魔法少女リリカルなのはINNOCENT ブレイブバトル   作:blueocean

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DUEL14 紅の鋼狼

シュテルとの戦いから翌日。

 

「………まだ6時半」

 

土曜日でもあるその日、学校は休日であったが珍しく平日よりも早く目が覚めた。

 

「………」

「むにゃ………」

 

布団から出て焔とユリの様子を覗いてみる。まだ2人とも気持ち良さそうに寝ていた。

 

「ありがとな………」

 

そう小さく呟き、部屋を出た………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう………」

 

洗面所で顔を洗い、寝癖を直してリビングに向かう。

 

「おはようございます」

 

リビングにはテレビの近くのソファーで飲み物を飲みながら本を読んでいたシュテルと、料理をしているディア、それを楽しそうに手伝うユーリの姿があった。

 

「おっはようございます!!」

 

そんな中続けざまに入ってきたのはアミタだ。休日だと言うのに朝からとても元気である。

 

「零治君早いですね」

「何か目が冴えちゃってな。昨日のバトルの影響かも………」

 

そう呟きながらシュテルを見る。シュテルは何時も俺より早く起きているが、もしかしたらシュテルも俺と同じかもしれない。

 

「まあいいか。さて、テレビでも………」

 

そう言いつつ、シュテルの近くのソファーに座ると、シュテルがビクっと反応したのをソファーを通して伝わった。

 

「?」

 

不思議に思い、シュテルの様子を見るが特に変わった様子も無かったので。気にせずテレビに集中する事にした。

 

「あっ、可愛いですね〜!!」

「ゴールデンレトリーバーか………しかし賢いなぁ………」

 

付けたテレビで丁度やっていたのは毎回この時間にやるニュース番組の犬のコーナーだ。日本全国を周りながらその土地に住む犬のペットを紹介する内容で今年で10年目とかなり人気のコーナーだ。

 

「この研究所にもペットがいても良いと思うんですけどね………」

「庭も広いし、確かに居ても良さそうだよな……家に居る事の多いユーリも嬉しいんじゃないか?」

「そうですよね!!飼うとしたら大型犬ですかね?」

「いや、一応ユーリの事を考えて小型犬のほうが良いかもな。家の中でも飼えるし、何より可愛いし」

「………零治君って意外と可愛いもの好き?」

「………い、いや、犬なんて飼った事ないし、色々と考えた上でだな………」

「はいはい。分かってますよ〜」

「いや、だからな、俺は決して………」

「分かってますって〜」

 

とニヤニヤしながら話すアミタの言葉には説得力が無い。キリエが起きてくれば直ぐにでも話しそうだ。

 

「わ、私は猫の方が良いと思いますよ………?」

 

そんな会話をしていた俺達に突然シュテルが加わってきた。

 

「本読んでたんじゃなかったのか」

「ち、近くだったので聞こえてきたんです!!別に2人の会話が気になったとかそんな理由じゃないですよ!!」

「おい……」

 

俺の追求に慌ててか自分の内を全て話すシュテル。しっかりしてるように見えて慌てるとボロが出るようなタイプのようだ。

 

「まあ気になりますよね。犬と猫で好みも分かれますし。私はどっちも好きですけど強いて言えば犬ですかね」

「私は猫です!」

「まあシュテルはな………」

 

あれだけの数の猫が懐いてくれるのなら犬派も猫派になりそうだ。ただし懐いてくれれば……だが。

 

「むっ、レイはどっち派ですか?」

「俺か俺もどっちも好きかな」

「それは私も同じです。強いて言うならってことです」

「犬」

「即答ですか!?」

「だってあの時引っ掻かれたし………」

 

あの近寄るなと言わんばかりの引っ掻きは初めて猫に触れ合おうとした俺には少々トラウマになっていた。

嫌いや苦手とまではなっていないものの、進んで触れ合いたいとは思えない。

 

「あの時は皆知らない人が近づいて警戒しただけです!次会いに行けばもっと仲良くなれるはずです!」

「そんなもんかね………?」

「間違いないです!だったら早速今日一緒に公園に行きましょう!!」

 

そんな会話をシュテルとしている中で、呆気にとられているアミタに気が付いた。

 

