の無いスムーズな動きではあるが単調である為避けるのは容易だった。

 

(少し下がってそのまま抜刀で………!?)

 

しかし下がったと同時に刀が首元を掠めていた。

 

(な、何が………)

『マスター!!』

 

驚愕している俺にすかさず追撃に動く黒崎。

突きによる攻撃は何とか身体を捻り、避けるものの……

 

「ぐっ………」

 

その動作に連動するように振るわれた薙ぎ払いに吹っ飛ばされた。

幸運なのは刃とは逆の部分だったので斬られずに済んだことか………

 

「くっ………」

 

洗練されたまさに手本のような太刀筋。だからこそ見極めやすい筈……そう思っていたが結果は簡単に制されてしまった。

 

「こんなんじゃ駄目だ」

「そうだな」

「!?」

 

いつの間にか黒崎がすぐ近くまで来ていた。

 

「零治には致命的な弱点がある」

「弱点!?」

「口で言うより、先ずは自分で体感した方がいいだろう。行くぞ!!」

 

そう言うとまたも黒崎から斬りかかって来る。

 

(今度こそちゃんと見極める!!)

 

黒崎は先ほどと同じ様に上段から真っ直ぐ振り下ろして来る。そして次にすかさず連撃で来るだろう。先ほどと全く同じということは無いだろうがそれでもそれに近い動きの筈だ。

 

(来る!!)

 

振り下ろされた刀を確認し、再び少し下がる。

 

(まだだ、まだ攻撃が………!!)

 

だがそこから今度は突きが俺を襲った。先ほどとは違い、次があると予想していた為、ギリギリの所で鞘で防げたが、間一髪だった。

しかしは先ほどの黒崎の言葉の意味が分かった。

 

(フェイントか!!)

 

黒崎は途中、刀の軌道を変えていたのだ。だからこそ、振り下ろしのタイミングで待っていた俺は黒崎に首元を掠められ、慌てることになったのだ。

 

「分かったか?零治は相手の動きをよく見て攻撃に移るみたいだけど、そう判断した後直ぐに目を切る傾向がある。だからこそフェイントには気がつかなかったんだ。今みたいにフェイントが来ても対応できる様になればスキル無しでの近戦戦闘に負け続けることはないだろう」

「なるほど………」

 

思い返してみれば、レヴィとの戦いの時もにたような展開が多かった。鎌で斬りかかると判断した後、回転させてタイミングをずらし、攻撃をされてしまった。刀の扱いを磨く事しか頭に無かったが、こういった原因も関係して来るのか………

 

「さて、一旦仕切り直しだ。次からはスキルも混ぜて行くぞ」

「ああ、来い!!」

 

この戦いは思った以上に為になりそうだ。

 

「行くぞ!!」

 

今度はあえてこっちから攻める。

 

「はあ!!」

 

普通なら返し技として使う抜刀術を攻めで使う。少しは予想外の動きに戸惑うかと思ったが、黒崎は冷静だった。

 

「うぐっ………!!」

 

抜刀した直後のタイミングで黒崎が一気に迫り、鍔迫り合いになってしまった。しかし攻撃に転じた筈が受け止める側になってしまい、勢いは完全に殺されてしまった。

 

(だけどおかしい………スタートは俺の方が速かった。こっちが遅れるほど相手が速いのか?だが流石に………)

 

そこで1つ可能な手が思いついた。

 

「スキルか!!」

「正解。スキル『瞬歩』。音を立てず高速移動できるスキル。これは感知タイプがいない限り、移動に気がつかれることはまず無い。欠点としたら移動距離が極端に短い点くらいだな。………だがこの狭いステージでこれほど頼りになるスキルは無い」

「なるほど………」

 

本当に恐ろしいスキルだ。相手を目視していなければ使った事さえ気づかないかもしれない。更に回避にも適しているだろう。そしてこのステージとの相性も最高だ。

 

「だが、俺もただやられるだけは無いさ!!」

 

鍔迫り合いで力がぶつかり合う中、タイミングを見計らい、腹に蹴りを入れ、黒崎を下がらせる。

 

「ちっ……」

「魔神剣!!」

 

欠かさず斬撃を飛ばし、黒崎を下がらせる。

そして互いに再び距離が出来た。

 

「………さて、当てるとなると虚を突くか、それともタイミングを見極めるか………」

 

いくら強いスキルでも連続使用や多用は無理な筈。先ほど痛い目にあっているが、今出来るのはこれしか無い。虚を突ければ間違い無いだろうが………

 

(思いつかん……!!)

