「う~ん」
アルから魔法を教わり始めて一ヶ月。
『魔法の射手』も使えるようになり、順調に魔法の腕を伸ばしている。
まあ、使えるって言っても五本を数回が限界なのだけれどね。
それでも全然嬉しい。
着実に力がついて行ってるのが分かるから早くナギ達と一緒に戦場に立ちたいと思う。
そんな充実した日々を送る中、俺は一つ考えていることがある。
「どうすれば詠春は教えてくれるんだろう」
そう、未だに断ら続けている剣を教えて欲しいという旨をどうすれば頷かせれるのだろうか、ということだ。
うん、このままじゃ体が成長しきる前に戦争が終わってしまうね。
一応普通の神鳴流の門下生として基礎からゆっくりとやるのなら今すぐにでもとは言われてるんだけどね。
それではナギ達に拾ってもらった恩返しができない。
とはいえ、体ができてないって言われても急激に成長するなんて事は不可能。
う~ん、どうしたものか。
「もういっそ普通に教えてもらおうかな……」
もうそれでいい気がしてきた。
魔法という手段もあるんだから今はそれを重点的に伸ばせばいいし、じっくりと着実に剣の腕を付けていくのもいいかもね。
いきなり強くなろうとして中途半端になってしまうよりはいいかもしれない。
とはいえすぐには諦められないわけで。
どうせなら最後に誰かに相談して駄目だったらそうすることにしよう。
相談相手として詠春は論外として、アルは出かけててナギは昼寝中、となると。
「ゼクト、か」
ふむ、ある意味では適任と言えるかもしれない。
外見を若く偽ってるゼクトの事だ、逆に年を取る方法を知っていても不思議じゃないか。
実際あれってどうなってるんだろう。
実年齢が三桁超えてるのに外見年齢が一桁とかね。
鯖を読んでるってレベルじゃねえぞ。
今ゼクトは自室かな?
座っていたソファーから降りてリビングを後にする。
廊下を歩いて二階にあるゼクトの私室の前に来た。
「ゼクト~、いる~?」
ノックをしながら声をかけてゼクトからの返事を待つ。
すぐに返事は帰ってきてゼクトから入ってもいいと言われたのでドアを開けて中に入る。
部屋の中に入るとこちらに背を向けて椅子に座ったゼクトがいた。
いや、まあ返事が返ってきて中に居なかったら軽くホラーなんだけども。
「そんなところにボサッと突っ立っとらんで座るがいい」
クルリと回転式の椅子を回して振り向くと、ベットに座るように催される。
言葉に甘えてベットに腰かける。
ゼクトの部屋はなんというか、まあ普通だな。
「それで、なにようじゃ?」
「ちょっとゼクトに相談があってね」
ここに来た目的である相談内容を話す。
どうすれば詠春に剣を教えてもらえるだろうか?
体を成長する手段を知らないか?
ないなら別の方法は?
「なんじゃ、そんなことか」
「そんなことって……」
どうやら解決策があるらしい。
なんだ、最初からゼクトに相談してれば悩まずに済んだじゃないか。
「要は体が大きくなればいいじゃろう?お主ならそれくらいできるじゃろう。ん?なんじゃ、もしかして気づいとらんのか?」
「何を?」
「お主、体は人とは違う」
…………。
「もっと別の、そう、精霊のような感じかの。精霊は魔力の塊じゃが、お主にはそれと近いものを感じる。お主を構成している物、魔力ではないが、もっと神聖な、魔力より上位のナニカ。人が理解しえない何かが固まってできて出来ているとワシは思う」
「精霊……」
魔力でできた体、精霊。
なるほど、英霊か。
お腹が空いたり睡眠欲もあるからてっきり受肉した状態だと思ってたけど、そうか。
多分、ゼクトの言うその神聖なナニカが原因かね。
十中八九あの神の魔力だろうね。
神だから神力?