「どうしたアミタ?」

「いや、シュテルが積極的過ぎて驚いちゃって………」

「言われてみれば………」

 

今までシュテルから誘いがあった事はほぼ無く、デュエルさえ俺がお願いして頼んでいたのが殆どなのだ。

 

「わ、私は別にレイに猫好きになってほしいと思っただけで別に他意は………」

「他意?」

「あっ………」

 

俺が聞き返すともごもごと俯いてしまった。

 

「あまりシュテルを虐めるな」

 

そんなシュテルの反応を見ているとディアがエプロンを外しながら後ろから話しかけてきた。

 

「レイは朝食の準備の手伝い、アミタとシュテルは寝ている者達に声をかけてきてくれ」

「ういっす」

「了解」

「分かりました」

 

エプロンを外し、ユーリと出来た朝食を運ぶディアに指示され、俺達はそれぞれ動いた………

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ………相変わらず美味しいご飯でした………」

「それは良かった。今日はユーリも料理を作ったのだぞ」

「マジか、ディアにも負けないくらい美味しかったぞ」

「えへへ………お粗末様でした」

 

と嬉しそうに言うユーリ。本当に可愛い妹の様な子である。

今日の朝食はバターロールにベイクドエッグ、ベーコンと豆のサラダにヨーグルトなど、ホテル顔負けの朝食だ。昨日は筍ご飯だったし、ディアは朝食でも手を抜かない。

 

「さて、シュテル何時行く?」

「そうですね………少し食休みしてから行きましょうか」

「どこ行くの〜?」

「シュテル行きつけの公園。猫と戯れさせてくれるって」

「ボクも行く〜」

 

とまだ完全に目覚めていないレヴィが答える。明日休みだからと昨日は夜更かししていたらしい。

 

「私も行きたいです………」

 

そんなレヴィにユーリも便乗した。

 

「良いぜ、せっかくだし皆で行くか。なあシュテル?」

「はい………」

 

良い案だと思ったが、シュテルは少し不満そうだ。

 

「ならば昼食を持って出かけるか。今日は暖かいし丁度良い」

「ピクニックだね!!レイ、キャッチボールしよう!!」

「グラブ持ってないぞ?」

「多分研究所にあるよ」

「多分かよ………まあ良いけど」

 

最悪素手でも大丈夫だろう。

 

「シュテル、それで良いよな?」

「………良いですよ」

「やったー!じゃあボク、早速グラブ探してくるね!!」

 

シュテルの返事を聞き、レヴィが元気よく部屋を出て行く。

 

「何か機嫌悪い?」

「別に………」

 

そう答えるシュテルだったが、やはり不満そうだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「近くの公園にピクニック?」

 

折角なのでフローリアン姉妹も誘う事にした。

 

「良いですね、行きましょう!!せっかくだしお父さんも気分転換がてら呼んで………」

「それは良い考えかも」

「私、ちょっと行ってきます!」

 

とそう言ってアミタは博士の元へ向かった。

 

「そう言えば零治君が来て初めてじゃない?皆で出掛けるの」

「確かにそうだな………」

 

1度来たばかりの時に皆で出かけたショッピングモール以来だ。しかも今回は博士も連れて行くようなので本当に全員参加となる。

 

「楽しみだ………」

 

有栖家では家族全員で出掛けた覚えがない。何時もおばさんは俺がいると一緒には行かず、残る事が多かった。その為全員で行動する事が無かったのでとても楽しみだ。

 

「それでは早速我は昼食の準備をしよう。出掛けるのは2時間後位で良いか?」

「よろしく王様」

 

キリエにそう伝え、ディアは早速昼食作りに取り掛かる。

 

「王、手伝います」

「私も!!」

 

そう言ってシュテルとユーリも付いて行く。

 

「2時間か………少しブレイブデュエルでもして行くか………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マスター、出掛けるのにデュエルするの?」

「時間があるからな。それにディア達の足を引っ張る訳にはいかないし、もっと精進しないと」

「そうね………」

 

ユリと焔と共にグランツ研究所のデュエルエリアまで移動する。

まだ9時を過ぎたばかりだが休日の影響か、思ったよりも人が多い。

 