 

そんな事を考えている内に黒崎が動く。瞬歩で、一瞬消えたように見えたのだが、視線の中に入ってたので完全に見失う事は無かった。

 

「そこ!!」

「やるな!!」

 

死角の右側から斬りかかってきた黒崎の攻撃を鞘で受け止める。力も相手の方が上なので長々と鍔迫り合いは直ぐに押し切られてしまう。

 

「おっ!?」

 

相手の隙を突き、攻撃を流す。黒崎のような大きい刀では無理だが、俺くらいの刀なら造作も無い。

そして体勢を崩した黒崎を掴んで投げた。

 

『マスター!?折角体勢を崩したのに………』

「いや、多分誘ってた。投げられたのは幸運だったよ」

 

あまりにも受け流しが簡単だった。嫌な予感がしたので、投げてあえて再び距離をとった。整理する時間が少しでも欲しいという気持ちもあったのも投げに移ったのだろう。

 

「さてどうするか………」

 

結局振り出しに戻った。体勢を立て直した黒崎はいつ再び攻撃してきてもおかしくない。

 

「ん?そういえば………焔、確かこの前のレヴィ戦の後、新しいスキルが追加されたって言ってたよな?」

『そうね。………でも今のマスターじゃ使いこなせるか………でもこのステージとあの高速移動のスキルとの相性は最高なのよね……』

「なら使ってみようぜ。………ってかそれにかけるしか打開策が思いつかない」

『分かったわ、でも覚悟してね。この技は………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうやら作戦タイムは終了みたいだな」

 

投げられた後、黒崎は再び攻めに移らず、零治の様子を見ていた。

 

「しかしさっきはよく気がついたな………」

 

鍔迫り合いで体勢を崩された黒崎は、そこに攻撃すると思ってスキルを放つ準備をしていた。

 

そのスキルを『白雷』と言い、指先から細い直射砲を発射する技であり、スタイルを選ばないことで使っている人は多い。メリットとしては指先から使う技なので相手に気付かれ辛く、貫通効果もある為、防御が硬い相手にも有効である。デメリットは単純に威力が低めなのと射程が短いことだろう。

 

これならば体勢が悪くとも当てることができ、なおダメージも低いながらも確実に与えられる。

 

「前の喧嘩の時も思ったが、相手の動きを見ているようで直感で動く事も多いな」

 

それは強みでもあれば弱点でもある。

 

「まあいい、久し振りのブレイブバトルで動けるか不安だったが問題ない。………次の攻撃で早々に終わらせてもらう!!」

 

そう言いつつ、黒崎はスキルを発動させた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『マスター来ます!!』

「魔神剣!!」

 

瞬歩で消えた瞬間に抜刀と共に魔神剣を放つ。

瞬歩が終わったと同時に当たるように魔神剣を放った。焔の計算に間違いが無ければ直撃する筈だ。

 

「よし!!」

 

狙い通り、姿が見えたと同時に魔神剣が黒崎を襲う。スキルの後であり、連続して使用出来なければ当たるが………

 

『嘘っ!?タイミングは完璧だったのに………』

「本当に厄介なスキルだな………」

 

危惧していた連続使用が出来るスキルだった。後はどれ位多用できるのかと、魔力の消費量など気になる点はあるが、避けるのに後退した今、仕掛けるしかない。

 

(レヴィの使っているスプライトムーブの様な滑らかな動きをするほど動けていない。なら………!!)

