*修正:ゼスト→ゼクト
プロローグ
「俺は無敵の
そう言って背を向けるあいつの背はどうしようもなく大きく見えた。
俺も含めて仲間が全員満身創痍の中、あいつらだってボロボロなはずなのに敵に立ち向かうその姿。
かっこいい
そう、思った。
ああ、かっこいい、かっこいいなあ。
俺なんて無様に倒れ伏してるってのになあ。
ははっ、かっこ悪いやね。
敵を目前にして倒れて、あいつらに敵の相手を任せるしかないようなこの状況。
なんて、不甲斐無い。
いけない、いけないなあ。
これはいけない。
俺はこんなところで倒れてあいつ一人に任せる?
否、断じて否である。
あいつらを見ていたら俺も頑張るしかないじゃないか。
「ナギ」
「あん?」
振り返るナギを見ながら立ち上がる。
「おまっ!傷が!」
ナギが立ち上がった俺の身体を見て驚愕する。
当然か、傷だらけで血を垂れ流していた状態なのに立ち上がってるからね。
それはもうダラダラよ。
貧血気味なのは否めないさ。
「俺も行かせてもらうよ。なに、見た目ほどひどい傷じゃないって」
片目を閉じて惚けたように言う。
嘘、本当は体中がガタガタと悲鳴を上げている。
ただの強がり。
痛い痛い、ああ痛いなあ。
このまま倒れこみたい。
でも、倒れない。
勝つためにも、わずかでも勝つ可能性を上げるためにも、俺は立つさ。
「それに、奥の手、切り札ってのはこういう時につかうもんでしょう?」
愛剣を肩に掛けてナギの隣に並ぶ。
ナギを挟んで反対側にはゼクトが立った。
「お前……ああ、そうかよ。お前も来てくれるってんならこれ以上心強いことはないぜ!」
「全く、ワシの事を忘れんで欲しいな」
バンッとナギに背中を叩かれる。
それは決して痛くなく、むしろ気持ちが良かった。
あ、嘘、結構痛かった。
正直倒れそうになった。
「てなわけで、だ。安心してそこで見ていてくれな。アル、ラカン、詠春」
後ろに振り返って俺のできる最高の笑みで言ってやる。
てか両腕飛んでよく平気でいられるな、ラカン。
普通気絶してるだろうよ。
「ナギ、ゼクト、数秒。数秒だけこっちに奴の攻撃が俺に届かないようにしてくれないか?」
「切り札って奴のためにか?」
「ああ」
「全く無茶を言う」
ゼクトが呆れたように溜息を吐いた。
「それがあればあいつに勝てるのか?」
「わからない、でも、やらないよりはいいさ。んふふ、何?まさかあいつの足止めもできないの?」
煽る。
「上等!俺を誰だと思ってるんだ?このナギ・スプリングフィールド様に不可能はねぇよ!!」
「そうじゃ、あまりワシを舐めるでないわ」
「なら、任せたよ」
今度は俺が二人の背中を叩く。
「「任された!!」」
俺を除いた二人が敵に躍りかかった。
一撃で俺たちを全滅一歩手前まで追いやった相手に跳びかかった。
その顔に恐怖はない。
さて、二人が足止めをしている間にやってしまおう。
「モンヲヒラケ!」
感謝する、ナギ。
お前のおかげで俺も英雄になることができる。
「我が才を見よ…!」
長く伸びた髪が後ろでまとまる。
「万雷の喝采を聞け…!」
服が深紅のドレスに代わる。
「しかして称えるがよい…!」
視界の中心に奴を捉える。
「覚えておくがよい、
肩に掛けていた剣を地面に突き立てる。
「開け!黄金の劇場よ!」
『招き蕩う黄金劇場《アエストゥス・ドムス・アウレア》』
括目せよ、
さあ、独唱の幕を開けよ!
―――――
さて、状況を整理しよう。
正直俺自身どうなんているのかわからない。
まあ全部が全部わからないわけじゃないが。
えーっと、なんだ。
生き返ったらしい、俺。
わかるのはそれだけ。
なんだったかな、輪廻転生?だったかな?
漫画でよくあるけど実際にある事なのねえ。
あ、神ってのには遇いました。
凄いですねえ神。
神々しいとはまさにあれの事を言うんだろうね。
神だけに。
……………えー、で、だ。
生き返る際に三つデメリット増し増しで力をくれるって言われたんだ。
カタログみたいなのを説明文付きで渡された。
正直力なんて言われてもデメリットありじゃまともに使えないモノばかり。
無い方がマシってレベルだったね。
当然かな。
元々努力して手に入るものを何もせずに手に入るんだものね。
まあ、だからと言っていりませんて乃は駄目らしく絶対力はもっていかないといけない~、なんて言われた。
なので結局力は一つでいいから残り二つでデメリットを帳消しにしてもらった。
強い力を自傷覚悟で三つか確実に扱える力なら後者を選ぶよ、俺は。
ただ、デメリットを消せるのはそれほど強くない力に限定されるらしく、悩んだ末に選んだのは『招き蕩う黄金劇場《アエストゥス・ドムス・アウレア》』。
微妙だよね。
無双はできないけど戦えないわけじゃないこの力。
ぶっちゃけあれば何かと便利なものかなー程度に思ってる。
ほら、俺が弱かったら意味ないじゃん。
無いよりはましかな。
あとはおまけで鍛えれば『招き蕩う黄金劇場《アエストゥス・ドムス・アウレア》』の持ち主と同じ技が鍛えれば手に入る肉体をくれるらしい。
ていうかネロの体をくれるらしい。
もらえるだけで技術はないから鍛えればってさ。
それはちょっとやりすぎではないかと思ったが、デメリットを消したからだと。
本来なら『黄金劇場』を貰っても使えない、あくまでもらえるだけで使用できるかどうかはわからないというくそ仕様らしく、一個デメリット消去でその不安を排除、これによって確実に使用できるとのこと。
貰っても使用できるかは運次第とかどんな鬼畜仕様なのだろうか。
使えなかった時のがっかり感ときたらないじゃんね。
待て待て、てことは頭痛もあるってことかね?