「あっ、零治君!!」

 

そんな事を思いながら中に入ると、受付をしていた研究員のお姉さんが声を掛けてきた。

 

グランツ研究所ではブレイブデュエルの従業員を研究員の職員の人達が交代しながらやっている。最初、研究に集中出来ないのでは?と聞いてみたが、『いい気分転換になる』と笑って言っていた。

 

多分博士と似たような人達ばかりなのだろう。

 

「どうしたんです?」

「零治君を待ってる人が居るんだけど………」

 

視線の先には俺と同世代位の男がいた。神崎ほどではないにしても整った顔立ちと、どこか気品を感じさせる佇まいは普通の一般人ではない事を感じさせる。一度見たら忘れる様な印象では無かったが、俺には覚えが無かった。

 

「やあ、初めまして」

 

俺に気がついたのかあっちから声を掛けてきた。

 

「えっと……どうも」

「いきなりで悪いんだけど、俺とブレイブデュエルしないか?」

「ブレイブデュエルを?」

「ああ」

 

いきなり、名前を知らない相手に勝負を挑まれる。………それは普通にある光景だが、相手が名指しで待っているほど零治は有名なプレーヤーではない。ましてや、知り合いと偽って零治が来るのを待ったりと不自然な点が多かった。

 

「そう警戒するなよ佐藤零治。俺との勝負はお前にとっても悪い話じゃ無いぞ?」

 

警戒していると男の口調が少し変わった。挑発する様な口調に少し怒りが加わっている言うに感じる。

 

「お前、俺の旧姓を………」

「俺に勝ったら妹の事、教えてやるよ」

「妹!?………まさか!!」

「そう、佐藤加奈だよ。………さて、どうする?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『マスター………』

 

焔が心配そうな声で呟く。

しかし零治の耳には入らず、零治は相手の男を睨みつけて視線を外さない。

 

「さて、始めるとするか」

 

男はトンファーの様な形で刀が両腕に付いた変わった形の武器を持っていた。

 

「ああ………」

 

場所は荒野。見渡す限り何もなく、2人だけの世界で向かい合う。

 

「その前に………」

 

そう呟きながら何かを操作し始める。

 

『キルモードインストール開始…………』

 

そんな機械音が小さく響く。当然向かい合う零治には聞こえない。

 

「これで準備よし、さあ殺ろうか………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ?」

「どうした?」

「これ………」

 

ブレイブデュエルのシステム管理をしていた研究員達の顔色が変わる。

 

「これはハッキング!?」

「なっ!?だが、外部から攻撃された形跡は無いぞ!!」

「どうやらハッキングを受けたのは1つのステージのみみたいね」

「じゃあ内部からハッキングしたって事か!?だけど基本バインダーやカードはこの研究所で開発された物やローダーが殆どだし、他に開発出来る人間なんて………」

「兎に角、博士を呼びましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあああ!!」

「っ!!」

 

先に仕掛けたのは相手だった。ライトニングに負けない速度でこちらに向かって来て、右拳で殴りかかってきた。

 

「ふん!!」

 

しかし速さで言えばレヴィに及ばない。平手で拳を払い、逆に掌底を打ち込む。だがそれと同時に左拳が俺の顔へと向かって来ており、互いに同じタイミングで受け合った。

 

「!?」

 

拳の受けた頬の感触がやけにリアルに感じる。普通に殴られた様な感触を受け、頬を確認するが、腫れている様な事はないようだ。

 

「どういう事だ………?」

 

ブレイブデュエルではダメージを受けて身体が重くなったり、動かなくなったり気絶する事はあるものの、痛みを感じる様な事は今まで無かった。

 

「よそ見してていいのか?」

「ぐっ!!」

 

わき腹に蹴りを決められ、吹き飛ぶ。咄嗟に籠手で受け止めたが、やはり何か何時もと感覚が違う。

 

「地斬疾空刀!」

 

そんな俺に向かい、右腕の刀が前に出て、そのまま上に斬り上げる。それによって生まれた斬撃が襲ってきた。

 

「くっ!?」

 

吹っ飛ばされ、起き上がるタイミングを狙った様で、避けるのは間に合わない。

 