 

魔神剣で抜いた刀を鞘に戻し、抜刀の構えで待ち構える。

それと同時にまた黒崎が動いた。

 

「裂空刃!!」

 

抜刀と共に連続して高速で刀を振るう。

 

(ぐうっ………!!)

 

その動きは高速で刀を何度も振るう為、スキル効果で、使い手にも一定時間、腕の動きを遅くする効果がある。だがその分の効果はあった。

 

「これは!!」

 

瞬歩で近づく黒崎に零治が発生させた風の刃の壁が黒崎を襲う。

 

「くっ!!」

 

咄嗟に刀を横に構えて盾にして守りに徹するが、かまいたちの様な風の刃が容赦なく黒崎を襲った。

 

「まさかこんな技があるなんてな………」

 

全てを受けた黒崎のダメージは軽くない。それでも動きに支障が出るほどでは無かった。

 

「だが終わりじゃない!!砕氷刃!!」

 

守りで完全に足が止まった黒崎に零治は直ぐに追撃をかける。

 

(刀が重い!?)

 

裂空刃の影響で刀の振るうスピードは遅いものの、今の黒崎は無防備だ。

 

「くそっ!!」

 

零治の動きに虚を突かれた黒崎はその攻撃を避けきる事は出来なかった。何とか攻撃を浅く受けるのに身体を懸命に逸らす事で精一杯だ。

 

「ぐっ!?」

 

バツの字に斬る零治の攻撃を受け、黒崎の身体は凍っていく。

 

「しまった!?」

「足さえ止められればこっちのもんだ!!黒崎覚悟しろ!!」

 

再び刀を鞘に戻し、魔力を込める。

 

「くっ、くそっ………!!」

 

黒崎は懸命にもがくが、中々氷から抜け出せない。

 

「よし、行くぞ!!葬…!?」

 

いざ、攻撃をしようとした零治を6本の帯状の光が零治の胴を拘束し動けなくした。

 

「これは……バインド!?」

「スキル、六杖光牢………」

 

そう言ってニヤリと笑みをこぼした。

 

「形勢逆転だな」

 

拘束していた氷を破壊して黒崎が呟く。砕氷刃はあくまでも攻撃スキルであり、拘束効果も付加されているだけで、バインドスキルと比べると拘束時間は短い。

 

「今度はこちらの番だ………」

 

そう言って黒崎は刀に魔力を収束させていく。恐らく使うはずだった葬刃と似た様なスキルだろう。

まだダメージは軽いとはいえ、とても無防備では耐えきれる威力ではなさそうだった。

 

『万事休すね………』

 

焔がそう呟く中、零治は数日前の会話を思い出していた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日前………

 

「なあシュテル。シュテルってさ、防御スキル使わずに攻撃を防いでる時あるよな?」

 

いつも通りの日だった。夕食後のブレイブデュエル。今日の相手はシュテルであり、ディアも観戦していた。因みにレヴィはやり忘れた宿題をユーリの監視の元消化している。

 

「あれは魔力を使ってシールドを作り、攻撃を逸らしているだけです。………と言っても完全に防ぐとなるとそれ相応以上の魔力を使います。まあ少しの魔力を上手く操作して威力を減らし、耐えると言ったやり方もあるにはありますが、そこまでやるなら素直に防御スキルを使った方が効率的です。………なので私は主に攻撃を逸らすのにだけ使いますね」

「因みに操作云々説明していたが出来るのは恐らくシュテルだけだ。………と言うより魔力で攻撃を防いだり逸らしたりする戦い方をするのもシュテルくらいだ。我も出来なくはないが、かなり精密な魔力操作を必要とする為、我は滅多にしない。それをするならスキルを使うわ。これを戦闘中涼しい顔でやるシュテルは本当に恐ろしいことよ………」

「恐縮です………」

 

と嬉しそうに言うシュテルだが、それほど凄い芸当だとは思わなかった。

 