どちらにしろ普通の英霊とは違うということか。
「気分を悪くしたら済まぬが、実はワシはお主と初めて出会った時、少し頭の中を覗かせてもらった」
い、いつの間に。
「正確には覗こうとした、じゃがな。
ゼクトは椅子を降り、こちらにゆっくりと歩み寄ってくる。
俺の目の前で立ち止まり、俺の両頬に手を添えて固定し、目を覗き込んできた。
まるで俺を逃がさないとばかりに。
まるで俺の考えを見透かすように。
「ネロ、お主は何者じゃ?」
「…………」
「黙秘、それも良かろう。アル何ぞ魔導書が人の形をしておるし、ワシだって普通の人のそれとは違うと自負しておる。故にお主が例え精霊であっても特に驚きはせぬが、ワシはそのナニカが気になるのだ」
「…………そう」
さて、どうするか。
俺が神によって生き返ったこと、話すか話すまいか。
いっそ話してしまうのも一手。
隠す必要はないか、この世界は不死身だっているんだ、生き返りだと言っても案外普通に受け入れられるだろう。
俺は話した、一度死に、そして生き返ったこと。
その時神のような存在に出会い、肉体を与えられたことを。
ついでにこの体、英霊の事を。
『黄金劇場』については話していないけどね。
それは俺の手のうちの一つなんだからおいそれと話すことはできないさ、使えないけど。
「英霊、神、か……」
「信じられない?」
「いや、信じよう。なるほど、そうなるともしかしたらお主は不老やもしれんぞ」
一つ頷いて顎に手を当てて呟くゼクト。
何だって?
不老と申したか?
そんな馬鹿な。
「
「うん」
「ネロ、お主は自分の身体が英霊と同じと先ほど申したな。では何故お主は消えていない?」
……うん?
そういえばそうだ。
俺には魔力を供給してくれる召喚者なんていないし。
それどころか俺自身から魔力が出てるし。
やっぱり受肉してるんじゃないコレ。
「簡単な話、お主は人間でもなければ英霊でもない、別の存在になったのだろうな」
「ん?」
ちょっと何言ってるかわかんない。
ごめん、どういうこと?
「英霊が魔力によって再現された過去の英雄ならば、お主は神の力によって新たに創造された存在。どちらが高位の存在かなど一目瞭然であろう。しかもお主の場合は肉体を持っておる。そして、人とは違って神の力そのものの具現であるお主に寿命などあるはずがなかろう?死ぬかどうかもわからぬな。見る限り、多少なりとも魔力も同様にお主を形作っておる一部に組み込まれているようじゃが、精々三割程度か」
「なにそれ聞いてない」
「どの道、人ではありはせんな。少なくとも年を老いることも他者に殺されるまで死ぬことはないじゃろうな。」
「待って、それじゃあ成長することはないってことじゃないの?」
解決策があるんじゃなかったの?
「成長はせぬが、お主自身はいくらでもその体の形を変えられるじゃろうな。何せお主の身体は魔力を核として周りに神の力が固めておる状態じゃ。が、固定されておるわけではないのじゃから身長など容易に変えられるはずじゃぞ。とはいえ、話を聞く限り造形はその容姿で固定されておるじゃろうがな。例を挙げるとすれば顔の作りを変えることはできんし、腕を刃に帰るなど奇天烈なことはできぬ」
つまり背丈などは変えられるが、あくまで俺の身体はネロだから別の誰かに化けるなどは不可能と、そういうことか。
これはまためんどくさい体になったものだね。
しかし、不老で限定的とはいえ不死身か。
いくら側が良くても中身が俺じゃ持て余すだけだろうに。
まったく、有難うございます。
「そう言うわけじゃからお主の悩みはすでに解決しておるわ」
「おお、ありがとう!早速試してみるよ!」
よし!
…………えっと。
か、体を大きくするってどうやるんだ?
教えてくださいゼクトさん……。
「そんな泣きそうな顔をせんでも……。そうじゃな、案外魔力を体中に流して大きくなろうと思えば行けるのではないか?」
そんな適当な。
でもそれ以外わからないから試してみるしかない。
俺は立ち上がり、なるべく自然体になる。
イメージしやすいように目を閉じて魔力が体の中を隅々まで巡らせる。
まずは本来のネロをイメージしやすいからそれでいこう。
頭の中であの赤いドレスを着て剣を構えたネロ・クラウディウスを想像する。
しかしネロの衣装はどれも過激よなあ、しかも半ケツ。
よく考えてみればあれを着てたのか、半ケツスケスケの衣装。
しかもそれをナギ達に見られて……あ、なんだろう、だんだんゾクゾクと……。
そういえばネロの赤いドレスと言えば基本衣装が続編と変わってたような。
前作が俺が来ていたあの衣装で、続編が白いウエディングドレスっぽい奴だったような、しかも半ケツ。
個人的に
「おおっ」
ゼクトの声を合図に目を開ける。
目に入った光景は閉じる前よりも数段低くなっていた。
よし、成功したぞ!