偏頭痛とかマジ勘弁なんだけど。
あ、そこは二個目ので消してくれるんですか。
気前良いっすね、あなた。
どうせなら最初から強くしてくださいな。
あ、無理?そうっすか。
まあどうせおまけとか言ってそう簡単には取得できないとかそういう裏があるに違いないな。
その後、いきなり黄金劇場を制御できないだろうからある程度自由に力を振るえる環境に一定期間飛ばしてあげると言われた。
ついでに技の取得に踏み出せとも。
何?その一定期間って聞き捨てならないんだけど。
や、勘弁してください。
格闘技も何もやったことのない俺にどうしろと言うのか。
そもそもなんでこんな物を渡すのか。
そう言ったら力がないとほぼ確実に二回目の死が待っていること、指南書やるからそれで何とかするか誰かに師事でもしろと言われました。
武器はサービスで剣を一本くれると。
向うでは魔法もあるから。
あいや、そんな物騒なところで生き返らせないでくださいな。
剣とか魔法とか嫌な予感しかしない中で俺は神のほほえみと共に意識を失った。
そんなこんなで黄金劇場を引っ提げてきたんだけど、どこなんだろうね、ここ、森?
え?俺森の中で寝そべってんの?
うわ、背中大丈夫かな?虫とか潰してないよね?うわ~、萎えるわあ~。
はあ、仕方ないか。
そんなことより現状確認が優先だ。
思えば現代日本、つか現代社会で黄金劇場なんて使うわけないから地球じゃない可能性が大。
ていうか魔法とか出た時点で地球じゃない。
でも平行世界の可能性も無きにしも非ずではあるのかな。
確か些細なことで枝分かれした世界があるとかで、もしかしたらここは魔法が存在する地球なのかも。
てか森の中だから木しか生えてないし現状確認もクソもないんだけど。
ふん、とりあえずこの場から動こうかな。
よっこせと擬音が付きそうな感じで片膝をついて立ち上がる。
背中と髪に着いた土を払う。
「ん?」
髪に触れたときに違和感を感じた。
俺の髪ってこんなにサラサラで長かったっけ?
後頭部から毛先まで手櫛を通してみる。
頭頂部から毛先まで一度も引っかからずに指が通った。
ふむ、サラッサラですな。
素晴らしい。
しかも背中まで後ろ髪が伸びてる。
うわっ、よく見たら前髪金髪になってる!
あー、なるほどなるほど。
マジの話だったのね、ネロと同じ体ってのは。
史実のではなくゲームのじゃったか。
別にいいけど。
華から息を抜きながら前髪を人差し指と親指で擦る。
おりょ?
指が……短い?
いや、手自体が小さいぞ?
バッと自分の身体を見る。
そこには真っ赤な服と一体化したひらひらとしたスカート。
地面がいつもより近い。
ふむ。
胸元を指で引っ掛けて覗いてみる。
わお、綺麗なピンクですねえ。
こいつはちょ~っといやなよかんがしますよ~?
恐る恐る手を股座に伸ばす。
フニッとした感触。
思わず安堵のため息が出る。
まあ可愛いぞうさんですけどね、ははっ、うん。
肉体が幼児化してるぅうぅぅぅうう!
「うおぉう……スルーしてたけどスカートって」
ドレスってやつですね、はい。
うわお、服装まで同じですか、そうですか。
どうせならスーツとかさ、あったじゃん?
何故スカートなんですか。
性別までゲーム基準かと思って焦ったぞ。
てかそこまで原作道理なら背丈もそれに合わせてくださいよ。
多分傍から見たら幼女にしか見えんよコレ。
ん?確かネロのスカートって全面がシースルーだったような。
中はレオタードだっけか。
…………もっこりしてないんだけど、ふっしぎぃ!
……やめよう。
こういうのは考えるだけ無駄だろう。
現実を受け止めるんだ、俺。
おれ、ようじょはじめました。
違う、そうじゃない。
「ふう、確か武器と指南書がもらえるんだったよね。それも持ってかないと。どこにあるのかね」
きょろきょろとあたりを見回す。
今さらだけど木がものすごくでかく感じる。
子供の視点ってもう覚えてないけどこんなだったのか。
そういや俺って何歳くらいなんだろう?
せめて池でもあれば大まかな身長はわかるんだけどなあ。
っと、足元に二つとも落ちてるじゃないか。
その場で胡坐をかいて指南書と思われる本を手に取って表紙を捲って見る。
……無言で正座に変えた。
ドレスって胡坐かきにくいのね。
てかさ、ここがどこだかわからないけど、よく考えたら人はいないし修行をする場としてはいいんじゃないかね?
周囲をぐるっと見回す。
自分が寝ていた場所から円状にぽっかりと切り開かれていてしかもそこそこの広さはあるし結構いい場所かもしれない。
いやいや、どう考えてもこの木の生え方はおかしい。
枝が円の中に入らないように折れて成長してるんだけど。
考えるだけ無駄だろうからそれは置いといて。
せっかく生き返ったんだからまた死ぬのはちともったいないからね。
多分、修行の場?をくれたんだ、有効活用しないわけにはいかんよね。
よし、そうと決まれば修行開始だべ。
一応頭の中にはエンディングまで出来てますので、だらだらとやっていきたいと思います。