「しかし魔力ってそんな使い方があるんだな」

「魔力は防御では無く、攻撃にも使う事は出来るぞ。例えば、拳に魔力を集め、殴れば、ダメージを増やした拳になる。刃を作って飛ばす事も不可能では無い。………まあ出来るかは別だがな」

「私もそこまでは無理ですね………私の場合は魔力を使う量を自分で操作して、無駄なく効率よく使う様に心がけているのが主な利用方法です。私は魔力がそれほど多くありませんから」

「なるほど、魔力もただスキルを使うだけじゃないって事なんだな。………要するに魔力に不可能は無いって事?」

「一応……ではあるがな」

 

魔力をただのエネルギーと言った認識しか無かったが、極めれば幾らでも様々な使い方が出来るらしい。

 

「基本的な使い方としてはやはりスキルに使用だな。後、相手のスキル効果の解除も魔力を応用すれば早める事が可能だ」

「そんな事も出来るのか」

「でもその分操作するのは難しいですよ。それに魔力が多ければ多いほど操作が難しくなる。レイは慣れるまで時間がかかるかもしれませんね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれから練習したわけじゃないけど………普段葬刃を放つのに魔力を調整してるし………一か八か………!!」

 

そう呟きながら集中する。イメージとしては内に力を溜め込み、一気に放出するイメージ。

 

「行くぞ月牙……!?」

「はあああ!!」

 

気合いとともに魔力を解放。俺の賭けは上手くいったようだ、拘束していた帯を破壊して動けるようになった。

 

「まさか六杖光牢を!?ちいっ!!」

 

両者とも技を使う直前であった為、タイミングはほぼ同じ。

 

「葬刃!!」

「月牙天衝!!」

 

互いに魔力を込めた斬撃を繰り出す。違っていたのは黒崎の斬撃は飛ばすタイプのものだった事。しかしこの近い距離では関係無かった。

 

互いの力と力のぶつかり合い。

先ほどの拘束を解除するのに魔力を使ってしまったため、威力は半減するものの、黒崎の月牙天衝に負けていない。裂空刃の影響もバインドでの時間で無くなっていた。

 

 

「ぐぐぐ………!!」

「負け……るか……!!」

 

数秒の筈がとても長く感じる。膠着状態が続く中、均衡が崩れたのは同時だった。

 

「なっ!?」

 

月牙天衝を葬刃が斬り裂き、黒崎を襲った。

 

「よし!!」

 

だが、斬り裂かれた斬撃は消える事が無かった。

 

『マスター!!』

「えっ?」

 

勝ちを確信したのがいけなかったのか、その事に気が付かなかった。

 

「あがっ!?」

「ぐうっ!!」

 

葬刃と月牙天衝が互いを襲うのは同時だった。それと同時にダメージが響き、身体が凄く重くなる。

 

『………マスター』

「分かってるよ………負けたな………」

 

月牙天衝のダメージが大きかったのか、それともそれまでのダメージが、徐々に蓄積していたのか、俺の身体は動かない。

 

「だけど、とても為になった………」

 

自分では気が付けなかった欠点を見つけられた気がする。問題はどう改善していくか。

 

「やる事は一杯あるな………」

『………あれ?LOSEって表示されないわね?』

 

言われてみればそうだ。俺は動けないので負けなのは間違いないのだが………

 

『DRAW』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか黒崎も戦闘不能になってたとはな………」

「零治の裂空刃をそのまま受けてしまったのが仇となったみたいだ………葬刃の威力も凄まじかったしな」

 

結果は引き分け。黒崎も俺の葬刃を受けて戦闘不能となっていた。俺としては負け同然なのだが、システム上の判断なので文句は言えない。

 

「凄いな2人共!!まるで剣士の一騎討ちみたいだったぞ!!」

 

そんな俺達を神崎が興奮した様子で迎えてくれた。

 

「剣士か………」

「俺はまだまだだけどな………」

 

神崎の感想は嬉しいのだが、とてもそう言われる程の戦いを見せられたとは思えなかった。

 