滅茶苦茶ご都合主義感がするぞ!
でもそんなことはどうでもいいのさ。
これで詠春も文句は言えんだろう。
んふふ、俺の勝ちだぜ。
「まさか、服装まで変わるとは……。しかし綺麗じゃのう」
ん?服装?
言われて下を向いて気付いた。
地面が遠くなってる……。
違う、そうじゃない。
「ごめんゼクト。鑑とか持ってない?」
「ほれ」
ゼクトが手をちょいっと振ると、目の前に姿見が現れた。
何でもありだな、魔法って。
ゼクトに感謝をしつつ姿見に映る自分を見る。
鏡に映っていたのは凡そ高校生ほどに成長した全身真っ白、純白の衣装に身を包む俺だった。
腰にはひらひらとした純白布をベルトで固定してあり、頭には花が付いたシニョンが一つ着けており、そこからまるでベールのようにこれまた純白の布が後ろに伸びていた。
全体的にひらひらしてるなあ。
ていうかまんま
「くく、似合っておるぞ?」
「服まで変わるとか聞いてない」
別にあの赤いドレスを着ていたから今更恥ずかしくはないけどさ。
元々来ていた服はどこ消えたというのか。
まあ、子供用の服だからそのまんまだったら息苦しいなんてレベルじゃなかったかもしれんけど。
元に戻ったら来てるとか?
「よかったではないか。いざと言う時すぐに嫁に行けるぞ?くくっ、詠春の奴が泣くのぅ」
「是非とも辞退させていただきたい」
せめて婿でお願いしたい。
ていうか詠春が泣くとかやめてください。
あのパパ呼び以来何かにつけて言わそうとするからシャレにならないぞ。
「しかし、何故着ている衣服まで変わったのでしょうか」
「知らぬ」
知ってた。
「が、そのウエディングドレスからは魔力を感じる。とすれば肉体を作り変える工程で出た余剰魔力で魔力糸でも作って編まれたのではないかの?」
「魔力って便利ですね」
「魔力、というよりはお主自身じゃがの。しかし、口調が変わっとらんか?」
まあ、あの喋り方が素だけども、流石にこの姿であの喋り方では少し格好がつかない気がするからさ。
一応元の人物は皇帝だからね、こう、威厳がさ、ね?
「まあ、どうでもよいか。ほれ、その姿ならば良かろう。早く詠春のところに行くがよい」
「はい、有難うございました。早速行ってまいります」
頭を下げて部屋を出る。
「や、少し待て。いいことを思いついたぞ?」
前にゼクトに止められた。
後ろに振り返るとニヤリという擬音が心底似合いそうな口をしたゼクトがクツクツ笑っていた。
部屋の中で一人でニヤニヤと笑う男の子。
うーん、不気味だ……近寄りがたいぞ……。
「こっちに来て耳を貸すのじゃ」
「は、はぁ……」
言われた通りゼクトに歩み寄って背が大きくなったので少し屈んで耳を突き出す。
ぼそぼそと呟くゼクトの吐息がこそばゆい。
二人しかいないんだし別に内緒話じゃなくてもよかったような……。
「パパ、私たち結婚するの」
「うむ」
「ブッ!」
書こうと思って力尽きました、はい。
主人公が体の大きさを変えられるのは元が不定形だからです。
言ってしまえば魔力を核にして周りに神力的なものを固めて人の形をとっている人形に主人公の魂を入れてるだけなので、あくまでも人の形をとっているだけの神力的なモノは形を自由に変えられるのです。
まあ、ネロの肉体をくれたということなのでできるのは背の高さを変えるくらいなのですけどね。
あと魔法なら大丈夫というのは自分で変えるわけではなく、外部からの干渉なので、という適当な設定。
ラストしか考えてないのでそこに至る道筋なんて何も考えてません。
なのでこの先どうなるのか私自身もわかりません。
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更新速度なのですが、不定期です、はい。