「だが斬撃なら!!」

 

向かってきた斬撃を鞘で斬り裂く。ここまで用意周到で攻撃してきたのだ。ならば………

 

「白虎咬!!」

 

やはり思った通り、すかさず追撃してきた。

また刀で来るかと思えば、掌に溜め込んだ魔力をぶつける様な技だった。

 

『マスター!!』

「分かってる!!」

 

あれを直接喰らったらまずい。そう直感的に感じた。

だが、攻撃自体は殴りかかった時と同じ様に相手に直接当てないと意味はないのだろう。

だからこそ搦め手から使ってきた。

 

「当たるか!!」

 

自分の足元に足場を作り、腕を使わないバック転の様にジャンプして後方に下がった。

 

「くっ!?」

 

俺の思いがけない行動に相手は目標を失う。だがこれで終わりじゃない。

地面に着地したと同時に相手に向かって駆ける。

 

「行くぞ、裂空刃!!」

 

抜刀と共に剣を高速に振り、無数の風の刃をぶつける攻撃。

 

「!?」

 

完全に虚を突かれた相手はなす術もなく裂空刃を受けた。

 

「直撃だな」

 

裂空刃は完全に相手に入った。腕を交差して守りに入っていたが、ライトニングであろう相手にとって、これは相当重いはずだ。

 

「!?」

 

しかしスキルが終わったと同時に小さな魔力弾が連射されながら飛んできた。

 

「くっ!!」

 

直ぐに横に飛び、射線から外れ、避けるが、射撃は終わらない。

 

「どうなってるんだ?」

『嘘でしょ………?』

「どうした焔?」

 

不意に焔が信じられないと言った声で呟いた。

 

『あれは………』

 

俺もその姿を確認する。

赤く、頭に角を持ち、右手に大きな杭、左手にマシンガンの様な銃口。そして両肩にあるずっしりとしたハッチがついたミサイルポットの様な物が付いていた。

 

「何だよあれ………」

 

もはや別人が居たと言われてもおかしくない。ロボットと人が入れ替わった様な姿はユリのブラックサレナと似ている様でかけ離れているように思える。

 

「行くぞ………」

 

驚いている中相手が動いた。

 

「!?」

 

右腕を引き、真っ直ぐこちらに向かって来る。

 

(猪みたいな真っ直ぐ突っ込んでくる………だったら!!)

 

スピードは速いものの、やはりレヴィには遠く及ばない。ギリギリで横に飛び、攻撃を避ける。そう考えて身構える。

 

『!?マスター駄目!!』

 

焔が俺の動きを見て止めに入ったが、既に遅かった。

 

「なっ!?」

 

途中から加速したのか、もの凄いスピードで迫られ、タイミングが遅れ懐に潜られてしまった。

 

(ガードを!!)

 

「ステーク、貫け!!」

 

右の杭を俺の腹部に突き刺してくる。慌てて、間に鞘を盾に使うが………

 

「がっ!?」

 

杭が当たった瞬間、銃弾を撃ち込んだ様な爆発が起き、その衝撃と共に腹部に何かが破裂した様な痛みが襲う。

 

「がふっ!?ふぅ………ふぅ………」

 

吹っ飛ばされながらも着地だけはちゃんとする事が出来た。だが呼吸がおかしく、苦しい。

 

(何が起きた………?)

 

呼吸が戻る様に意識してゆっくりと呼吸を繰り返す。それでも意識はハッキリとしていた。

 

(奴は………)

 

あの赤い姿探し確認する。相手はこっちに気が付いているが、特に追撃するような動きを見せず、ただ俺の様子を見ていた。

 

「ほ、ほむ……ら………?」

 

段々と呼吸も戻って来た。何とか焔の名前を呼ぶが、反応は無い。

 

「ほむ……ら?」

 

やはり反応が無かった。不思議に思い、手に持つ刀を確認してみると、鞘にはひびが入っており、刀こそ無事だが、鞘は使えるような状態では無かった。

 

「嘘……だろ?焔?焔!!」

 

呼吸も戻り、懸命に声を掛けるが、やはり反応が無い。

 

「そんな………」

 