 

「やっぱり剣術習った方が………」

「俺は悪くないと思ったけどな。零治の場合は型にはまった剣術よりも自分なりの戦い方の方があってると思ったぞ」

「それが一番難しくてずっと悩んでるんだけど………」

 

何度もそう考えて戦ってきたが、そのどれもがシュテル達には通じなかった。

 

「まああくまで俺の感想だからな。1つの意見として聞いてくれてればいいよ」

 

そう言って黒崎は近くの椅子に座った。

 

「俺もあれくるらい戦えるようになりたいな………」

 

そう呟く神崎。どうやらブレイブデュエルにはハマった様だ。

 

「だったら頑張るんだな。神崎は普通に戦えるようになればかなり強くなれると思うぞ」

 

何せ、最高ランクのパーソナルカードに最高の魔力と元は最高なんだからな。

 

「そうだよな………よし!!やってやる、やってやるぞ!!!そして女の子達と………痛っ!?」

 

そう呟いた瞬間に頭を引っ叩いた。

 

「何を考えているのかあまり考えたくないけど、もしやったらぶん殴るからな」

「もう殴ってるじゃないか………」

 

涙目で訴える神崎を無視して俺はスマホを確認した。

 

「あっ、買い物頼まれてる………悪い、俺、今日はこれで帰るわ」

「そうか、………じゃあ俺も今日は帰ろうかな。明日から頑張るわ」

 

 

((ああ、こいつ、後回しにして結局やらないタイプだ………))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?一心は一緒に帰らなかったのか。妹達ももう帰ったぞ」

 

零治達が帰った八神堂。休憩を終え、再び受付を変わろうとヴィータと共に降りてきたシグナムが黒崎の姿を見つけ、話し掛けた。

 

「一心!!」

 

ヴィータが嬉しそうに黒崎に駆け寄る。黒崎は小さく微笑んで迎えた。

 

「ヴィータ、シグナムさん………」

「ほう………なるほど、そう言う事か」

「?」

 

シグナムは1人納得した中、ヴィータは訳が分からず首をかしげている。

 

「直ぐにやるか?」

「はい、よろしくお願いします。………直ぐにでもやりたい」

「分かった。じゃあ私が相手しよう。久々だからだと言え、手加減はしないからな」

「望むところです!」

「何2人で話し進めてるんだよ!!一体何の話だよ!!」

 

2人だけで話を進める様子に不満そうにヴィータが叫んだ。

 

「ヴィータにもお願いしたいな」

「だから何を!!」

「当然、ブレイブデュエルさ。次の戦い、零治はもっともっと強くなる。だから俺も………」

 

そう言って黒崎は1枚のカードを取り出した。

 

「ほぅ、それは………」

「次、負けない為にも、俺はこのカードを使いこなしてみせます!!」

 

そのカードを握り締め、黒崎は力強く答えた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごちそうさまでした………」

 

さて、その日の夕食を終えた直後だ。

 

「レイ、お話があります。ここでちょっと待っててください」

 

そうシュテルに言われて、俺はその場で食後のお茶を啜っていた。

 

「何の話かしら………?」

「はっ!!まさか昨日こっそりシュテルが隠してたプリンを食べちゃった事がバレちゃった!?」

「お前、何やってんだよ………」

 

チビットもどきのくせにやけに食い意地があるユリ。昨日はレヴィのチョコを勝手に食べて怒られていた筈………

 

「焔、ちゃんと見てろよ………」

「私、その子の保護者じゃ無いのだけれど………」

「妹みたいなもんだろ?」

「それは否定できないけど………まあ頑張ってみるわ」

 

とそんな事を話しているとシュテル達がやって来た。

 

「済まんな、待たせた」

 

そう言ってディアを中心にレヴィ、シュテル、ユーリが並んで座る。

 

「どうした?みんな神妙な顔して。もしかしてこいつの食い意地はそんなに問題か?」

「ま、マスターもっと優しく扱って!!」

 

そう言って元凶のユリを掴んで見せる。

 

「それは後で本人にじっくり聞くので良いです。今日は別の話です」

 

そう言ってシュテルはディアを見る。ディアは何も言わず、頷いて話し始めた。

 

「レイはもうブレイブデュエルの団体のランキング戦、誰か組む相手を決めたか?」

「いや、決めてない。出たいとは思ったけど、誘う相手がいなくて出るかどうかも迷っていたところだ」

「ならば我等ダークマテリアルズの一員として一緒に大会に出る気は無いか?」

「俺が………ダークマテリアルズに?」

「そうだ」

 

願ってもない誘いだった。誰かを誘うにしても大会まではあまり時間が残されていない。最悪出られなくても今回は良いかとも思っていたが、まさか全大会1位のチームから誘いがあるとは………

 

「ん?でも1人増やしたら誰か出れなくなるんじゃないのか?」

「それは心配ないよ。だってボク等4人で大会に出てたから」

「4人?チームは5人じゃ………?」

「もう1人分、チヴィットを入れて出場したのだ」

「それで優勝したのか!?」

「はい」

 

信じられないが、ユーリまで頷いたので間違い無いのだろう。

 

「前回は何とか勝てたが、今回は前の様にはいかないだろう。八神堂の小鴉のチームも連度を高めているだろうし、T&Hエレメンツも前回以上に隙が無いだろう。そうなるとどうしてももう1人のメンバー補充が急務だったのだ」

「それが俺………?」

 

小鴉?と一瞬思ったが、そんな事よりも今は誘われた事で頭が一杯だった。

 

「そうです。今までの指導もそれを見越して指導してました」

「そうだったのか………」

 

だが、まだシュテル達に満足した結果を見せられていない。それでも誘ってくれた事は嬉しかった。

だが………

 

「………だが、レイには悪いが、最後に試験をさせて欲しい」

「試験?」

「勝手に判断して勝手に誘っているのに試験とは可笑しな話だと思うのだが、我々は本気で2連覇を目指している。八神堂、T&Hエレメンツだけでなく、他のチームも力を付けてきただろう。油断は出来ないのだ。だから………」

「いや、むしろありがたい。俺も今日のデュエルで色々と見つめ直す事が出来た。今までもそうだ、シュテル、ディア、レヴィにも様々な事を教えてもらった。………そろそろ男としてちゃんとした結果を見せないとな」

 

それで心から迎えられたい。それが今の俺の想いだった。

 

「「「「レイ………」」」」

 

「やろう、ブレイブデュエルを。シュテル、今度こそ黒星を付けてやる」

「ええ、望むところです………!!」

 

俺の宣戦布告にシュテルはニヤリと笑みを溢して答えたのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、準備は後少しで整う」

 

男はパソコンを操作しながら呟く。

 

「その前にあの男の息子には一度挨拶をした方がいいな」

 

そう言いながら前に立つ男を見た。

 

「桐谷、分かってるとは思うが………」

「はい、絶対に負けません………」

 

その返事に男は満足したのか笑みを溢し、再び作業を始める。

それを見て、桐谷と呼ばれた男は振り返り部屋を後にした………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「兄さん………」

「加奈、起きてたのか」

 

部屋を出た扉の近くに義妹が居た。

 

「大丈夫………?」

「ああ、今日はただ話だけだったよ」

 

そう言うと加奈は安心した様に息を吐いた。

 

「いつも兄さんばかり酷い目にあってるから………」

「構わないさ、加奈の為でもあるんだし。それよりも早く寝た方が良い。明日も学校だろ?」

「うん、分かった………兄さんも………」

「ああ」

 

加奈の差し出した手を取り、一緒に寝室まで向かう。

 

(有栖零治………佐藤雅也の息子………アイツさえ、アイツさえ倒せば加奈を………)

 

それは桐谷と父親が交わした約束。

 

(俺は絶対に負けられない………)

 

そう加藤桐谷は強く決意し、一緒に向かうのだった………

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