初めての出来事にそれ以上言葉が出ない。

 

「もう終わりか………?」

 

そんな中、相手がこちらに向かって来ながら呟く。

 

「まあ例え、お前が降参しようが、この戦いを終える気は無いがな」

 

そう言って左腕をこちらに向けた。

 

「くっ………!!」

 

腹部に攻撃を受けた影響か、呼吸はもう戻ったものの、腹部には痛みを感じ、身体が重い。

 

「ラグナル、動くか!!」

 

俺の問いに、ホルダーは光って答えた。

 

「なら、ブラックサレナリライズアップ!!」

 

相手の魔力弾が発射されると同時にブラックサレナに換装する。

それと同時にフィールドを張り、魔力弾を防ぐ。

 

『マスター、焔が!焔が!!』

「ユリ、悪いが今は戦闘に集中しろ!!」

 

俺も気になっていない訳では無い。だが、この痛みも含めてこのデュエルは何かがおかしい。

 

「しぶとい………」

 

そう言って再び右腕を少し引き、構える。

 

『あれって………』

「さっき焔も何か心辺りがあるような口ぶりだった………ユリは何か知ってるか?」

『多分………恐らくだけど、私達とは別のホルダーに取り付けられてるアルトアイゼン………だと思う』

「思う?」

『だって私達より後に作られた筈………だから………それにあわせてラグナルに追加されたアーちゃんなら詳しく知ってるかもしれないけど………』

「アーちゃん?」

『マスター!!』

 

無駄話が過ぎた様だ。再びこちらに突貫してくる。

 

「ユリ、転移!!」

『イエスマスター!!』

 

あの杭の近くに居ては危ない。転移までは少し時間がかかるが、それでもこの距離なら間に合うはずだ。

 

「逃がすか!!」

 

しかし相手も再び、途中から加速し、一気に距離を詰める。

 

「転移!!」

 

タイミングは紙一重だった。だが、直撃する寸前で何とかこっちの方が先に転移出来た。

 

「ユリ!!」

『グラビティブラスト!!』

 

俺の意図をすかさず読んでくれたユリは名前を呼んだだけで直ぐに行動に移してくれた。もしかしたらユリも同じ事を考えていたのかもしれない。

 

「ぐっ………!!」

 

相手は避ける事も無く、腕を盾にしてグラビティブラストを受けた。

俺と同じ様にアーマーを着けていると言う事は少なからず防御は堅いだろう。

 

「なめ………るな!!」

 

しかし俺の予想に反して相手はグラビティブラストを突っ切ってこっちに向かってくる。

 

『嘘でしょ!?』

「くっ………!!」

 

碌にチャージをせず、ダメージを与える事を優先して攻撃したが、それが仇となってしまったようだ。

 

『マスター、突破されちゃう!!』

「くっ………!!」

 

しかしここで攻撃を止めれば一気にこっちに向かってくるだろう。

 

(だけどこのままじゃ………)

 

相手は突っ切っているため、先ほどより速くはないが、いずれ突破されそうだ。

 

(かといって転移はもう間に合わないだろうし、このままでも突破される。なら………)

 

ハッキリ言えば危ない賭けだ。だが、やるしかない。

 

『マスター!!』

「俺を信じろユリ!!」

『!!うん、分かった!!』

 

そう言ってユリはこれ以上何も言わなかった。

 

 

その後、やはり相手の勢いは衰えず、もう突破される寸前だった。

 

『突破されるよ!!』

「ああ!!」

 

覚悟を決め、相手の動きを見る。

 

「覚悟しろ!!」

 

相手も俺の予想通り、先ほどと同じ杭で攻撃する気のようである。

 

「………それは互いにな!!」

 

相手の杭がグラビティブラストの発射口を捉えようとしたところに左腕で杭を受け、横っ腹に魔力で作った剣を突き刺す。

左腕が再び爆発と衝撃に吹っ飛ぶような感覚を受けるが、何とか相手の動きを止められた。

 

「くっ、固い!!」

 

杭のが撃ち込まれている中、剣を突き刺そうと試みるが、簡単には突き刺さらない。

 

「ブラックサレナと同じかそれ以上か!?だったら!!」

 

両腰の長い銃筒から射撃し、攻撃する。

 

「うぐっ………」

 

やっと相手が怯む。

 

「まだまだ!!」

 

ブラックサレナのダメージも大きい。これ以上は持たないだろう。だからこそここでせめてあのアーマーだけは何とかしておきたい。

 

「ぐううっ………!!」

 

相手も砲撃を突っ切った事もあり、既にダメージは大きそうだ。このまま連射すればいずれ………

 

「スクエア……クレイモア!!」

 

しかしそんな事を思った時だった。両肩に乗っていた大きなミサイルポットが開く。

 

(何か来る!?)

 

だが逃げるわけにもいかなかった。ここで引けばブラックサレナも解け、また相手に良い様にされるだろう。

 

「悪いユリ………!!」

『ドンと来いです!!』

 

相変わらず分かっているのかそうでないのかよく分からないが、それでも今は頼もしかった。

 

(来る………!!)

 

そう感じた瞬間、一斉に魔力弾が発射された。

小さな魔力弾が無数に広範囲に発射され、俺を襲う。

 

「うぐぐ………」

 

小さいのにも関わらずその1つ1つが重く、アーマーを着ていてもその威力が響いてくる。

 

「だが!!」

 

それでも撃つのを止めない。互いに攻撃をしながら相手の攻撃を受ける捨て身の戦いはそう長く続かなかった。

 

大きな音を立てて爆発する両者。吹っ飛び、どちらもアーマーは消え去った。

 

「くっ………!!」

 

相手もダメージが大きかったのかフラフラになりながら立ち上がる。

 

「ユリ、ありがとな………」

 

ユリの反応は無い。俺もフラフラで気を抜けばすぐに気絶しそうな状態だった。

 

「だが、ここまで来てむざむざ負けてたまるか………!!」

 

鞘が壊れた刀を握り、動く。

 

「さあ、最終決戦だ………!!」

 

俺の言葉に呼応するように相手も動きだした………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今までの戦闘風景をディア達ダークマテリアルズの4人が心配そうに見つめていた。

 

「………アミタ、キリエ、そっちはどうだい?」

「こっちのプロテクトはもう少しで解けそうです」

「こっちも。後は………」

「任せてくれ。2つのプロテクトを外せれば後は直ぐだ。だから2人も、他の皆も頑張ってくれ」

 

そう言いながらグランツ博士は自分の操作する手を速めた。

 

(このブレイブデュエルのマザーシステムに侵入するだけでなくハッキングまでするとは………外からは強力でも内は脆かったか………盲点だった。VRの発展型でもあるこのゲームは少し設定を変えるだけでも身体の影響を引き起こす場合もある。そしてこのマザーシステムについて詳しいのは開発初期メンバーと八神堂とホビーショップの極少数。八神堂とホビーショップは違うとしてやはり怪しいのは………)

 

そこでグランツ博士は2人の人物を思い浮かべる。

 

(1人は確かに悪を名乗っているし、彼なら可能だろう。だが彼も性格上、こんなプレイヤーを危険な目に遭わせる事は絶対にしない。………となるとやはり)

 

零治に対する相手の顔に見覚えがあった。

早い内に開発メンバーからは抜けてしまったが、今でも顔は覚えている。

 

(謙蔵、やはりお前なのか………?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後の戦いは泥試合のような戦いだった。

 

「くっ!?」

 

相手の刀が頬を掠め、熱いものが頬を浸る。

 

「何で血なんて!!」

「よそ見したな!!」

「ぐふっ!?」

 

鳩尾に拳を撃ち込まれ、思わず蹲る。

 

「死ね!!」

 

そんな俺に刀を突き下ろしてくるが、横に転がるようにして避け、何とか窮地を脱する。

 

「しぶとい!!」

「魔神剣!!」

 

焔の反応は無いものの、スキルは一応使える。

しかし抜刀はもうできない為、葬刃、裂空刃の様な主力の技はもう使えなかった。

 

「うおっ!?」

 

だがそれでもフラフラである相手は避ける事はせず、守る事で攻撃を凌ぐ。それは俺も同じだった。

 

「魔神剣!!」

 

更にもう1撃。相手をその場に釘付けにし、後は消耗するのを待つ。

 

「このぉ………!!」

 

最初に使った飛ぶ斬撃は使ってこない。使えないのか分からないが距離を取れた俺にとって有利な状況は続く。

 

「ふざけるな………ここで負けるわけにはいかないんだ………加奈の為………俺達兄妹の為に!!」

「!?」

 

その瞬間悪寒が走った。何がそこまで追いつめているのか?

異常な気迫を感じつつ、攻撃こそ続けるが、守りに徹している相手の様子が変わったのを感じる。

 

「玉砕覚悟か………?」

 

そう考えている間に相手は動いた。

 

「なっ!?」

 

疲労している筈の身体でありながら最初に見せたライトニングに負けない速度。

 

「くっ!!」

 

魔神剣では追いつけず、あっという間に俺の目の前にまでやって来た。

 

「このお!!」

 

刀を横薙ぎに振るうが、左腕の刀で受け止められ、左肩に相手の拳が入る。

 

「がっ!!」

 

鈍い痛みが左肩に広がる。思わず後ずさるが、相手の追撃は止まらない。

 

「あぐっ!?」

 

回し蹴りが腰に入り、地面に倒れる。

 

「あああああああああああああああ!!!」

 

倒れた俺の左肩を踏みつけ、何度も何度も足を上げて踏みつける。

思わず叫び声を上げるが、相手の攻撃は止む気配は無い。

 

「お前さえ、お前さえいなければ!!」

 

そう怒りをぶつける相手に為すすべなくされるがままだった。

 

「死ね!!死ね!!」

 

顔を蹴られ、腹を踏まれ、脇腹を蹴られ………

 

(くそっ………意識が………)

 

全身に痛みが発し、身体が重い。

だが、いつもの戦いに負けた時のだるさでは無い。まるで自分の身体から離れていく様な感覚だった。

 

(これが死………なのか?)

 

体験した事の無い感覚に思わずそんな答えが浮かぶ。

 

「死ね!!死ね!!」

 

動かなくなっていく俺に対して相手は一切攻撃を緩めない。まるで今までの恨みをぶつける様に何度も何度も攻撃を繰り返す。

 

(コイツは………一体何の為にこんなに苦しそうな顔をしてるんだ………?)

 

全く知らない相手。しかし唯一知っている名前を良く口走る。

 

(加奈………?何で俺の妹の名前を………?それに妹………?そして何で俺をそんなに………)

 

さんざん痛めつけてもやはり攻撃を止めない。

 

(また………俺から家族を奪うのか………?)

 

ふとそんな考えが零治の頭の中に浮かんだ。

そして思い出すのは葬式後に自分の意見を聞かず連れていかれる泣いて俺を呼ぶ妹の姿。

 

(ふざけるな………俺は、また、何も出来ないまま加奈を………ふざけるな、ふざけるな!!!)

 

その瞬間、自分の中にあるナニカが破裂した様な感覚を感じた。

 

「死ね、死………なっ………?」

 

蹴り続け、反応の無い零治に不意に足を掴まれた。

 

「うおっ!?」

 

そのまま足を払われ、バランスを崩して倒れ込む。

 

「一体何が…………がっ!?」

 

身体を起こした瞬間、強烈な蹴りが顔に入り、再び倒れ込む。

 

「くそっ、このおお!!!」

 

直ぐに立ち上がり、零治に向かって殴りかかる。

 

「………」

「!?」

 

しかしその拳は見事なカウンターの前に空振り、膝から地面に倒れ込んだ。

 

「………」

「くっ、くそっ………!!」

 

何とか立ち上がり、剣を振って、零治を下がらせる。

 

「一体何が………!?」

 

そう呟きながら零治を見て驚いた。

 

「何だ………お前は………?」

 

瞳孔に光は無く、無表情でその場に立つ零治。何も語らず、戦っている相手を見ているかも疑わしい。

たが、それでも隙を感じず、立つ姿はとても人間の様には思えなかった。

 

「化け物………!!」

 

そう感じる中、零治は再び動いた。

 

「………」

 

目の前の標的を確実に滅する為に………

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